捏造、矛盾、一部設定の意図した無視、黒トゥアンおりゃん、黒ユージェンおりゃん。
それから、ぼくがかんがえた最強の英雄王が出ます。
以上に嫌悪感がある人はブラウザバックを勧めます。
基本的な登場人物はほぼ英傑達で、ソラス視点で話が進みます。
※※※※※
先日のアトナテスの助言に従い。
俺は訳知り顔の占星術師こと、ソラスの部屋に訪れた。
すると、待っていましたとでも言わんばかりに、彼女はソファに腰掛け。湯気の立つ紅茶を啜っていた。
すでに見知った仲で、立場は俺の方が上であるかもしれないが。
彼女は、俺の先祖たる英雄王と共に。物質界をガリウスから守った、偉大なる先人だ。礼儀は払うべきだ。
ソラスに催促されてから、俺はソファに座り。目の前にある用意されていた紅茶に、俺も一口啜る。
星の導きで、来ることが分かったのか。
俺がそう尋ねると、ソラスはえぇとだけ返し。
「何の用事ですか、王子君」
にこりと微笑む彼女に、俺は単刀直入に聞く。
英雄王、その生涯。全てを知りたい、と。
「全て、ですか。千年戦争の魔王との戦い辺りの、わくわくでドキドキな、ハチャメチャ物語ではなく?」
全てと、俺は改めて答える。
英雄王。
魔物が溢れかえり、誰もが諦観の中で、絶望が支配した世界。
その世界で立ち上がり、剣を取り。女神アイギスの加護を受け、魔王を討ち滅ぼした存在。
ということは誰もが知っている、かつてあった歴史だ。物質界ならどこへ行っても、多くの者が知っている。
俺も、書庫にある英雄王の物語は何度も、何度も擦り切れる程読んだ。
だが、昔から疑問があった。
英雄王の物語は、大まかにはこうだ。
悪い魔王が世界を支配しようとした。
そこに神が選んだ英雄が、国を立ち上げ、英傑という仲間達と一緒に魔王を倒した。
そして女神様が魔王を封印し、世界に平和が訪れ。
英雄王は立派な王様として、生涯を終えました。
めでたしめでたし。
そう、物語は決まって、千年戦争終結後となると、途端に話の内容が薄くなる。
英雄王の晩節の話に至っては、全く残されていないのだ。
魔王討伐までの話が英傑達の活躍含めて、色濃く残されているにも関わらずだ。
いつか聞こう、いつか聞こうを繰り返していく内に随分と時間が経ち。英傑の塔、最近事実が発覚した悪霊もとい、王国大迷宮の事実。そして管理者の少女との交流の後、再度読み直した英雄王の物語。最後に、アトナテスの、俺と皇帝に持つ。英雄王になく、俺達にある力という話を聞き。
今一度。いや今だからこそ、英雄王の全てを知らなくては、そう思い。
アトナテスが、英雄王の全てを知っていると推した。
ソラスという、生き証人に聞こうとなった訳だ。
んー。と、人差し指を頬に当ててソラスは考えている。
今までソラスと、英雄王を話題として話をしたことは幾度かあったが、その晩節までと聞いたのは初めてだった。
何か話したくなくないことでも、あるのだろうか。日を改めるべきかと顎を少し落とすと。
「……仕方ないですね。王子君の頼みですから」
ソラスはそう言い、また一口紅茶を啜る。
そして。
「面白くない、話ですよ」
釘を射す様に、ソラスは言う。
その顔は、普段見せている愉快で、柔らかい顔ではなく。
商人たちが商談の時に見せるような、冷たさに似た物を感じた。
彼女が、このような顔をするとは。余程のことだろうと、俺は改めて姿勢を正した。
「王子君問題です。英雄王。その名は、何というでしょう」
ソラスの問題に、俺は困惑した。
難しいのではない。簡単すぎるのだ。こんな問題は、幼子でも分かる。
アルトリウス。
それが、かの英雄王の名前だ。
俺の名前も、父王もそれに、ある程度あやかった名前をしている。
だが、アルトリウスの名だけは、誰であっても名乗ることは許されていない。
名乗る事すら、恐れ多いとされている程だ。
「いいえ、違います。英雄王の名は、そんな長い名前をしていません」
だが、ソラスは否定した。
馬鹿な。英雄王から続く、千年を否定された気がした俺は、ショックのあまり、思わず立ち上がりかけるが。
胸に両手を合わせ、祈る様に瞳を閉じるソラスに、俺は静かに腰を下ろし直す。
「王子君いいですか。私は一度だけ。大切に、とても大切に、心を込めて彼。英雄王の真名を告げます」
しんと部屋が静まり、ソラスと俺の鼓動の音だけが、部屋を満たす。
だが、ソラスが再び口を開いた時、全ての音が英雄王の真名に音を譲った。
「アルト」
ソラスが言ったことと言えば、ただの名だ。
だが、その名は、俺が一人受け止めるには、余りにも重すぎた。
その名が持つ、大きなナニかに、俺は気圧され。
千年の重み。万感の思いとはかく言うのかと、俺に確信させた。
「……では、お話ししましょう。英雄王がまだ、無名の剣士で、小さな一団を率いていた頃の話。星を詠む者ソラスとの出会い。英傑達の出会い。魔王との決戦。続く再生の日々、そして……晩節を」
これは、英雄王の死までの物語。
そして同時に、ソラスが見てきた千年前の千年戦争の話。
ソラスが付き添ってきた、一人の男の話。