千年前戦争アイギス 占星術師の昔話   作:青き男

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無事ホルテウスとラーワルをお迎えしたが、登場させられる気がしない。
遅筆が悪いよ遅筆が。

ついでに八周年目最大の衝撃はアテおじドラゴンの真名が明かされたことですな。


E16 終わりの始まり

 天界からの、天使と神獣の襲撃。

 神が授けた不可思議の武具や、加護を受けた人がいる。

 神の存在が、限りなく立証されている物質界で。

 

 古くから味方だと考えられていた。

 天界の突然の襲撃に、宗教組織の支配力が強い大国の一つは。組織の土台であったはずの、信仰すべき存在の不信により。組織的な結束が崩れ、脆く崩れ去りました。

 

 当然、被害はその大国だけではありません。

 大なり小なり、日々行う。

 ささやかな祈りによって。魔物の襲撃に混乱を増すばかりの時代に、ただじっと耐えていた。善良なる人々の心をも、天は引き裂きました。

 魔物の襲撃以来、過去の戦を忘れ。

 国も人種を超えて、結束を強くしていこう。

 そんな動きが赤の団以外でも、ようやく広まろうとしていた物質界の人々の対応は。

 

 天使達の浄化を受け入れる者。

 抗い、生きる為に戦うことを選んだ者。

 あろうことか、魔に信仰を見出し。魔の主、魔王を信奉を始めた者。

 

 大まかに、この三通りで、無論赤の団は抗い戦い続けることを選びました。

 ただ、間違いなく言えることがあるのならば。

 天使達の襲撃を皮切りに、戦火がさらに広がりました。

 地域によっては、神と同様の信仰対象となりうる存在達も、人々を襲い始めました。

 

 「東にいる畏れを糧にする妖怪に、ドラゴンと竜神の末裔たる竜人までもか」

 

 影の射手が集めてきた各地の被害報告に、私達は苦々しそうな顔を浮かべるしかありません。とにかく、被害が多すぎます。

 人心は惑い続け、敵は増え続け。復興の目途もまるで経たず。

 大国さえも、人の営みが出来ない。

 

 人は回復魔法と、挫けぬ心と意志があれば戦うことは出来るでしょうが。

 物は破壊されたら、直すには人手がいります。

 それに、もし野畑が焼かれてしまえば、そこから得られるはずの恵みがなくなり。

 消費ばかりが増え。赤の団どころか、物質界そのものが。

 魔物達との継戦能力が奪われようとしています。

 

 ……私達はいつまで、誰にでも手を伸ばし続けられる。赤の団でいられるでしょうか。

 団長は一度、限界を感じて。各国の王達の批難を承知の上で、自分達の力で人の営みを送れる場所。

 赤の団の拠点を作りました。

 

 そして、今再び限界が迫っているのを、団長でなくともひしひしと感じています。

 私達は、いつまで私達としての在り方を保ったまま、戦えるでしょうか。

 その時団長は、どうするのでしょうか……。

 

 「団長は前、魔王を倒したら戦いが終わるって言ってましたよね。その魔王を直接叩くと言うのはどうでしょう?」

 

 会議中にサナラが団長に、そう提案しました。

 赤の団の、団長の最終的な目標は魔王討伐です。

 団長も以前、魔王を倒せば魔物の侵攻が止まると言ってました。

 今では敵が魔物だけではなくなりましたが、サナラが言う事はもっともな気がします。

 魔王を倒せば、きっと平和が。

 

 ですが、サナラの問い掛けに団長はふるふると首を振り。

 暗に無理だと伝えます。そうでしょうね。私も不可能と思います。

 

 「どうしてですか?」

 「同じ土俵に立ってないからだろう」

 

 トゥアンが分かったか。とでもいいたげに口を閉ざしましたが。

 サナラは納得してないようで、首を傾げました。

 あー、とトゥアンは続く言葉を探している内に、代わりにアトナテスが口を開きました。

 

 「サナラよ。ゴブリン一匹相手に、俺達赤の団全員が出張って倒しに行くか?」

 「しませんね……あぁ」

 「今まで通り。魔物を物質界に送っていれば勝てる戦に、わざわざ魔王が物質界に出張るまでもないってことだ。そういうことだよな、トゥアン」

 「ん、そういうことだ」

 

 今の物質界は、そこに生きる人々は、わざわざ魔王が直接出向くまでもなく勝てる。

 ……なんとも気分が沈みそうになる表現です。

 魔王の勝利が意味するところはきっと、物質界の崩壊。

 人の滅亡を意味しているのでしょうから。

 

 「でも、サナラの言う通りかもしれない。相手が同じ土俵に来るまで、じっと待つだけが戦いではない」

 

 団長の声に、私達は注視して。

 

 「必要なら、私が一人魔界に乗り込み魔王を……」

 「「「団長!」」」

 

 それを聞いた時。

 私は、私達は全員声を張り上げ。団長に詰め寄ります。

 ふざけるな。と。

 

 魔界に単身乗り込み魔王を討つという、団長の言葉が本気に。

 必要ならば、本当にやる気に聞こえたからです。

 

 私達には、全くの未開の場所である魔界。

 入ってしまったら、二度と戻ってこられる保証がない場所に。

 勝てるかどうか、そもそも生きて帰ってこられるかどうかも分からない。

 そんな、戦いに団長だけを向かわせる。

 そんな無謀を、仲間である私達が許していいはずがありません。

 

 「二度と、そんなことを言わないで下さい」

 「……すまない」

 

 私達の抗議に、団長はそう謝罪しました。

 ですが、私が欲しかった言葉は謝罪ではありません。

 冗談だ。そういった誤魔化しの言葉の方を、聞きたかったです。

 

 「……一先ず。今私達が優先して戦うべき相手は天使と神獣達だろう。神の威光。神獣達が持つあの光は厄介だ」

 

 無理矢理に話を変えられたのは気がかりですが。

 単身魔王に挑むなんて話を、続けるよりはるかにマシです。

 

 先日の戦いをまとめた書類を引っ張り出して、私達は振り返ります。

 

 神の威光。

 それは、天に仇名す者を遠ざける拒絶の光。

 団長が一人取り残された後。天使から光の能力を聞いたみたいです。

 トゥアンのように神の加護がある訳ではないのに。

 なぜ、効かないのかという。驚愕の顔を浮かべられながら。

 

 なぜ効かないのかは、保留になりました。

 誰も分からないですし、団長もその辺りに心当たりがないみたいでしたし。

 

 さて、改めて神の威光の力ですが。

 敵を遠ざける光には有効範囲があり。神獣から離れていれば効果がない。

 また、その転移魔法に似た力は。例え神を冠する獣であっても、そう何度も何度も短時間で使える力ではないので、一度神の威光を発動させてしまえば。しばらくの間は発動できない。

 

 以上に二点が、神獣との初戦で得た収穫であり。

 その情報を元に、対処方法が考案されました。

 

 単純に一波、二波と神の威光の発動タイミングに合わせ。

 次々に兵を出撃させるという戦い方です。

 ……今の団長が戦場に立つことで起きる現象の対処と、あんまり変わってないです。

 現象が発生した人を順次撤退させ、穴埋めに出撃するのが、一斉にになったくらいです。

 

 ただ、本来なら現象が起きるまで。戦うことが出来た人まで、強制的に撤退させることになるので。兵の人数に限りがある以上、誰かがその人の負担を担うことになります。

 神の威光の影響を受けず。

 現象が起きない誰か。

 ……団長が負担を担うことになります。

 

 他に戦法はないのか。

 団長に負担が集中することは、戦う前から分かり切っていたので。会議後団長抜きで、何度も私達は議論しましたが。今後神獣を相手にするには、これしか方法がなく。せめて、現象の影響をまったく受けない者達が、分散して配置するしかないのが実情でした。

 

 こうして、団長の唯一性と負担が増えていく。

 ですが、戦場を白紙にする。軍そのものをどこかへ飛ばしてしまう。

 神の威光の本当の恐ろしさを、私達はまだ知りませんでした。

 

 

 

 神獣との戦いから一月程経った頃。

 その凶報に、団長は酷であると分かっていても。

 その報を知らせたエルフに、団長はもう一度、尋ねざるおえませんでした。

 

 「間違いなく。妖精郷が落ちたんだね。影の射手よ」

 「……はい。そして女王も戦の中で、その命を散らしました」

 「そうか……」

 

 黙祷する団長の傍らで、私は口をポカンと開けていました。

 弓と魔法を得意とするエルフに、赤の団で幾度も魔物と戦った屈強な団員達の混成部隊が。同盟相手である妖精郷を守っていたのです。魔神相手に防衛に成功した。という知らせも、聞いた事があります。

 それなのに、あまりにもあっさりと、妖精郷が陥落してしまったからです。

 頭がまだ誤情報じゃないのかと疑っています。

 

 けれど、普段はもっと余裕のある表情を浮かべて、周囲を見守ってくれている影の射手が。

 皺のある顔に、必死で無表情を張り付けて、団長と同じく黙祷し。

 その隣には、まだ年若いエルフの戦士が人目に憚ることなく。

 涙を流しながら、妖精郷に起きたあらましを伝えてくれました。

 

 妖精郷に神獣が現れた。

 

 団長は天使達に襲われたことを、信じてもらえない事。知らせた後には必ず混乱が起きる事。どちらも承知した上で、それでも尚。

 神獣の神の威光の力を危険視し、それの対処方法を広める為に物質界中に伝えました。

 

 団長の一報と同時に、物質界各地に天使達が現れ、魔物と同様人々を襲い始める報を聞き。

 混乱ばかりしていた各国の王達とは違い。

 エルフの女王は団長の言を信じ。

 すぐさま軍を再編成して、神獣の対策をしたみたいですが。

 

 神獣を相手にするべく待ち構えるエルフ達の前に、魔神が降臨しました。

 ……してしまいました。

 

 神の威光により、どれだけ戦場を有利に整えても戦場そのものを白紙にされ。

 魔神という、アトナテスやアンブローズといった個々の能力が、どれだけ優れた人達であっても、周囲の協力無くして戦えない相手が、白紙にされた戦場に降臨して蹂躙する。

 悪夢としか表現できない、凶悪なコンビです。

 

 どれだけ侵攻を止めようとしても。

 神の威光により。思うように戦うことが出来ず。

 強制的に分断された戦力では、魔神相手に抑え込むなど不可能。

 

 そのまま神獣は妖精郷の首都へ直進し、そこで神の威光を発動。

 神の威光の前には、幾重に張った陣も強固な城も意味をなさず。

 どこかへ飛ばされた女王達の前に、魔神とその配下の魔物が現れ。

 最後は……。

 

 聞けば聞くほどに、どうしようもない。

 絶望的な戦いであったと、伝わってきます。

 

 はっきりいって。私よりも、団長を理解しているかのような態度をしていた。エルフの女王は好きではありませんでした。

 ですが、最期まで魔神と神獣を前に、エルフの女王として毅然と指揮を執り続けたと聞き。

 私も女王に、遅れて黙祷を捧げます。

 

 「妖精郷にいた団員達は?」

 「全員女王が亡くなった後も、一人でも多くの同胞を、赤の団の拠点に送り届けるべく。最後まで私達と共に戦ってくれました」

 

 団長は悲痛な表情を浮かべ、そのまま天を睨み。

 

 「よく生き残ってくれたね。今はゆっくりと休むといい」

 

 ふっと安堵させる笑みを一つ浮かべた後。生き残った妖精郷のエルフ達や団員達を労わるように、そう告げました。

 そして、妖精郷の生き残った人達が去った後。

 

 「影の射手よ。君も今日は休むんだ」

 

 普段にも増して静かだった影の射手にそう言い。

 

 「……私は大丈夫ですよ団長」

 「女王は、君の友だったのだろう。休むんだ」

 

 断りをいれる影の射手に、団長は有無を言わせない。

 断固した口調で影の射手に命じると。

 

 「一日、時間をいただきます」

 

 そう言い残し、影の射手は音もなく執務室を出ていきました。

 

 「ユージェン」

 「はい」

 「影の……君の母親と一緒にいてあげなさい」

 

 そして、狼狽えているユージェンに団長は優しく勧めます。

 

 「私が一緒にいても慰める事なんて……あんなに思い詰めた母様を見たのは初めてです」

 「だったら、なおさら一緒にいてあげるべきだ」

 「団長の言う通りですよ。ユージェンちゃん。傍に誰かが一緒にいてくれるだけでも、ずっと楽になる事もあるんですよ」

 

 赤の団に入ったばかりの頃を私は思い出しながら。私もユージェンに勧め。

 ユージェンは迷う表情を浮かべましたが、やがて意を決したように表情を固めると、執務室を出ていきました。

 影の射手は、ユージェンに任せましょう。

 影の射手も強い人です。きっと、明日には普段通り戦ってくれるでしょう。

 

 「これからどうしますか団長?」

 「一先ず、各地に出兵している団員達や、各国の戦況を知らないといけないね」

 

 そう言って各地の混乱を書き続けられた報告書に、目を通し始めた団長に。

 薔薇の香りを漂わせながら、正面に立つ妙齢の美女が一人。

 アンブローズ。

 彼女も普段とは違って、やけに神妙な顔をしていました。

 

 「どうしたんだい。アンブローズ」

 「団長ちゃん。以前から申し上げようと思っていましたが」

 

 問いかける団長に、アンブローズは焦らすように一拍置いた後。

 

 「英雄王に、なりませんか?」

 

 その問い掛けに、しんと場が静まりました。

 

 アンブローズの誘いは、団長を知る者であるならば。

 きっと、幾度も考えたことがある誘いでした。

 私も考えたことがないと言えば嘘になります。

 人望も、才能も満ち溢れた彼が王になれば。きっと、物質界を受け止める王にだってなれると確信していています。

 彼に、その気さえあればですが。

 

 「それは、中央の王からの受け売りかな」

 

 団長は団員からも、共同戦線の同盟を組んだ者達からも、中央の強国の王様からも。

 王を名乗ってみないかと。すでに言われてきました。そしてその度に団長はのらりくらりと回避してきました。

 そういった場面を何度も見ていると。

 本人が嫌だとは言ってませんが、団長は王にはなりたくないのだろうな。てことは何となく察することは出来ます。

 どこか冷たく感じる団長の物言いは、王への誘いへの拒絶に私は思えました。

 

 「いえ、転生の魔導士。アンブローズがあなたを見て。英雄王になるべきだと思ったから、こうして問いかけているのです」

 

 普段の間延びした口調ではなく。きっぱりとした口調でアンブローズは言い放ちます。

 そして、その会話の内容が内容なだけに。団員達が、気が気でない様子のまま、団長とアンブローズの話に耳を集中させます。

 

 「私は、由緒ある家柄でなければ、血筋も持ち合わせていないよ」

 「高貴な血筋を持つ者が、王になるではありません。

 民が求め、その求めに応じて立ち上がり。民がその者を認めることで王が生まれるのです」

 「私が王を名乗れば。魔物に国を奪われ、いずれ復興を願う者達から。その立場を簒奪し、願いを打ち壊すことになるのではないか?そんなことは出来ない」

 「自らの力で国を取り戻せないのならば、そのまま滅びてしまえばいいのですよ。王が亡くなっても人がいれば、国は世界は再興できるのですから」

 

 あんまりなアンブローズの発言に、場の空気が冷え。

 さすがの団長も目を見開き、非難の視線をアンブローズに向け。

 

 「……アンブローズ」

 

 自制を促すように、普段の温かみのある声音が捨てアンブローズを団長は呼びます。

 

 「民を守れない王に、国に価値はありません。特に今のような、物質界規模での未曾有の災厄に必要とされる王は。由緒正しき力無き王ではなく。戦士達を束ねる力のある王です」

 

 しかし、アンブローズは止まりません。止まる気はないように見えます。

 

 「王達と交わした復興の約束?不意にしちゃえばいいんですよそんなもの。約束というのは対等であるからこそ、効果を発揮するのですから。団長ちゃんは真面目で誠実なのは美徳ですが。王になるからには、ある程度の狡猾さを身に着けてほしいですね」

 

 鋭さを増していく団長の視線を意にも返さず。

 アンブローズはスラスラと語り、このまま一騒動起きそうな気配を漂わせましたが。

 ふと、団長に耳打ちするような小さな声で。

 

 「それとも、怖いですか?物質界を背負うのが」

 

 そうアンブローズが言うと、団長が放っていた気配が萎縮し始め。

 団長はアンブローズから視線を外しました。

 

 「団長ちゃん。あなたは英雄王になるでしょう。あなたがそれを望まなくてもきっと」

 「…………」

 「もう、悩む時間もないかもしれません。だからこそ……覚悟だけはしてくださないねぇ団長ちゃん」

 

 言うことは言った。そんな風にアンブローズは立ち去りました。

 深刻な表情を浮かべた団長に、なんと声をかけるべきでしょうか。

 

 私も、団長が王になるべき。そんな考えが、物質界中から出てくる敗戦の報告や、戦に巻き込まれた難民達を見ていると、日に日に増していきます。

 アンブローズが嫌われ役を買って出てでも、団長を王にしようとする気持ちは、痛いほど分かります。

 ですが、団長本人の意思を無視して王にさせるなんて、私にはとても……。

 

 「……アンブローズが言ってたことは分かる。お前が王になった方が戦況は間違いなく。よくなるだろうな」

 

 あれこれと考えている内に、トゥアンが口を開きました。

 そして、治めている故郷から離れているとはいえ、女王であるトゥアンの口からも。

 団長は王になった方がいいと、告げられ。団長は顔を顰めます。

 ですが、トゥアンはそんな団長の頭の上に手を置き。

 

 「けど、お前が団長だろうが、王になろうが。お前は、お前の戦う理由の為に戦え団長。

 その戦場では、お前が指揮して。あたしらと一緒に暴れる。そこは変わらない。そうだろ?」

 ガシガシと団長の頭を、乱暴に撫でるトゥアン。

 不器用でも、気持ちは伝わる。

 トゥアンらしいその励ましは、団長に微笑みを取り戻すには十分な効果を持っていました。

 

 「そうだねトゥアン。私達は苦楽も幸福も分かち合い、共に戦う仲間だ。そこは何があっても変わらない」

 「分かっているならそれでいい」

 

 うむうむと頷きながらトゥアンは執務室の定位置に戻り。

 団長は私をじっと見つめ。

 

 「ソラス、相談したいことが――」

 「団長伝令だ!中央の強国の首都に魔神と神獣が出現した!」

 「伝令です!北方の大国から魔神と神獣の同時出現が報告されてます!」

 

 団長の言葉を遮り、執務室に飛び込んできたアトナテスとサナラが叫び。

 その内容に、団長がまさかと言葉を零し、頬から冷や汗を一つ流します。

 

 「団長伝令です!」

 「団長!」

 

 次々と、赤の団の拠点を除いた物質界各地に、魔神と神獣の出現の報告があがりました。

 まるで狙っていたかのように、今ここで全てを終わらせるかのように同時に。

 

 

 

 破壊の後に再生があるように。

 再生の前に破壊があるように。

 

 世界の終わりが訪れようとしていました。

 破壊される者達の気持ちなんて知らずに。

 

 千年戦争の前と後。

 物質界の歴史が、そこで明確に区切られているには、当然理由があります。

 ……英雄王が、英雄王になる前。

 

 物質界は一度、終わったのです。

 

 

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