Kämpfe gegen die Erde   作:Kzhiro

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執筆者は私ことkzhiro。


外交の要石、あるいは地方の抵抗者たち

「...以上が連絡官キルヒアイスから送られてきた今月の分の『オリオン便り』です。」

 

眼前の峻険な山を思わせる皺の張った顔と目の奥にある種の狂気を宿したいかにも胡散臭く見える部下、ペルムハイム『侯爵』の報告を聞きながら、薄暗い部屋の主は書類に刻まれている文字とそれが伝えるはるか星の海の向こうの事象を舐め回すように眺め、その優れた頭脳で噛み砕いていった。

 

「解放戦線主催のゼネスト鎮圧に関する諸行動によって死者1億人以上、オーディン中央市街区はほぼ全壊、ね。新設されたばっかの組織だというのに、なかなか派手にやってくれるじゃない。さしずめ『平和の敵を打ち倒す無敵の矛である』と喧伝するでしょうよ。ああ、その前に『虐殺などなかった』か『虐殺はあったが微々たるものである』と付けるのが先か。」

 

「変に感心している場合ではありませんぞ!解放戦線はいわば反地球教の同志!彼らの独善的な全体主義体制を打破すべく我らは160年の怨恨を超えて手を結んだのであり...」

 

「サンドバッグの間違いなんじゃないかしら。」

 

部屋の主は目の前の自称貴族が熱弁を振るうさまを見ながらそう呟いた。

 

(思えばこの男とは長い付き合いね。もうかれこれ10年近くになるかしら。)

 

部屋の主はふと過去に思いを馳せた。

 

ペルムハイムは地球愛党が同盟全ての政治的実権を握るまで自分を貴族家の末裔と称し、同盟帝国連盟なる極小政党を率いてきた男である。

 

帝国と同盟は人種的に考えて同胞、故に争いを収めなければならないという眉唾物の主張を繰り返していた彼らは795年から一転して注目される存在となった。言わずもがな、地球愛党の政権奪取である。

 

ペルムハイムは聖戦などという馬鹿げた行為を止めるために反対者に転じた。だが議席が存在しない政党の悲哀か、その声は届かず、とうとう当局から思想犯罪者として追われ、今に至っている。

 

部屋の主の私見としてはペルムハイムは面白い男であった。彼はどこぞの国立大学の古ゲルマン史を治めており、なおかつ完成度の高い論文を書き上げていることが彼女のお気に召したところであった。ただでさえ少ない彼女の組織である。共通の話題で話せる人間は貴重だった。

 

「...故に何かしらの支援を解放戦線に送るべきなのであります!彼らと我らが共倒れになるその前に!」

 

そんなことを考えている間にペルムハイムの長ったらしい演説は終わったようだ。彼は言葉を占めるとともに一つの計画書を執務机に置いた。

 

「彼らに軍需品を中心とした支援船団を送ることを提言します!一刻も早く軍事的損失を立て直し、早急に神聖地球同盟政府に打撃を与えてもらわねばなりません!」

 

彼女は書類をざっと見渡し、一瞬ため息がつきそうになる衝動に駆られた。『三巨頭』への根回しはペルムハイムにやってもらうとして、解放戦線の実質的最高指導者、血濡れの改革者、黒薔薇の冷血姫と顔を合わせるのは、慣れているとしても心に来るものがある。

 

「...サンドバッグが早めに倒れられても困るしね。何かしらの支援を送る、という案自体は賛成よ。『三巨頭』との詳しいすり合わせ、および船団に関しての計画立案は侯爵、貴方に一任するわ。」

「このペルムハイムにお任せあれ!陛下の命であれば何なりと行いますぞ!」

 

ペルムハイムは満足そうにそう言うと、大股で部屋の外へと出ていった。

 

部屋の主はカップに入っている冷めた紅茶を一口喉に流し込むと机に備え付けられているラジオに手を伸ばした。

 

『...銀河統一及び平和到来記念日を目前に控え、各地の都市部では熱狂に包まれています。各地の星都では記念式典のために警備を厳重に行うということで、一部に交通規制が...』

 

『また当日は世俗派残党系列組織及び解放戦線の攻撃が予想されており、ホンパン長官は宗教警察軍を一部サジタリウス腕に派遣する見込みであると表明し...』

 

「...ほんと、どこも同じような放送ばかり。」

 

部屋の主、マンフレート亡命帝の血筋にして798年まで全ての亡命者の希望であり、そして今やトリューニヒトらに外交的な面で協力する地方の反対者たちの頭目ということになっているツー・アルレスハイム博士ことマリアンヌ・フォン・ゴールデンバウムは、そう呟きながらサングラスを外してから椅子にもたれかけた。そういえばアンドレイの部隊は今回はどれだけ神聖地球同盟の手垢がついていない歴史的文献を持ち帰ってくれるのだろうか。帰ってくる時が楽しみである。そう思い、彼女は10分の仮眠に入った。

 

オリオン腕全臣民解放戦線への支援船団派遣が承認されたのはその月の定例会議においてであった。

 

 




明らかに別の世界線で活動している人がいますが異なる経緯を辿った並行世界の同位体ということにしておいてください()

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