7人目のスタンド使い魔 ~キャラバンAct2!~   作:ローレンシウ

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第三話 新たなスタート

 

「んーっ……」

 

 翌朝、リリーは窓から差し込む早朝の朝日を浴びて目を覚ますと、大きく伸びをした。

 ベッドなしで床に毛布だけで寝たものの、特に体が痛くなっているとか睡眠不足であるとかいったようなことはない。

 約50日間におよんだエジプトツアーの経験と、波紋の心得は伊達ではないのだ。

 

 それから、床に脱ぎ捨てられたやたら繊細で高級そうな下着を見て、洗濯を言い付けられていたことを思い出す。

 

「……といっても、洗濯機がある世界じゃあなさそうだし。洗い場の場所なんてわからないし……、ねえ?」

 

 そう呟きながら、自分のスタンドの方を見た。

 

『あいよ、洗濯機な。手回し式か、電池式があるでー』

 

 電池もセットで作るとなると、それなりにSP(スタンドパワー)の消費がかさむ。

 洗い物も少ないのだから、手回しで十分だろう。

 

『毎度おおきに、そんなら10SPになりますー』

 

 キャラバンは、背負っている大きな袋から取り出せるサイズで構造を知っている物品なら、なんでも作り出すことができる。

 Act2でちょくちょく利用している異世界の店には洗濯機もコンセントもないので、そこでの宿泊時に洗い物を片付けるのに便利なように、コンセントなしで使えるタイプの洗濯機の構造は何種類か頭に叩き込んであるのだ。

 

「はいはい、商談成立ね」

 

 代金代わりのSPを注いで指定した洗濯機を作り出させると、それにルイズの下着と、ついでに自分も着替えをして、洗い物をいくつか放り込んでやった。

 幸い、ここへ来る前に異世界に一日二日ばかり滞在していたこともあって、多少の着替えの持ち合わせはある。

 ちなみに、身ひとつで召喚されたように見えるのに下着だのをどこに持ってるのかと問われれば、そりゃあエジプトツアーの間もずっと使用していた、ミサイルでも核弾頭でも最大で99個まで入れてどこにでも支障なく持ち運べる謎の四次元ポケットだとしか答えようがない。

 

 ともあれ、あまり使用時間が長引くとそれだけ余計に作り出した物品を維持するためのSPを消耗するので、てきぱきと洗濯を終わらせた。

 

「あ、着替えついでにちょっと濡れタオルで体拭いときたいから、それも作って?」

『あいよ』

 

 キャラバンが手渡してくれた濡れタオルで、ひととおり体を拭っていく。

 こうして作ったタオルはSPを消費してしまう欠点はあるものの、スタンドを解除すれば塵に還るからいちいち洗う必要もなく、体を拭った後はそのまま使い捨てられるのが便利だ。

 欲を言えば風呂に入るかシャワーを浴びたいところだが、まあその辺はこの世界のことがもう少しわかってきてから、おいおい何とかしていこう。

 

「さあて……」

 

 ひととおりの作業を終えて、ぐーっと伸びをする。

 

 見れば、自分の『ご主人様』は豪華なベッドでぐっすりと眠っていた。

 異世界の時刻についてはよくわからないものの、朝日の差し方などを見て元の世界の基準で判断する限りでは、起こすにはまだ早そうだろうか。

 ということは、しばし暇になったわけだ。

 

(どうする?)

 

 散歩にでも行こうかとも思えど、このあたりのことはまださっぱりわからないから、無暗に出歩かないほうがいいかもしれない。

 

 やむなく、ルイズが目を覚ますまでこのままここで時間を潰すことにした。

 異次元滞在中に暇潰しをする目的で持ち運んでいた『ゲームボーイ』を取り出すと、カセットを一本選んで差し込んでから、電源を入れる。

 このゲームボーイはかつてのエジプトツアーの最中に、花京院へ見舞いとして贈ったものと併せて購入した品だ。

 

「えーと、エスパー4人パーティはもうクリアしたし。今度はモンスター4人でやってみるか……」

 

 ラスボスでチェーンソーが使えないから、きっと歯ごたえがあることだろう。

 

 ここ最近はRPGにはまっている。

 終わったら、次はラクロアンヒーローズでもやるか。

 それともレジェンドか、アレサにしようか?

 

『そのゲーム、もう何べんめですか。やり込んでますなー』

「花京院ほどじゃないけどねー」

 

 所持品の中から取り出した波紋茶などすすりつつ、のんびりとプレイして時間を過ごした。

 

 

「そろそろ起こすか……」

 

 窓から差し込む朝の光が徐々に温かく、眩しくなってきた。

 いい加減に目を覚ましてもいい頃合いだろう。

 

 セーブして電源を切ったゲームボーイをポケットに戻して、ルイズの体を揺さぶる。

 

「ルイズ、朝よ。いい加減に起きなさい」

 

 しかし、なかなか目を覚まさない。

 やれやれだわ、と肩をすくめると、少々荒療治で叩き起こすことにして、彼女の体に弱めの波紋を流し込んでやった。

 

 ビリッときて、ルイズが飛び起きる。

 

「……はえっ!? な、なによ、なにごと!?」

「朝よ」

「そ、そう……。って、誰よ!」

「あんた、頭脳が間抜けなの? 水流リリーよ、昨夜自己紹介したでしょ?」

 

 目を白黒させていたルイズは、その辺りでようやく状況を把握できるようになってきたのか、こくこくと頷いた。

 

「あ、ああ……、うん。使い魔ね。昨日、召喚したんだっけ……」

 

 気を取り直した彼女は、リリーに服や下着を用意するように命じた。

 さらには、着せつけまで要求する。

 

「そのくらい自分で動かないと、運動不足になって脂肪がたまるわよ」

「あんたは平民だから知らないのかもしれないけど、貴族は下僕がいる時は自分で服なんて着ないものよ」

「私は下僕じゃなくて、使い魔ってやつじゃないの?」

「雑用もしろって言ったでしょ。屁理屈や生意気を言ってると、朝ご飯抜きにするわよ?」

 

 リリーは肩をすくめたが、やむなく要求通りにしてやった。

 別に一食や二食くらい抜かれても困りはしないが、まあ、『ご主人様』との関係を無暗に険悪にすることもあるまい。

 

 それが終わって朝食を摂りに行こうとルイズと共に外に出ると、近くの部屋のドアが開いて、そこから燃えるような赤い髪と褐色の肌をした女性が現れた。

 ルイズよりも何歳か年長のようで、比較的小柄な彼女と違って背が高く、平均的な男性と同じくらいの長身だ。

 おそらく年齢的にはリリーよりも1、2歳くらいは下だろうが、バストも豊かで色気たっぷりと言った感じの女性だった。

 

「おら。おはよう、ルイズ」

「おはよう、キュルケ」

 

 にやっと不敵な笑みを浮かべる女性に対して、ルイズは露骨に嫌そうに顔をしかめながら挨拶を返す。

 

「その子があなたの使い魔? 本当に人間なのね。しかも水兵さんだなんて、すごいじゃないの。女の子なのに。さすがは『ゼロ』のルイズ!」

「……別に、水兵とかじゃないんだけど……」

 

 うんざりしたように呟きながら、大学生の身で今さら気まぐれを起こしてセーラー服なんか着てこなきゃよかったと、リリーは後悔していた。

 そんな彼女のことなど気にした様子もなく、キュルケはルイズの抗議を受け流しながら、自分の使い魔を自慢し始める。

 フレイムという名前らしい、尻尾が燃えているバカでかい赤いトカゲというそのファンタジーな生物を見て、やはりここは自分の常識が通用しない異世界だという認識を新たにした。

 

 キュルケはそのまま、自分の使い魔が火竜山脈のサラマンダーだの、好事家に見せれば値がつかない(その話には、商売人気質のリリーも若干興味をそそられる部分があったが)だのと、あれこれ自慢をして。

 最後についでのようにリリーの名前を尋ねてから、使い魔を伴って悠然と去っていった。

 

 彼女がいなくなると、ルイズは悔しがって地団太を踏み、八つ当たりみたいにリリーに対して不満をぶちまけた。

 

「メイジの実力をはかるには、使い魔を見ろって言われているぐらいよ! なんであのバカ女がサラマンダーで、わたしがあんたなのよ!」

「そう? 私のいたところじゃ、人間は万物の霊長とか言われてたけど。ここでは、そうじゃないの?」

「人間ったって、メイジと平民とじゃ、オオカミと犬ほどの違いがあるわよ!」

 

 リリーは肩をすくめたが、特に抗議はしなかった。

 自分のもつスタンドだの波紋だのの能力や、持ち歩いている文明の利器について知らせてやれば、少しはルイズの考えも変わったかもしれないが、あまり無暗に明かすものでもあるまい。

 

「はいはい。まあ、喧嘩をしても腹が減るだけよ。はやく食堂に行きましょう」

 





キャラバン
 中距離補助型
 破壊力-E スピード-C 射程距離-B 持続力-A 精密動作性-A 成長性-A

 クレイマン女史による『ジョジョの奇妙な冒険』の二次創作ゲーム、『7人目のスタンド使い』に登場する、主人公用のオリジナルスタンドの一種。
外見は、ターバンなどを身につけて大きな袋を背負った、鳥人型のスタンドである(飛行能力はない)。
同じ鳥人型でもモハメド・アヴドゥルの『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』のように筋肉質で逞しい体型ではなく、やや太めで鈍重そうな印象を与える、インコに似た姿をしている。
本体の命令にはある程度までは従うものの、自立した思考を有するタイプで、袋に入れた物質の原子配列を組み替えて別のものに造り替える能力をもっている。
本体とは商売関係として接し、スタンドパワー(SP)を代金代わりとしてアイテムを生成する。
スタンド自体の破壊力は低いが、本体が成分や構造を知ってさえいればさまざまな医薬品や機械類、火薬や銃火器の類も作り出すことができる。
ただし、『皇帝(エンペラー)』のスタンド銃や『銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)』のスタンド剣などとは違い、作り出したものはすべて通常の物品扱いなので、スタンドに対しては通用しない。
また、背負っている袋の入口の直径(1メートル)から取り出せないサイズの物品は生成できない。
作り出した物品を維持し続けている間は常にスタンドパワーを消費し、維持をやめるかスタンドの能力射程距離外まで離れると、それらは塵に還ってしまう。
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