7人目のスタンド使い魔 ~キャラバンAct2!~ 作:ローレンシウ
「くらえ、『波紋疾走(オーバードライブ)』ッ!」
気合と共に叩きつけた手刀が、目の前の敵集団の最後の一体……ダイブイーグルとかいう名前の大きな鳥を吹き飛ばした。
「楽勝~」
こいつらは、この世界に滞在しているとたまに因縁をつけて襲ってくる「アシュラのてした」とやらの一員だが、もはやなんの危なげもない相手だ。
ほどよい刺激になる程度の戦いを終えると、先ほど買っておいた『レクイエムGE』をすすって一息ついた。
「……さて、そろそろ帰ろうかな?」
ここに滞在していても現実世界での時間は流れないので、別にいくら留まっていても構わないのだが。
移動できる範囲は今いる建物の中だけなので、あまり長く滞在していても飽きがくるし、宿代もそれなりに高い。
向こうでのリフレッシュ用の回復物資などは十分に買い込んだし、いい加減に現実の生活に戻らないと、大学での勉強を忘れそうだし。
「それじゃ、また来るわね」
世話になった人々に適当に挨拶すると荷物を担いで、建物の入り口近くに留まっている自分のスタンドの肩を叩いた。
「あいよ、お帰りやな。いつもどおり、入り口からふつうに出てってーや」
もちろん、これまでにも幾度となく繰り返したことであるから、別に言われるまでもない。
よって特に返事もせずに、建物の出入り口へ向かって歩いていった。
外には砂漠の砂嵐が吹き荒んでいて、ろくに視界が効かない。
だが、関係ないのだ。
どの道自分はその砂嵐の先には踏み出すことはできず、入り口を通ると同時に元の世界に送り返されるのだから。
「あー。帰ったらまた、制服を洗っとかなきゃ……」
この世界に滞在する間は昔の気分を味わいたいので、来る前に高校時代のセーラー服に着替えた上で、当時の荷物などもいろいろともってきているのである。
ここに出てくる敵の危険度だけからいえば、別にそんなものは必要ないし、帰った後で砂埃に塗れた服や道具の手入れをしなくてはならないのは、いささか面倒ではあるが。
これでまた日常に戻らねばならないのだと思うと、いささか憂鬱な気分で。
ぼんやりとそんなことを考えていたために、反応が遅れた。
「……え?」
入り口を通ろうとした瞬間、そこにこれまでにはなかった、奇妙な銀色の鏡のようなものが出現していることに気が付いた。
だがもう手遅れで、避ける間もなく、そこへ足を踏み入れてしまう。
その途端に、空間を飛び越えるときの奇妙な感覚が、いつもよりもきつく全身を襲った。
(こ、これは……スタンド攻撃っ!?)
頭の片隅でそう思ったのを最後に、意識が遠くなっていった……。
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「え? だ、誰よこれ。水兵……?」