かつての悪鬼による、退屈しのぎの鬼退治の話   作:ちなみ

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「永遠って信じますか?」

 はぁ、と重いのか軽いのか分からない溜息を吐きながらここ数日所在不明と成っていたイツ花改め昼子の来訪に初代は掃除の手を止め、嫌そうな顔でそちらへ目を向けた。

 便宜上、イツ花と黄川人の保護者的な役割を担っては居たが、昼子に関しては知ったこっちゃない上に、黄川人は既に『就職』して独立予定だ。

 

「聞いてくださいよー、初代さん」

 

 何も答えず勝手に進めろと言う様に、昼子とは違い重い溜息で先を促す。

 

「元々、全員が閉じてしまった訳では無かったんですけど、それこそお蛍さんとか……氷ノ皇子辺りの『優しい方』はひっそり見て居たようで」

 

 優しい、という言葉に少々含みがある気がしないでも無いが何も言わないでおく。基本的にどんな思惑だって、神が人にちょっかい掛けるとロクな事に成った試しがない。

 

「まあ、その辺り経由で、私が死んだのに未だにこっちでふらふらして居るのが、バレちゃったみたいなんです」

 

 ちょいちょい、と手招きしどうにも昼子には似合わない、淡い桃色の着物の襟もとを示す。

 細く白い首に禍々しく朱色の線が一本入っている。

 

 面倒臭そうに視線をやった初代がちょっぴり目を見開いた。自身が屋敷に住まい、出陣をこなしていた時分には、一度しか目にしなかったが、存在は知っている。

 朱の首輪だ。

 

「大丈夫なのかソレ?」

 

「心配してくださるんですか? ありがとうございます」

 

 先ほどの溜息はやはりただのフリだった様で、からりと陽気に笑う。

 あまりイツ花に似た表情を作られるのは、嫌だな、と初代の方は更に難しい顔になる。

 

「大丈夫ですよ。ただの通行手形のようなものです。殆ど呪力はありまんから」

 

 それでも少しは違和感を抱くのか、朱色の線をなぞる。

 

「まあ、相互監視の様なものですね。絶対に神として関わらないために」

 

「……それってさ、それさえ着ければ誰でも下って来れるって事になんじゃねぇの?」

 

「それなんですよー!」

 

 ニコニコと語っていた昼子が突っ伏しながら嘆く。

 皆、退屈で平坦な永遠に乾いて居ようが、人間には辟易したていた。今さらちょっかい掛けようという連中は早々居ないだろう。だからこそ不干渉を誓うなんて事が出来たのだが……それでも絶対何てことはない。

 いくら昼子も朱星も、ただ人としての時間を望んだけと言ったって、千年前の大騒動が有れば、訝しんで下りてくる者が出るかもしれない。

 

「黄川人はいいのか? なんだ……最終選別? だかに出ていつ頃帰るのか知らねーけど」

 

「天界から見張りが行くみたいですよー。知りませんけど」

 

 突っ伏したまま、ぷいとそっぽを向く。

 

「ああ、それより最近晴明さん見かけました?」

 

「それこそ知らんわ。四、五世紀位見てねぇな。この前の戦争ン時にちらっと探したんだけどな。あいつ、おれの娘(子孫)の一人連れ回してんだよ」

 

 何だかやる気も削がれた。とでもいう様に布巾放り腰を下ろし、初代もだらけた体勢になる。

 

「連れまわしているというか、万年新婚旅行ですよね、アレ」

 

「本気で一万年位見つからなそうだからヤメロ。お前、清明と仲良いのか? おれは知らねぇけど、御前試合でか?」

 

 初代の声にちょっと視線を上げた昼子は意味ありげに、ニッと笑う。

 

「ちょぉーっと、清明さんと『ある外法』を探しているだけですヨ!」

 

 なんとも胡散臭い笑みに、初代はちょっと身を引くが、過程は兎も角も昼子なら世界を脅かす事はしないだろうという妙な信頼感はあった。

 過程と手段はともかく……。

 

 

 

 

 碧玉色の長髪に、整った顔立ちの男が静かに歩む。

 さっぱりと地味に面白みのない装いだが、それなりの値の物で品もいい。そんなのとすれ違い、思わず振り返る人物は多いが端整な顔を見た後に、彼の抱えた物を見て慌てた様に視線を逸らし、小走りになり距離を取ろうとする。

 

 見目麗しい男が抱えて居るのは骨壺だ。

 

 祭儀の帰りという訳でもなく、ただの散歩の様子で歩き、時たま抱えた骨壺に話しかけて居れば、正常な市民達は気味悪がり関わるまいと逃げていく。

 

「おや、お久しぶりです。何年振りでしょうか? 五十年程?」

 

 件のすれ違う人々に気味の悪さを味わせていた男、阿部晴明が片手で足りる程の数少ない知人に声を掛ける。

 声を掛けられた、また種類の違う美丈夫は心底面白く無さそうに顔を歪める。視線で人が殺せるのではという程の剣呑さだが、晴明はそんな事は気にしない。

 片手で足りる知人の内、半数がそういう顔をする。

 

「お前はまだ生きて居たのか」

 

 残念ながら、と本心の見えない笑みを見せる晴明に相対する怜悧な美貌の男は表情を歪め、桁が一つ違うと苦々し気に言う。

 実に五百年振りの再会だが、感動など微塵もない。そう言えば、こんな気色悪い奴居たな、程度の感慨とも呼べない浅い思考。

 鬼舞辻無惨は阿部晴明という意味の分からない生き物が心底嫌いだった。ついでに阿部晴明も鬼舞辻無惨という『人間』が心底理解出来なかった。

 

 片や永遠を望み、片や不死の身を恨んでいる。

 死にたいだなんて、狂ってる。

 永遠が欲しいだなんて、狂ってる。

 

 あまりにも真逆を向いているものだから、合う訳もない。

 むしろ合わな過ぎるせいか、カッとなった拍子に殺そうがけろっと生き返られ馬鹿々々しくなったり、自身の生にも他人の生にも興味が薄い為に、ただの古い知人という認識しか出来ないせいか、のらりくらりと古い付き合いに成っていた。

 

 それはもう、古い付き合いだ。

 晴明は陰陽寮に属していたし、無惨は臥せってばかりの時間を過ごしていた辺りから、面識はあった。あまりにも寛解する兆しのなさに、妖の類かと呼ばれた陰陽士が晴明だった。

 

 そんなのもが、実しやかに信じられていた時代だった。

 清明はざっぱりと、ただの虚弱体質と言いきったが。

 

 気づけば朱点童子の騒動が収まってすぐ、帝の信任厚き陰陽士は突如失踪し、その他有象無象に興味の無かった公家の若様は鬼となって都を追われた。

 その後、数十年から数百年周期で、出くわす。最初こそ姿かたちの変わらない互いに若干の驚きは有ったが、互いに『精神疾患抱えてそうな不可解で頭可哀想な奴』という認識のもと、少々の惨事を起しつつ今に至る。

 

 




氷ノ皇子様、ラスボス製造機。そしてラスボスは全裸を晒す。

このお話は清明居ますが俺屍2とかいう事象は発生していません。
清明が居るのでネグレクト親は存在しますが、出て来ませんし親衛隊とか居りません!!!!
ラスボス製造機に出会う前に、朱点討伐して呪いの解けた一族の女の子が「お前が(朱点討伐)できただろ!?」と押しかけて殴り合ったりなんなりして、俺屍2正史から逸れました。天界に昇って居ません。
死んでも死んでもどんなに惨い死に方でも生き返ってしまう生き地獄タイプの不死なので、無惨様に対して永遠が欲しいとかこの人ドMなのかな?と思ってます。

焼身自殺全裸はやっています。
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