Kämpfe gegen die Erde 作:Kzhiro
文字数が足りない分は私が加筆しました。
「いやまあ商売あがったりですよ。同盟の農業は土の上で育てるのは高級品で基本的には『野菜工場』『穀物工場』といった水耕室内生産ですからね。今から土で育てろと言われても...もともと土の上で育てている上に人件費が安いオリオンの作物と比べたら輸送費込みでも価格競争に負けますよ」
ここは惑星シロン。同盟本土でも屈指の農業惑星であるが最近は景気後退の真っ只中だ。
「私」はフェザーン商人という表の顔を使って同盟本土ーサジタリウスの諸星系の情報を収集している。自治領主、いや、元自治領主の命で調査しているが、やはり地球教の出した「作物は母なる地球、またやむを得ない事情によりそれが出来ない場合は地球の兄弟たる惑星の地上の土で育ったもののみを口にすべし、聖職者は必ず地球産の作物を食すること」という新しく布告された律法(教義と同様に扱われる法律のことだ)は不評であった。
特に聖職者(中央政府及び星系政府の公務員も聖職者と見做される)たちの間には。
地球教上層部でも農学と農政の専門家と名高いダージリン主教シオン氏の「地球の農業生産は全聖職者に必要なカロリーを供給出来ない」という声を押し切って制定されのだが、案の定不足をきたした。流石に同盟中央政府――というより地球教本部もサジタリウスに向けて配給を開始したが全く量が足りず公務員達は闇市場に頼る有様である。
しかも、これはほんの一例にしか過ぎない。他にもサジタリウス(そして恐らくオリオンでも)の実情を真空にでも放り投げたような「律法」がどのような過程を経て地球愛党中央委員会と同盟議会を通過するのか全貌は誰も掴めないだろう複雑怪奇な権力闘争の過程を経て次々制定されているのだから。
社会の底の方ではすでに不満のゼッフル粒子が蓄積している、誰かがマッチを擦れば大爆発するだろう。
私はどうルビンスキーに報告したものかと考えながらベリョースカ号へと帰ることにした。ヤンの奴はあのロクデナシ共の穴倉に放り込まれて大丈夫だろうか。
今日も人間が武装した男たちに出荷される子牛の如く連れ去られる。
彼らは神聖地球同盟、ひいては地球教団が制定した「律法」をどのような形であれ破った人間たちである。
「律法」を破った人間には男も女も、老いも若きも、そして故意であろうが不本意であろうが関係ない。平等に神聖地球同盟の特別行動部隊に連れ去られていく。
彼らの行き先は「律法局」と呼ばれる地球教団の部局が管理する「再教育キャンプ」。ありていに言ってしまえば強制収容所の類であった。
彼らはこの再教育キャンプで地球教の教義や思想を徹底的に叩き込まれ、「芳しくない」とみなされれば最悪殺されるというある種の地獄じみた環境に放り込まれるのだ。
最も、このキャンプを「生きて」帰った人間などいない。「芳しくない」と見做されて殺されるか、もしくは帰ってきたときには既に本人の人格そのものが死んでいることになっているのだから。
彼らを憐れむものなどいなかった。憐れんだところで何になるというのだろう。まずお上に届くことはまず無いし、最悪あの隊列に加わることになってしまう。彼らは俯いて黙っているしか術はなかった。
「おらっ!この不義者め!早く車に乗れ!」
「捕まったのが俺たち律法局で良かったな!宗教警察だったら撃ち殺されていたぞ!」
「まあいい!お前ら不義者にはこれから地球教の素晴らしい教えを、そして『聖女様』の素晴らしき考えをみっちりと叩き込んでやる!」
「聖女様のお考えの素晴らしさをしっかりと理解すれば、お前らは不義者から見上げた信徒になるのだ!」
職員たちはそうして律法を破った哀れな人間たちを家畜運搬車を改良した収容車に押し込め、あぶれた不義者がいないことを確認すると、車を西へ、『再教育キャンプ』へと進めていった。