近界プルルン奮闘記 作:ドドドドド黒龍剣
「うう……ふうじんがあれば、ふうじんがあればじんはまけなかった!」
迅との5本勝負が終わったので一先ずは訓練室から出る。
陽太郎が迅が負けたことを認められないと言った顔をしている。と言うよりはポロポロと悔し泣きしている。
「風刃があっても負ける可能性もあると思う……オレも知らず知らずサイドエフェクトに依存し過ぎてた。いい勉強になったよ」
「風刃で挑んで来るならばそれを想定した戦いをすればいいだけの話だ」
風刃を持った迅を想定していないわけじゃない……が、
流石に通常のトリガーで黒トリガーに勝てると思うほど慢心していない。不意討ちや奇襲の類が効かない相手ならば尚更だ。
「よし、次は俺の番だな」
「違うでしょ……陽太郎、見ておきなさい。迅の仇討ちをするから」
「おい、お前等は無しだ」
今回のこの合同演習は弱い人を強くするのが主な目的であり、既に一流の人間を更に強くする為の演習ではない。
太刀川と小南がやる気を出しているが既に一流の人間である人間を相手にしたくはない……迅は迅対策とは言わないが、陰を会得していて今回それが上手く発揮したが、この2人相手ならば勝つことが出来るだろうか?……迅の弱点を突いたから勝てた感じがするな。
「お前達は俺の事を信頼も信用も出来ていないだろうが……今のでどうだ?」
柿崎隊、那須隊、三雲修、東隊、弓場隊の面々を見る。
俺にはポイントのブランド力というものを一切持っていなかった。ブランド力というものは意外と馬鹿には出来ない。あのメーカーだから、あの会社だから安心できる。信頼できる。信用できると無意識の内に人はそのブランド力に惹かれている。迅を相手に完勝したのでブランド力というものを手に入れる事に成功した筈だ。
「俺は俺が強くなる方法しか知らない……他人に指導したりする指導者的な立ち位置には居ない、上から命じられて前線で戦わされてるタイプだ。ボーダーの訓練システムは実によく出来ている。だから俺を無視して自己鍛錬に励むならばそれでいい……とりあえず10分間休憩させてくれ」
俺はトリガーを停止して生身の肉体に戻る。
なにか飲み物は無いのか?出来れば甘い飲み物が欲しいと言えば迅がジュースを取りに行ってくれる。無想で心を無にして陰で無駄な動作を無くしたのはいいが、頭のスイッチをオフからオンに切り替えるとドッと精神的な疲労が襲ってくる。
「お前……さっきの陰とか言う技を覚えるのにどれだけ時間を費やしたんだ?」
「分からん」
「分からんって」
「陰は無駄な動作を無くたり予備動作のモーションを無くしたりする技と呼んでもいいかどうかのレベルの技だ。誰だって何処かで動作確認の1つや2つするだろう。俺はそれを徹底しただけだ…………そしてそれは今も継続中だ。新しい技や技術を会得すればまた1から矯正しなおしだ」
柿崎が俺が陰を会得するのに掛かった時間を聞いてくる。
陰の技は完成する事が無い、そもそもで完成形すら存在していない技というより技術というよりも基礎に近いものだ。
「人間は器用な生き物だ、正しいフォームや型が存在していても体格や精神的な問題で無意識に自己流にアレンジをする、別にそれは悪い事じゃない、人間合う合わないの問題はある。けど、俺がやったのはその逆、正しいフォームを完璧に守っている。ストレスなんかの精神的な問題を排除してだ」
陰の正体はなにも小難しい原理じゃない。
予備動作等のモーションを無くしたりする。精神的動揺による動きの迷い等を無くす。人が無意識の内に勝手に弄くってしまっているものを本来あるべき形に変えているだけ。
「自分が思い描いている100の力を出そうと思って真剣にやっても自分が思い描いているものと実際の100の力は違って出し切れない。様々な理由がある、無駄な動きがあったり精神が揺らいだり……人間100ある内の80引き出せたら良いところだ。残り20は色々な事が要因して引き出す事が出来ない……俺がやったのは残り20を引っ張り出しただけだ……だから100じゃなくて120の相手には敵わない」
「つまり、お前より上な奴が居るって事か?」
「まぁ、そうだな。イアドリフにも何名か連携抜きで単体で俺を倒すことが出来る奴が居るし、そいつ等が挑んでも勝つことが出来ない
俺は昔よりは強くなる事は出来ているだろうが、それでもまだ分かる。ヴィザの爺に届かないことを。
俺だって毎日とは言えなくなっているが経験は積み上げているが向こうは俺よりも10年以上の厚みを持っている。同じトリガーを使ってもまだ倒すことが出来ない。それなのに向こうは
上の壁が物凄く厚いという理不尽さを知ってか柿崎は少し困惑している。
柿崎は今のボーダーが出来て間もない頃に入隊したボーダー隊員で様々なボーダー隊員を目にしている。当然、その中には迅や太刀川も含まれているだろう。柿崎の認識でも迅は攻撃手の中でも最強と言ってもいい存在で、そんな存在を完封した相手を倒すことが出来る相手が居て、それでも勝つことが出来ない理不尽な黒トリガーの存在がある。
「お前と付き合えば、俺は……俺達は強くなる事が出来るか?」
「俺は弟子を取った事が無いも同然で自分が強くなる方法しか知らない。自分が強くなれない手段は無理だと即座に諦めた……合う合わない可能性がある」
俺のやっている修行や特訓は果たしてそれで強くなる事が出来るのか?等の疑問を持っても同然な事もある。
現に覚えたのはいいものの、使っていない技術も幾つか存在している。トリオン操作の問題で覚えれなかった技術も多数存在している。
「こっちの世界は平穏な国で、お前には頼りに出来る人達は沢山いる。だから葵やリーナの様に強くなる事を強要するつもりは無い……お前には友達と楽しい時間を過ごす事が出来るんだ……無理にこうなる必要は無い」
「っ!?」
「んだ、その手は……」
柿崎と藤丸に手を見せる。
畑仕事の為に鍬を持った。銃をホルスターから抜いて銃口を的に向ける訓練をした。重さ6kgの木刀を毎日素振りした。管を付けた槍で5円玉の穴に向けて針を突き刺した。トリオン体で出来る訓練だが、生身の肉体レベルで精神がすり減るレベルで身に沁みつけた。
だから手は豆やタコだらけだ。ボロボロだ。手のひらの皮も剥けた痕跡もある。
トリオン体だから出来るけども生身の肉体だから出来ないって言うのも極力減らした。
「戦う技術が泰平の世にもなっても滅びないのは1の才能よりも100の努力が上回るから。1人の天才は凄まじいが努力家によって何百年も研鑽されて作られてきた武術の前では無に等しい。だから才能があるとか無いとかで区別はしなくていい」
最も、俺は少しだけ人より才能があった。努力する時間があった。努力する事をめんどくさがらなかった。効率の良い努力法を知っていた。
転生者だから色々と裏技を知っていたから此処まで来ることが出来た……転生者じゃなくて普通の人ならば今頃はイアドリフで野垂れ死んでただろう。
「お前は……頑張ったんだな」
「それしか道が無かったんだ」
藤丸は俺が近界民でなくこちらの世界の人間である事を知っている。
葵の存在等を考慮しても上から無闇矢鱈に俺がこちらの世界に帰ってきた
「さて、休憩は終わりだ……太刀川と小南は相手にしないからな」
「じゃあ俺はなんの為にここに居るんだよ!」
「お前が勝手に来ただけだろうが!」
俺と戦うつもり満々な太刀川だが相手をするつもりは無い。
休憩をする事が出来たので訓練室に足を運ぶのだが案の定、太刀川がついてきているが無視をする。
「準備出来たぞ」
「こっちも出来ました」
「俺達も準備出来ました!」
「私達も問題無いです」
弓場、修、小荒井、那須は準備が出来たと言う。
それに続き柿崎も出来たと言うのでオペレーターの準備が完了した。
「俺は俺が強くなる方法しか知らない……その内の大半は地味な反覆練習が多い。例えば槍の突きや剣の突きで5円玉の穴に通すのを100回繰り返すとか。別に俺が居なくても出来る基礎訓練は……まぁ、今は置いておこう」
「基礎訓練もいいけどよ、100の練習よりも1の実戦の方が大事なんじゃないのか?」
太刀川、五月蝿い。
無想とかの技術を教えてもいいが、俺自身無想をちゃんと会得しているかどうか怪しいところだ。
「知ってる奴は知ってると思うがこの前の大規模な侵攻でトリオン兵でなくトリガー使いが出てきた。向こうの世界の住人がこちらの世界もトリガーを使うと認識してこれからトリオン兵でなくトリガー使いが出てくる可能性が高い……仕方がない……太刀川、1回だけ勝負してやる」
「待ってたぜ、その言葉を」
「………
口で言うよりも実際に見てもらったほうが方が幾つか分かる事があるだろうから1回だけ相手にする。
『ジョン、
今回の訓練では
黒トリガーを持ち込んでいると知られればボーダーが総力をあげて襲撃してくる可能性があるだろうが……まぁ、そうなったらそうなっただ。
「(別に使うなとは言われてないし、誤魔化す)」
遊真が居る以上は下手な嘘をつくことが出来ないものの誤魔化す事ぐらいは出来る。
太刀川との試合を生で観戦していろとだけ告げて太刀川と対峙する。
「……武器を出さないのか?」
「その認識の時点で間違ってるぞ。武器にトリオンを注ぎ込むんじゃなくてトリオン体にトリオンを注ぎ込んで通常の何倍も運動性能に優れたトリオン体による徒手空拳もありえる……相手は未知の相手だからあれしてこないこれしてこないの定石が通じないのもあるぞ」
「成る程、京介のガイストみたいなのか……剣を拳で倒すことが出来るかな?」
ニヤリと笑みを浮かび上げると太刀川は弧月を鞘から抜いた。
ブザーが鳴り響くと同時に俺は重心を前にズラして無想状態に頭を切り替える。さっきの迅の時と違って予備動作を無くせばいいとか色々と余計な事をしなくてもいい。
太刀川を倒すことにだけ集中すればいいのはいいことだ。
太刀川は弧月を振るおうとするのでそれよりも先に顔に向かって殴りかかろうとすると太刀川は顔狙いだと即座に分かったので避ける
「っ!」
「山突き」
が、狙っていたのは顔だけでなくお腹もだ。
太刀川は殴り飛ばされるのだが直ぐに立ち上がる。
「生身の肉体だったら胃袋が破裂していたかもな」
「…………純粋な殴り合いならお前の方が上だが、知ってるか?剣道3倍段って言葉を」
面白いと笑みを浮かびあげた太刀川は二本目の弧月を抜いた。
やっと二本目の弧月を抜いた……だが、たった2つに過ぎない。剣の間合いを取られれば倒される可能性は高い…………とでも思っているのだろう。
「このトリガーの名前はサハスラブジャ……こちらの世界の神の名を与えている」
太刀川との間合いを詰めようとすると太刀川は弧月を振るおうとする。
余計な事を口走って情報を与えると後でレグリットに怒られそうだが、ある程度は好き勝手にしていいと言われているので好き勝手にさせてもらう。
「もらった」
「やらん」
「っ!?」
太刀川は旋空弧月を使わずとも俺を斬れる間合いに居る。
後は斬るだけだと言ったところで太刀川の手首が太刀川の意識外のところから手が出現して手の動きが封じ込められる。
「第三の手!?」
「いや、違う。第四もある!」
太刀川の意識外のところから手が出てきた……そう、文字通り手が出てきたのだ。
俺の2つの腕以外から更に右腕が1つ、左腕が1つ生えて伸びていき太刀川の手首を掴んで弧月の動きを完全に封じている。修と弓場は俺に腕が生えた事を驚いている。
「っぐ……」
「やめておけ、振り解けない」
弧月は手で持って振るう剣のトリガーであり腕を封じられればどうすることも出来ない。
意識外から伸びた2本の腕に手首がガッチリと掴まれており、太刀川は振り解こうとするが羅生門の力は並大抵じゃない。
「ここから往復ビンタを叩き込むか貫抜で腹を貫いてもいいがそれだと芸が無い」
「5本目と6本目の腕が生えた!?」
身動きが取れない太刀川の間合いを詰めつつ更に第5の腕と第6の腕を生やす。
なにをするんだと巴は見守っている。
「敵の左肩下に頭を潜り込ませて両腕の絡みを強固にし大地の巨木を引き抜く心構えで相手を高く持ち上げる両腿を抑えつける」
「あ、あの技って確か」
生で見るのははじめてだが知識としては知っていると驚きの顔で帯島は技を見る。
「き、キン肉バスターを撃つの!?」
那須もなにをするのか分かったのか声を上げる。
「キン肉バスター?」
「キン肉マンって漫画に出てくる必殺技の事だけど…………マジ?」
キン肉マンはまだ見せていないのでなんのことだ?と遊真が首を傾げるので熊谷が教える。
プロレス技なんて基本的には魅せる技……この技が実戦的な技かどうか聞かれればあまり実戦的な技じゃないだろう。まぁ、史上最強の弟子ケンイチでルチャ・リブレの敵が居たからルチャ・リブレやプロレスが戦えないとは言えない。
「舐めんな!キン肉バスターならひっくり返す事が出来る!!」
「誰が何時キン肉バスターを撃つと言った?よく見ろ。キン肉バスターには無い4本の腕があるぞ」
ガッチリと太刀川の手首を掴んで弧月を振るわせる事が出来ない様にしてある。
その時点でキン肉バスターではない。クアドラプルバスターだが、まだそれでも二本の腕が残っている。足の膝下部分をガッチリとホールドする。
「ターンオーバーでもマッスル・
高くジャンプして一気に地面に向けて急降下して尻を地面に叩き付けた。
「そして首、背骨、腰骨、左右の内腿の合計5つが破壊される」
『トリオン体損傷』
「普通の阿修羅バスターだ」
阿修羅バスターを太刀川に叩き込んだ。
太刀川のトリオン体が損傷したとアナウンスが鳴り響いたので無事に太刀川を倒すことに成功したようだ。
「さぁ、お前達とのタイマンだ……ああ、言い忘れたが弾系のトリガーは使うなよ。近距離戦を想定しての戦いだ、中距離以上の射撃戦はしない。素の実力を高めたいだろう……言っておくがお前達とは鍛え方が違う。精魂が違う。理想が違う。覚悟が違う。流れた時間が違う……1人で倒せるかな?」
予想外のトリガーとの戦闘もまた大事なものだ。
トリオン 39
攻撃 27
防御・支援 15
機動 13
技術 11
射程 6
指揮 7
特殊戦術 14
TOTAL 119
今後の展開
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そろそろ原作にいけ
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もう少しオリジナルをやれ。