新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
漆黒の闇の中、白と黒を基調としたガンダムが動いた。
その両手に異なる色の炎を纏わせて。
「俺の両手が揃って吼えるっ! 限界超えろとぉお、烈烈叫ぶっ!!」
まずは左手を掲げて真紅の炎を滾らせて、その後右手に蒼紫の炎を滾らせる。
「双ぅうう極っ! ゴッドォ! デビィルフィンガァァァァッ!!!」
黄金の気を纏い、ゴッドガンダムと似て非なるガンダムは、相反する二つの炎を両手を合わせて圧縮。
前方に突き出した。
ってね、ドモン・カッシュ選手がすごい新ガンダムで、すごい必殺技を放つ夢を見たんですよ。いやはや、わたしの想像力も捨てたモノではありませんなぁ!
おおっと、失礼!
前回の戦いでついにデスティニープランを打ち砕いたコズミック・イラのガンダムファイター達。
ですが!
倒されたDG細胞達はシン達の力さえも吸収し、更なる凶悪なDGガンダムへと変貌したのです!!
彼の者の名は!
ガンダムゴッドマスター!!
悪魔のデビルガンダム。
武神のゴッドガンダム。
双方の力を併せ持つ究極の存在を前に、ついに我らがシュバルツ・ブルーダー達が立ち上がります!!
それでは!
ガンダムファイト!!
レディイイイイ、ゴォオオオオオオッ!!
圧倒的な光の中へと消えた二機のMS。
キングJr.とデスクイーン。
全てが終わり、皆の顔に安堵の色が広がる。
「…終わっているようですわね」
高速巡洋艦エターナルに乗った歌姫。
ラクス・クラインとイザークにディアッカ、ミリアリア達はポカンとした表情で糸が切れた人形のように浮かんでいるガンダム達を見て言った。
「む? 遅かったな、ラクス」
シュピーゲルが振り返りながら告げる。
これにイザークが頬を引きつらせながら呟いた。
「どんなスピードで動いている? 俺たちより出発するのが遅かったくせに、高速艦のエターナルよりも速く着いているだと?」
この言葉を聞いてディアッカとミリアリアが彼の肩をそれぞれ掴み、首を横に振る。
「丁度いい。悪いんだが、イザークとディアッカもシン達の回収を手伝ってくれないか? ちょっと俺たちは訳あって手伝えないんだ」
キョウジの言葉に
「訳? まだ何かあるというのか?」
「おいおい、そりゃいくらなんでも用心しすぎだろ? ま、キラ達のことは任せとけよ」
イザークとディアッカが言うとそれぞれのフリーダムに乗ってキラ達を掴みエターナルに誘導する。
風雲再起がステラやルナマリアを乗せたガンダムを背負ってやる。
ムウ達のMSがシン達のMSを回収し終えた。
皆がエターナルやアークエンジェル、ミネルバ、レセップスに帰還した時。
空間に巨大な穴が出現した。
「な、なんだ!?」
「ホントに、まだ何か起こるってのか!?」
イザークとディアッカが叫ぶ中。
強大な宵闇の球と白光の球が混ざり合い。
先のシン達の一撃に蹴散らされた圧倒的な力が、再び出現した。
これにキラ達の回収の手伝いを敢えてせずにいた、ガンダムファイター達が構える。
「やはり自己保存システムを構築していたか、DG細胞め!!」
「簡単には終わらんか。概ね、ワシらが危惧しておったとおりよ」
「念には念を入れて正解、ってわけだ」
シュバルツの右にマスターアジア、左にキョウジが居並び、構えを取って睨みつける。
彼らの目の前にゆっくりと光の繭を両手で裂いて、この世界に現れたのは白地に黒を基調としたゴッドガンダム。
いや、DG細胞の自己進化を得て変わったゴッドガンダムと言うべきか。
容姿はゴッドガンダムの白い部分以外の多くが黒くなり、右半分が青、左半分が赤のラインの入った姿に変化している。
背部のエネルギー発生装置ーー六枚のフィンや腕部カバーの形状も刺々しくなっている。
頭部には小さなマスターガンダムの角のようなものが黄金色で生え、
胸部のエネルギーマルチプライヤーが2つ横に並んでメビウスの輪(無限大のマーク∞)を描いている。
腰には一際目立つ「G」マークのチャンピオンベルトのようなものを付けている。
脚部形状等細かい部分も変更されており、総じてファイター達が得た印象は「ゴッドガンダムから更に次の段階へパワーアップした機体」というものだ。
「DG細胞の野郎、とことんゴッドガンダムが好きらしいな!」
「ただのゴッドガンダムではないようだ」
ミケロの言葉にチャップマンが鋭い瞳になって構える。
「気をつけよ! こやつ、手強いぞ!」
「ったく、最後の最後で! とんだ置き土産だな、デュランダル!」
「来るぞ! みんな構えろ!」
マスターアジアの言葉にキョウジが、シュバルツが緊張感を高める。
瞬間。
彼らの目の前に現れるガンダムゴッドマスター。
「速いな」
「舐めおってからにぃ!!」
「ゆくぞぉおおお!!」
これに真っ先に反応したチャップマン、マスター、シュバルツは己のガンダム達で迎え撃つ。
「フン!」
正面からシュバルツが、左右からマスター・アジアとチャップマンが仕掛ける。
「なにっ?」
三人の達人の攻撃を全て避けながら、ゴッドマスターは攻撃を返してくる。
ガンダムファイター達の中でも極めている彼らの攻撃を、すべて見切るその力にミケロは目を見開いた。
「なんの冗談だ、こいつぁ……。奴等の攻撃を三対一で完全にさばくだと?」
そんなミケロの横でキョウジがシャイニングガンダムの胸部カバーを開き、エネルギーマルチプライヤーを展開して右手に緑色の光を纏わせる。
「ミケロ、合わせろ! シャァアアイニング、フィンガァアアアアアア!」
「ケッ! 銀色の脚ィイイイイ!」
咄嗟の指示に従い、ミケロも右足から紫色の光を纏わせる。
前方に向かって正拳突きのように突き出された掌と、右側からの廻し蹴り。
同時に放たれる二つの光。
それは、戦っている4機のガンダムの下に向かった。
ゴッドマスターの右の拳で顎を跳ね上げられるシュバルツ。
同時に左右のフックでそれぞれ顔を撃ち抜かれ、後方にきりもみに弾き飛ばされるチャップマンとマスター・アジア。
その背中にキョウジのシャイニングフィンガーとミケロの銀色の脚が放った光弾がぶつかる。
直撃。
強大な爆発が起こり、爆煙が起こる中。
敵ガンダムは一切のダメージを受けてはいなかった。
「まあ、わかっちゃいたが無傷だよな」
「お約束だからな」
ミケロの言葉にキョウジが頷きながら、弾き飛ばされたシュバルツのガンダムシュピーゲルに向かって通信を入れる。
「シュバルツ! 大丈夫か!」
「ーーフッフッフッフ!」
キョウジはモニターに映る自分の半身の様子に思わず嫌な予感を覚えながら目を丸くする。
「ん? シュバルツ? どっか頭ぶつけたか?」
「楽しませてくれる……! 久しぶりに、私は私の限界を越えられそうだ! ゆくぞ!」
シュバルツは心底、楽しそうな笑みを浮かべて燃えていた。
「させんわぁ! あやつを倒すのは、このワシ! 東方不敗マスターアジアよぉ!!」
「おっとそうはいかん。この闘いは、ガンダムファイト三連覇という前代未聞の偉業を成し遂げた英雄である俺がもらう」
キョウジがシュバルツにツッコミを入れようと口を開くより先に、同じような戯言を宣うガンダムファイターが二人。
口をパクパクとさせて固まるキョウジを置いて、三人のファイターは燃え滾る。
各機、それぞればらばらにゴッドマスターへ攻撃を仕掛ける。
まずはガンダムシュピーゲルが、ゴッドマスターの正面に立ち、互いに打撃を交換し合う。
秒間数十発の拳と蹴打の打ち合い。
だが、相手の無数の打撃から上段廻し蹴りを選択して右腕で受け止め、返しで放ったシュバルツの左拳をまともに顔面で受けて、のけ反りすらしないガンダムゴッドマスター。
ヒットした拳の手首をつかまれ、物のように振り回され。
ゴッドマスターの背後から攻撃を仕掛けてきたマスターガンダムに向かって放り投げる。
「ぬぅ!?」
咄嗟にシュピーゲルを受け止めたマスターガンダム。
前方でゴッドマスターの左手が真紅の炎で燃え上がる。
「!! いかん、ゴッドフィンガーか!!」
「なんと!!?」
強烈な熱線がマスターガンダムとシュピーゲルに放たれる。
それを横から射抜くチャップマンのロングライフル。
込められた弾丸はビームではなく、ジョンブルガンダムが吸収したグランドガンダムの力を圧縮した雷撃弾。
見事に爆熱する炎を爆発する雷が相殺した。
ゴッドマスターは横から攻撃を止められたのを見るや、顔をジョンブルガンダムに向ける。
次の瞬間、目の前に現れたゴッドマスターにチャップマンは凄絶な笑みを浮かべて迎え撃った。
ラッシュの打ち合い。
敵の攻撃ーー右ストレートを紙一重でかわし、チャップマンの右の肘内がガンダムのこめかみにまともにぶつかる。
だが。
ゴッドマスターはまったく怯むことなくボディに拳を一撃、返してくる。
「ぐはあっ!?」
あまりの重さにチャップマンが苦悶の声を上げた。
そのまま右の上段回し蹴りでジョンブルガンダムが後方へ弾き飛ばされる。
これを見たマスターが激昂する。
「チャップマン! おのれぇええ!!」
マスターガンダムが拳を振りかぶると同時に、ゴッドマスターも拳を振りかぶっている。
ぶつかり合う両者の右正拳。
そのまま乱打戦にもつれこむ。
マスターは咄嗟に、ゴッドマスターのショートアッパーを左に避けてがら空きの右ボディ、左頬、後頭部を、左拳、右ストレート、右上段回し蹴りのコンビネーションで的確に撃ち抜く。
「ぬうっ!?」
だがゴッドマスターはのけ反りすらせずに右の拳を握りしめると、マスターアジアの顔面を撃ち抜いた。
後方へ吹き飛ばされるマスターガンダム。
ファイターであるマスターも一瞬意識が飛ぶ。
「ぬううっ!」
ふっ飛ばされる己の身を、バーニアを使って空中で静止させる。
正面には殴りかかってくるゴッドマスター。
そこを、シュバルツのガンダムシュピーゲルが右足でゴッドマスターの拳を下から蹴り上げる。
そのまま左のシュピーゲルブレードを展開し、逆袈裟に斬りつけた。
ゴッドマスターの首の付け根にブレードは当たる。
しかし、名刀であるシュピーゲルブレードは敵を切り裂くことなく、肩をわずかに切っただけで食い止まってしまった。
「なにっ!?」
目を見開くシュバルツの目の前で、静かにブレードを右手でつかみ取り、握りつぶすゴッドマスター。
「むぉっ!?」
左のストレートで顎を撃ち抜かれ、シュピーゲルは後方へ吹っ飛ぶ。
「うぉお……!」
執拗に顎を狙われ、足先のフットワークに力が入りづらくなっている。
「私の意識を刈りつつ、スピードをも奪う気か……!」
冷静な瞳で敵の狙いを把握し、拳を握りこんでくるゴッドマスターを迎え撃つ。
「ならば! それよりも速く移動し、急所を撃ち抜くのみ!!」
三者三様の攻撃を仕掛けるガンダムシュピーゲル、マスターガンダム、ジョンブルガンダム。
しかし彼らの攻撃をあざ笑うかのように、攻撃をまともに貰いながら、その隙をついて反撃をしてくるゴッドマスター。
モニターで見るシン達は、これに嫌な予感しか感じられない。
「なんなんだ、この化け物は!」
「シュバルツさん達の攻撃が、まるで効いていない」
「なんだって、こんな化け物がまだ存在するんだ!」
シン、キラ、アスランが医療室のベッドからそんな感想を漏らす。
敵はダメージを吸収するような真似はしなくなった。
だが、それ以上に圧倒的な防御力と無限に増大するパワーがまずい。
「艦長ーー!」
「信じるしかないわ。これまで、どんな困難をも打ち破ってくれたガンダムファイター達を」
「マリュー」
「お願いシュバルツさん、キョウジさん! この世界を護って!!」
祈りを込めた。
祈るしかなかった。
もはや、戦えるのは未来世紀の彼らしかいないのだから。
自分たちの無力を嘆きながら、それでも必死に彼らは祈る。
世界の未来を託された武道家達の勝利を。
再三、ビデオの繰り返し再生のように打ち合っては弾き飛ばされる三機のガンダム。
これにキョウジは告げた。
「おい! もういいだろう! このままやり合っても埒が明かない」
「なにかよい手があるか、キョウジよ!」
これにマスターアジアが反応し、シャイニングガンダムを振り返る。
するとキョウジは一つ頷いて、彼らに告げた、。
「マスター・アジア。チャップマン。シュバルツ。アンタ等三人はコンビネーションで攻めてくれないか? さっきから見てたが、即興でも結構やれんだろ?」
これにチャップマンとシュバルツが互いを見あいながら頷く。
「コンビネーションか……」
「よいだろう! ではトドメは誰が刺す?」
シュバルツの問いにキョウジが堂々と告げた。
「俺がシャイニングフィンガーソードで決めてやる」
その言葉を気に入ったようにミケロは笑った。
「ヘッ! 言うじゃねえか!」
「このままでは埒も明かん。いいだろう」
「では仕掛けるのは私からだ!」
チャップマンが敵を睨みつけながら言うと、先陣を切るのはシュバルツ・ブルーダー。
ガンダムゴッドマスターに襲い掛かるシュピーゲル。
右正拳を避けながら返してくる敵の右拳。
避けられず胸に当たると誰もが思った時、シュピーゲルは光が乱反射するように五体に分裂して消えた。
「……これは。分身か」
「ほう! アレには手を焼かされたわ!!」
チャップマンが目を鋭く細め、マスターが力強く笑い飛ばす。
高速打の打ち合いをしながら、シュピーゲルは分身をして敵に実態を悟らせない。
そして苦無を一本、顔面に放つ。
ゴッドマスターはこれを右手首で受ける。
瞬間、白く発光する光。
レーザー、肉眼、すべてが使えなくなる攪乱兵装ーーメッサ―グランツ。
完全な目くらまし。
無防備となったゴッドマスターにマスターガンダムが襲い掛かった。
「もらったぁ! そらそらそらぁ!!」
左右の貫手ーーディスタントクラッシャーからの強烈な右ハイキック。
だがゴッドマスターは、全くその場を動かない。
「ぬうっ! なんという打たれ強さよ!」
「どけ、マスター・アジア」
そこにチャップマンのジョンブルガンダムが脇から割り込んできた。
「グランドサンダー!」
掌から雷を放ち、機体の電気系統を一瞬麻痺させて動きを止めた後、本命の右の前蹴りが放たれる。
「グランドホーン!」
つま先でガンダムの眉間を貫く。
さすがのゴッドマスターも後方へのけぞった。
「いいアシストだ、チャップマン!」
そこへガンダムシュピーゲルが分身をしながら現れ、右手一本に残ったブレードを展開し、その場で大回転。
疾風怒濤が放たれる。
「シュトゥルム! ウント! ドランクゥウウ!!」
己を漆黒の竜巻と化してゴッドマスターの全身を切り刻む。
回転するコマの勢いがわずかずつではあるが、ゴッドマスターの体を移動させる。
だが押し切れない。
シュピーゲルブレードが、先に砕け散る。
「どけぃ、シュバルツ!」
瞬間。シュピーゲルが分身となってその場から消える。
その後ろから、目の前にマスターガンダムが右手に紫色の炎を燃やして現れる。
「ダァークネス、フィンガァアア!!」
正拳突きのように前方に繰り出される掌。
ゴッドマスターの全身を覆いつくさんとばかりに炎が猛り狂う。
「爆発っ!」
気合一閃。
一際、強大な爆発が起こる。
煙の向こうからゴッドマスターが後方へのけぞる。
そこに頭上から青白い彗星が降り注いだ。
「ハイパァアー銀色の脚ぃいい、スペシャァアアアアアアルッ!!」
顔面にネロスガンダムの右飛び蹴りが決まった。
吹き荒れる衝撃波。
「くぅううううううううう! 行けや! キョウジ・カッシュゥウウウウウ!!!」
そのまま飛び足裏を当てる横蹴りから、足の甲を使って蹴る回し蹴りに移行。
サッカーボールのように頭を脇に蹴り飛ばす。
「シャアアアイニングフィンガー、ソォオオオド!」
青眼にシャイニングフィンガーソードを据えたガンダムが、吹き飛ばされたゴッドマスターを待ち構える。
ガンダムゴッドマスターが振り返ると同時、
両手にもった緑色の光の剣が突き出される。
強烈な光の剣はまともにガンダムゴッドマスターの胸部を貫いた。
「はぁああああああ!」
裂帛の気合。
同時に光が爆発。
大きく後方へジャンプし、シャイニングガンダムはシュピーゲルの隣に並び立った。
そして他のガンダム達も彼らと整列するように並び立つ。
構えを取る彼ら5人の前に。
煙の向こうから無傷の姿でガンダムゴッドマスターが姿を現した。
アークエンジェルで祈りをささげていたマリューの目が絶望に見開かれる。
「そんな! キョウジさんのシャイニングフィンガーソードは、まともに動力炉を撃ち抜いたのに!?」
「それ以前の問題だぜマリュー! あのガンダム! 東方先生の強力無比な技が一つも効いちゃいねえ!!」
「いや、フラガ。東方不敗だけじゃない。ガンダムファイター達の攻撃がまるで通じてない」
渋い顔になってみるフラガ、バルトフェルド。
彼らにしてみても、あの五人が味方でこれ程の激戦。
それも苦戦を強いられるなどとは思ってもみなかったのだ。
重苦しい雰囲気が艦長席を取り囲む。
「まじかよっ……」
ディアッカもエターナルのブリッジでそんな呟きしか出せなかった。
ガンダムファイター達が慎重になるはずだ。
こんな理不尽の権化が存在するなんて思いもしない。
「…人に滅びろ。そう言うのですか? DG細胞よ、人を全て滅ぼした後、貴方は何が目的でこのようなことをするのです?」
答えなど返ってくるはずはない。
それでもラクスは、そう聞かずにはいられなかった。
構えを取りながら睨み合う5機のガンダムとゴッドマスター。
「ぬぅ……! わしらのコンビネーションでもダメージを与えられんとは!」
「久しくなかった……。これほどの強敵は」
マスターがチャップマンが互いにゴッドマスターの力を讃えている。
「ケッ! あんな人形野郎に俺様たちの技が受け切られるとはよ!」
不愉快そうに吐き捨てるのはミケロだった。
自分の最高の攻撃すらも、まるでダメージが通らない。
その横でシュバルツが不敵な笑みを浮かべている。
「フッフッフ、ならば! 受け切れぬ一撃を放てばよい! そうだろう、皆!!」
その言葉にマスターとチャップマンがニヤリとする。
しかし、その前にキョウジが告げた。
「精神論は後回しにしろ。攻撃が通じなかった事実は事実だ。これを踏まえた上で、そうだな。……次の作戦は」
思案するキョウジにシュバルツがにべもなく告げる。
「では作戦を考えるのはお前に任せた。後のことは、よろしく!」
「おい、シュバルツ!」
ガンダムシュピーゲルがシャイニングガンダムに顔を向け、右人差し指と中指を揃え立てて振る。
即座にマスターガンダムとジョンブルガンダムがバーニアの火を点火する。
「付き合うぞ! シュバルツよ!」
「うむ! 望むところだ」
これにシュバルツは分かっていたとばかりに告げた。
「では私に続け! マスター・アジア、チャップマン!」
「「おおっ!」」
一気に三体のガンダムは敵と距離を詰める。
「フッ……」
これを自嘲気味に笑った後、キョウジは眦を吊り上げて頭を抱えた。
「なんで、どいつもこいつも! 作戦を考えようとしないんだ!!」
「んなことやってる暇があるなら戦った方が早ぇってよ」
ミケロがその隣から冷静に声をかける。
思わず抱えた両手を下げ、顔をミケロに向けて叫ぶキョウジ。
「それでどうにかなったら、とっくに決着ついてるだろ!」
「だから今の間に考えろって言ってたじゃねえか。何か、ねえのかよ?」
その言葉にキョウジが固まる。
「……何かって」
「ねえのか!?」
「いくらなんでも、いきなりってのは無理だろ!?」
「ったく、コンビネーションの時は、結構いい指示出してたから期待してたのによ。がっかりだぜ。DG細胞の方がよっぽど早く対応してくんじゃねえのか?」
「こ、の、ガンダムファイターどもめ……!」
通常運転だとばかりに無茶ぶりをしてくるガンダムファイター達に対し、キョウジの両手の拳が震えていた。
これをアークエンジェルに乗るムウが渋い顔になって告げる。
「俺、キョウジにここまで同情したのは初めてかもしんねえなぁ……」
「ああ。あれだけ強い上に、みな個性が強すぎる」
同じく現場指揮官であったバルトフェルドも苦労を察して同情的だ。
「でもキョウジさん以外に彼らを指揮できるひとはいないわ」
マリューの言葉に二人の男が悲痛な顔になる。
「そこが可哀想なとこなんだよな……!」
「なんならフラガ、お前さんが代わってやるか?」
「冗談じゃねえよっ! お前やれんのかよ!?」
「……まあなぁ」
自分がやるとなれば、二人とも全力で拒否する。
そう思ったフラガとバルトフェルドであった。
エターナルのブリッジでラクスが静かに凛とした瞳で光景を見ながら告げる。
「とはいえ。シュバルツさんやマスター・アジアさん達でさえ、攻めあぐねるほどの強敵……。わたくし達にできることは、もはやないのでしょう」
「私たちにできるのは、ただ信じて見守るだけ……なのかな?」
無念そうに、寂しそうにミリアリアがつぶやく。
一方でキョウジが静かに緊張を緩和し、肩や足、胸部カバーを展開して戦闘モードになっていたシャイニングガンダムをノーマルモードに戻す。
「ふぅ……。とりあえず一服」
これにミケロが思わず声を張り上げた。
「おい! てめえ、さっきまでと言ってることとやってることが違うじゃねえかよ!!」
キョウジは肩をすくめ、淡々と返していく。
「なんていうかさ、どいつもこいつも作戦全然考えないから、俺一人で考えなきゃなんないんだろ? つまり相手がどう動くか、味方にどんな対応できるか見とかないと作戦も立案できないってことだよ」
「おい、まさか……こんな短時間で俺様達と敵のデータ、全部取る気か? てめえ」
真剣な表情になって問いかけるミケロにキョウジが静かに告げる。
目には油断など一切ない。
「頭に今、叩き込んでっから。それが終わるまではなんとか持たせろよ」
その言葉にミケロも肩を竦める。
「おいおい、ぶっつけ本番が参謀で大丈夫なのかよ? この作戦」
「他に手がないんだ。しょうがないだろが」
「ケッ、まあいい。なんなら俺様の技、全部見て覚えとけよ!」
「ああ、ここでよく見させてもらうよ。お前らのがんばりを」
「いけ好かねえ野郎だぜ……!」
「お互い様だ。ガンダムファイターの諸君」
互いに見合う。
そしてニッと不敵に笑い合った。
「ケッ! 期待してるぜ! キョウジ・カッシュ!!」
走っていくミケロのネロスガンダムを見送った後、キョウジは静かにつぶやいた。
「……期待しとけよ。失敗は、許されんからな」
勝利を掴むために、キョウジ・カッシュはその頭脳をフル回転させ始めたのだ。
これをクライン派のアジトで未だ待つミーアとダコスタがモニターで見ていた。
「……皆。ガンダムファイター達でも、勝てないなんて」
ダコスタはそんな言葉しか出ない程に、ショックだった。
ミケロという男の実力も、ガンダムファイター達の力もよく知っている。
そんな彼らでも五人がかりで、勝機がまるでない。
絶望的だった。
ミーアが頭を抱えて首を横に振る。
「勝てっこない。勝てっこないよ。たとえ、ドモンさんやダインでもーー!」
泣きそうになりながら、未だ復活しない自分の愛する男を想う。
このまま彼が復活すれば、確実にあの化け物に挑みに向かい、殺されてしまうだろう。
ミーアは頭の中でそう確信していた。
その時、デビルガンダムのコクピット内から音が聞こえる。
肉体を生成し終えたという合図だった。
「ーーダイン!!」
「あ! ミーア様! 走るとコケちゃわないか? …まあ。いいか」
愛しい男の顔を早く見たいとミーアは駆けだす。
その想いが分からない程、ダコスタも野暮ではない。
しばらく席を離そうと休憩室に彼は向かった。
デビルガンダムのコクピットが開かれ、一人の男が出てきた。
これにミーアが目を見開いて立ち止まる。
漆黒に胸に赤い丸を描いたネオジャパンファイターのファイティングスーツを着た青年。
「えーー? ドモン、さん?」
濡れるような漆黒の髪。
鋭くも気高い黒曜石のような瞳。
ミーアの記憶にあるダインーーDのそれよりもドモンに近い。
いや、ドモン・カッシュそのものの顏だった。
それに身長も高い。
もともと、Dやドモンは180センチを越える身長だった。
だが、この青年は2メートルを優に越えている。
ミーアが困惑するのも無理はない。
だが、彼女には確信できるものがあった。
否応なく、自分を惹きつける力。
自分が愛した青年と同じーー魂の色を彼から感じる。
「Dーーよね?」
傍にまで歩み寄って来た青年を見上げてミーアが問いかける。
するとDーーダインはニヤリと邪悪に笑みを浮かべた。
「ーーよう。ミーア」
その笑みに、その声に、ミーアはもうたまらなかった。
飛び込んだ。
前の時は胸に収まったのに、今は丁度へそのあたりになる。
逞しく、無駄な肉のないその腰を抱きしめてミーアは泣いた。
「うわぁああああああああっ! ダイン、ダイン、ダイィイイイイインッ!!!」
ダインはそれに何も言うでもなく、静かに優しい瞳でミーアの顔を見下ろしている。
そして静かにモニターに映るシュバルツ達と対峙するガンダムを睨み据えた。
みなさん、お待ちかね~!
ついに復活を遂げたDことダイン・カッシュ!
悪魔の名を冠するガンダムを駆り、彼は愛する人々を護るため。
友であり、宿敵であり、兄である男との約束を果たすため、最後の戦いへと出向きます!
次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第99話に!
レディー、ゴー!!