最強に成りたい、王子(偽)   作:獣耳もふり隊

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あーあ。書いちゃった。見切り発車。今度はだいぶお先真っ暗。
日記形式で書こうとしてたら聖杯戦争が七日間であることを忘れていたでござる。
テストみたいな感じで投稿するよ。兄貴姉貴たちは更新はしばらくないと思って。
気が向けば続くよー。


蒼銀のフラグメンツ
蒼銀 ACT1


 時は1991年。⬛︎月⬛︎日。某所。

 

 

 

 

「ああ、どうして、そんな──」

 

 ひらりひらり、蒼と金の少女は嘆く。

 

「どうしてこの世界にいないの?」

 

 全能が故に見ることが出来てしまった並行世界の自分の可能性。そしてその結果、堕ちてしまった恋。この世界はそれが叶うことはないと言う。

 

 調べた、しらべた、シラベタ。

 

 この世界に王子様はいるのか、と。

 

「ねぇ、──アーサー」

 

 蒼い瞳を煌めかせて、探し続ける。他の自分は出会う王子様は本当にこの世界にいないのか、と根源に問い掛ける。返される答えは、

 

 存在しない

 

 その一言。

 何度問い掛けても変わらないその答えに、彼女──沙条愛歌は、生きる意味を感じなくなっていた。

 表情は薄くなり、見た目も相まって氷のような印象を受ける。笑顔や優しさを浮かべることなく、機械として最低限の生命維持で動く人形のように。

 

 

 彼女は諦めていた。白馬の王子様は現れない。聖杯戦争に参加したとしても、世界がいないと断定した者を呼び出すことは厳しいだろう。聖杯を使って、並行世界から召喚すればいい? 他ならぬ並行世界の私自身がそんなことを許すわけないだろう。独占欲の強さは自覚している。

 

 それでも諦めることはできず、最後の希望として聖杯戦争の英霊召喚に縋り付く。来ないのは分かっている。存在していないのだから。

 それに加えて、──なぜか知らないが、この世界のアーサー王伝説は他の世界とだいぶ違う。どれがオリジナル、というのが決まっているわけではないが、周りの並行世界からすると大分、変化していた。それとは別に始祖の英雄なんていう物語が流布している。この物語が、アーサー王伝説の知名度を相対的に下降させているのだろう。アーサー王の認知度は高くなかった。始祖の英雄の物語は愛歌自身幼い頃に聞いたことがあったため、並行世界を覗いた時、どこにもなかったのには驚いた。

懇願により過去を探ろうとするが、どうも靄がかかり隠蔽されているのか見ることができない。おおよそ他の世界にはないような出来事がこの世界の過去に起きていたのだろう。

 アーサーを呼び出せないことを知った愛歌は、絶望によりある程度仮説を立てると疑問を抱こうとも思わなかった。

 

──自分がどれだけ異常な世界に生まれたのかも知らずに。

 

 そして時は訪れる。

 英霊召喚の儀、意味はないだろうと思いつつ、最後の賭けとばかりに、全ての魔力とありったけの想い〈怨念〉を込めて詠唱する。

 

──アーサーを寄越せ。

 

 いない者はいない。そんなことは既にわかっているのだ。それでも、願わずにはいられない。其れが恋であり、愛なのだから。

 

 

 吹き荒れる魔力の爆風。それは愛歌の持つものから、召喚対象のものに移り変わっていく。魔力光は蒼銀から黄黒へと変わる。

 

 

 

(これは……魔力の色からして彼じゃなさそうね)

 

 

 最後の希望を失い、自殺しようかと思案する。

 

 目を瞑り、いくつかの方法を考える。

 

(首吊り、落下、窒息、ナイフ、英霊。うん、英霊さんが良さそうね。じゃ、殺してもらおうかしら。

 そういえばどんな名前の英霊か知らないわね。まあいいわ。今更関係ないし、殺してもらいましょう)

 

 目を開けると目の前の英霊が名乗る。

 

 

 

 

「セイヴァークラスで、参上した。真名をアーサー・ペンドラゴンと言う。よろしく頼む」

 

 

「いきなりで悪、い…けど……殺し、──ッえ?」

 

 

 その英霊は決して白馬の王子ではない。自分が望んだのは「白馬の」王子様だった。しかし、目の前の英霊は光と闇の混じった王子様だ。同じ王子様であることに違いはない。初恋を有り得ない形で拗らせていた愛歌は動揺して、いつもの余裕を崩す。それにより勢い余って出てしまった本音。

 

 

 

「え、好き。結婚して」

 

 

 

 

──端的に言えば、タイプだった。

 

 

 闇と光を備え持った王子様。まさに一粒で二度美味しい。

 これは、ものすごい拗らせ方をして恋に堕ちてしまった少女のお話。 

 

 

 

────────

 

 

 

 召喚されたら求婚された件。

 ははは…ワロエナイ。え、いやなんで? 確かにこのアーサーボディはイケメンな上に高スペックだが、だからといって英霊召喚するような魔術師はこんな一瞬のことで色恋沙汰に溺れるとは思えない。いや例外は有るけれども。

 跪いて伏せていた顔を上げ、マスターとなる人物を見上げる。

 

 あっ──なるほど、愛歌さんですかそうですか。これはこれは…うーん、どうやら一目惚れされてしまったみたいですね。

 …最終的に世界壊そうとするヤンデレ系メインヒロインの恋愛シミュレーションって無理ゲーじゃないですかやだー。

 

 速やかに事情を確認するため俺をここへと追いやった輩と交信を取る。なになに、アーサー寄越せってうるさいから召喚させちゃった、休暇とでも思って偶には自分の世界も救えって?は?

 

 意味わからん。ばーかばーか。結局救世させてんじゃねぇかよ!え、それに加えて能力値も制限されてるって?──今更ステータスが意味持ってないの分かって言ってんのかよっ。……絶対わざとだろうな。

 

 数多の世界救済、即ち救世という重労働で鍛えられ尽くした我が身は、ステータスで測れるようなスペックをしていない。例えば技術、いくら制限されても最適な体の使い方が分かってるなら音速程度は容易く超越できる。

で、問題は目の前の金髪美少女。どうするか。

 

 彼女の名前は沙条愛歌。結論言うと、恋を拗らせて聖杯戦争で人類悪呼び出し、愛のためなら東京すら壊滅させてしまうデストロイヤー。

 まあ、現段階で何かやらかしているのかと尋ねられれば「NO」と答えられるだろう。彼女が狂い始めたのはアーサーに出会った瞬間からだ。

 

──アーサーに出会った瞬間からなのだ!

 

 大事なことは二度言う。これ太古から言われてるから。

 というわけで、ワタシ、アーサー。マナカ、デアッタ。つまり、東京壊滅への道が今この瞬間スタートしたわけだ。あとは俺のこのベテランセイヴァーの手腕でどうにかしてこの世を守るというパターンの筈なのだが…。

 

 求婚されたよ。え、どうして。原作ではされなかったはず。記憶は薄れて無いに等しいがこんな展開あれば絶対覚えている。物語の序盤だぞ、こんなインパクトがあるストーリーだったならまず忘れないだろう。

 

 と言うことは、──原作乖離、おめでとう。加えて破滅に向かっているか、希望に向かっているかは不明である。いや、彼女が正直な気持ちを表現してくれたってことは、多少なりともいい方向へ向かっているのでは?向かっているといいなぁ。

 

 で、返答をどうするか。目と前で告白してきた全能の少女は自分の発した言葉に驚愕しているらしく、動揺と混乱で目を回して固まっている。

 

 YES or NO。YES、と答えたいところではある。不誠実ではあるがその方が世界の救済に近道だろう。が、俺は彼女のことを深く知っているわけではないし、心に決めた夢魔がいる。指輪も渡したしそんな不誠実なことはしたくない。や、彼女ならケラケラ笑いながらオッケー出しそうだけど、俺の矜持に関わるので無し。

 

 だからといって NO?いや、それこそ東京崩壊を加速させるだろ。それ以前に、自殺するかもしれない。この少女は自殺しようとしていたところが召喚時に確認できた。流石に何もしていない少女を見殺しにするのも騎士として如何なるものか。

 

 あぁ、わかってる。甘すぎるんだ、俺は。俺は天秤を用意されたらどちらかに偏ろうとしない。しかし、触れないわけではない。どちらかに偏らないよう、どちらにも重りをかけていくタイプだ。

 

 片方を捨てられず、両方とも救おうとするのが俺だ。だから、この全能の少女と世界を釣り合わせた天秤でどちらかに偏ることができない。

 

────それが、俺だ。

 

 では結局返答はどうするのか?YESもNOも選べない。沈黙はもってのほか。俺は言葉を選びながら回答を述べていく。

 

 

「お友達から、でよろしく」

 

 

 ぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁああああ。

 言ってしまった、このクズの如き回答を。何が「お友達からでよろしく」だよ。 NOともYESとも答えず期待を持たせながら曖昧に誤魔化す手法とかクソだな。

 

 そも、俺に恋愛関係の問題を振るな。俺の恋愛観は小四で止まっているんだぞ。マーリンとはなんだって?あれはノーカン。人間相手じゃねぇし、若干幼馴染属性入ってた気がするから(気の所為)。

 まあ恋愛関係の経験アレコレは置いておいて、ひたすら怪物と戦い続けた俺だぞ?人間関係すら殆どの間築けていなかった俺がいきなり求婚を受けて対処できるかと問われても答えは分かりきっている。

 

 無☆理

 

 そんなクズである俺は目の前を恐る恐る観察する。

 

 

 

 

 

 少女は有頂天になって喜んでいた。

 

 アッ、選択ミスった。

 

 どうやら、自分でも断られると思っていたみたいだ。完全に断られなかったところからまだ希望があると考えたらしい。断ったほうが正解であったか。

 ふむふむ、ゆ"る"ざん"ッ!

 

 

──────────

 

 

 幕は切られた。故に戦いが始まる。動き出す7つの陣営で絡まる思い。誰がこの戦の行く末を予想できるだろうか。無理矢理引き摺り出された救世の英雄による影響はいざ知らず。

 それでも変わらぬ理がただ一つ。

「──聖杯が叶える勝者の願い、のみだ」

 

 全ての陣営が知と勇を持って己の力を証明する。卑怯なんて存在しない。できること全てが実力である。

 

 さもありなん、この世の歴史上最も組み合わせてはならない二人の陣営は戦いに参加する。

 他ならぬ「愛」をもって。

 

 

 

聖杯戦争の運命は破滅系根源の姫と混沌系救世の王を中心に巡り始める。

 

 

 




この間数十秒。

前回までの内容が頭から飛んでて地獄を見た。

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