次の話を投稿するときに改訂するかもです。
クソッたれッ!!
巨神兵の繭を本国に発送して安心していたらこれかよ!!
世話しなく動き回る兵士達がモーゼのように分かれて出来た一本道を駆け抜け司令部を目指す。
「状況報告ッ!!」
司令部に飛び込むなり怒鳴り声を上げる。
その声に呼応して紙を持った情報士官が俺の前に飛んでくる。
「ハッ!!報告します!!03:55時、巨神兵の繭を運搬中の大型船『タイタニック号』より救難信号を受信。翅蟲の群れと鉢合わせし襲撃を受けたとの事」
「04:05時、緊急発進可能なコルベット1機がスクランブル発進し救援に向かうも夜間で視界が効かず、また当該空域は雲量が多く『タイタニック号』との合流に失敗」
「04:40時、『タイタニック号』よりエンジン出力低下、操舵機能低下、風の谷への緊急着陸を試みるとの通信を最後に通信途絶。以後の消息は不明です」
最悪だ……よりにもよって風の谷かよッ!!なんであの地域最大の武装勢力(小国)に向かうかな!?場合によっては腐海の方がまだマシだぞ!!
俺が武器兵器揃えて、俺と先生が防衛体制整えたから自信つけて血の気が多いのに!!隠居した城オジですら嬉々として戦闘に参加してくる戦闘民族の国に不時着なんか試みるな!!
下手な所に不時着したら、不時着が成功したとしても怒り狂った谷の人間に胞子ごと焼き殺されるんだぞ!!
部下の手前眉をしかめるだけにとどめたが、1人の時に聞いていたら確実に頭を抱えていた報告に暗澹たる思いを抱く。
良くて救助活動してくれてるだろうけど、最悪の場合は焼き殺された人間の死体と略奪に勤しむ風の谷の住民の姿がそこにありましたとかないよな?
「……」
「参謀……?」
「あぁ、すまん。状況は理解した。殿下はどこにいる?」
「あちらの会議室です」
「分かった」
あり得る最悪の未来を幻視して呆然としていたが、情報士官の呼び掛けに我に帰る事に成功し、胃が痛くなる思いをしながら殿下の指示を仰ぐ事にした。
「殿下──ッ!?」
殿下に指示を仰ぐため会議室に足を踏み入れた瞬間、室内の異質な様子に思わず息を飲んだ。
クシャナ殿下を中心に第3軍の指揮官級の将校が勢揃いしているのは状況が状況だけに何もおかしくは無かったが、そこにいる者達の気合いというか熱気というか士気が異様な程高かった。
一体何があった?元々血気盛んなヤツは多かったが、いつも冷静沈着なヤツまで熱に浮かされた顔しやがって。これじゃまるで……まるで決起を決めた青年将校の集団じゃねぇか。
「どうした、クロトワ?何を突っ立っている?」
「ハッ、失礼します」
実戦経験が少ない新参の指揮官は元より経験豊富な古参の指揮官すらも瞳の中に決意の炎を滾らせ覚悟を決めた顔をしている事に不信感を募らせながらもクシャナ殿下に入室を促されたため、平静を装い歩を進める。
しかし、将校らの異常よりも普段通りの様子なのに部屋の中で一際狂気染みたモノを瞳に宿らせているクシャナ殿下の姿が俺は何よりも恐ろしかった。
「殿下、状況は切迫しております。直ちに風の谷へ救援部隊を──」
「クロトワ」
異様な雰囲気を感じながらも本分は果たさねばと口を開くが、クシャナ殿下はいつになく落ち着いた様子で俺の言葉を遮る。
先ほどから感じる嫌な予感が外れてくれと祈りながら俺はクシャナ殿下の次の言葉を待った。
「風の谷へ送るのは救援部隊ではない。侵攻部隊である」
なん……だと……。
冗談の欠片もなく、大真面目にそう言い切ったクシャナ殿下に対し俺は絶句した。
「恐れながら。風の谷は私とヴ王との契約により独立保障がされており、安全保障条約も締結しているため風の谷を攻撃した場合トルメキアに反旗を翻──」
……まさか。
風の谷に侵攻した場合、クシャナ殿下──引いては第3軍が反乱軍となってしまうと言いかけた所でようやくその可能性に至り、点と点が線で結ばれた。
「そうだ。私を国王として新国家を作る」
黙り込んだ俺の思考を読んだようにクシャナ殿下はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「……」
このタイミングで謀反かよ……。
いや、トルメキアの残りの主力である第1軍と第2軍は土鬼との全面戦争に備えて動けないし、いつも大隊規模でバラバラに運用されていた第3軍は全軍集結しているし、ペジテを落として拠点は確保しているしでタイミングとしては最高か。
ここで戦力的にも地理的にも有力な風の谷を支配して、更に風の谷に落ちた巨神兵を手に入れればトルメキアへの対抗も可能と。
「皆は少し外してくれ」
再び絶句しながらも高速で思考を巡らせる俺の表情を面白そうに眺めていたクシャナ殿下が周りの将校を下がらせる。
「……殿下には勝算がおありで?」
部屋から出ていく将校達から期待を込めた視線を大量に浴びせられた後、少し間を置いてクシャナ殿下に尋ねてみた。
「あぁ、不確定要素はあるが今の情勢と我々の現状を鑑みて十分にあると判断した。少なくとも全ての想定が最悪に転んだとしても新国家の樹立までは出来る」
確信を持った表情でそう言いきり席を立ったクシャナ殿下は後ろの棚から酒瓶を取り出し、2つのグラスに中身を注いだ後それをデスクに置き再び席に腰を下ろした。
「ただしこの話の大前提として貴様が私についていなければならない」
「……」
まぁ、そうだろなぁ。良くも悪くも俺は影響力あるし。
「世界に名を馳せる剣士、失われし技術を復活させた比類なき技術者。戦場で敵兵を薙ぎ倒す優秀な兵士、戦場を支配する名指揮官、全国営工廠を取り仕切る敏腕工場長、孤児院を運営するお人好し、女奴隷を買い漁る変態商人等々。多くの立場があり色々な2つ名を持ち吟遊詩人が歌うような伝説すらあるお前はどうする?私についてのしあがるか、トルメキアに忠を尽くすか」
立場の最後のはクシャナ殿下付きの女性親衛隊を育てるためにしたんだが……。
風評被害に内心で反論しつつもクシャナ殿下の見透かすような視線を真っ向から受け止める。
「……」
「私と来い!!クロトワ!!」
立場やしがらみ、恩に義理。
考慮や配慮しなければならない事は無数にあったが、クシャナ殿下の真っ直ぐな呼び掛けと脳裏に過ったこれまでの出来事が決定打となった。
「全く、殿下にはかないませんね。……ただ今を持ってクシャナ殿下の矛となり盾となり御身に忠誠を誓います!!」
「よく言ってくれた、クロトワ」
不敵な笑みを浮かべたままグラスを差し出してくるクシャナ殿下。
「これからは本当の意味で一蓮托生です。頼みますよ、閣下」
受け取ったグラスを煽り、どこか妖しげな雰囲気を漂わせるクシャナ閣下に俺は冗談めいてそう言うのであった。
────
「……フフッ、フフフフッ。選ばれたのだ。私が選ばれたのだ!!お母様でもなく、ヴ王でもなく、ジル王でもなく、数多の雌豚でもなくこの私が!!この私がクロトワの忠誠を勝ち取ったのだ!!ハハハッ、ハーハッハッハッ!!どうだ見たか!!私とクロトワの間を邪魔したゴミ共よ!!」
「あぁ、楽しみだ。私とアイツの国……待ちきれないな……」
「私とアイツで邪魔者は全て消し去ってやろう。私とアイツが居て倒せない者などいない」
「いや、待て。邪魔をする事だけは天下一品の奴等だ。徒党を組むかも知れぬ。……──させぬ、させぬぞ!!私とクロトワの間を引き裂こうなど!!邪魔するヤツは皆殺しだ!!邪魔者の亡骸の上に私とクロトワの理想郷を作ってやる!!」
「そうだ、そうだ!!邪魔をするならば誰であろうと関係ない全て……全て薙ぎ払ってやる!!」
クシャナ殿下が手に負えなくなってきました。
どうするんだ、これ?(遠い目)