Kämpfe gegen die Erde 作:Kzhiro
「中将。報告にあった『謎の船団』を見つけたのはこのあたりだと……」
「わかった。……にしても、今日は一段と太陽嵐が酷い。警戒は怠らないように」
「はっ!」
そう言いながらブーフホルツは考え込む。
どういうわけかイゼルローン回廊を越えてサジタリウス椀にやってきた『謎の船団』を捕縛、撃滅すべくブーフホルツ指揮下の第一〇艦隊が引っ張り出されたことに一番苛立っていたのは彼自身であった。
戦争が終わり両椀の反抗勢力の掃討、と意気込んでいたところに突然『半個艦隊に満たぬ規模の船団』を探せとの命令、これで気落ちしない方がおかしい、と普通のものは思うだろう。
だがしかし、よりにもよってダゴン星域に逃げ込んだその船団が如何なるものか、幕僚らは若干の嫌な予感を感じていた――
そして、警戒を続けて早三日が経とうとしていた。
「まだ、見つからないのか?」
「は、はい、しかしながら他の星域で見たとの報告もなく……」
「御託はどうでもいい!たかだか五千隻未満との報告だぞ!?その程度の船団に手を焼いていては我々の立場というものがだな!」
「しかし見つからぬものは……」
ばん、とコンソールを叩く音が響く。
「だが、これ以上待っていても仕方がない!どうせここまでこそこそと逃げ隠れている、ということは弱体に違いないのだろう!なら全艦隊で一気に叩いてしまえばいい!」
「……はっ」
そうして、第一〇艦隊は索敵を行っていた駆逐艦を戻し、全艦隊で動き出す。
――それが、運命の分かれ目とも知らずに。
オトラン槍騎兵艦隊旗艦、【ギェヴォント】。地球時代に『国が滅ばんとした時に現れる、伝説の騎士の住まう山』の名を冠したその船の艦橋は、空調の音が響くほど静まり返っていた。
「ヨハイーナ、どうやら『敵艦隊』が動き出したみたいだが……」
そう、もはや家宝とまで呼べそうなほどに古い『望遠鏡』を眺めながら桃色の髪の参謀がこの艦隊の主に語りかける。
ヨハイーナ・フォン・オトラン。銀河帝国の大貴族、オトラン伯爵家最後の生き残りたる彼女は、美しき銀髪を手で弄りながらこう言った。
「どうやら、彼らは過去に何があったかを忘れたのか、或いは二の轍を踏まないと思ったのか……ですが、助かりました。
……コホン、奮戦するは今!オトラン槍騎兵の戦い方をその身を以て教えて上げましょう!」
「「はっ!」」
そうして、三千隻余の『巨大なワルキューレ』は遂に動き出した。
――――――
――――
――
「一体、どういうことだ!?」
酷い汗を流しながらもブーフホルツは燃える僚艦を尻目に叫ぶ。
ほんの半刻前にはいなかったはずの艦隊が突如背後から襲いかかってきたのだから。
ましてやその艦隊が『大量の曳光ミサイルをぶちまけてきて、一瞬で味方の千隻余がスクラップにされた』のだから。
しかも旗艦にすらミサイルが直撃、脱出挺は燃え盛っており、炉の爆発も間近だ。
逃げ場なき棺桶の中で、ブーフホルツは何故こうなったのか必死に考える。
が、結論を出す前にひしゃげた柱がこちらに向かって倒れてくる。
「くそったれ」
そう漏らす前にその肉体は形を崩した。
「敵旗艦、大破確認!」
そう参謀が叫ぶと、ヨハイーナはこう告げた。
「今です!更に一撃を叩き込みましょう!」
そう言うが早いか、オトラン有翼槍騎兵艦隊は頭なき肉体を蹂躙しに、一斉突撃を行う。
即ち、この戦いの雌雄は決した。
そして、爆発音のファンファーレが奏でられるのであった。
――第二次ダゴン殲滅戦。後にそう呼ばれる戦いはここに始まり、そして終わった。
その作戦は至って単純で、油断しきったところに大火力を叩き込み旗艦他を沈黙させることで士気を下げ統制出来なくする。
その後、混乱した敵残存艦隊を突撃により沈める。
この単純な戦術こそオトラン有翼槍騎兵の特徴であった。
そして、この戦いでブーフホルツ中将は戦死、第一〇艦隊は残存艦艇数隻、しかもその艦艇も長期修理が必要というレベルまでダメージを受けた。
対してオトラン有翼槍騎兵艦隊の損壊は僅か数隻のみであった。
五倍近い戦力差をひっくり返して一方的に殲滅したオトラン有翼槍騎兵艦隊は殲滅後即座にオリオン椀に戻っていった。
かくて、オトラン有翼槍騎兵艦隊はその有用性を証明して凱旋したのであった。