7人目のスタンド使い魔 ~キャラバンAct2!~   作:ローレンシウ

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今回は、「キャラバンAct2」で移動した先の異世界の店についてを詳しく描写しております。
世界観などについては、「Sa・Ga2 秘宝伝説」に関する知識がないとよくわからないかもしれません。



第五十三話 キャラバンAct2

 

「みんな集まったけど……『時間が経たない相談場所』ってなんなのよ?」

「言ってることがよくわからないわね。あなたに限って、まさかイカれてるなんて思わないけど」

「……それも、あなたの能力?」

 

 リリーの要請に応じて人気のない城の一角に集まった少女らは、怪訝そうにしている。

 

「そう、キャラバンの能力の一つね」

 

 彼女はそう言って、かいつまんだ説明をしていった。

 

「ええとね。前に、キャラバンの能力は『あるものから別のものを作り出す能力』だって説明したと思うけど。もう少し正確に言うと、『袋の中にある奇妙な異空間を扱う能力』なのよ」

 

 その空間に入れたものは、それがどんなものでも、ゆっくりと分解されていく。

 キャラバンや本体であるリリーは、その分解された材料を使い、構造を知っている別のものに組み替えて取り出すことができる。

 それがキャラバンが普段使っている基本的な能力、『あるものから別のものを作り出す能力』なのだ。

 

「最初のうちは、その空間をそのまま、そういう用途にしか使うことしかできなかったんだけどね。能力が進化するにつれて、他のことにも使えるようになったの」

「他のこと?」

「そう。袋の中の異空間を別の場所につなげて、袋の口を通してその場所に行き来する、という使い方よ」

 

 ただし、つなげることができるのは地球やハルケギニアとはまた違う異世界のある決まった場所、具体的に言えばその世界のとある砂漠の隊商(キャラバン)の店の中だけで、その外には出られない。

 その世界は時の流れが地球やハルケギニアとは違うらしく、どれだけ滞在しても元の世界に戻ると時間は経過していない。

 普段メインで使っている能力が第一段階、Act1だとすれば、そちらの能力は第二段階。

 

「こっちの魔法でいうと、使い魔召喚のゲートの、行き来ができる版みたいなものかな。それが、『キャラバンAct2』ってわけ」

 

 リリーはそう説明したが、少女らは一様にきょとんとしたり、困惑したりしている。

 

「な、なんか、聞いてもよくわからないんだけど!」

「時間が経たない世界、だなんて……。そんなものが本当にあるのかしら?」

「……異空間……」

 

 まあ、いきなり言われたところで、およそ理解不能な話だろう。

 せいぜいが妄想か夢物語の類にしか思えないのは、無理もないことだ。

 

「ここで説明してるよりも、実際に行ったほうが早そうね」

 

 リリーはキャラバンに、袋の口を拡げさせた。

 

『あいよっと。はじめてのお客さんもおるからなー。わかりやすいよーにサービスしといたるわ』

 

 そう言うと、スタンド袋を通常の物質に作用するようにさせたうえで作りだした粉状の物質をまぶし、非スタンド使いの少女らにも輪郭が見えるようにする。

 これで、『袋の中に入って別の場所に移動した』ということが、視覚的にもわかりやすくなった。

 

「はい、三名様ご案内ね」

 

 リリーは彼女らの手を取ると、自分が先導するようにして、袋の口を潜っていく……。

 

 

 スタンド袋の口を通ると、ふわりと浮き上がるような、空間を飛び越えるとき特有の奇妙な感覚とともに、視界が暗転する。

 

「わ、わっ!?」

 

 思わず、ルイズが声を漏らした。

 リリーにとっては既に慣れたものだが、同行する他のメンバーにとっては初めての経験だ。

 それが終わると、急に目の前が明るく開ける。

 

「こ、ここが……?」

「……異世界」

 

 キュルケもタバサも、呆然とした様子で周囲を見渡した。

 見たところそこそこの大きさのある建物の内部のようだが、先ほどまでいたニューカッスルの城内とは明らかに違う。

 この場所の空気は明らかに空の高みのものではなく、地上のそれだ。

 建物は何かの店のようで、店員が並ぶカウンターがあり、客らしき人々がテーブルについて飲んだり、あたりをうろついたりしている。

 外のほうからは砂嵐が吹いているような音がかすかに聞こえ、屋内であるにもかかわらず、砂埃のような匂いが漂っていた。

 

「そう。ここは地球やハルケギニアとは違う世界にある、砂漠の行商隊(キャラバン)のお店の中よ」

 

 リリーがそう説明をしていると、グラスを手にした客の一人が、彼女らの来店に気付いて近寄ってきた。

 

「ファッ!?」

 

 ルイズらは、その客の姿を見てぎょっとする。

 そいつは粗末な腰巻きだけしか身に付けていないうえに、毛深くて強そうなネズミと人間の混ざりあったような姿をした、明らかに亜人と思われる男だったからだ。

 しかし、彼はリリーに対して、ごく親しげな調子で話しかけてきた。

 

「おお、いつもの姉ちゃんか。そっちは、見たことのない顔だな?」

「お久しぶりね。ええ、今日は新しい仲間を連れてきたの」

 

 リリーも慣れた様子で、気さくに挨拶を返す。

 その客が離れていくと、彼女は同行者たちの様子を見て苦笑した。

 

「大丈夫よ。あの人、見た目はちょっとあれだけど、気の良い常連さんだから」

 

 いい女に手を出すようなガルガル野郎じゃないわ、などと話していると、また別の客が近付いてくる。

 

「……!?」

 

 タバサはその客の姿を見るや、ビクウッとして飛び退いた。

 彼女にしては珍しい反応だが、まあ無理もあるまい。

 なにせ、そいつはゾンビで、ボロを着た死体が歩いてるようにしか見えないのだから。

 そんな彼女の反応など気にもとめずに、彼もリリーに話しかけた。

 

「よお、あんた、今日はお仲間が多いな。見慣れない顔だが、人間なのか? それとも、エスパーかい?」

「えーと、人間……かな。魔法使いよ、みんな」

「魔法の書で戦うのか? あんな高いもの、割が合わねーだろーによ」

 

 景気がいいんだな、と言って、そのゾンビは干からびた声で笑う。

 

「そうなの? その魔法の書とかのことはよく知らないから、なんとも言えないけど」

 

 少し前に石仮面の屍生人と殴り合っていたリリーがそいつとは友好的に話しているのを、ルイズらはわけもわからず見守るしかなかった。

 周囲をよく見ると、他にも得体のしれない連中が大勢いるようだ。

 でっかい鳥みたいなのとか、トカゲみたいなのとか、ゴーレムみたいなのとか、蛇みたいなのとか。

 カウンターの中にいる店員にも、得体のしれない虫人間みたいなやつや、おとぎ話に出てくる悪魔みたいなやつが混じっていた。

 人間に似ているがエルフみたいに耳が尖った亜人っぽいのもいるし、普通の人間に見える連中も、外見や雰囲気がどこか自分たちとは違っている。

 

「四人パーティで来たってことは、あんたもついに塔を登ろうって気になったのか?」

「いやあ、興味はあるんだけど。私は、ここの外には出られないからねー」

 

 リリーは苦笑して、肩をすくめた。

 

「そうか、強いのにもったいないな。俺はいずれ、必ず塔を登るぜ。秘宝を手に入れて、神になってやるんだ」

 

 そう言ってにやりと笑うと、ゾンビは去っていった。

 アシュラとかいうこの世界の支配者が元ゴブリンだという話は、リリーも前に聞いたことがある。

 

(元がゾンビだったら、リッチとかヴァンパイアロードとかになるのかな?)

 

 この世界にそういうのがいるのかは知らないが。

 そんなことを考えていたら、ルイズに腕を掴まれて揺さぶられた。

 

「ちょっと、あんた! いい加減に、わたしたちにもわかるように説明しなさいよ!?」

「い、いや、説明って言われても……」

 

 ここへ来る前に説明したことで大体全部なんだけど、と思いながらも。

 元の世界での時間は経たないのだから焦る必要もないので、リリーは彼女らの質問に自分にわかる限りの範囲で答えてやった。

 

 ここは地球やハルケギニアとはまた別の世界で、ここにいる客たちのような様々な種族が当たり前のように共存している世界であるらしい。

 自分たちとほぼ同じような外見の人間、エルフのように耳が尖っていて超能力を習得できるエスパー、さまざまな種類のモンスターに、ロボットなどもいるそうだ。

 ただし、自分はこの店の外には出たことがない……キャラバンの袋の出入り口は店の出口と重なっているので、外には出られない……から、客や店員から聞いた範囲のことしか知らないのだが。

 

「この世界はいくつにも分かれて塔でつながっていて、それぞれの世界には大昔の神様たちが遺した『秘宝』っていうのを手に入れて、新しい神様を名乗ってる連中がいるらしいわ。で、この砂漠の世界には、アシュラっていう新しい神がいるんだとかで……」

 

 リリーが適当に店に注文を出して他の少女らと空いたテーブルにつき、そんなふうに話をしていると、なにやらガラの悪い連中が寄ってきた。

 全身鎧を着こんで細身の長剣と青銅の盾を持った戦士、狡賢そうな知性を感じさせる顔つきをした太った大蛇、凶悪そうな人の顔のようなものがついた花弁をもつ動く花、逞しい脚をもつ大型の鳥。

 

「おい、貴様ら。いま、アシュラ様について、何を話していた?」

「別に。ただの世間話です」

 

 リリーはそう言ったが、そいつらは机を取り囲むように位置取る。

 タバサやキュルケは杖を握って警戒を強め、ルイズも緊張したような面持ちになった。

 

「アシュラ様のことを呼び捨てにしていただろう。この無礼者どもめ!」

「ガーディアンのスパイじゃないのか。怪しい連中だな?」

「あの覆面の仲間か? 俺たちゃ泣く子も黙るアシュラ親衛隊だぜ。叩っ斬ってやる!」

 

 リリーは肩をすくめて、溜息を吐いた。

 地球やハルケギニアであればこんな連中には極力関わらないよう穏便に流そうとするところだが、ここではこの手の連中、『アシュラの手下』どもを相手に下手に出たところでどうにもならないということは、これまでの経験からよくわかっている。

 どうもこのあたりは……というか客や店員の話を聞く限りではこの世界全体が、概して非常に物騒で治安の悪いところであるらしいのだ。

 こいつらはどう返事をしようと、なんだかんだと因縁をつけて、結局は襲ってくるつもりなのである。

 

「あー、心配しなくていいわよ。よくあることだから」

 

 リリーは警戒しているルイズらに自分が対処するからと言うと、グラスを置いて席を立った。

 

「静かにしなさいな、お酒がまずくなるわ」

「なんだと?」

「親衛隊なんてものなら、アシュラ様だかのお膝元を離れて、こんな場所をうろついてるはずがない。あんたらはただのチンピラでしょうが」

 

 彼女の辛辣な言葉に、連中がいきり立つ。

 

「てめえ!」

「なめやがって!」

 

 各々が剣を抜き、牙を剥き、葉や翼を広げて、襲い掛かってこようとしたところで。

 

「しッ!」

 

 リリーは素早く取り出した無数のナイフを乱れ投げした。

 

「ぐおっ!?」

 

 先手を打たれたアシュラの手下どもは、体のあちこちにナイフを食らって苦痛に呻く。

 動く花……人面花は、花弁や茎を深く切り裂かれてその場に崩れ落ちた。

 しかし、さすがに物騒な世界で戦い慣れしている連中だけあって、その程度で怯んだりはしない。

 

「シャアァァッ!」

 

 体に数本のナイフが刺さった太った大蛇……青大将が、怒りに燃え、毒の牙を剥き出して飛び掛かってくる。

 

「おのれ!」

「ぶち抜いてやるッ!」

 

 咄嗟にブロンズの盾で身を守ったために最も傷が浅かった鎧の戦士……ガードと、羽毛に血を滲ませた大きな鳥、ダイブイーグルも、それぞれ剣を振りかざし、くちばしを突き出して突っ込んできた。

 しかし、それらの攻撃が届く前に大蛇はタバサの氷の矢に串刺しにされ、戦士はルイズの爆発に吹き飛ばされ、鳥はキュルケの火球に焼かれてノックアウトされる。

 

「三下はさっさと帰りなさい。命を粗末にしないことよ」

 

 リリーにそう言われて、手ひどく痛めつけられた連中は這う這うの体で逃げて行った。

 

「……ここでは、こんなことが日常茶飯事なのかしら?」

「うーん、まあね」

「どこが話し合いに向いた場所なのよ!?」

 

 キュルケに尋ねられて頷きを返したリリーに、ルイズがそう抗議する。

 

「…………」

 

 タバサは、店内の様子をじっと観察した。

 確かに、今の騒ぎを店員も客もほとんど気に留めている様子がない。

 こういったことが日常茶飯事なのは確かなようだ。

 

 というか、自分たち以外にも戦っている客がいる。

 翼竜めいた外見のモンスターが、さっき自分たちも戦った大きな動く花と争っていた。

 興味を引かれて見ていると、どうやら激しい打ち合いの末に、翼竜の方がどうにか勝利を収めたようだ。

 リリーはいちおう殺さない程度には加減していたようだが翼竜は花を殺してしまったらしく、倒れた側はぴくりとも動かない。

 それでも、誰も騒ぐ気配もなかった。

 傷付いた翼竜は少し考えた後に、その花をむしゃむしゃと胃に納め始めた。

 食い終わるとその翼竜は、でっかい岩に顔が付いたような姿をした、別のモンスターに変身する。

 花に負わされた負傷は跡形もなく消えていた。

 

(……もう、なにがなんだかわからない……)

 

 タバサは軽く眩暈を覚えて、ふるふるとかぶりを振った。

 まともに考えていたら、頭がおかしくなりそうだ。

 

「別に大した連中じゃないし、慣れればどうってことないけど……」

 

 リリーは詰め寄ってくるルイズに、肩をすくめた。

 

「まあ、宿泊の手配をして寝床を借りれば襲われる心配はないから、そうしましょうか」

 

 ちょっと値が張るんだけどね、と言いながら、リリーは店員に泊まりたい旨を伝える。

 

「とにかく、みんないろいろ気になってるみたいだけど。今はこの世界のことよりも、アルビオンの方をどうするかってことを話し合いましょう」

 

 

 その夜、少女らは店側の用意した安全な宿泊スペースで、顔を突き合わせて話し合った。

 リリーがまとめ役を務める。

 

「さて。まず、確認できた限りではあの王子さまがアルビオンから逃げられない理由は、大きく分けて、おそらく次の三つね」

 

① 王族としての義務から、自分たちが弱い相手ではないことを貴族派に示さねばと思っている。

② トリステインに亡命すれば、レコン・キスタの侵攻の口実になるなど迷惑をかけると思っている。

③ 生き残ったところで愛するアンリエッタが他の男に嫁ぐのを見守るしかない立場だし、最悪彼女が過ちを犯す原因にもなりかねない。

 

「つまり、この三つを解消できれば、彼も亡命に同意するはずだと思うのよ」

 

 そのために、自分が考えている大まかな案の骨組みをルイズらに伝え。

 意見を出し合って、計画を固めていく。

 

「……よし。じゃあ、とりあえずはこれでいいわね?」

 

 じっくりと時間をかけて検討し、全員が納得した後に、リリーはそう言って話を締めた。

 

「それじゃ、後はゆっくりと寝て、旅の疲れを癒しておきましょう」

 

 向こうに戻ったら、宴に出席する。

 そこで、勝負をかけることになるだろう……。

 





キャラバンAct2:
 非戦闘時であればいつでも、キャラバンの袋の中からつながる異世界に移動できる能力。
 つながるのは「Sa・Ga2 秘宝伝説」の世界だが、第二世界にある特定の店(原作には存在しない7人目オリジナルの店)の中だけしか移動できない。
 店内では宿泊やいくつかの店での買い物・売却が可能で、たまに敵とエンカウントすることもある。

あおだいしょう、ガード、じんめんか、ダイブイーグル:
 すべて「Sa・Ga2 秘宝伝説」に登場するモンスターで、キャラバンAct2の異世界でも遭遇する。
 いずれもこの異世界に来られるレベルなら大した相手ではないが、普通の屍生人よりは強いだろう。

別のモンスターに変身する:
 ラムフォリンクス「にくをよこせ! おれはペブルになるんだ!」
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