R-TYPE FINAL2発売記念短編
(実は去年書いたけど没ったやつを放出するだけ)

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R-TYPE FINAL  抹殺装置が踊るとき

世界中何処を探しても、戦争のなかった場所はあるまい。

 

 昔の歴史学者が、かつてそう記した。戦争のない世界など、ありはしない。その昔共和と繁栄のもとに作られ、平和の希望をのせて飛び立ったあのフォアランナも、結局持ち帰ってきたのは何だ?2160年代の人物ならよどみなく答えるだろう。バイド。26世紀から飛来した、命ある敵意(ケダモノ)

 

「ええ、それで?」

 冷たく指揮官にはねつけられた伝令役は、光速回線越しに事実を告げた。認めたくない事実を。

外宇宙警備艦隊、壊滅。哨戒にあたっていたR-9B(ストライダー)および、R-9S隊は全滅。

 そのあまりに衝撃的な事実は、一時間以内に全居住圏へと伝達された。かくいう筆者も、この時衝撃を受けたものの一人だ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。人類を三度にわたって震撼させ、総人口の優に10%、のべ十二億五千と二百七十一人を死に至らしめた、未来人の粗大ゴミが!

 もはや人類に、国同士のいがみあいをする余力は消え去っていた。地球連合政府が発足12年目をむかえ、経済は飛躍的に成長したにもかかわらず、地球は多いに疲弊してしまった。

 

 ……しかし、人間がただ絶滅を待つのみでなかったのは我々の知るとおりである。翌々年、取材に火星基地へ足を踏み入れた筆者を、混迷と驚きが出迎えた。

「これは何です?新型機?」

 わたしは確か、そう質問したように思う。

「機密です。あのサインをお忘れですか」

 たくましい体の士官にぴしゃりと言われたのをよく覚えている。そんな訳で、当時の自著にその事は書けなかった。しかし、今その機密は解禁されたのだ(……これを書いている今はまだだが)。この際、存分に書いてしまおう。

 全体像はR-9Sに酷似していたが、その機体構造はもはや根本から違うらしかった。エンジンノズルはやや延伸され、Rの象徴ともとれるラウンド・キャノピーは総面が偏光ランド・グラスで覆われていた。そして波動砲ユニットは、かなり太い新型となっていた―士官や研究者を質問攻めにした末、やっと手に入れた型番情報には「R-9Ø、パイロット・SUR-SURASTER」と記載されていた。

(中略)

 アール・ナイン・スラッシュゼロ。その名を、わたしは程なくして聞くことになった。その1ヶ月後、彼女は電界25次元へ飛んだ。その顛末は、読者諸氏もよく憶えていることだろう。R-9Øは見事、マザーバイドを撃退したのだ。

 ……しかし、バイドは撃滅されたワケではない。いまだ電界25次元の底で蠢いているだろう。いつ奴等が戻ってくるか、我々は知りえない。それゆえ警戒は行われる―その時を待ち続け、いつか必ずバイドを征す。それが、地球連合軍(EarthUnitedForce)の役目であるのだから。

―ジェームス・カークライト著「R-9よ、平和は快適か」前書きより抜粋―

 

 

────

 

「……今作戦の最終計画、それは」

 火星、要塞都市グランゼーラ。報道衛星による生中継で、地球連合軍総合司令官の演説がホロテレビ越しにひびく。彼は弁舌だけでこの地位に上り詰めたような男だ。

バイドの完全根絶である!

 記者たちの間にざわめきが広がり、カメラのフラッシュがひっきりなしに焚かれる。だが、それをやや狭い四等住宅で聞く二人に、動揺は全く無い。むしろ一方は退屈そうな素振りさえ見せた。

「これを見せて何をしろと?感想を述べろ、とでも言いたいか」

「いえ、つまり―」

 もう一人、白衣の男はマユ一つ動かさず話した。

「もう一度、戦線に復帰してください。スゥ・スラスターさん

 直後に、こう言い直した。

「いや、少佐か」

 

 それを黙って聞いていたスゥは、当惑して口を動かした。

「……はあ」

 その声は、明らかに子供のそれであった。「少佐」という大それた肩書きを疑うほどに。

「現在あなたのR-9Øは、バイド汚染監視の上記念館に展示されています」

「その通りだが」

「ですが、この作戦の発表に伴い、()()()()()()()が発令されました。したがって、静態保存・動態保存問わず、展示・保存中のR機は改修して飛ばすことになります」

「それで私が?冗談じゃない」

 スゥはショートで切った髪の毛を弄びながら、そう呟いた。

ラグナロック(R-9Ø)はもう10年以上前の型落ちだろう」

「しかし、エンジン・火力ともにまだ一級品です。少し改修すれば、性能的には型落ちとは言えなくなります」

「第一、量産型がもう何年も前にロールアウトしてるじゃないか」

「そいつは所詮、有象無象の一つにすぎません。結局はアローヘッドの強化版くらいのものですが」

 そこまで言い、白衣の男は恍惚気味に空を仰いだ。

あれは完璧なワンオフ機だ。性能はアローヘッドの比じゃあない」

「あんたも技術者畑(Team R-TYPE)の連中か。まあ、そりゃマトモじゃないか」

 

 半ば諦めたように、スゥは言った。Team R-TYPE―バイドの出現が散発的になった現在では、冗談めかして「パイロット最大の敵」と言われるR機製作チーム。彼らのおかげで昔は「花形」と呼ばれていたテストパイロット職が、今や「カンオケ行き事前契約」と蛇蝎の如く嫌われるようになったのは記憶に新しい。

「でもねえ、僕も研究者ですからね」

 過熱した脳を押さえ、ハイテンションな白衣は何度も「すばらしい」を連発した。スゥは病院の狂患者を見る看護婦のような、とげとげしい目線を向けている。栗色の髪が少女らしい可憐さをつくってはいたが、この態度からは著しいギャップが感じられる。

 

「まあ、本題に戻ってくれ。私が現役を降りたの何年前だと思ってる?他に適任がいるだろ」

「ああ、それ……なんですけど」

 一転して、苦々しげに白衣が答えた。

「設計後に、機密保持でデータを破棄しちゃいまして。情報容量の都合上、これ以上追加もできないんです」

「それで?」

「認証できたのが、前パイロットのあなたしかいなくて……」

「……しかしだな、白衣くん」

 スゥはもはや断るのは不可能だと感じたが、どうせなら限界まで粘ってやろうと思った。

「私を見ろ。何歳に見える?」

「14、15くらいですかね」

「だが実際はそろそろ四十だ。君より二回りほど年上だな」

「その話は聞いてましたけど」

 スゥはにやりと笑い、白衣に顔を近づけた。

「ありがたいことに、この体にしてもらったおかげで結婚もできない、酒も飲めない、あげく都市にも住めないときた。そんな私が、予備役軍人とはいえ……喜んで戻ってくると思うかな?」

「その節はすみませんね。悪いですが僕設計に参加してないんで」

 クソ失敗した―スゥは舌打ちした。前もって答えを考えられていたらしい。かなりそっけなく返されてしまった。

「まあ、とにかく」

 白衣はメガネを直し、説明を始めた。

「最初の作戦は二日後にあります。それまで訓練でもしてて下さい」

「随分適当に話したな」

「僕は実戦データには興味ありますが、過程には興味ないんで」

「ふうん…私には興味ないのか?」

 

 少しからかってやろうと思ったが、白衣は真顔で、

 

「うーん、バイド汚染されたら少しは」

「……本当にTeam R-TYPE(あんたら)はからかいにくいな」

「まあとりあえず、兵舎に部屋空けといたので」

 

 スゥは無愛想な白衣に連れられ家を出て、兵舎の硬いベッドで眠りにつかざるを得なくなった。

 

 ────

 

 十年以上のブランクこそあれ、スゥがエースパイロットであることに変わりは無かった。訓練、ブリーフィング、さらに訓練……二日間のハードスケジュールをそつなくこなしたスゥは、午前5時に叩き起こされた。眠気の消えない彼女の端末に、地球連合軍司令官の演説が鳴る。

 

当時刻より、「オペレーション・ラストダンス」を発令。担当人員に告ぐ、緊急発進せよ。

 スゥは白いパイロットスーツに着替えると、ハンガーまで駆けた。整備兵の整備完了サイン。その横に見えたのは、少しも変わらないかつての愛機。

つらつら文句を言ってはいたが、それも結局無意味な嘘であったかもしれない。

どうであれ、この高鳴る胸と感情は本物だ。

 

「……ああ、パートナーのお帰りだよ。ラグナロック」

 

 機体は、他のR機とは明らかに一線を画していた。鋭角的な外見もさることながら、内部構造は全く違う。現場の整備兵たちは息を呑んだ―かつての英雄(R-9Ø)が、再び異層次元を飛ぶのだ!

 それは、不意にプシュっと音を立てた。伝統のラウンドキャノピーがスライド式に開く様は、まるで主人の帰りを待つ名馬(スレイプニル)のようでさえあった。

 キャノピーの密閉を確認した直後、偏光ラウンドグラスが薄青に光った。内部がかろうじて見れるくらいまで光量が調節され、内部超感覚レーダーが作動する。各部のスリットに淡く光が流れ込み、各動翼を操作。慣性制御装置(ザイオング・ユニット)の静かな低音が、威厳をもって場を支配した。光学兵器のセルフチェックが終了し、機体は垂直に微動する。そのままタキシング。

 

―こちらラグナロック、全系統異常なし(オール・システム・グリーン)。当機はグランゼーラ基地の指揮下に入る。

グランゼーラ管制塔に無線通信。管制塔がすぐに返信を返す。

―管制塔よりラグナロックへ、2番マスドライバーに移動して下さい。準備完了次第、射出します。

 

オリジナルR-9Øがマスドライバーに移動するさまを、他のパイロットでさえも見入っていた。その光景は記念式典などではない。実戦に参加するのだ。かの第三次バイドミッションから10年以上、それに憧れ航宙職についた若者もまた多かった。彼らにとってみれば、その憧れがいま飛ぼうとしているのだ。

見ないわけがなかった。

 

「ラグナロックより管制塔へ、準備完了」

―了解しました。射出秒読み開始。6、5、4…

「3、2、1」

 

電磁射出式特有の轟音を立て、16m大の機体をほぼ音速にまで達させながらR-9Øが発進した。その衝撃は慣性制御装置で最小限まで抑えられ、スゥには全く伝わらない。ヘルメットバイザーにホログラムが点灯し、FCS(火器管制システム)の通知を伝えた。

 

Weapon system request:select your force device

「あー、はいはい。これね」

 

幾年ぶりかに見たコンソール・パネルに強いディジャブを覚え、スゥはコントロール・パネルを動かした―ラグナロックの操縦系統はほとんどがタッチパネル方式であり、物理スイッチは左右に装着されたツインスティックのみだ―すぐに返事が返ってくる。

 

selected type#3:CYCRONE FORCE

「これも量産型の評判は散々だったな。ま、使ってないんで分からないけど」

 

サイクロンフォース。ゲル状に安定処理されたバイド体であり、その攻撃力を最大限発揮するためコントロールロッドは未搭載。にもかかわらずアンカーフォースのように有線装備でないのは、まぎれもなく「技術の進歩」といえるだろう。

度重なるバイド来襲により、TeamR-TYPEのような開発チームは狂気の速度で技術を高めて行き、R機は20年前後のあいだに信じられないような進歩を遂げていたのだった。

 

―管制塔よりラグナロックへ。そのまま市街地方面へ進んでください。巨大戦艦です。

「了解。僚機は?」

―これから一時間後、一機きます。最初はあなただけです。

「…それは、間に合うのか」

―おそらく。なお、これから貴官の指揮は人工衛星アルテミスに引き継がれます。幸運を、さようなら。

「了解。会えたら、また」

 

火星の成層圏スレスレを飛行するR-9Øは、単騎突入にふさわしい速さだった。マッハ5.9。もちろんスゥにその衝撃がそのままくれば、スゥは湯気を立てるトロピカルスープになっていただろう。だが慣性制御装置が働き、スゥにその100分の1ほどの衝撃も与えなかった。

 

そこに、R-9Øとほぼ同速で追いすがる影。IFF(敵味方識別装置)がアラート。バイド戦闘機。遥か後方を飛ぶ。スゥに気付いているらしかった。ライトスティックに圧力を掛け、機体をコマのように180度回転。敵機(ボギー)と相対。左手でレフトスティックのダイヤルを回し、兵装確認。

 

RDY(レディ) MEGA WAVE-CANNON、RDY RAIL-GUN

レールガンを選択。右手でトリガーをひく。二秒間射撃。自動照準が敵機を貫き、火星重力下に四散させる。ものの数秒で空戦は終わった。

R-9Øは再び通常航行に戻る。

 

「お出迎えはこれで終わりか…あー、あれが」

 

スゥの言葉通り、超感覚レーダーに市街地と巨大な戦艦が映った。グリーン・インフェルノタイプの巨大戦艦。ところどころ肉に覆われたそれには、薄く「ENF」の紋章が施されている。

かつて都市警備用に建造され、いざという時には我々の盾となり身を賭して人類を守るはずだったものは、今わたしに牙をむけている…

それは人間でも、戦艦でもない。バイド。人類の敵。すぐに通信を繋げ、報告。

 

「ラグナロックよりアルテミスへ、聞こえるか」

―こちらアルテミス、聞こえます。

「目標と思われる巨大戦艦を発見。攻撃許可を申請する」

―了解、兵器の無制限使用を許可します。

 

許可は取った。殲滅さえ行えば、あとは何をしても構わない。レーザー測距儀を起動。目標まで、丁度10キロ。この速さなら、一分と経たず会敵するだろう。

いつものように兵装確認。

RDY WAVE-CANNON、RDY RAIL-GUN

波動砲(WAVE-CANNON)を選択。右手のトリガーを引いたままホールド。機体前方に蒼い光が集約されてゆき、視界を少し遮った。チャージの重低音。これを五秒続ける。スティックがぶるぶると振動し、チャージ完了を告げた。

トリガーから、指を離す。バッと周囲が輝くと、光でできたとんでもない大きさの塊がすっとんでゆく。その大きさは、間違いなくR-9Øの3倍はあった。それが、凄まじい速さで戦艦を追う。弾着。爆発音。戦艦のもつ威厳あるビーム砲塔は、その光によって叩き潰された。砲身の一部は赤く融けている。

 

負けじと戦艦は残りの砲塔を総動員させ、一斉射撃(サルヴォー)。あたりに光線のリボンを作った。周囲のビルを巻き込んで溶断する。

ラグナロックはそれらをバーニア噴射で難なく回避してゆく。9門程度の砲撃など、いかに出力が大きかろうとR機の機動力の相手にもならない。スゥは再び波動砲をチャージ。3秒ほどで、チャージバーは満タンになった。さらにチャージ。バーがループし、もう一度満タンになる。その時を見計らい、射撃。

 

着弾したのは艦の側面だった。大孔があく。もはや装甲は無力に等しかった。R-9Øは出力を絞り、その孔に侵入。ライトスティックで90度回し、バイドセンサーに従って迷路のような艦内を進む。高反応のあるところに進む。感度を上げるたび、けたたましく叫ぶセンサーにスゥは奇妙なおかしみを覚えた。スイッチを操作するとピー!ガガガガ!ピピーッ…

 

「…ふ、ふっ」

 

こらえきれず、ひとしきり声を出して笑った。狭いキャノピーに反響し、なんだかエコーがかかったような雰囲気になった。

 

―笑っているヒマがあったら任務を進めてください。

「は、分かったよ、分かった、ふふ」

 

抑えるのが不可能になり、もう答えるのがやっとだった。

そこに、不意に光が照る。スゥは思い当たりがあった。波動コア。戦艦本体の制御炉だ。なるほどこれを壊せば、寄生したバイドも供給エネルギーを絶たれて死ぬ…

 

「…それじゃ、壊せばよろしいか!」

 

レフトスティックのセレクターをカチリと動かし、パネルに「HYPER」と表示されたのを確認した。そのまま、波動砲の要領で5秒ほどトリガーをホールド。チャージ音がやや甲高い。照準を手動に切り替え、無抵抗の波動コアに合わせた。

射撃。光が集約。あたりに光が照り、さきほどの塊に比べれば控えめな大きさの光が次から次へと打ち出されてゆく。通常では考えられない、波動砲の連射!

 

その光は非装甲のコアへバシュ、バシュと次々に着弾する。波動コアはそのたびに小爆発を起こし、爆発孔から光を漏らした。そのうち真っ赤に炎上し、完全に機能を停止した。

迷路じみた道を戻り、爆発孔から脱出。

 

「よし、よし。ラグナロックよりアルテミスへ、任務終了。RTB(基地へ帰還する)

―アルテミスより、了解。…結局、救援の出番はありませんでしたね。

「…そうだな」

 

動力を失った戦艦はみるみるうちに降下し、都市をひきつぶしながら墜落した。逃げなかった市民が何人か死んだかもしれない―スゥは、それに罪悪感を覚えることもなかった。この場合、避難命令から一時間も経っているのに避難しない方が悪いのだ。

 

そこに、R-9Øもかくやという高スピードで迫る戦闘機。IFF、反応なし。味方機。ラウンドキャノピーが、R機であると証明していた。

「ラグナロックより、そこのR-9E3(スウィート・ルナ)へ。所属と階級を述べよ」

 

レーザー通信。帰ってくる反応はやや初々しい。

 

「スウィート・ルナより、えー…第244航宙偵察隊、グレイ・カークライト大尉、です」

「キミが私の僚機か。ちょっと遅かったようだが」

 

そう述べると、グレイの雰囲気がやや慌ただしくなった。

 

「すみません!今後、善処しますので…」

「それなら期待しておこう。では帰還するぞ」

「了解!」

 

R-9Øは機体を真っ赤に赤熱させていた。さきほどの連射の余波だ。装甲を開いて機体回路を露出させ、冷却をはかる。この影響で、波動砲はしばらく撃てなくなる。こればかりは、現在の技術でも解決不能な問題だった。この冷却をなくすには出力を下げるか、機体を大型化して冷却系の容量を上げるかしかない。そのいずれも設計思想上不可能だった。単騎突入には、高威力・小サイズが不可欠なのだ。

 

「スウィートルナ、キミのTACネームは」

「ええと、エーピーアイです。エーピーアイ」

「オーケイ、エーピーアイ。私に付いて来い」

 

スウィート・ルナは偵察機でありながら、戦闘機に匹敵する破壊力を持っている。それゆえ非常に高コストであり、生産数は200機に満たない。そんな機体を操縦しているというのは、たとえ経験に乏しくとも優れた能力をもっている証左だった。

やがて、スゥは速度を上げる。巡航速度、マッハ7.3。エーピーアイもそれに追従。だが、直後に通信が入った。

 

―アルテミスよりラグナロックへ、グランゼーラには帰還できません。

「アルテミスへ、なぜ?」

―現在、許容数を遥かに越える数の発進を行っています。作戦のスケジュールも考慮すると、

最寄の輸送艦フェンリルに着陸するべきです。

「了解。あー、エーピーアイへ。針路変更。3時の方向、輸送艦フェンリルへ」

「エーピーアイ、了解しました」

 

輸送艦フェンリルはヨルムンガルド級輸送艦の二番艦であり、第31艦艇群の旗艦でもある。すでに艦暦15年を迎え、旧式化こそしていたものの、現在でもまだ前線で使われている。

 

「フェンリルへ、フェンリルへ。こちらラグナロック。着艦許可を要請する」

―フェンリルよりラグナロックへ、許可する。待機せよ。

「了解」

 

R-9Øはフェンリルの艦前に静止した。艦艇用ザイオング・ユニットの電子ベースのような轟音が、両パイロットの心臓に響く。その音はうるさい事を除けば、規律のとれたおしゃれな音とも思えた。

 

その二分後、着艦許可が出された。フェンリルの下部に行き、無骨なアームにひっつかまれて、艦内部に収納される。

 

R-9Ø、帰還。任務達成度、100パーセント。

そう手動で打った。最新型コンピュータやAIは、バイドに対する脆弱さにより軍用機にはほとんど採用されていない。そのため、R機の性能はパイロットの腕に大きく依存していた。

 

ーーーーー

 

フェンリルの艦内は、多いに沸き立った。英雄の帰還は、軍部のプロバカンダ以上の戦略的な意味があった。この単騎突入機と、少数の支援機―エーピーアイがこれだ―のみによる、バイド支配域への強行侵攻。マザーバイド撃滅隊のための陽動として、ではあるが、スゥは再びバイドを討つことになる。フェンリルの通信モニタに、文字が写された。

 

TIPS:次出撃予定日は3日後。それまでに、第三十一艦艇群は所定位置へ移動せよ。

 

フェンリル内部に、束の間の平穏が戻った。

 




この後いろいろ続かせるつもりでしたが、話を大きくしすぎて自分でもよくわからなくなり没となりました。
最後に、R-TYPEを再びシューティングとして世に送り出してくれたグランゼーラに感謝します……いやホントに。

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