千年前戦争アイギス 占星術師の昔話   作:青き男

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エピソード2ー3 始まりの英傑ソラス

 後詰めである中央の強国が村に到着するまで、赤の団は村に留まることになった。

 団長はもう魔物が出ないと言ったが、後詰めに村を託すまでが、今回の目的らしい。

 私達のすぐ後ろを行軍中の強国軍は、予定通りなら日没までには到着ようだったが。

 日没になっても来なかった。

 そして、そのまま二日、私達は村に滞在することになった。

 

 その二日間私は、はっきり言って浮いていた。

 団長が私を庇ってくれたことで、表立って非難を上げる声がなくなったが。

 だからといって、私と私の占星術の信用が回復する訳でない。

 そして、私自身。もう開き直って。

 団長のように堂々として、それでいて、さりげなく団長を占星術を使い助ける。

 そんなクールなキャラで、赤の団で生きていることにした。

 占星術は私の武器。私が出来る事。それを心の支えにして。

 

 まぁ結局。どれだけ気丈にしてても、夜な夜な寂しくて一人、蹲ってばかりいたが。団長は、私の気持ちを察してか、よく気にかけてくれていた。

 村の戦闘が終わって二日経った夜。

 私と団長は、星を見上げていた。

 どういった経緯かと言えば、ただ単に団長に、星を見ないかと誘われたからだ。

 年若き男女が、二人で静かに星を眺めるなんて、なんとロマンチックと考えはしたが、不思議とそんな雰囲気にはならなかった。

 

 「占星術というのはどういったものなんだ」

 

 あ、これは説教か何かか。恐る恐る私は、私が知る占星術の知識を全て伝えてみる。

 団長は星を眺めたまま、こくこくと頷いて聞いてくれた。

 けど、理解してくれただろうかと、不安になる。

 先を知らさせることは返って、不興を招くとお母様が言っていた。

 

 「あの星を繋げると蟹みたいに見えるな」

 「聞いていたんですか!?」

 

 けど、子供のように。

 いや、実際私も団長も、子供と言われるような年齢であるけど。

 団長から、そんな言葉が返ってくると思わず、おいおいと突っ込みたくなる。

 

 「あぁ聞いていたよ。先を読み、星を落とすか凄いなぁ」

 

 そう言って褒めてくれた団長は空を見続ける。

 私の話を聞き、星を読んでいる。というようには見えない。

 本当にただ、星を眺めている。その横顔は、数日で嫌という程理解した団長の力と比較すると、なんだか、とても無邪気だ。

 こんな一面もあるんだと、素直に思ってしまった。

 

 「どうして、あの時私を信用してくれたのですか」

 

 ポツリと零した私の言葉に、団長は星を見るのを止めて、私をじっと見る。

 その目は止めてほしい。何だかむず痒くなる。

 

 「君が嘘をついているようには、見えなかったからさ」

 「それだけですか?」

 

 こくりと団長は頷く。

 目を見て、嘘をついてないから信用する。

 それだけで、人を信用出来るんて。

 

 「……お人好しですね、団長は」

 「よく言われる。最初に団にいた人達は、それが原因で離れてしまったけどな」

 

 そして、団長は赤の団が生まれる経緯を語りだした。

 団長も、私と同じだった。

 

 三ヶ月前に湧いた魔物に、両親を殺されたようだ。

 嘆き、悲しみ、怒りのままに父が持っていた剣を振るい。

 魔物を倒し続け、自分と同じ悲しみを生み出さないように、魔物に襲われた地を知ると、そこへ向かい戦った。

 そんな日々を一月していると、団長に近づいて来る者達がいた。

 

 団長が魔物を助け続けたことを聞きつけ、協力をしようとした賛同者、ではない。

 その時から、魔物と一人で戦い、勝利する。そんな、団長の持つ力を利用して、自らの益にしようとした人達だ。

 一人で戦うよりも、団として活動した方がより多く、人を助けられる。

 そんな言葉から始まり、なるほどと団長が思い発足したのが、赤の団だ。

 

 赤の団。当初は、魔物に襲われた村々や都市を助け、団長の許可なく。人助け料なるものを。

 まぁ、はっきり言って一方的な用心棒代を、せびろうとした人々がいたが。

 団長の足は速い。

 彼らが、人々に金品を受け取る話が決着する前に、団長は数日分のパンと水のみ貰い受けると。

 さっさと次の地へ動き始めるので、そんなことしてる暇がない。

 団長がそんなことを繰り返していると、利用しようとした人達は、団長を切り捨てようとした。

 

 人を助けるなら、中央の強国の王の協力を得た方がいい。

 

 無論。いかに目的が崇高でも、血筋も実績もない人が、王に謁見など叶う訳がない。

 団長を王の元へ向かわせ、無駄死にさせるつもりだったのだろう。

 だが、そうはならなかった。

 団長は単身で、誰一人死傷者を出すことなく、王の前へ立ち。

 語る言葉の熱意で、強国の王の信を得た。

 

 こうして、赤の団は中央の強国の後ろ盾を得て。

 団長と同じく、魔物から人々を助ける。そんな志を同じくする者達が、集う場になった。

 同時に、団長を利用とした者は去った。

 彼等は悟ったのだ、団長が手に負える人物ではないと。

 

 それからというもの、団長としては魔物から人を助けるを、変わらず実行してるようだが。

 本当の意味での団長の賛同者が増え、団長率いる赤の団の力が広まるにつれて。

 人と戦っているわけでもないのに、傭兵団が同業者潰しに来たり。

 小国が勢いがある団長に目をつけ、赤の団を取り込もうと、拉致しようとしたみたいだが。

 

 団長は全て返り討ちにし。

 傭兵団が魔物に襲われていると聞けば、襲われたことを気にせず助け。

 拉致しようとした小国の、僻地にある村が。魔物に襲われていると聞けば、彼らを助けに行った。

 魔物から人々を救済し続け、ふと魔物の気配を感じた団長は、私の故郷へとたどり着いた。

 それが、私が赤の団に合流するまでの経緯だった。

 

 「凄いですね」

 「そうかな」

 

 彼は嬉しそうに微笑むが、スッと険しい表情に変わり。

 団長の父が持っていたという、形見の剣を握り締めていた。

 

 「でも、魔物に襲われるなんてことは、あっちゃいけないんだ。あれは……人の死に方じゃない」

 

 団長の言葉に、もう幾度目かになる光景が脳裏に蘇ってしまう。

 まだ、しばらく。あの光景に苦しめられるだろうな。

 そう思ったが、震えだしそうになった肩に、ポンと温かい手が置かれた。

 途端に震えが止まる。

 

 「ソラス。これからも君の力を頼りにさせてもらう」

 

 そう言った団長に、私は。

 

 「えぇ!占星術師のソラスに、ドドンとお任せください!」

 

 なんて、気の利いた返事何て出来ず。

 ただ、小さく、いつの間にやら俯いたまま。

 

 「……はい」

 

 としか答える事が出来なかった。

 

 「蟹の星が言っていた。明日はよく晴れそうだ」

 

 団長はそう言いながら去っていく。

 星から明日の天気を読んでみる。

 快晴とでた。まっさかー。

 

 

 

 村の戦いから三日目の朝、快晴。ようやく後詰めの中央の強国軍は来た。

 殺気だっていたので、団長が彼らの前に出て、あれこれと説明して。

 そして村の現状と、赤の団を見て、彼らは驚きの声が上がる。

 何かあったのだろうか。

 

 「村の被害はこれだけか?」

 「何があったんですか?」

 

 団長がそう尋ねると、軍を率いていた人が言う。

 強国軍は、例の岐路を右の山道を通る道を選び行軍した。けれども、待ち受けていたのは魔物だった。

 強国軍はこの時点で、赤の団は全滅した物だと思っていたらしい。

 魔物の撃退に成功したが、山道を通った先にあったのは、魔物のせいか土砂崩れで崩壊した道だ。

 撤去することも出来るが、そんなことしている内に村が滅びる。

 急いで岐路まで戻るのに一日、そして今度は私達が通った道を通り、万が一魔物によって村が占領されていた場合。

 夜間での戦闘を避ける為に、村付近で待機して一日。そして、戦闘準備を終え、さぁ戦いだって所で、団長を見たという。

 

 話が進むにつれて、私に視線が集まっていくのが分かる。

 これは疑いでも、怒りでもない、驚きだ。

 

 「どうして、山道を通らなかったのだ、赤の団よ」

 「赤の団の占星術師ソラスの、星の導きの賜物です。彼女のおかげで、村の者達を助けることが出来ました」

 

 団長の紹介にされ、団員達だけでなく、軍の人達からも視線が集まる。

 これは、照れちゃいますね。

 頬が少しずつ、上がっていくのが自覚できてしまう。

 いけないわソラス。私はクールキャラで生きていくと、決めたじゃない。

 頬の力を全力で動かし、口を閉ざしてみるが。

 

 「素晴らしいなソラス殿。貴方の占星術で、これだけの人々を助けることが出来た!我々も改めて礼を言いたい」

 

 その声は大きく、村中に響いた。

 すると、その声を聴いた村人達も、昨日のあれこれを忘れて巻き込んでの、てんやわんやだ。

 強国軍が、せめてものと、持ち込んでいた食糧が振る舞われ、酒宴が開かれた。

 勝利と、犠牲者を引きずらない為の、強国軍の配慮だっただろう。

 

 主役は私だ。

 酒はまだ早いから、色々な料理を味わいながら、占星術の簡単な講義をしたりした。

 案の定、理解はされてない。けど、私は私なりに、持つ力を使い。根拠があって、団長に進言したということは理解してもらえ。

 考えなしに、酷いことを言って悪かった。そうケリーは謝罪した。

 

 そして、ついでにケリーと少し会話をしていると、彼も団長と同じと分かる。

 結局の所、彼も人を助けたいだけだった、一人でも多く魔物の手から。

 そう思うと、数日燻り続けた嫌な感情も、途端に霧散していく。

 こうなったらもう、自然と私も赤の団に溶け込んでいく。

 

 「恋占いとかも出来ますよ!」

 

 そう言ってみたら、女性陣に囲まれ、それはもう大変だった。

 団長は強いとは言え、戦地にいる以上死と隣り合わせであり。

 男女の距離が近くなると、やれ恋だの、愛だのには色々と尽きないらしい。

 特に団長は、まぁその。人気だった。

 

 色々と、はっきりさっぱりと言わないように気をつけながら、言っていると。

 赤裸々な話がどんどん飛び交い、聞いてる私の方が赤くなってしまった。

 何にせよ、結果だけで言えば、星の導きに従い進むことは正解だった。

 今回の件で私は、赤の団団員ソラスから。

 赤の団占星術師ソラスとしての立脚地を得た。

 

 けど、今回の件は団長には、不満足だった。

 話疲れて、夜風に当たっていると。周囲から離れた位置。

 団長と、強国軍の人との会話を私は聞いた。

 

 「そちらにも、魔物に襲われ犠牲者が出たのでしょう。村の安全が確保できたのならば、私達は引き返して、合流しておくべきでした。そうすればそちらに、犠牲者が出ることはなかったかもしれません」

 「いいや団長よ。それでは私達の面子が立たん。私達は強国の軍隊だ。人との戦いであれ、魔物との戦いであれ、戦う以上は死は避けられん。今回の件もそうだ。占星術師の娘の力で、最善の結果は出せた。それで満足しておくべきだ」

 「しかし!」

 「あまり背負い過ぎるな団長。そのままではいつか押しつぶされ、潰れるぞ」

 「…………」

 

 どうやら団長は可能ならば、村からの犠牲者をなくしたかった。

 後詰めである強国軍の犠牲すらも、なくしたかった。

 団長には決して、最高の結果ではなく。最善の結果だった。

 

 団員達は、誰もがこれで良かったと酒宴を楽しんでいるが。

 団長ただ一人は、さらに上を目指していた。

 

 「もっと、強くならないと」

 

 手を強く握りしめ、誓うように。

 今でも、十分強く。団員達が信頼を寄せる団長が、こんなことを言うのだ。

 なら、今回の結果に、私は慢心している場合ではない。

 もっと強くならなくちゃ。

 

 

 

 誰よりも強いあの人は、誰よりも優しく。

 何もかも背負おうとしました。

 それはやがて物質界を、そこに住まう人々を全てを、あの人は背負った。

 弱みをほとんど見せずに。

 ただ一人で背負うには大きすぎる物を背負ったまま、立ち続け。

 未来の為に戦い続けました。

 

 

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