千年前戦争アイギス 占星術師の昔話   作:青き男

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そろそろ折り返し地点。


E20 私達の千年戦争

 目が覚めて、夢の内容に神託を受けたような感覚を覚え、それを薄ら寒いと感じながらも。

 内容が内容なだけに急いで身支度をして、団長の寝室へ向かう。

 ただの夢と切り捨てるには、あまりにも今の物質界の状況が出来過ぎていたからです。

 ……それにしても。今日は外が静かです。つい二日三日前は、昼夜問わず絶えず喧噪が聞こえていたというのに。

 

 「これは……?」

 

 団長の寝室まで通じる廊下は、すでに幾人もの団員によって埋められていました。

 その中で、見慣れた亜麻色の頭を見つける。

 

 「トゥアンこの人だかりは?外の見回りしてるはずの人もいますが?」

 「知らん。それよりソラスも見たかあの剣が刺さった夢?」

 「まさかトゥアンも?」

 「あたし含めて、ここにいる奴らは全員同じ夢を見たみたいだ」

 

 全員が同じ夢を見た。

 あの結晶に突き刺さった剣の夢を。

 偶然の一致。などという言葉じゃ片づけられるはずがありません。もっと超越的な力が働いていると、そう思ってしまう。

 

 「ソラス、トゥアンおはようございます」

 

 後ろから落ち着いた声をかけられ振り返ると、影の射手とユージェンがいました。

 私とトゥアンは二人に挨拶を返し、今朝見た夢に付いて話すと。

 

 「私とユージェンも同じ夢を見ました。そして、例の広場。ここ(赤の団)の広場に向かいましたが……ありましたよ。結晶に突き刺さった剣が、夢の通りに」

 

 私は言葉を失う。

 こんなことが本当にあるのか。こんな神話のような出来事が今を生きる私達の目の前に。

 

 「一先ず団長の所へ行くか」

 

 トゥアンが歩き出したのを見て、慌てて私もその後ろを追う。トゥアンと一緒だったからか廊下にいた団員達は道を譲ってくれたので、大したトラブルもなく寝室の前へたどり着きますが。アンブローズとサナラがその扉の前で立ち塞がっていました。

 

 「団長からアトナテス以外入るなって言ってました!」

 

 私達を見つけると同時に、サナラが先手打つようにそう言い。

 

 「お着換え中なので待ってくださいねぇ」

 

 アンブローズが理由を添えました。

 お着換え、そして団長の寝室に置かれてある物は……。

 私達は誰かにそう言われた訳でもないのに、団員達に毅然とした態度で整列するよう指示を飛ばしその時を待つ。この時も、大してトラブルもありませんでしたし、亡国の王族達も赤の団には多く所属していましたので、それらしい隊列になるよう細かな指示も滞りなくできました。

 

 そして、ドアからノック音が鳴る。

 

 ガチャリと開かれた扉から出た、その存在に私達は戦慄するかのように圧された。

 それは千年前。名も残されていない男に、女神アイギスが送ったはずの贈り物。

 けれど、それを身に纏う男の姿を見て。この白と青を基調とした鎧は、今この時の為に用意されていたのだと確信させるほど、身に纏う主を引き立て。

 白い鎧とは対となるの黒髪の、長い前髪から覗かせる強い力の瞳は、男を尋常ならざる存在であると、人々に認めさせる。

 

 瞳が動き、私達を一瞥する。

 私達はそれが当然であるように男に跪く。

 そうした人の中には亡国の王族の人もいて、エルフや獣人、果てには不死者もいましたが。

 身分も種族も関係はなく、男を跪くに足る人間であると認識していた。

 

 男は歩を運ぶ。向かう先は決まっている。

 白い鎧にいつも男が身に着けている、裏地が白の赤いマントが靡く。

 その後ろを……視線を感じる。

 男の後から部屋から出てきたアトナテスが、早く行けと視線を送っています。

 いいんですか?視線で問い返すと、視線の数が増えて慌てて立ち上がり後ろを追いかける。

 いいんだ。舞い上がりそうになる自信を自制しながら歩き。

 

 男は広場にたどり着く。

 すでに広場にいた人々は、誰もが男の姿を目にいれようとしましたが、徹底して音を出そうとしなかった。鎧が掠れる音と男の足から鳴る音に、稀代の音楽家が奏でる演奏を聴き心酔するかのように、人々は黙り込み。そして、男を直に視界にとらえると同時に、人々は何と恐れ多いことをしたのかと思ったのか、ささっと平伏し手を祈る様に組み、男に道を譲る。

 

 人の海を割って出来た道の先

 そして、男は剣の元へたどり着く。

 

 「…………」

 

 男は剣の柄を掴み。

 

 「…………?」

 

 一瞬、驚いたように目を見開いた後。少し微笑むと。

 するりと剣を引き抜いた。

 

 その瞬間、空から強烈な光が差し込み。

 光と共に一人の女性が空より舞い降りる。

 

 その存在もまた、男とは別種の意味で圧される存在でした。

 長い金色に輝く髪と、全てを受け入れるかのようなふくよかな四肢。

 そして何よりも目立つ背から生えた、六枚の白い翼。

 

 天使や神獣とは比較するまでもない超越的な存在。

 はるか昔より、人々が神と呼ぶに相応しい存在が男の前に現れた。

 

 「初めまして人の子達よ、私はアイギス」

 

 音楽的なまでの流麗な声に、天使や神獣達による被害を目にして、神は敵だという考えが霧散していく。いえ一目見た時から、女神アイギスを人の敵とすら認識させなかった。

 

 「魔王による魔物の襲撃。そして我が姉、女神ケラウノスによる神獣の襲撃。これにより物質界と人の子達が深く傷ついているにも関わらず。女神ケラウノスの結界により、今ままで手を差し伸べる事が出来なかったことを、天界より人の子達を見守る神々に代わり謝罪します」

 

 神が人に謝罪する。なんとも珍妙な響きです。

 ですが、ここで少しばかり思う。

 今更謝罪を受けても何もかも遅すぎる。

 

 深く傷ついた。たしかにそうです。

 ですが、より正確に言うなら、もう物質界そのものが死に体が正しい。ここから復興し繁栄する術が今の私達にはないのです。

 

 「そして人の子の王よ。これを」

 

 それを察してか、アイギス様は……何ですかアレ。

 例えるとしてたら、魔力とか気力だとかそういった次元ではない。

 純粋な力そのものような物を三つ、空に浮かべました。

 

 「これは我々神々でしか生み出すことの出来ない。あらゆる奇跡を実現させる力。古来より我々は神の楔と呼んでいる物です。これを人の子の王、あなたに授けましょう」

 

 神の楔。

 奇跡を実現させる為の神でしか生み出せない力の塊、触媒とでも言うべきでしょうか。

 あらゆる奇跡を起こせると、神が太鼓判を押すような物を男は手に入れた。

 男は神の楔を見つめた後、アイギス様を瞳に捉え口を開く。

 

 「ではさっそく、これを二つ使いますがよろしいでしょうか」

 「えぇ構いませんよ」

 

 あらゆる奇跡。魔王とケラウノス様を消す……はさすがに出来ないでしょう。魔王はどうかは知りませんが、ケラウノス様はアイギス様でも容易に対処できる存在でないことは、今の今まで手を差し伸べる事が出来なかったという言葉から想像できます。

 ならば、男は何に使うのでしょう。その神の力を……。

 

 男は引き抜いた剣を両手に握り、アイギス様に宣誓するように額に剣を当てました。

 

 「物質界は、そこで生きる人々は今まさに滅びを目の前にしています。根本は魔物達による物質界の侵略が原因ではありますが。人がその最後の命を絶つとしたら、それは魔物の手ではなく。人と人が、限られた物資の奪い合いの果て、共倒れによって滅び絶たれることでしょう」

 

 男は何度も危惧していた。そして幾度もその才をもって回避しようと抗い続けていた。

 人と人が争う。

 その理由に正義や信念、怒りや憎しみといった物ではなく。

 ただただ単純に、生きていく為に必要な食糧の奪い合いによる争いを。

 

 男は一度、奪い合いを封殺するための策を考えていた。

 奪い合いが起きる条件。奪おうとする相手()を、この世から消し去ることによって、残された人で一先ず生き延びようと。

 

 「私はその滅びを拒絶します」

 

 ただ男はあまりにも優しい。

 切り捨てるべきを切り捨てられない。

 その手に掴める全てを、男は救おうと願う。

 

 「女神アイギスよ。私は願う」

 

 男は一呼吸し、女神に祈る。

 

 「我ら人の子に、一時の飢えを凌げるだけの食糧をお与えください」

 

 アイギス様は沈黙する。

 

 「我ら人の子に、夜風の寒さを凌ぐ家と、外敵から身を守る壁をお与えください」

 

 アイギス様は沈黙し続ける。

 

 「この二つを人が手にした時。我ら人の子は今度こそ、自らの力で立って歩き。この手で未来を切り拓きましょう」

 

 剣を下ろし、男はアイギス様を強く射貫くように見つめ。

 アイギス様は男に微笑みながら頷いた。

 そして、アイギス様は両手に神の楔を掲げ、パリンと砕いた。

 その瞬間光が。物質界全てを包むかのように強烈な光が放たれる。

 

 「……凄い」

 

 目を開き、たった一瞬で様変わりした周囲を見て私はそう言葉を零す。

 私達を囲うように立派な城壁が、ここにいる全ての人が優に住めることが出来そうな兵舎と家が、穀倉らしき建物からは香りのよい麦の匂いがする。

 そしてなにより、背に聳え立つ城はなんと雄大か。

 

 「これでよろしいですか?人の子の王よ」

 

 アイギス様に男は頷き。

 最後にこれをと、アイギス様は男に差し出す。

 

 「これは我が名を冠する盾です。剣、盾、鎧。この三種の神器が貴方を主と認め、魔を打ち払う加護を与える事でしょう」

 

 男は盾を右手で受け取ると、剣と鎧の輝きがより一層増す。

 アイギスの神器。三位一体の神器。

 

 「人の子の王よ。来るべき時が訪れるまで、私は貴方の中で待ちましょう。そして人の子達よ諦めてはなりません。あなたがたの力を合わせて、魔物を打ち破ってゆくのです」

 

 アイギス様は光の粒子となり、男と一つになるかのように重なる。

 神と一体、文字通り神聖不可侵なる存在に男はなった。

 

 「…………」

 

 人々は言葉を発さない。

 男の言葉を待っているのでしょう。

 始まりを告げる言葉を。

 

 男は剣を天高く掲げた。

 

 「私の名は"アルトリウス"」

 

 静かで力強い、言霊となってその名は響き渡り人々は記憶する。

 

 「古来。千年も前から物質界は魔物から侵略を受けてきた、だが今はその侵略は物質界全土に及び。数多あったはずの国々を滅ぼしつくすまで苛烈となった。天界からの刺客達も、物質界に住まう人という歴史そのものを滅せんとしている。それにも関わらず、私達人は。ただ一度として物質界に生きる者達として結束することなく。かの者達に敗北した」

 

 敗北した。物質界は人の歴史は終わってしまった。神の手により終わりは加速されたが、同時に神の手によって復活することがなければ、本当ならば終わっていた。

 その事実は、誰にも取り消すことは出来ない。

 

 「だがそれでも私達は今だ滅びず。女神アイギスの御業により、再び立ち上がる力を手に入れた。故に私達は、物質界を生きる者達は。今度こそ、魔と天に抗う為にも結束しなければならない。二度とかの者達に敗北しないように。故郷を取り戻す為に。大切な存在を守る為に。絶望と諦観を未来ある子供達に与えない為に」

 

 けれど、それでも私達は生きている。

 そして、神の手により再び戦う力を手にしました。

 戦う意志は、まだ私達の心の中にある。

 

 「私はここに……私の国。王国の建国の宣言する!」

 

 男は宣言する、男の国の建国を。

 

 「そして王国はありとあらゆる。人に仇なす存在に宣戦布告をする!」

 

 男は宣言する、王となり魔と天の存在に抗うことを。

 

 「さぁ……皆。私達の『千年戦争』を始めよう」

 

 男は宣言する。

 

 『千年戦争』

 

 その始まりを。

 

 「我らが王国!我らが王!英雄王万歳!」

 

 誰かがそう吠える。

 そして、その呼び名が男には相応しいと、同調した者達が次々と叫ぶ。

 

 「我らが王国!英雄王!」

 「我らが王!英雄王!」

 「英雄王万歳!」

 

 声が怒涛のように広まっていく。人々は認めた、男を英雄王足りえる存在であると。

 男はその声に頷き承認した。英雄王となることを。

 英雄王アルトリウス。私達は神話の中に生きていた。

 

 

 

 未だに声が響いていますが、声出しだけでなくやることはやらなければいけない。

 目の前を歩く団長……いえ、英雄王はただ無言で城内を歩き回り構造を把握している。

 

 そうこの人は英雄王。

 正真正銘、謙遜なくこの人は物質界で一番偉い人になってしまった。

 こと武力においても、今王国にいる誰もが臣下や国民となることを願うカリスマも、神と一体となったので宗教的な立ち位置でも、英雄王の権力を切り崩すのは不可能でしょう。

 

 どう、英雄王に声をかけたらいいのでしょう。

 ……今まで通りではやっぱりいけないですよね。

 普段傍にいる私達が、つい昨日あんなにたくさん話をしていた私が。

 英雄王にどうやって声をかけたらいいのかと悩んでいると。

 英雄王はふと立ち止まり。

 

 「アトナテスよ」

 

 どこか芝居がかったように、アトナテスに声をかける。

 

 「な、なんだ?」

 

 突然名前を呼ばれ。

 らしくなく緊張で身構えているアトナテスに英雄王は……嗚呼知っている。いつも見ている。たくさん見てきた。普段通りの優しい、温かみのある笑みを浮かべると。

 

 「私は六文字」

 

 アトナテスを指差し。

 

 「お前は五文字」

 

 そして指をグッと立て英雄王は自身に向け。

 

 「勝った!」

 

 この人は……本当にまったくこの人は……。

 

 「ふふっ」

 「ははっ」

 

 たぶん意味が分かっているのは私とアトナテスぐらいですよ、英雄王。

 見てください。皆顔をぽかんとしているじゃないですか。

 

 「負けたままってのは気に入らねぇな。こいつで勝負するか」

 「あぁ、せっかくの新しい武器だ。試してみたくて仕方ない」

 

 そのやり取りで、皆が悟ります。

 団長から、英雄王になった。

 名が変わり、立場も権力も、そして責任も今までの比ではないでしょう。

 けれど、彼は彼だ。

 それは何も変わらない。

 変わらない。それがとても嬉しいのです、英雄王。

 

 「あたしも混ぜろ」

 

 指を鳴らしながらトゥアンがそう言い。

 

 「英雄王ちゃんが王様になったことですし、あたしも一層頑張らないといけませんねぇ」

 

 そうアンブローズが呟き。

 

 「英雄王、よろしければ後でアイギス様とお話しできるか試してもよいですか?」

 

 影の射手は安堵したかのように微笑み。

 

 「英雄王!アトナテスおじさま!トゥアン姉さま!さっき見た訓練場に行きましょう」

 

 ユージェンは興奮して。

 

 「なんか、ほっとしましたねソラスちゃん」

 

 サナラが目のふちにあった雫を拭い。

 

 「えぇ……」

 

 私はそう、サナラに返し。英雄王の後ろ姿を追いかけた。

 

 

 

 何故英雄王は名を変えたのか。

 と言われたら、王になる以上のドスの効いた名前の方がいいとか、ある程度長い方が箔が付きそうだと言う考えもあったのでしょうけど。

 あの人、そんなに悪くないのに。物質界が滅んだことに責任を感じていたでしょうから。

 やっぱり、一番の理由は王になるにあたっての……ケジメだと思いますよ。

 

 そして名前と言えば、千年戦争。

 その意味はただ千年前からあった戦いが今も続いているから。ではなく。

 千年ものあった戦いを今、私達によって勝敗を決し終結させる。

 

 英雄王はそんな願いを込め、名付けたのだと思います。

 

 




魔王無敵バリア突破できる攻撃力がありまぁすくらいで、細かいステータスまでは考えてないですが。現時点の英雄王が出来ることをアイギス風に羅列すると。

・近接
・属性:人間
・ブロック数5
・範囲内の敵5体まで長距離遠距離攻撃
・一度の攻撃で三回ダメージを与える
・防御と魔法耐性無視した攻撃
・範囲内の敵に対し、トークンで指定した敵に向け攻撃0.8倍防御無視の範囲攻撃
・範囲内の敵に対し、トークンで指定した敵に向け移動速度を減少させる攻撃0.8倍防御無視の範囲攻撃
・範囲内の味方全員を回復する
・撤退後、短時間で再出撃可能

スキル『英雄王の威光』
・出撃中は常に発動
・以下の効果がランダムで発動
・属性英傑以外のユニットを麻痺させる
・属性英傑以外のユニットを強制的に撤退(再出撃不可)させる


戦闘開始時初期配置できる=出撃コスト:10

読んで見ての通り、ぼくがかんがえた最強の英雄王。
ユニットとしてのキャラクターコンセプトは現行アイギスの否定。

アイギスの高難易度Mに挑む際、編成バフやらスキルCTやら配置順やら考えなければならない所。
作中内の英雄王に限っては、単体または英傑のみで出撃メンバーを固めた場合。
レアリティが実質黒を超えてる黒英傑ユニットですら、デメリットらしいデメリットがあるのに。
英傑以外が実質使えないというデメリットこそあっても、それを優に消し飛ばすくらいの性能を持っている。こんなのいたらゲームが成り立ちません。

物質界を絶対滅ぼす魔神神獣連合を、単騎で撃退させようとしたら英雄王をこれくらい盛るしかなかった。

ただ致命的な弱点があり、どれだけ万能でも近接職ということです。
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