千年前戦争アイギス 占星術師の昔話   作:青き男

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21/10/19
そろそろこの小説を書き始めて二度目の英傑ガチャ来るという事実に結晶が震えるこの頃


E15 神を冠する獣

 何事も、悪い事というのはどれだけ対策していようが、いまいが唐突に起こります。

 魔物の出現もそうでしたし。

 赤の団と敵対した人達の戦いもそうでしたし。

 最近の魔神降臨もそうでした。

 そして、今回もそうでした。

 

 再び物質界に降臨した魔神と戦い。

 魔神を封印が解かれること前提で封印することで、その精神に深い傷を与え。

 ゲートを破壊することにより、魔物の侵攻を食い止め。

 残党を退治すれば、戦いは終わりというタイミングで。

 

 天より、後光に差されながら、それらはやってきました。

 手に剣を、杖を、弓を携え。

 背には翼を、頭上には輝く光輪を。

 無機物めいた美しさを備わった人。

 それは、伝承に謳われる天使と呼ばれる者達の似姿そのもので。

 

 「おぉついに、ついに天界は我らに人の子に。使いを送り給われたのですか!」

 

 団員の中でも信仰心の厚い。

 神官戦士達やヒーラー達が初めに武具を地に下ろし、天使達に跪き。

 その姿を見て続くように。団員達も、魔神に蹂躙された現地の人々も天使達に跪きました。

 私も彼らを見て、そうしないといけないのかな。と、思いましたが。

 近くにいる団長をチラリと見ると。

 

 団長は天使を見て。

 前髪に隠された瞳を驚いたように見開き、閉じ。再び開かれた時には瞳に意志を。

 敵と戦う。そんな闘志という名の意志を、固く宿していました。

 天使達に相手に。

 

 どうして団長は、天使達にそんな敵意を。そんな疑問は、すぐに解消されました。

 天使達に跪き頭を垂れる者達に。天使達は攻撃を始めました。

 唐突に、当然のように、無機質に。弓から矢を、杖から魔法が放たれました。

 

 「なっ!」

 

 天使達は天界に住まい。物質界を見守ってくれている。

 神と天使は試練は与えるが、人の味方である。

 それが、私の認識であり。物質界に住まう多くの人々が、共有する認識でもありました。

 だからその攻撃に、味方であるはずの存在からの攻撃に。無意識に攻撃されるはずがないという思い込み故に、誰も反応することができませんでした。

 

 ただ、一人の人物を除いて。

 

 おそらく、天使達に跪き。

 縋る者達は、飛来する天使達の攻撃に。本来は最期まで、その攻撃に気が付いてなかったでしょう。

 このまま、無慈悲に死を待つだけだった彼らが。

 天使に攻撃されたと、気が付くことが出来たのは。

 

 彼らの前に。象徴である赤いマントをなびかせ、天使達の攻撃を、炎の魔法で撃退し。

 それどころか天使達に飛ぶ斬撃を浴びせ。

 跪き、縋る者達に。雄々しき背を見せつける。団長の後ろ姿を捉えた時でした。

 

 「て、天使様?それに団長一体何を?」

 

 困惑を隠せず、震える声で問い掛ける団員に。団長は剣先を天使へと向けると声を張り上げました。

 

 「武器を手に取り立ち上がれ!あの者達は、天使は私達の敵だ!!」

 

 その声に、すぐさま私はグランドクルスの攻撃対象に、天使達を加え。

 アトナテスやサナラ達も団長の声に呼応して、各々武器を天使に向けます。

 ただ、団長の声にすぐさま反応できたのは、普段から団長の傍にいることの多い。

 いつもの、七人だけでした。

 

 天使は敵。団長の言葉を聞いても、団員の多くはその言葉を飲み込むことが出来ず。武器を構えはするものの、混乱が上回っていました。

 かくいう私も敵とは認識しても、混乱は残っていますが。

 

 「天使様が敵だなんて、う……嘘ですよね?団長、天使様?」

 

 震える声で問い掛ける団員に、団長は静かに首を振ります。

 天使は天使でその団員に、無機質な視線を一瞥しましたが。

 すぐさま、真っ先に天使に武器を向けた団長に視線を注ぎました。

 

 「あなたは罪な人の子ですね。無垢なる少女を、苦痛も絶望もなく。浄化される機会を奪うなど」

 

 浄化?浄化とは先ほどの攻撃のことか。

 天界は、神は人に死を求めている?

 

 「その浄化は……誰の命によるものかな」

 「決まっています。我ら天使を動かせる者はど唯一無二。神です。この浄化は、神の意志なのです。さぁ人の子よ。我らの浄化を受け入れなさい」

 「……要するに死ねって事か」

 

 声を普段よりも一回りは低くしたアトナテスが、天使達の要求をこれ以上なく。分かりやすく説明してくれました。

 そして、そのまま突出しかねないアトナテスを、団長は片手で抑え。

 

 「……君に一つだけ聞いてもいいかな」

 

 団長は重い息を吐き。

 

 「浄化は、君の意志でもあるのかな?」

 

 団長はとても悲しそうな表情を浮かべたまま、そう問いかけました。

 

 ……団長は必要とならば、人を殺します。

 ですが、積極的に命を奪うことはよしとしません。

 

 多数の異国出身者、多数の種族が入り乱れる赤の団です。

 その過程で、幾度も文化的なあれこれや、政治的。果ては種族的な問題でぶつかり合うことがありました。

 そしてその度に、団長は時には対話を、時には戦いをして。

 最終的には、和解して彼らを赤の団に迎え入れました。

 

 天使達にも、団長はそれを試みているのでしょう。

 ですが、その問い掛けに、天使は無機質な表情を浮かべたまま。

 機械仕掛けのカラクリ人形のように、不気味に首を傾げました。

 

 疑いを知らぬ、無垢にして清らかな天使には。

 残虐にして、無慈悲な言葉を知らない魔物と同じく。

 団長の言葉は届いてないみたいです。

 

 「……赤の団。戦闘開始!」

 

 天使達への宣戦布告をし、先陣を切る団長に真っ先に呼応したのは、アトナテスとトゥアン。赤の団でも、団長に次ぐ二人の戦士でした。

 そして、その後をサナラが地脈の力を束ね。影の射手とユージェン、アンブローズはそれぞれの判断で、戦士達をサポートできる位置へと移動し、天使達に攻撃を始めました。

 私も、彼女達に続くよう、星天召喚の儀を始めます。

 ですが、突如グイッと腕を掴まれ、星天召喚の儀を中止してそちらに視線を向けます。

 

 「ソラスさんお願いします!団長を止めてください!天使様はきっと、何か理由が!」

 

 先ほど、天使に攻撃を受けかけた団員でした。

 手どころか、体全体が震え、目の焦点が定まってません。

 彼女は、かつてあった国の高名な神官だったはず……。

 切に神を信じてきたからこそ、彼女は今の光景を、認める事が恐らく出来ないのでしょう。

 気持ちは、決して分からなくはないのですが……。

 

 「……天使様に、神様に理由があったとしても、戦ってください。今、私達が生き残る為に」

 「そんなっ……!」

 

 彼女は視線を忙しなく、焦点の合わない目を動かし団長と天使を見ます。

 最前線で剣を振るいながら、混乱のまま動かないヒーラー達の代わりに。アトナテス達の傷を癒して回り。生き残る為に、天に真っ先に立ち向かうことを選んだ団長。

 無機質で、どれだけ味方の天使が蹴散らされても、まるで使い潰すかのような熾烈さで。眉一つ変えずに攻撃を繰り返す天使。

 

 「……分かりました」

 

 やがて、数的有利が逆転されつつある天使達が。伝承では敵対者であるはずの魔物と共に。

 赤の団に敵対始める光景見て、ヒーラー達も天使達と戦う覚悟を決めたようです。

 

 

 

 その後、私達は天使達を下しました。

 多くの天使達は大きな傷を負うと、光の粒子のようになり。天に昇っていきます。

 昇天したのでしょうか。

 

 「あれぇ。たぶん復活するでしょうねぇ」

 「けっ、天使も魔神も、何度も復活するのは同じってか」

 「アトナテスちゃんはいい皮肉を言いますねぇ」

 「アンブローズ。天使を魔神達と同じ封印術で、封印することは出来るかな?」

 

 アンブローズは考える姿勢を見せ。

 

 「ご期待に沿えずごめんさない団長ちゃん。あれにはあたしの封印魔法は効きませんねぇ」

 「誰がやるとかは関係ないですか?アンブローズさん」

 

 サナラの武器である。鎖付き分銅を掲げ首を傾げるサナラの問い掛けに、アンブローズは首を振ります。

 

 「サナラちゃんいい質問しますねぇ。あとでたくさんもみもみしてあげますぅ」

 「アンブローズさんは触り方がいやらしいから駄目です!」

 「あら残念。おまけにもう一つ残念ですがぁ。あたしの封印魔法は魔だけにしか効果がありませんねぇ」

 「魔には魔、天には天のみ通じるということですかね」

 「影の射手は、いやエルフ達には天使達や天界に関して何か情報ないかな?」

 

 団長の問い掛けに、今度は影の射手が考える姿勢を見せ。

 

 「……世界樹は天界に通じると聞いたことはあります。エルフの祖先を辿れば何か情報がでるかもしれませんが詳しくは……私も長く生きてきましたが、神が天使を使わせ、物質界に仇なすという話を。一度として聞いたことがありません」

 「今回の戦い。いやそれ以前から始まってる魔物の侵攻も。物質界にとって、かつてない異常事態ということでしょうか。母様」

 「そうね。ユージェン。本当に……今までにないことが、今はあまりにも続いています」

 「今回のが、最後だとは思わない方がいいみたいだね」

 「団長!それフラグって奴ですよ!」

 「おっと、発言には気をつけるんだよアトナテス」

 「何で俺に飛び火してんだよ!」

 

 サナラのツッコミに、場が和やかになり。

 皆に少しだけ笑みを取り戻し。

 

 「で、どうする団長。あの様子じゃ天使達はまたくるだろ?ここに残って戦うにしろ、撤退するにしろ。早く決めた方がいい。準備が必要だ」

 

 トゥアンに団長は、肯定するように頷き返したことで。

 先ほどの和やかな雰囲気が切り替わり、場が改めて引き締まります。

 

 「本来の目標である魔神は撃退できたことだし、今は撤退しよう。皆が、万全の状態で戦えないだろうしね。各国に、今回の襲撃を広める必要もあるね」

 

 周囲を見回すと、死なない為生き残る為とは言え。天使達に反抗したことへの動揺がまだ、団員達に残っているのが分かりました。あんなことがあったのに、まだ跪いて天に許しを請う人もいます。その天がもはや敵であると言うのに。

 

 「……天界に居る神様は、どうして人を浄化せよなんて言ったのでしょう」

 「人が嫌いになったのか、私達人の信仰心が足りないのか……それは分からないな」

 

 苦笑いをする団長に釣られて、私も笑みを浮かべます。

 そうですよね。神様の考え何て、神様しか分かりませんよね。

 

 「けど……私は諦めない」

 

 シン……と、静かですが力強い。団長の言葉が、私の心に響きます。

 相手の事は分からないです。ましてや考えを知りたい相手は神様です。

 ですが、この力強い熱さを感じる。彼の言葉は分かります。

 

 「どれだけ魔が蔓延ろうとも、天が鉄槌を下してきても。

 私は絶対に諦めない。私は物質界を、この世界を守る」

 

 堅く拳を握る団長に、希望の灯を感じ高揚感と同時に。

 相も変わらず格の違いというべき。痺れるような、そんな圧を私に感じさせます。

 思わず、気圧されてしまいそうになりましたが。

 

 「そうですね。必ず守り抜きましょう!」

 

 そう、何度も何度も挫けてばかりではいけません。

 私もまた、団長に負けないよう力付く強く返すことが出来ました。

 そして、撤退を始めようとしたその時。

 

 「……!!皆、戦闘準備!!急げ!」

 

 唐突に声を上げた団長に、私達は跳ね上がるように急いで武器を構えます。

 ですが、周囲に魔物も天使も確認できません。

 何が来た。という疑問は。

 

 「な、なんですかあの光は!?」

 

 眼前に迫る強烈な光によって視界が阻まれ。

 

 「……ここは?」

 

 気が付いたら、戦場から離れた場所にいました。

 

 「おいアンブローズ。何だったんだ今の?」

 「……分かりませんよ。分かりませんが、何か起きたのは確かですねぇ」

 

 どうして突然、戦場から離れてしまったのか。

 訳が分からない現象で頭が混乱して、まだ整理できていませんが。

 周囲を見渡し。アトナテスとアンブローズがいることを確認して。

 続いてサナラ、トゥアン。全員が混乱を表情に浮かべてたままでしたが。あの時私の周辺にいた人物が全員いることを確認して。

 

 「だ、団長はどこに!?」

 

 最もいなければいけない人物の不在に、私達は気が付き。混乱という酔いから冷め、場に緊張が走りました。

 

 「トゥアン!隊の指揮をお願いします!」

 「お前達密集陣形だ!隊列を組め!」

 

 放っておけば、団長を探しに飛び出しかねない人物を、私は幾人も知っています。だからこそ、今は一度安全の確保のためにも、トゥアンにお願いをして。

 トゥアンの号令によって、混乱が残り続けていた空気が変わり。

 ピリッとした戦場の雰囲気に包まれました。

 

 前衛職、後衛職。各々自らの立つべき場所は、すでに幾度も戦場を経験し。

 日々の訓練により、体で理解しているので。

 すぐさま隊列を組まれ、武器を構えて敵を待ちます。

 

 ……そしてそのまま、緊張状態のまま十分ほど時が経ち。

 魔物も天使も、先ほどの不可解な光も来なかったので。

 不可解な気味の悪さを覚えながらも、一度警戒を解きました。

 

 次に私はアトナテス達に、この場にいる団員達の安否の確認をお願いします。

 団長ならば、無暗な行動はせずにきっと、そうしたはずですから。

 そして団員達の安否確認をしてる最中に。周辺の状況の確認をお願いした影の射手により。

 

 「ここは魔神と天使達と交戦した場所より、後方にある平原。私達が一度通った場所みたいですね。補給線の維持を担当していた団員が、私達を見かけた時驚いていましたよ。どうして本隊が後ろから現れたんですかって」

 

 そう言われて、私は人ではなく景色を見ることで。

 ようやく私達は今、どこにいるのかを理解出来ました。

 こんな、気付こうと思えばすぐにでも気が付くことが出来る。基本中の基本のようなことを、忘れてしまったのは悔しいですが。それは一度置いておいて。

 なぜこんな所にいるのか。という原因、疑問は考える間でもなく分かります。

 あの光以外ないでしょう。

 

 「あたしは以前。神の力の一端に触れたことがあったが。あの光は、その神の力に似たモノだと思う」

 「あの光は神様パワーが由来ってことですかぁ。団長ちゃんが言ってましたが。

 この世界にはまだまだ。未知が溢れてますねぇ」

 

 おそらく、天使達が何かしただろう。という結論だけは出しておき。対策等々は不十分ですが。

 

 「光のことは後にして、早く団長を探しましょうよ!」

 

 未だに見つからない団長に、涙ぐむサナラを見て、私達は同時に頷き。

 光のことは保留にしました。

 サナラに言われるまでもなく、まずは団長探しが優先です。

 団長があっての赤の団ですから。

 

 そして、団長の捜索を始めてそんなに時間を経たず。

 私達は団長の居場所を知ることが出来ました。

 

 その居場所とは、なんてことはありません。

 あの光に身を包まれる前に、私達がいた戦場でした。

 ただ、それを知った時。私達は顔を青ざめしました。

 

 遠目からでも分かる程の恐ろしく太い爪牙を持つ。

 まるで、丘と見間違うほどの巨躯の獣。

 そして、獣に護衛するように取り巻く高位を証明するかのように翼が多き天使達。

 さらにはどこからか駆けつけてきた魔物の群れ。

 

 それらに、私達全員がどこかへ行ってしまったことで。

 全ての敵を、たった一人で相手にして戦っている団長の姿。

 

 誰の合図もなく、私達は団長の下へ急ぎ、駆けだしました。

 

 

 

 そして、私達は失敗しました。

 到着と同時に、私達に気が付いた団長は、一瞬安堵の表情を浮かべましたが。

 すぐさま、顔を険しくして叫びます。

 

 「皆!今すぐベヒモスから距離を取るんだ!またあの光が来るぞ!」

 

 ベヒモス、光。

 この二つが意味する物はと思い至る前に。

 またあの光が私達を襲い。

 気が付いた時には、先ほどまでいた後方の平原に、私達は立っていました。

 事態が飲み込めず、呆然と立ち尽くす私達の代わりに、アンブローズが呟きました。

 

 「これぇ……まずいですねぇ」

 

 さすがに二度も、同じ失態をする訳にはいきませんので。今度は二手に分け。時間差をつけた上で、団長と合流するよう計画を立て。私達は戦場に再び突入しました。

 ですが、その頃には、団長はあの大きな獣ベヒモスも、天使達も魔物達も。

 団長の卓越した剣技と、天賦の魔法の才によりほとんどを撃退していました。

 ますます人並外れて強くなっていく団長に、畏怖の戦慄を感じながらも。

 

 決して、団長は不死身の存在ではないと、証明するように。

 比類なき戦果の代償に、全身に傷を負い。鎧は血に濡れ。

 ぜぇぜぇと荒い息を団長はしていました。

 

 「神をも恐れぬ人の子よ。何故我らの浄化を拒む?もはや物質界に未来はないというのに」

 

 団長に剣を突き付けられながら、問いかける天使の声も表情も。とうに戦局は決し、追い詰められているはずですが。未だに無機質なのに対して。

 

 「私はとっくに誓っている。この世界を守ると。私が信じ。私を信じてくれる。大切な者達がいるこの世界を」

 

 誓っていると告げる団長の言葉は、天使とは対照的に熱を帯び。

 ただただ、一人で大きな獣と天使達の軍勢を相手にして戦い抜き。勝利した団長の戦いぶりに、圧倒されるしかなかった私達に。

 その決意が本物で。

 改めて赤の団は、例え相手が神であろうとも、抗うことを証明するかのように。

 団長は、最後の天使に剣を振るい。

 形を保つことの出来なくなった天使は、光の粒子となって天に昇って行きました。

 

 完全に勝敗がついた戦場に、沈黙が流れ始めると同時に、私達は一斉に頭を下げて謝罪します。

 

 「ごめんなさい……団長を戦場に一人残してしまいました……」

 

 天使の襲撃と、謎の光による。二度もやってしまった戦線離脱。

 どちらも想定外の出来事とは言え。

 どうして団長だけは、光の影響を受けず。

 たった一人だけ、戦場に残ってしまったのかも謎とは言え。

 

 団長をたった一人、戦場に取り残してしまった。

 叱られる。なんて甘い表現では許されない失態です。

 共に戦場に立つ者としても、恥ずかしい。

 

 どうか罰を。

 皆思うことは一緒で、団長の正当なる怒りが振り下ろされるのを。思えば一度として、怒鳴り声すら上げた記憶のない団長の怒りを想像して。怯え顔を浮かべて待っていましたが。

 

 「……?何をしているんだ皆?」

 

 私達の行動が理解できないかのように、軽い口調で団長はそう言うと。

 

 「天使の襲撃とは、とんだ不慮の事故だったね。今回は色々と遅れをとってしまったが。勝利は勝利だ。さぁ帰ろう皆」

 

 傷だらけの体のまま。私達を不安にさせないようにするためか、力強い足取りで。

 いつものように、誰よりも前に歩き出しました。

 

 天にも怯えぬ英雄、ここにあり。

 そう、誰かが呟きました。

 

 

 

 天使、そして神獣。

 本来は人々を守護してくれている。そう思っていた存在が敵対したと言う事実は。

 ただ純粋な力を振るう以上の衝撃を、当時の物質界に齎しました。

 

 私達はいわば、まったく痛みに備える暇なく。突然殴られたみたいなものです。

 そんな中で、避ける所か、すぐさま殴り返そうなんて人。

 私の知る中では英雄王くらいでしたね。

 

 王子君はどうでした?

 ……あぁやっぱり。血は争えないのでしょうね。

 

 

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