新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 激戦に次ぐ激戦。
 
 キラ・ヤマトが。

 アスラン・ザラが。

 多くの少年・少女たちが

 その若き命を懸け、未来のために己の魂を燃やしました。

 しかし、世界を望み、人の支配を企む者。

 人を管理することを理想とする者が、壁となり立ちはだかります。

 はたして、シン達はこの戦いを無事に切り抜けることができるのか!?

 それでは!

 ガンダムファイト!!

 レディイイイイ、ゴォオオオオオオッ!!





第96話 運命の女と運命を冠するガンダム

 

 宇宙の闇を駆ける三機のMS。

 

 

 

 自由の翼と正義の剣を意味する二機のガンダムと死の女王の名を持つMS。

 

 

 

 運命の女性の名を持ったパイロットは、静かに後ろを振り返る笑う。

 

 

 

「ヴォワチュールルミエールの空間加速移動に軽々とついてくるとは、流石ね。そろそろよ? 見えるかしら」

 

 

 

 ファムの言葉にキラとアスランが目を前方にやるとそこには巨大な要塞があった。

 

 

 

「あれはーー!」

 

 

 

「アレがジェネシスを撃ったのか!!」

 

 

 

 キラとアスランの言葉どおり、その縦長の隕石の下腹部に当たる部分に見覚えのある巨大なアンテナのようなものが建造されている。

 

 

 

 間違いなくガンマ線レーザー発生戦略級兵器『ジェネシス』だ。

 

 

 

「あんなものを、用意しているとはーー!! レクイエムを用意していたジブリール達と結局、同じか!!!」

 

 

 

「アスラン。予想はできてたよ」

 

 

 

「! キラ!!」

 

 

 

 怒りに顔を歪ませるアスランの隣でキラが静かに燃える瞳をファムとメサイアに向けていた。

 

 

 

「フフ、意外ね。アスラン・ザラと同じように怒るかと思ってたのに」

 

 

 

 面白そうに見つめるファムにキラは静かに答えた。

 

 

 

「今更だろ? 君や議長は確かに綺麗な言葉を口にしていた。だけど、DG細胞の使い方もジェネシス級の戦略兵器の所持も結局、何も変わらない」

 

 

 

 ニコリと微笑むファムにキラは静かに、怒りの炎を目に宿したまま静かに告げる。

 

 

 

「人類の敵と言い切ったデビルガンダム達や人類を支配すると言ったウルベ達。彼らよりも君たちのやり方はある意味もっと汚い!! きれいな言葉で人の支持を集めて、悪を作り上げて! 挙句の果てに利用した!! そんな傲慢なやり方で、世界を変えようとか! ふざけるな!! 人間は、君たちの玩具じゃない!!!」

 

 

 

 静かだったキラの表情が炎に変わる。

 

 

 

 それを見て口元に手を当て、ファムは上品に微笑んだ。

 

 

 

「……クスクス。それを理解して行っていれば、確かに小悪党よね。でもね、キラ? 貴方の言うとおりなんだけれど、一つ間違っていることがあるの」

 

 

 

 楽し気なファムの言葉にアスランが目を鋭く細める。

 

 

 

「ギルバート・デュランダルはね、本気よ」

 

 

 

「……何だと?」

 

 

 

 アスランの目が見開かれる。

 

 

 

 そしてキラも。

 

 

 

「デュランダルと言う男は、自分のしていることに疑いを持たない。いいえ、持てない人間。自信があるとか、そういう言葉じゃない。言わば、自分の過ちを考えられない人間」

 

 

 

「……まさか、議長は本気で世界が救われると思っているのか」

 

 

 

 キラが冷や汗を流しながら告げるとファムはとても嬉しそうに言う。

 

 

 

「そう。ギルバート・デュランダルはね、壊れてるの。いいえ、壊れていたのかしら? 彼は自分のする事に疑いや恐れを感じないの。失敗なんて彼の頭の中には無いのよ。事実を頭の中で作り変えられるの」

 

 

 

 訝し気になるキラとアスランに向かってファムは語り出す。

 

 

 

「簡単な話ーー。彼にとって、間違いや失敗という記録は彼の中には無いの。もし、上手く行かないことがあったら、それは自分が原因じゃないのよ」

 

 

 

 両手を広げて、舞台女優のように彼女は高らかに告げる。

 

 

 

「自分は悪くないーー。うまくいかなかったのはだれかの存在、なにかの要因。それは世界、時代、自分の力ではどうにもできない、及ばない、そういうものが正しい自分をさまたげる。彼はそう考える人間。そういうことよ」

 

 

 

 ファムの言葉にキラが問いかける。

 

 

 

「それを君はどう思う! 君が今やっていることを、君自身はどう考えている!」

 

 

 

「べつに。何も思うことなんてないじゃない」

 

 

 

 にべもなく、肩を竦めて答えるファムにアスランの声が怒気を孕む。

 

 

 

「なんだと!? なんて無責任なやつだ! 議長の問題をそこまでわかっていながら、なぜ止めようとしない!」

 

 

 

「そんな風にはプログラムされていないからよ、アスラン・ザラ。私はあくまでデスティニープランを完遂させるためだけに生み出された存在。それにね。私はあなたたちよりもよほど責任を感じているわ。『責任』という言葉を一応理解できるから言っておくけれど。

 

 だってそうじゃない?

 

 私はあなたたち人間と違って、言っている言葉を途中でひるがえしたりはしない。管理してあげるわ。すべての人間をね。不滅不変となったこの私が永遠に」

 

 

 

 淡々と告げるファムにキラがもう一度問いかけた。

 

 

 

「その結果が、その結果が失敗だったら! きみはどうする!?」  

 

 

 

「どうもしないわ。『その結果』がどうなろうと、私はそうプログラムされているだけ。ただ遂行するのみよ」

 

 

 

 一切の感情のこもらない微笑み。

 

 

 

 柔らかく優しい微笑みでありながら、一切の温かみを感じられない。

 

 

 

 機械的な笑み。

 

 

 

 アスランが静かにジャスティスの双身ビーム剣を抜き放つ。

 

 

 

「キラ! こいつはもうしゃべっても無駄だ! ここで倒すぞ!」

 

 

 

「……ああ。僕も今、はっきりわかった! ファム・ファタール! 君の存在を、僕は許さない! この世界の未来のために、僕は君を討つ!」

 

 

 

 フリーダムのビームソートを抜いて、キラが構える。

 

 

 

 これを悠然とファムは見据えた後、天を仰ぎ両の手をコクピットの中で広げる。

 

 

 

「勇敢なことね。では始めましょう。この宙域のDG細胞もすべて、私が取り込んであげるわ」

 

 

 

 瞬間、宇宙空間に無数の蛍火のように光る球が浮かび上がる。

 

 

 

 それがファム・ファタールのデスクイーンに。

 

 

 

 コクピット内に集められていく。

 

 

 

「なっ、なんだ!? これは……この宙域で散っていったひとたちの命っ! まさか!?」

 

 

 

 DG細胞の力の塊。

 

 

 

 それがエネルギーとなり、目に見える形として光の球になっている。

 

 

 

「これが私の能力、DG細胞の本質。DG細胞が究極の存在に進化するために同族同士で殺し合う。そして優秀なほうが、敗者の力を取り込めるの。

 

 さあ、この宙域すべての人間の命を私が取り込むのが先か、それとも、吸収し切るまえにあなたたちが私を斃たおすのが先か。

 

 始めましょう?

 

 自由と正義の名を冠すガンダムよ!」

 

 

 

 無限にファム・ファタールの力が際限なく上がっていく。

 

 

 

 彼女の瞳の奥で『光の種SEED』が発動した。

 

 

 

 光が吸収されればされる程に圧倒的に強くなっていく。

 

 

 

 しかも戦域に散ったすべての命が光になると言うのならーー。

 

 

 

「時間が経てば、こっちが不利になっていく!!」

 

 

 

「一気に決めるぞ、キラァアアアアアアッ!!」

 

 

 

 アスランの叫びと同時にジャスティスが黄金の気を纏う。

 

 

 

 キラもフリーダムの全身に黄金の気を纏い、斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 それをモニターで見つめた後、デュランダルは静かに右手に持った小銃を構えて男を見下ろしている。

 

 

 

「非常に面白いことになった。この世界最強のパイロット。キラ・ヤマトにアスラン・ザラと私の作り出した『至高の存在』ーーファム・ファタールとの闘いか」

 

 

 

 サングラスをかけた長髪の男ーーウォン・ユンファは睨みあげる。

 

 

 

 地に着いた膝と自分の胸に空いた銃痕を見下ろして。

 

 

 

(どういうことだ? これはーー。この銃弾は、DG細胞の自己再生を殺している)

 

 

 

 脂汗を流しながら、ウォンは静かに考える。

 

 

 

「未来世紀で調査した君のDG細胞の報告書ーー。ウルベのレイン・ミカムラを使った戦闘データ。コロニーを吸収した記録。すべては、この時の為にあったのだよ」

 

 

 

 静かにデュランダルは両手を広げて語る。

 

 

 

「さあ立て! この世界を救世する者ーーメサイアよ!!」

 

 

 

 その宣言に、メサイアは姿を変化していく。

 

 

 

「……これは、デビルガンダムコロニーと同じか」

 

 

 

 目の前の自分と同じDG細胞の塊となった存在を、ウォンは睨みつける。

 

 

 

 こっそりと懐に隠していたガン玉を取り出す。

 

 

 

 緑色を基調とし金色で「笑」と書かれたソレは、笑傲江湖。

 

 

 

「無駄なあがきをしてみるかい? 君の肉体は既に崩壊の一途をたどっている。後は死を待つだけだ…」

 

 

 

「ふざけたことを……! この私を、殺せると本気で思っているのか」

 

 

 

 球を光らせ、その身に纏わせる。

 

 

 

 ウォルターガンダム。

 

 

 

 ただし、その大きさは人より少し大きい2メートル程度のものだった。

 

 

 

「……これは」

 

 

 

「くくく、デュランダル! DG細胞はその大きさを縮小することもできる。ガンダムを拳大の球に変化できるなら肉体に直接纏わせる鎧にもなり得るとは、考えられませんでしたかぁ!?」

 

 

 

 人サイズのガンダムと化したウォンを見据えて、デュランダルは手を叩いた。

 

 

 

「なるほど。その発想はなかったよーー! だが、DGキラー細胞は確実に君の命を奪っていく。その状態でどこまで保つかな?」

 

 

 

「貴様を殺し、DGコアを手に入れる。そしてそれを吸収すれば良いだけの話だ。このグレートウォンに挑んだことを後悔するがいい、デュランダル!!」

 

 

 

 目の前から消えるスピードでウォンは移動した。

 

 

 

 右の爪を大きく開いて攻撃を繰り出す。

 

 

 

 瞬間、デュランダルはそれを左手で手首をつかんで受け止めると、右手にもった小銃をウォルターガンダムの胸に向けて数発放った。

 

 

 

「……ぐっ! ぅうう……!!」

 

 

 

 ウォルターガンダムから、ウォンの苦悶の声が聞こえる。

 

 

 

「フフフ」

 

 

 

 パッと左手を開いてウォルターガンダムの腕を手放し、膝蹴りを銃痕に突き立て、左の拳を顎にぶつけて後方に吹き飛ばす。

 

 

 

「がはぁっ!!」

 

 

 

 背中から壁に叩きつけられ、ウォンは息を吐いた。

 

 

 

 悠然とデュランダルがその前に立ち、銃を構えている。

 

 

 

「これで最後だ、ウォン・ユンファ」

 

 

 

 微笑みを浮かべて、デュランダルはウォルターガンダムのV字アンテナ。

 

 

 

 その接続部である逆三角形をした金属片の中心に最後の銃弾を撃ち込んだ。

 

 

 

「ーーっ」

 

 

 

 一瞬、硬直した後ウォルターガンダムは光の粒子となって貼り付けられた壁から消えて行く。

 

 

 

 残されたのは、人型にへこんだ壁だけであった。

 

 

 

「あっけないものだな」

 

 

 

 瞳を血のように赤く輝かせ、首の頸動脈から頬にかけてうろこ状のDG細胞を浮かび上がらせながら、デュランダルは退屈そうにそう言った。

 

 

 

 そして静かにモニターに映る地球を見る。

 

 

 

 DG細胞で変化したメサイアの姿は、下半身はそのままで、上半身には己の胸を掻き抱く大きな羽を生やした銀色の天使。

 

 

 

 精巧に作られた銀の天使は静かに瞳を閉じたまま、地球にむけて進路を取り始めた。

 

 

 

「さてーー。すべてが終わる時だ」

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 背中に強烈な衝撃を受け、デュランダルの視界が揺れる。

 

 

 

 胸元に目をやれば、自分の胸から生えた異形の手。

 

 

 

「く、くくく……! 死なば諸共。貴様も道連れだ、デュランダル……!!」

 

 

 

 振り向けば、血を吐きながらも未だ生きているウォンが居た。

 

 

 

 左手のみをウォルターガンダムのモノに変えて、背中から無防備なデュランダルを貫いたのだ。

 

 

 

「……バカな。後、少しだというのに……!!」

 

 

 

 胸元から爪を抜き、ウォンはデュランダルの体を地面に叩きつけた。

 

 

 

「お、おのれ……!」

 

 

 

 震える手でデュランダルは己の胸から漆黒の球を取り出した。

 

 

 

 それをウォンはニヤリと見て笑う。

 

 

 

「なるほど。それが、貴様のDGコアかーー! よこせ!!」

 

 

 

 フラフラの足取りでウォンは倒れ伏したデュランダルの手から漆黒の球を奪い取る。

 

 

 

「こいつを取り込めば、私はーー!」

 

 

 

 だが、ウォンがソレを取り込もうとした時だった。

 

 

 

 漆黒の球から光がはなたれ、ウォンのすぐ背後に漆黒の穴を作り出した。

 

 

 

「な!? これはーー!? 吸い込まれる!!?」

 

 

 

 異次元に通じる亜空間の穴。

 

 

 

 ブラックホール。

 

 

 

 DGコアはウォンの支配を拒んだ。

 

 

 

「ば、バカな……! 自我のないDG細胞に、何故ーー!?」

 

 

 

 目を見開きながら言うウォンの目に、そして耳にピンク色の髪をした女の声が聞こえた。

 

 

 

『バカねーー。私は貴方なんか要らないわ。この世界から消えなさいな、ウォン・ユンファ』

 

 

 

 漆黒の球から拒絶の力がはなたれ、ウォンは穴に向かって弾き飛ばされた。

 

 

 

「ぐお!? こんな! こんな馬鹿な!! 私が、このグレートウォンが!!? ドモン・カッシュでもデビルガンダムでもない連中に負けるだとぉおおおお!!?」

 

 

 

 断末魔と共にウォンは穴の向こうへと消えて行った。

 

 

 

 ウォンを取り込んだ穴は、すぐに閉じられた。

 

 

 

 地面に転がる漆黒の球。

 

 

 

 それは倒れているデュランダルの手元に戻る。

 

 

 

 球を手にしたとき、デュランダルの肉体は一気に再生した。

 

 

 

「ふ……。この世界は、やはり私を選んだようだな」

 

 

 

 そう言いながら、デュランダルはモニターに映るフリーダムとジャスティス。

 

 

 

 そして己の代行者ーーデスクイーンを見据えた。

 

 

 

 だが、同時にメサイアの天使が崩れていく。

 

 

 

「…私の命を繋ぎ、ウォンを亜空間に飛ばすのにそれだけの力が要ったか。仕方あるまい」

 

 

 

 そう言うとデュランダルは崩れゆくメサイアをDG細胞の光の粒子へと変化させ、漆黒の球に取り込ませていく。

 

 

 

「私も出るとしよう。見せてあげようではないかーー。君たち人類に。私のデスキングの力を」

 

 

 

 メサイアの全てのエネルギーを吸収しながら、一機のMSが姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 自由と正義の名を冠するガンダム二機。

 

 

 

 死の女王との激戦を繰り広げていた。

 

 

 

「あたれぇええええ!!」

 

 

 

「くらえぇええええ!!」

 

 

 

 ドラグーンを使ったハイマットフルバーストとフリーダムを援護する目的でビーム砲を放つジャスティス。

 

 

 

 光の翼を自分の身にまとう様に折り曲げて受けるデスクイーン。

 

 

 

 ビーム砲は全て受け切られる。

 

 

 

 同時にデスクイーンが姿を消し、キラとアスランの真後ろに現れた。

 

 

 

「! な!?」

 

 

 

「ちっ!!」

 

 

 

 驚愕するキラと違い、アスランは咄嗟に双身のビーム剣「アンビデクストラス・ハルバード」を抜き放って斬りつける。

 

 

 

 ファムはそれを左手で掴みとめた。

 

 

 

「ーーくっ! うぉおおおおお!!」

 

 

 

 ビームの出力を上げながら気を送り込んで剣の威力を倍増させる。

 

 

 

 それをファムは宝石でも見るかのようにウットリとしながら、デスクイーンの左腕を切り落とされるのを見ている。

 

 

 

「キラ!!」

 

 

 

 アスランの合図にキラが脇からビーム剣を抜き放って斬りかかる。

 

 

 

 一瞬のすれ違いでデスクイーンの両腕と両足が切り落とされた。

 

 

 

 それを振り返りながら見つめ、キラとアスランは同時に放つ。

 

 

 

「これでーー!!」

 

 

 

「終わりだ、ファム・ファタァアアアアルゥウウウウ!!!」

 

 

 

 デュアル・ハイマットフルバースト

 

 

 

 二機の完璧なコンビネーションから放たれた連装砲は、デスクイーンの全身を射抜いて爆発させた。

 

 

 

「……どうだ!」

 

 

 

 キラが鋭く目を見開きながら告げる。

 

 

 

 だがーー。

 

 

 

 爆炎の中から、たった今叩き切り、打ち落としたデスクイーンが無傷の状態で現れた。

 

 

 

 全身から紫色の光を放って。

 

 

 

「……っ!!」

 

 

 

「キリがないぞ、キラ!!」

 

 

 

 アスランの言葉どおり、どれだけ倒しても何度でも復活し、時間が経つごとに無限に力が上がっている。

 

 

 

 こちらの攻撃ダメージを吸収して自己進化していくのだ。

 

 

 

「ふふ、今度はこっちの番ね」

 

 

 

 微笑むと同時に光がはじけ、黄金のガンダムが二機。

 

 

 

 凄まじい衝撃で後方に弾き飛ばされる。

 

 

 

 見ればデスクイーンの左右の拳がフリーダムとジャスティスの顎を射抜いたのだ。

 

 

 

「ーーくそ!!」

 

 

 

 吐き捨てると同時にキラがヴォワチュールルミエールを使って一気に加速。

 

 

 

 ファムもこれに反応して、螺旋を描くように追いすがる。

 

 

 

 交差しながら互いに拳と蹴りを繰り出しあう自由の翼と死の女王。

 

 

 

 だが一際、激しくぶつかり合った拳と拳で吹っ飛んだのはキラのフリーダムだった。

 

 

 

「ぐぅ!!」

 

 

 

 咄嗟に体勢を整え、構えを取る。

 

 

 

 その目の前にファムが移動してくる。

 

 

 

「させるか!!」

 

 

 

 アスランがファムの背後に回り込んで殴りつける。

 

 

 

 だが、捉えたデスクイーンの背中は残像だった。

 

 

 

「ーー!?」

 

 

 

 キラとアスランが同時に気付き、上空を見つめた時には、デスクイーンの右手がこちらに向けられていた。

 

 

 

「これは、どうかしら?」

 

 

 

 MSを3機程は飲み込めそうな強大な光をデスクイーンは放ってきた。

 

 

 

 咄嗟にキラはドラグーンでビーム幕を作り、更にアスランと共にガンダムに剣を構えて受けさせる。

 

 

 

「なんてーー!!」

 

 

 

「ーーパワーだ!!」

 

 

 

 受けきれないと見るや、同時に左右に散って避ける。

 

 

 

 しかし、その先へとデスクイーンは移動し、それぞれを蹴り飛ばした。

 

 

 

「動きがーー!!」

 

 

 

「明鏡止水で、追いつけないーー!!」

 

 

 

 ファムとの激戦を繰り広げ始めてから、既に数時間。

 

 

 

 直前にウルベとの激戦を行ったことを考えれば相当な時間、彼らは明鏡止水の境地を使用していたことになる。

 

 

 

 己の限界の動きを行い、全力で挑んでいた。

 

 

 

 そして、ついに肩で息をし始めるキラとアスラン。

 

 

 

 これにファムが微笑みかける。

 

 

 

「この宙域ーー。いいえ、メサイア攻防戦とでも言うべきかしら? 全ての戦闘は終わり。残るはあなた達だけ」

 

 

 

 吸収される光の球が徐々に少なくなっている。

 

 

 

 それに気付いた。

 

 

 

 もうじき、ファムによってすべてのDG細胞が統合されることをキラとアスランは理解した。

 

 

 

 その証拠に今の彼女は、ウルベとも渡り合えた二人の機体を圧倒し始めている。

 

 

 

 嫌な汗を掻きながら、キラが横を見ると機動要塞メサイアが更に変化を始めていた。

 

 

 

 銀色の巨大な天使を思わせる像が光の粒子となって消えて行くのだ。

 

 

 

「これはーー!?」

 

 

 

 いきなりのメサイアの崩壊にキラとアスランが呆然となる。

 

 

 

 そしてーー。

 

 

 

 それは現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 巨大な20メートル程度の種。

 

 

 

 SEEDを思わせる形をした銀色の種が、宙に浮いている。

 

 

 

 その種は、キラやアスランのイメージするモノと同じように、はじけた。

 

 

 

 光の粒子を纏って、全身を紫色にした紅いV字アンテナとデュアルアイを持った「人型のデビルガンダムJr.」がその場に現れたのだ。

 

 

 

 

 

「こ、こいつはーー!!」

 

 

 

 

 

 呆然となるアスランに静かにMSと一体化した「生体コア」。

 

 

 

 全身を銀色の金属に変えた男が声をかけてきた。

 

 

 

「やあ、アスラン君。そして、はじめまして。キラ・ヤマト君」

 

 

 

 その肉声と表情は人間的で、銅像が語り掛けてくるような不気味さがある。

 

 

 

 そうーーギルバート・デュランダルであった者だ。

 

 

 

「議長ーー! そんな姿になってまで、人を支配したいのか!!?」

 

 

 

 思わずアスランが悲痛な表情で告げる。

 

 

 

 だが、デュランダルは静かに微笑む。 

 

 

 

「私の考えは先のデスティニープランで告げたとおりだ。何も変わりはしない」

 

 

 

 そこから感じられる力は、並みのMSとは明らかに違う。

 

 

 

 デビルガンダムメサイア。

 

 

 

 その全ての力を凝縮し、変化させたMSがこの人型のJr.であることは明白だった。

 

 

 

 そして議長のMSの横で、静かに吸収するものが無くなったクイーンが並ぶ。

 

 

 

「残念ねーー。タイムオーバーよ、二人とも」

 

 

 

 一瞬の静寂の後、強烈な紫の光がデスクイーンの全身に纏わり、その力の余波で隕石帯が消し飛んだ。

 

 

 

 圧倒的な力を放つ二機のMSに、キラとアスランが構えを取る。

 

 

 

 逃げることは許されない。

 

 

 

 自分たちの後ろには、守るべき世界ーー地球があるのだから。

 

 

 

 だが、無情にも黄金の気ーー明鏡止水がついに解ける。

 

 

 

「……!!」

 

 

 

「ちくしょう……!!」

 

 

 

 一気に自分たちを襲う虚脱感。

 

 

 

 気が尽きた。

 

 

 

「残念ね!」

 

 

 

「まったくだ」

 

 

 

 そんな会話が聞こえたと思った時には、目の前にデスクイーンと議長のMSが迫っている。

 

 

 

 キラとアスランは同時に攻撃を受けようとして、まともにボディに拳を入れられた。

 

 

 

「がぁ!」

 

 

 

「ぐっ!」

 

 

 

 そのまま嵐のような連撃をそれぞれ叩き込まれ、後方に同時に蹴り飛ばされた。

 

 

 

「キングJr.という。究極のMSの子どもだ。この機体とファムのデスクイーンが一つとなることで、究極の神が誕生する」

 

 

 

 微笑みながら告げるデュランダルに、歯を食いしばりながらキラとアスランが鈍くなったMSを動かす。

 

 

 

 全身が疲労で鉛のように重い。

 

 

 

「ちくしょう…! ここまで来て……!!」

 

 

 

「まだだ! 俺たちは、まだ……!!」

 

 

 

 必死に構える。

 

 

 

 そんな二人を嘲笑う様にデュランダルは告げた。

 

 

 

「時代に翻弄された哀れな少年たちよ。君たちの犠牲の先に理想郷がある。私が必ずその境地へ人類を誘って見せよう」

 

 

 

 右手を突き出すキング。

 

 

 

「楽しかったわ、キラ。アスランーー。さようなら」

 

 

 

 左手を突き出すクイーン。

 

 

 

 両者の掌には強大なエネルギーが溜まった光の球が出来上がった。

 

 

 

 淡々と放たれる膨大なエネルギー波。

 

 

 

 勝利を確信し、デュランダルが笑んだ時ーー。

 

 

 

「どうして、アンタ等は! そうやって! いつまでも!! 人を軽く見るんだよ!!!」

 

 

 

 第三者の声が響き、紅い羽を持ったガンダムが光の翼を広げて自由と正義の前に現れ、黄金の気を纏って切り捨てた。

 

 

 

「デスティニーガンダム。ーーシン・アスカ君か」

 

 

 

 デュランダルの言葉どおり、そこには黒髪に燃える赤い瞳の少年が居た。

 

 

 

「ーーシン!」

 

 

 

「シンか!」

 

 

 

 キラとアスランを振り返り、シンが頷く。

 

 

 

「すみません、遅れました! 二人は気を回復させてください! こいつらはしばらく、俺が相手します!!」

 

 

 

「無理をしないでね、シン」

 

 

 

「大丈夫です、キラさん達は充分戦ってくれました。ここは、俺がやらなきゃ!」

 

 

 

 そう言うとシンはデスティニーガンダムを正眼に構えた。

 

 

 

「あんたらの造る運命の鎖なんて、この俺が絶ち切ってやる!」

 

 

 

 言いながら祈るようにシンは叫んだ。

 

 

 

「ガンダムファイト! レディイイイイ、ゴォオオオオオッ!!!」

 

 

 

 彼らの力が今、少しでも自分に宿るように、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 皆さん、お待ちかね~!!
 
 キラとアスランのピンチに駆け付けたシン。

 そんな彼に圧倒的な力を誇るギルバート・デュランダルとファム・ファタールが、襲い掛かります。

 一気に窮地に陥るシンを助けたのは、共に戦場を駆け抜けた少年・少女たちとミネルバ隊! そしてアークエンジェル!!

 はたして彼らは、議長の野望を打ち砕けるのか!?

 次回!

 機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第97話に!!

 レディー、ゴー!!

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