Kämpfe gegen die Erde   作:Kzhiro

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執筆者は兵部省の小役人氏


解放戦線御前会議において

オリオン腕全臣民解放戦線――それはある種”ルドルフ風”官僚組織としての完成形といえるかもしれない。

 

ビョークルンドはそう内心考えていた。

 

この地下組織......国家を動かすのは官僚でも軍人でもなく、全てを一纏めにした官僚組織――否、皇帝と文武幕僚団が一体となった組織そのものが有機的にオリオン腕に散らばった組織を動かす、その中枢では”代替可能な綺羅星”が皇帝を取り巻いている――

 

皮肉なことであるが独裁者が求められる時が訪れた。

 

その時に寡頭的かつ複合的な“ルドルフの作り上げた統治機構”の理念が再建されたのかもしれない。

 

いや、それはそうか。何しろルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは軍人であり“敵と戦う組織”を作り上げることに才智を注に続けたのだから。

 

「首脳部を代替可能だと言えるのは君が“この国”の官僚だからだよ。国家の利とあらば皇帝と同じ方を向く。天命を革めようとする奸臣であろうとも危機とあらば机の下で蹴りあいながらも手は握る」

 

若き保安官僚は皮肉っぽく財務担当の雑談に合いの手を入れた。

 

悪癖、腐敗が根を下ろし、衆愚が繋がれて土を耕し、商売人は自由を求め、革命主義者は帝政を打倒しようとする、それは“国の中”の出来事だ。

 

「なんとも驚くべきことに革命屋も自由主義者も【オリオン腕とサジタリウスに国がある】ことにおいては同意しているのですね」

 

ビョークルンドと改革の為に手を組んだ弁護士、ケレンスキーは苦笑した。

 

「それでは状況を確認するとしましょう」

 

持ち回りで行う部門間協議......通称御前会議が始まった。

 

「現在、我々はオリオン腕内で正統な政府として活動しています。つまりは“サジタリウス腕より流れ込んできた叛乱軍”に占拠された土地と星間航路の奪還に向けて活動しています」

 

ビョークルンドが目配せに気づいたケレンスキーがしれっと口を挟む。

 

「奪還の暁には復興のために“ライヒスターク”の設立のお約束をいただきたいものですが......」

 

ハンソンとカストロプが口を開こうとするがゲオルクとオフレッサーが咳払いをして止めた。

 

「......本題に入れ」

 

「オフレッサー上級大将、順番が前後して申し訳ない。ですがこれも本題の一環です。地球教は恐るべき敵ではありましょうが我々の組織拡大につながる手段を発見しました」

 

「“反教権運動”とのネゴシエイトが本格化しつつあります、同志ハンソンが危険を冒して動いてくれました」

 

謝辞に返ってきたのは“さっさと続けろ”と言いたげな不機嫌な視線であった。

 

“ナグルファルの船頭”カール・ハンソン、労働者運動の最過激派でありプロレタリア独裁を唱えている。中産階級主導の改革の為にリヒテンラーデや豪商と手を組み動いていたビョークルンドは政敵である、本来は。

 

「フェザーンの旧財閥と旧世俗派、同盟軍のアナキスト被れの私兵達の集まりであった連中は現状では所帯はそれほど大きくありませんがサジタリウス腕とフェザーンの地下ネットワークを築き上げています」

 

「口だけではないのかね?」

 

宇宙軍統括、航路を動くという最も危険で情報が頼りとせねばならないシュターデンは懐疑的である、思想ではなく実務的な態度を崩さないのは美点だ。

 

「共和主義者は――」

 

ゲオルグは口を開いた。

 

「共和主義者はその政体上、各地域に平時でも組織を持つ、叛徒の首魁に一度はなったトリューニヒトとやらが健在であり、あのカルト共と敵対するのであれば、そのネットワークは“根絶”は難しいだろう」

 

だが、と言葉を続ける。

 

「手を組むのは魅力的でしょうが、情勢が動いた場合、あの手の世帯の小さな組織は何をするかわかりません」

ビョークルンドは頷いた。

 

「機会主義者の集まりなのは間違いないが現在、我らが手を組みうる地下組織として最も統制された組織でもあります」

ハンソンが舌打ちをしつつ頷いた

 

「同意する、飛び切りの腐敗ブルジョアの集まりだが、であろうと徐々に再建が進む我々の組織において彼らが作り上げたネットワークが大いに役立つのも間違いない」

 

ビョークルンドは黙りこくる内部統制担当に視線を向ける。中道派であるからこそ、このような役回りを期待され財務担当になったのだ。

 

「ヘル・ラング。貴方は合流した際に彼らを扱えますか?」

 

「率直にお答えするが、彼らの私兵隊は彼ら個人に忠誠を誓っている可能性が高い。その手の輩は自由を謳っていますが彼らは彼ら個人を滅却して従っているものです。取り込む際には慎重に扱い、組織を解体することが必須となるでしょう。そしてその際に彼らは抵抗、いやあるいは我々の組織により広大な根を張ろうとする事もありうる…その手の輩は既にいくらでも取り込んでおります」

 

ハンカチで汗を拭うふりをしながらラングはカール・ハンソンに鋭い視線を向けている

 

本来であればこの場で殺し合いが始まってもおかしくない。

 

「目的とするネットワークは奴らの組織に依存したものだ。上から乗っ取る気でかかれば間違いなく痛い目を見る」

 

「だが組織飛躍のためには彼らのネットワークは必須だ、オリオン腕と接触するには特に」

 

「その交渉の為には例え口約束であろうも“戦後”を口にせねばなりません。例え――」

 

ビョークルンドは見回す、自由主義者、社会主義者、農民運動家、公安官僚、大貴族元盆暗息子、叩き上げの陸戦屋と艦隊屋、官僚肌の艦隊参謀......そして皇帝の外戚に......血塗れの改革者。

 

この寄せ集めでありながら奇妙な団結を見せた組織がそれを口にするのも......毒盃か、それとも新たな国の雛形を作るのか。

 

「我々の組織にとってギャラルホルンとなろうと」

 


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