7人目のスタンド使い魔 ~キャラバンAct2!~ 作:ローレンシウ
「ラ・ロシェールはもうすぐよ」
リリーの腰のあたりに腕を回してしがみついたルイズが、そう呟いた。
バイクの速度と、ワルドのグリフォンが頑張ってくれたおかげとで、一行はその日の夕暮れ時には、早馬でも二日はかかるという山間の港町、ラ・ロシェールの入り口に辿り着くことができた。
険しい岩山の中を縫うようにしてバイクとグリフォンが進んでいくと、街道沿いに岩を穿って造られたと思しき建物が並んでいる。
ちなみに、リリーとルイズの乗るバイクの方が、ワルドのグリフォンよりも少し先を進んでいた。
リリーが一人でバイクに乗っていた時には先導役を現地人のワルドとルイズに任せていたのだが、今はルイズも一緒に乗っているので、速度の速いこちらの方が自然と先になっている。
「もう時間も遅いから、残念だけど今日の船は残ってないでしょうね。ひとまずどこかに宿を取って、明日の朝一番の便でアルビオンへ渡りましょう」
「私はラ・ロシェールもアルビオンも行ったことがないから何とも言えないし、ルイズとワルドさんに任せるわ」
リリーはそう言うと、そろそろ暗くなってきたからと、バイクのライトを点けた。
ルイズは不思議そうな顔で、その灯りを見つめる。
(……ん?)
その時、リリーは、左右にある峡谷の崖の上が、何やら騒がしくなったことに気が付いた。
(上に誰かいて、急な灯りに驚いたのかな?)
そう思って視線を巡らせたのとほぼ同時に、崖の上から松明が何本も振ってくる。
「……っ!」
これは。
エジプトツアーの最中に遭遇したテロリストの、もしくはDIOの刺客の狙撃兵たちが、視界の効かない夜間にまず照明弾を撃ってきたのと同じ手口。
ということは、つまり。
「ルイズ、しっかりつかまって!」
「え? ……きゃあぁぁ!?」
リリーは咄嗟に目印になってしまうライトを切ると、それまでは街中ということでゆるゆると進んでいたのを、思い切り急加速してその場から離れた。
数瞬遅れて松明の照らす範囲、さっきまで彼女らのいたあたりに矢の雨が降ってくる。
「……な。なによ、あれ? 何事!?」
「襲撃みたい」
振り返って背後を見たルイズに、リリーは短くそう答える。
後続のワルドのことも心配だが、彼は魔法衛士隊の隊長だというのだからそうそう不覚を取ったりはしないだろうし、まずは彼女の安全を確保するのが先だ。
とりあえず松明を投げても届きっこない程度に距離を離してバイクを止めると、ルイズを連れて適当な物陰に滑り込み、身動きの邪魔になるヘルメットやライダースジャケットなどの用済みな装備品を分解して様子をうかがう。
「大丈夫か!」
そこへ、風魔法で矢を逸らしながら、ワルドがやってきた。
「ええ、こちらは大丈夫です」
「何者かしら。もしかしたら、アルビオン貴族の差し金なんじゃ」
「貴族なら弓は使わんだろう。相手は平民ばかりのようだ、おそらくはただの物取りの類だろうな」
それはどうかしらね、とリリーは考え込んだ。
別にスタンド使いだからって波紋を使っちゃだめとか、波紋使いだからってボウガンや銃火器を使っちゃだめとかいう決まりはあるまい。
少なくともリリー自身ならその時の状況に応じて使えるものは何でも使うし、ジョセフ・ジョースターとかだってそうするだろう。
早急に動かせるメイジの手駒がないのなら平民の傭兵団かなにかを雇って数を頼みに襲撃させる、十分にありうることだ。
無論、ここはアルビオンとの貿易拠点にあたる港町で常に大勢の商人や旅行客で賑わっているというから、それを狙ったただの夜盗や山賊の類だということも、確かに考えられる。
とはいえ、見たこともないマジックアイテムらしき乗り物に乗った奇妙な二人組、その片方は明らかにメイジ、という自分たちを、わざわざ襲撃対象に選ぶだろうか。
おまけに、少し後ろからはグリフォンに乗った見るからに強そうなメイジもついてきてるわけだし。
まあ、リスクも高かろうが貴族だろうがメイジだろうが不意討ちで殺せば同じことだし、リターンも期待できると踏んで、いささか無謀ながら決行したということも、ありえなくはないかもしれないが……。
「……ま、詮索は後にして。とりあえず、あいつらをなんとかしないとね」
この場を逃げ切れても後々また襲われてはたまらないし、今、ここで片付けてしまったほうがいいだろう。
「お、相棒。戦いか? 戦いだな?」
「漫才のために抜いたんじゃあないことは確かね」
リリーは、久し振りに緊迫した状況で鞘から抜かれて嬉しそうにするデルフリンガーに軽口を叩きつつ、物陰から飛び出すタイミングをうかがった。
しかし、彼女が出るよりも早く、崖の上の方でなにやら騒ぎが起こった。
「うん?」
男らの情けない悲鳴に、弓を射る音、風の巻き起こる音。
それに、何やら聞き覚えのある羽音がする。
「あれは……」
崖の上からどさどさと弓を射っていたらしい男たちが転がり落ちてきて呻くのを尻目に、リリーは空を見上げた。
ルイズも同じようにそちらを見て、目を丸くする。
「シルフィード?」
月を背景に、見慣れた幻獣の姿があった。
そのまま地面に降りてきた彼女の背からキュルケがひょいと飛び降りると、鮮やかな赤髪をかきあげる。
「はぁい、お待たせ」
「待ってないわよ!」
ルイズはちょっと怒ったようにそう言うと、物陰から出てキュルケに詰め寄った。
「何をしに来たのよ、ツェルプストー。帰ってちょうだい。これは、……その。つまり……」
姫殿下からの任務だとは言えず、ルイズが口ごもる。
キュルケはふっと笑った。
「つまり、なにか大事な用事があって、アルビオンへ行くんでしょ? 何しに行くのかまでは知らないけど」
「え? ……ちょ、ちょっと。なんであんたがそんなことを」
「あなたたちの姿が見えないからどこに行ったのか聞いて回ったら、早朝にどこかへ出発したっていうじゃない。三人で連れ立って、お国の姫殿下がご来訪されてる折にそのお見送りも済ませずに出かけるだなんて、こりゃもうよっぽどの重大事があったとしか思えないわ」
もう少し詳しく流れを追って話すと、まずキュルケが王女一行が帰る前に昨日見つけたワルドに手を付けようとして、朝方から彼を探し回ったがなかなか見つからなかった。
結局、姫殿下のお見送りの時間になるまで探し当てられずに歯噛みしていたら、帰っていく一行の中にもワルドの姿はない。
そういえば、ルイズやリリーの姿も朝から見当たらない。
不思議に思って知っていそうな者に話を聞いて回ったところ、学院の門衛は早朝にルイズとリリーがワルドと一緒に出かけるのを見たという。
最初は逢引で3Pかとかけしからん妄想をしたが、あの二人に限ってまさかそれはない、これは何かありそうだがとにかく一人では後を追えぬとタバサに事の次第を伝えて協力を要請し、手分けして行き先を調べたのである。
ルイズとリリーはお忍びということもあって誰かに行き先を話しているなどということはなかったが、キュルケが勝手にルイズの部屋の鍵をアンロックして侵入したところ、机の上には片付け忘れたのか地図帳が開かれたまま伏せて置かれていた。
そのページは、ラ・ロシェール方面への道筋や道中で立ち寄れる駅・村落などについて書かれた部分だった。
ラ・ロシェールへ行くということは、すなわちアルビオンへ行くということである。
「それで、わざわざ根掘り葉掘り調べ回って、ここまで来たっていうの?」
経緯を聞いたルイズは、呆れたような顔でそう言った。
キュルケに続いて姿を表したタバサはリリーの前に降り立つと、彼女の顔をじっと見上げた。
あいかわらずの無表情ではあるが、こころなしか不機嫌そうに見える。
「ずるい」
「え?」
「あなたは、わたしが任務に行くときには声をかけろと言った。なのに、自分のときにはわたしを呼ぼうとしない」
そう言って、杖でリリーの頭をとんと叩く。
「不公平」
リリーはそう言われて、ちょっとばつが悪そうにした。
「ごめんなさい。でも、あまり口外できないようなことで」
「それも、お互いさま。あなたは聞かなかった。わたしも聞かない」
言われて、リリーはふっと頬を緩めた。
「義理堅いのね。貸しがあるから?」
「お互いさまなことは、貸し借りとは関係ない」
「……そうね。ありがとう、助かったわ。あなたたちの迷惑料の取り分は、5:5でいいかしら?」
リリーはそう言ってタバサを軽く抱きしめると、ひとまず地面に転がって動けない男らをなんとかしておこうと、彼らの罵声を受け流しながら武器を没収したり(もちろん、後で叩き売るつもりだ)、拘束したり、迷惑料を取り立てたりし始める。
タバサも、それを手伝った。
「なんでえ、結局出番なしかよ。つまんねー」
鞘にしまわれるときに、デルフリンガーはぶつぶつとぼやく。
それをよそに、キュルケはルイズと話し続けていた。
「わざわざって言うけどね。恋のためなら、このくらいのことはして当然でしょう?」
「はあ? 恋?」
「そうよ。こうして近くで見ると、ますます男前ね」
キュルケは怪訝そうにするルイズをよそに、しなをつくって、グリフォンに跨ったワルドににじり寄る。
「おひげが素敵よ。ねえ、あなた、情熱はご存知?」
しかし、ワルドはそんなキュルケを軽く一瞥しただけで、左手で押しやった。
「あら……?」
「助けは嬉しいが、それ以上は近づかないでくれないか」
まるっきり取り付く島のないワルドの態度に、キュルケは困惑する。
自分に言い寄られたらどんな男でも、たとえ拒絶しようとするにしても少しくらいは動揺の色を見せたものだが、彼にはそれがない。
(なにこいつ。もしかして、同性愛者とか?)
そう思ってみると、なんかまだ若いのに髭面なあたりそういう趣味がありそうに見えなくもない気がしてきた。
ひどい偏見だが。
そんな彼女の内心を読んだわけでもあるまいが、ワルドが説明する。
「婚約者に誤解されたくはないのでね」
そう言ってルイズを見つめると、彼女の頬が染まった。
「え? あんたの婚約者だったの?」
してみると男色ではなくロリコンか、などと考えるキュルケをよそに、ワルドが頷き、ルイズは困ったようにもじもじする。
(……ふーん?)
そこまでラブラブってふうには見えないし、ツェルプストーの祖先はヴァリエールの婚約者を数多く寝取っていることもあって、その例に倣えば余計に燃えてきてもよさそうなものだが。
キュルケはどういうわけか、まるでそんな気にはなれなかった。
なぜかと思ってあらためてワルドをよくよく観察してみると、近くで見ればなおさら男前な顔立ちなのは確かだが、その目の冷たさがすべてを台無しにしている。
まるで氷のようで、こんな目で見てくる男と情熱を交わし合うなんて、とてもできた相談ではないと思った。
(あーだめだめ。つまんない男だわ)
あっさりとそう切り捨てると、ここまで来た彼女的には最大の理由が早々になくなってしまって、でもタバサはやる気みたいだしなんか危険そうなことだから自分も付き合うかなどと考えながら、視線を巡らせる。
その先では、リリーがタバサと協力して狼藉者どもを拘束したうえで武器と迷惑料を没収し、正体を確かめようと尋問しているところだった。
「つまり、あんたたちはただの物取りだと」
「そうでえ。他になにがあるよ」
「で、ただの物取りが、なんで私たちみたいなのをわざわざ襲ったの? 私たちが『お金持ちの商隊』か『いいとこのか弱いお嬢さま』にでも見えたのかしら?」
「うるせーな、獲物を選んでられるような余裕がなかったんだよ!」
「全員、財布にエキュー金貨が十枚以上入っている。食い詰めているようには見えない。さらに言うなら、これらの金貨はどれも同じように真新しく磨かれている。これは、どこかの銀行でまとめておろされて、その際に係員が礼儀として洗浄して渡したものだと考えると辻褄が合う」
彼らはタバサにそう指摘されて、露骨にぎくりとした顔になる。
中には比較的うまくポーカーフェイスを保てている者もいるが、全員ができていなければ意味はない。
「……な、なにが言いてえんだ?」
「つまり、あんたたちは誰かがつい最近銀行から引き出してきたっぽいこのお金で雇われて、私たちを襲ったんじゃあないかってことよ」
「そ、そんなわけがねえだろ。変に勘ぐるんじゃねえよ! その金は……そうだ、前に商隊からかっぱらってやったんだ。きっとそいつらが、銀行からおろしたばかりで」
「い、いや。前にアルビオンで傭兵稼業で稼いだ金を、全員分、まとめて銀行に預けてて……」
口裏も合わせずにてんで勝手に思いつきを口にするものだから、話せば話すほど互いに辻褄が合わなくなる。
これは完全に黒と見てよかろう。
「そう。でもね、決闘でも戦場でもないのに貴族を殺そうとしたって時点で、なにをしてもお咎めなしでしょうし。なるべく早めに吐いたほうが身のためよ?」
リリーはそう言うと、彼らの目の前でキャラバンに作らせたロケット花火に、同じく作らせたライターで点火して夜空に向かって空撃ちし、呆気にとられた顔にさせる。
しかし、次いで同じロケット花火を今度は十本同時に作り出し、彼らの顎を無理やり開かせて咥えさせると、今度はその顔が真っ青になった。
「これはね、火の秘薬を使ったおもちゃなの。話す気になったら、首を縦に振ってね。万が一横に振ったりしたら、話すための口がなくなるんじゃないかなあ〜」
悪そうな笑みを浮かべながらライターに点火すると、彼らはガタガタ震えて後じさる。
しかし、すぐには首を縦に振らない。
「もしかして、裏切ったら殺すとか言われてる? 大丈夫、逃走用の路銀を少しは残しといてあげるから。この街をすぐに離れれば、わざわざ追いかけてまで殺したりはしないでしょう。でももし、ひと思いにここで殺してくれって言うのなら……」
リリーがそこまで話したあたりで彼らの一人が必死に首を縦に振り、後は雪崩を打つように、残りの連中もそれに倣った。
ロケット花火を取りのけてやると、大暴露大会が始まる。
要約すると、緑色の髪でフードを被った美人の女メイジと白い仮面を被った得体の知れない長身の男とに言い値で雇われて、一行を襲ったということだった。
その緑色の髪の女性にナイフを土くれに変えられたという話を聞いて、リリーは眉をひそめる。
「……どこかで聞いたような特徴の組み合わせだけど、そんなわけないわよね。今は捕まってるはずだし……」
しかし、タバサとキュルケは顔を見合わせた。
「フーケは脱獄した」
「あたしたちが出発する頃には、もう学院中にその噂が広がってたわ」
それを聞いて、ルイズも緊迫した顔になる。
「じゃあ、アルビオン貴族がフーケを脱獄させて、手駒に引き入れたってこと?」
「そうとは限らんだろう。緑色の髪は、アルビオンではそこまで珍しい特徴ではない」
横合いからワルドが口を挟んだ。
「仮にフーケだとしても、単に君たちへの私怨ということもありうる。そこの二人が我々の行き先を突き止められたのだから、世間に名の知れた怪盗に同じことができても不思議ではないだろうさ」
そう言うと、彼はひらりとグリフォンに跨った。
「いずれにせよ警戒は必要だろうが、こちらには詳しく詮索していられるような余裕はない。今夜はラ・ロシェールに一泊して、明日の朝一番の便でアルビオンに渡ろう」
それだけ宣言すると、もう目的地まで着いたのだからよかろうと言わんばかりにひょいとルイズを抱きかかえて、グリフォンを進ませていく。
「なんだか変わったのに乗ってきたみたいだけど、それも『スタンド』で作ったのかしら?」
「よければ、あなたもこっちに」
「ん……まあ……」
シルフィードに乗り込んだキュルケらへ生返事を返しながら、リリーは目を瞬かせてワルドの後ろ姿を見送った。
なんというか、意外というか、拍子抜けしたというか。
(絶対、キュルケとタバサを帰らせろって言われると思ったんだけど)
もちろん自分やルイズは彼女らの人柄を知っており、裏切るはずもないし話の内容に嘘もないと確信しているが、ワルドの立場からすれば普通、そうは思わないだろう。
極秘の任務の行き先をあっさりと嗅ぎつけて後を追ってきたなどという話は、客観的に見て胡散臭い。
まずは傭兵を雇って仕留めさせようとし、彼らが役立たずとみるや自分たちの手で始末することでこちらを安心させ、アルビオンまで着いてくる。
そうして隙を見て暗殺、もしくは任務の詳細を確かめようという腹ではないか。
だとすれば手紙の存在を知れば当然、それを奪い取ろうとするだろうし、証拠もない以上殺すわけにはいかないにしても、この先へ着いてこさせてはいけない……。
自分が彼の立場なら、そう考えても無理はないことだと思える。
だから、最初は『常識的に考えて、お国の機密に関わる任務なのに他国の留学生を同行させるとかはさすがに無理よね』と判断して体よく帰ってもらおうと思っていたのだが、タバサの思いを受けて感じるところがあり。
なんとかあの子爵殿を説き伏せて彼女らが同行することに賛成させられないものか、駄目でもタバサが納得できるまでは力を尽くさないとと、内心あれこれと口上とか話の運び方なんかを考えていたというのに。
まさか、彼がキュルケやタバサに帰れと言うどころか、彼女らが自分たちの口で説明したこと以上に何一つ聞こうともしないだなんて、思いもしなかった。
(根掘り葉掘り尋ねたりしなくても、婚約者の友達だというなら信頼できるに決まってる、僕はルイズを信じてるよ……ってこと?)
にしても、ろくに素性を問いただしもせずに。
キュルケなんか肌の色からしてこの辺の人と違うし異国人だと一発でわかりそうなものだが、自国の機密に関わる任務に行こうかというときに、それでも疑いも懸念も抱かないのか。
姫殿下から直々に国の行く末を左右する重要任務を預かった魔法衛士隊の隊長殿にしては、ずいぶんとまあ無頓着というか脳天気というか。
さっきは急ぎの任務だから遅れたらおいていくだとか発破をかけていたから、てっきりこの任務には強い意気込みと厳しい態度をもって臨む気でいるのだろうとばかり思っていたのだが。
(ポルナレフみたいに自分の腕に自信があって、あんまり事前の警戒とかはしないタイプ……なのかなあ)
まあ、性格は彼とはぜんぜん似てなさそうだが。
ポルポル君なら、キュルケみたいな子に声をかけられたらホイホイついていくに決まっているのだし。
(いやでも、特定の婚約者ができたなら、さすがに自重するのかな)
あれで結構、騎士道精神とかもある男なわけだし。
ジョセフだったら自重しない気がするが。
そんな脱線したことをとりとめもなく考えていたら、キュルケに声をかけられた。
「どうしたのよ。乗らないの?」
「ううん、ごめんなさい。行きましょうか」
まあ、そんなことをいつまで詮索しても仕方がない。
なんにせよ、ワルドが彼女らの同行を問題視しないというのなら、こちらにとっても好都合には違いないのだし。
リリーはそう割り切って気を取り直すと、ここまで乗ってきたバイクを土に返し、あと少しの距離ではあろうが、お言葉に甘えてシルフィードに乗せてもらうことにした。
道の向こうには、そろそろ夜を迎えようとするラ・ロシェールの街の灯りが煌々と、怪しく輝き始めていた……。
キュルケとタバサの出発時刻:
原作ではキュルケが早朝に出発するルイズらを見かけ、タバサを叩き起こして後を追ったことになっており、実際にタバサはパジャマ姿のままであった。
しかし、それだとシルフィードの速度からいって彼女らは出発後ほぼすぐにルイズ一行と合流していなければおかしく、当日の夜中まで追いつけなかった理由が不明(強いて考えるなら、彼女らがトリスタニアへ行ったと勘違いして誤った方面に向かい、時間を無駄にしたとか?)である。
そのため、本作では彼女らの出発時刻を原作よりも遅らせることにした。