千年前戦争アイギス 占星術師の昔話   作:青き男

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エピソード4 紫竜駆る英傑アトナテス

 それは、移動中の出来事だった。

 

 「敵襲ぅ!敵襲ぅう!」

 

 斥候に出ていた団員の声が、響き渡る。

 敵襲は何も初めてではありません。

 ただ、敵襲は二つのパターンに分かれていました。

 敵襲を知らせるのが、団長かそうでないかです。

 

 団長の場合は、襲撃者は魔物です。

 斥候としての能力が長けた人物よりも、早く数も正確に、そしてやってくる方角に至るまで。

 団長は魔物の位置を、天性の嗅覚が嗅ぎつけるのか、即座に把握して敵襲に備えます。

 

 けど、魔物ではなく人の場合は別です。団長の嗅覚は人には働きません。

 少なくなってきましたが、盗賊に襲われたり、未だに商売敵と思われる傭兵団。果ては、中央の強国の軍隊と勘違いした。他国からの軍隊と、私達赤の団は戦ったりします。

 

 そして、今回声を張り上げたのは団長ではない。

 つまりは、人との戦い。

 

 私は、武器である杖をギュッと握り締める。

 人との戦いも、多少は慣れ始めましたが、魔物と違って、人に手をかけるかもしれないと思うとまだ、緊張が上回ります。

 

 極力殺さないように、それが赤の団の規則だった。

 極力という、曖昧な表現は。

 団長とて、ただの夢想家ではなく。

 起こりうる事態と、それによる事と次第によっては、団長が責を負い。矢面に立つ。という意味でもありました。

 

 でも、本質としては赤の団は人と戦う集団ではなく、あくまでも魔物と戦う集団である。

 それを違えない為の、私達が赤の団であり続ける為の規則でした。

 

 「数は!?」

 

 団長の声に、伝令の団員は声を張り上げる。

 

 「一人と、一匹です!」

 「うわぁあああ!!」

 

 襲撃者の人数に私も団長も驚いていると、人が吹っ飛んできました。

 文字通り、ポーンと投げ飛ばされかのような感じに。

 その衝撃に冷静さを取り戻すのに、少し時間を要した後、やって来た襲撃者に杖と共に視線を向ける。

 

 紫を基調とした鎧に、青い斧槍を持つ銀髪の美丈夫。けれど、爛々とした目と口端を、にやりと上げるその顔には。

 美しさの前に自信と、獰猛さを感じさせました。

 そして、その美丈夫が騎乗する紫竜の竜もまた、美丈夫と同じような目をしながら。

 警戒するように周囲を伺う姿は、確かな知性を感じさせました。

 

 美丈夫の目が、団長を捉える。

 得物を見つけたと言わんばかりに、口端をさらに上げる。

 

 「お前が噂に聞く赤の団の団長か」

 「そうだ。俺が赤の団団長、アルトだ」

 

 団長が名乗りを上げると、美丈夫はクワッと目を見開き、宣言した。

 

 「勝った!」

 

 ん?

 

 「俺の名はアトナテス!」

 

 はい。

 

 「五文字だ!!」

 

 ???

 

 私含めて、団員達は美丈夫、基。アトナテスの唐突な勝利宣言と、名前の長さ勝負の意味を探っていましたが。

 団長は、一瞬。滅多に見せない、虚を突かれたような表情を浮かべたものの。

 クククという小さな笑い声から始まり、やがて堪え切れなかったように笑い声を上げます。

 微笑むことは多いですが、大笑いをする団長を見たのは初めてでした。

 

 「アトナテスよ、負けたままというのは気に入らない。これで勝負をしよう」

 

 破顔しながら、団長は剣を鞘から引き抜き。

 

 「何だ。分かってるじゃねぇか、面白れぇ」

 

 アトナテスもまた斧槍を構え。

 

 「行くぞ!」

 「応ッ!」

 

 そして、団長とアトナテスの戦いが始まった。

 団長は何人もの人から挑戦を叩きつけられ、勝利してきました。

 その戦いの内容は、団長は一度、実力を測る為か相手の攻撃を受け。

 反撃で一度剣を振っただけなのに、二度斬撃を繰り出すという、理屈を捻じ曲げるような剣技で倒す。

 それが、今までの戦い流れでしたが。

 

 今回は団長から、攻勢を仕掛けました。

 今までにない開幕と、続く展開に団員達に衝撃が走りました。

 

 「っぶねー。剣に魔法の力込めてやがるな」

 

 団長の剣をアトナテスは、斧槍で防ぎました。

 攻撃されて防ぐのは当然ですが、団長が一騎打ちして一撃目を防いだのは、アトナテスが初めてでした。

 

 「じゃ、今度はこっちだ!」

 

 そして、反撃されたのも初めてでした。

 団長もまた剣で、アトナテスの斧槍をいなし。

 これまでがただの挨拶と言わんばかりに、一気に戦いは激化しました。

 

 アトナテスが騎乗していた紫竜も、戦いに加わりました。

 アトナテスと紫竜が繰り出す、斧槍と爪の息の合った連撃を、団長は氷の魔法をまき散らしながら鈍化を誘い。

 振り上げるアトナテスの斧槍を、団長は受け止め。即座に斬撃を繰り出します。

 

 アトナテスは銀髪の毛一本の差で重傷を避けると、裂けた肌から流れる血と、それから発しているだろう。痛みに気にすることなく。振り下ろされた斧槍は、団長が咄嗟に繰り出した突きに邪魔され、勢いを無くしたものの、肩に食い込みました。血が、団長の赤いマントを別の赤で染め上げます。

 

 「団長!」

 

 思わず、普段使ってる杖を掲げ。アトナテスに、アストロノヴァをぶつけてしまいそうになりましたが。

 団長が心の底から、楽しそうに戦っている姿を見て。

 アトナテスも、そしてたぶん紫竜も楽しそうに戦っている姿を見て。

 

 あぁこれは、真剣勝負ではあるけれど。

 命の奪い合いをしている訳ではないと、なんとなく分かりました。

 掲げた杖は自然と下がり。私も二人がそうしているように、周囲がそうしているように。

 戦いを見守ることにしました。

 

 こうして、一分、十分、一時間もお互いに引けを取らない戦いを続け。

 夕暮れに差し掛かったころ。

 

 「うぉおおおお!!」

 

 何を思ったのか、紫竜から降り、斧槍を地に突き立て咆哮するアトナテス。

 

 「…………」

 

 それを聞き、静かな笑みを浮かべながら、剣を地に突き立てる団長。

 大股で二人は間合いに近づくと、拳をグッと構えたまま後ろへ。

 じゃんけんで勝敗を決める。そんな訳がない、この二人は、グーしか出す気はない。

 

 「「はぁあああああ!!」」

 

 ゴッと鈍い音を立てながら、二人の拳はお互いの顔面を同時に打ち。

 二人とも衝撃に、よろりと足がおぼつきましたが、すぐにグッと足を地に踏み込み直すと。

 

 「「はぁああああああ!!」」

 

 またお互いに、拳を相手の顔面に打ちます。

 それがお互いの顔が腫れ、口端からだくだくと血を流し合いながらも、相手が倒れるまで続きます。

 格闘家のような、技術を研鑽する為の殴り合いではなく。

 もはや我慢比べ、漢比べと呼ぶような領域になりました。

 

 殴り合う二人に、暇を持て余したのか。紫竜はノシノシと、見物者である私達の方へ来ました。

 そして、ふと紫竜と目が会いました。

 ペコリと紫竜が頭を下げるのを見て、私も反射的に頭を下げる。

 

 あ、初めまして占星術師のソラスです。

 

 そんなやり取りをしている最中でも、殴り合いの音が鳴り続け。

 そして、決着がつきました。

 片方が倒れ、片方がグッと拳を掲げます。

 掲げていたのは、団長でした。

 

 「俺の勝ちだ」

 

 最初にアトナテスに襲撃されて吹っ飛ばされ、怪我をした団員。決闘している際に、幾度も団長の斬撃を受けた紫竜。

 

 「あぁ、クソ。負けたぁ!」

 

 そう声を上げるアトナテスに、治癒魔法をかけ。

 最後に自身に治癒魔法を団長はかけると、アトナテスに手を伸ばし。

 アトナテスはばつが悪そうな顔をしながらも、団長の手を握り返します。

 

 「治癒魔法も使えるのかよ、お前手抜きしやがったのか」

 「使う暇がなかっただけだ。いい戦いだったよ」

 

 ケッと悪態をつきましたが、全力で戦ったアトナテス顔は、力の限り走った後のような、晴れやかな顔でした。

 団長も、なんだか普段にはない。清々しい顔をしていました。

 

 「そろそろ日が落ちる。どうだ、酒でも飲まないか?」

 「いいのか」

 

 こくりと団長は頷くと、そのまま酒宴が始まり。

 団長とアトナテスは、今度は飲み比べをしたりしながら、酒宴を楽しみ。

 一段落ついた頃、団長はアトナテスを赤の団に誘いました。

 普段よりも、どこか熱意を込めながら。

 私は、それを二人の声が聞こえる位置に移動して聞きました。

 

 ちょっと妬きました。

 団長が赤の団に誘った時、アトナテスのような熱意は、たぶんなかったですから。

 

 何にせよ、アトナテスは団長の話を、グラスを傾けたまま聞きます。

 赤の団、そして団長の行動理念。

 魔物から人々を救う。それを聞いたアトナテスの反応は、最初はへぇくらいの態度で聞いていましたが。

 団長が真剣な目をしているのを見た為か、マジかよと言いたげに表情に変わり。

 顎に手を当てて、考えた末に、アトナテスはようやく口を開きます。

 

 「魔物から人々を救うねぇ。出来ると思ってんのか?」

 「あぁ」

 

 間髪入れずに団長が返すので、アトナテスは困惑をごまかす様にガリガリと頭を掻き。

 

 「いやぁ噂でな。赤の団はあちこちで、魔物を退治しまくってるとは聞いていたが。俺はてっきり、金品目当てだと思ってたんだ。何しろ、魔物が出始めてから、人との戦いってのは減りつつある。何せ、そんじょそこらの傭兵団、小国のちんけな軍じゃ、あっという間に魔物にやられちまうからな。魔物は一匹になろうが最後まで抵抗しやがるし、人にはある約束事が一切通用しねぇ。魔物と戦い。勝てる奴らには、価値がある。大国の軍隊に匹敵する程にな」

 

 魔物が出始め、一年は過ぎた頃から。国同士の戦争の規模は減少しつつありました。

 理由は、魔物と戦う為に手を取り合い、魔物に抵抗する。

 なんてことはなく。魔物の脅威に戦ってる場合ではなくなりつつある。というのが正しいです。

 

 そして、魔物と戦っている内に、無尽蔵かつ出現位置がまるで分からない。それに加え、人とは違い降伏もせず。最後の一匹になっても、戦い続ける魔物に。国々は魔物という存在に、ようやく脅威として、認識し始めました。傭兵団や軍隊が、魔物に対抗すべく戦いましたが、戦況はどこも芳しくはありません。単純に戦力が劣るせいで、全滅してしまうから、勝てないのではなく。戦い勝利したと思ったら、どこかしらに潜伏した魔物のせいで、本陣を襲われ、何かしらの被害を被り。勝ち切れていないというのが、続いているようです。

 そんな中で、魔物に対し唯一戦いに完勝しているのが赤の団です。名声と噂が広がるのは自明の理ですね。

 鼻が高くなっちゃいます。

 

 「で、それだけ価値がある赤の団団長様は、あくまでもその力を人を守る為に使うってか?」

 「そうだ。俺達はその為に戦っている」

 「……勿体ねぇとは思わないのか?どこもかしくも魔物魔物の戦乱だ。お前程の剣の腕があれば望めば、一城。いや上手くやれば一国の主ってのもいけるぜ」

 

 アトナテスの言葉は、的を射ているでしょう。

 戦乱での勝利は武勲を得て、栄達を手繰り寄せ。それを繰り返せば、ゆくゆくは然るべき頂を、掴み取ることは、決して夢物語ではないでしょう。私も団長の才覚は、それに届く。なんて思ったりもしていますし。

 

 「それよりも、俺は皆が笑顔で暮らせる世界が欲しい」

 

 でも、団長は拳を堅く握りながら、そう言ってのけます。

 そんな団長だからこそ、私は団長を信じられますし、誇らしいと思います。

 

 「世界ねぇ……」

 

 アトナテスはまた、困惑をごまかす様にガリガリと頭を掻きます。

 

 「はっきり言って、俺も魔物は気に入らねぇ。あいつらには品がねぇ、礼儀もねぇ。芸もな。だから嫌いだ。だが、人を救うってもまだ俺にはピンとこねぇな。相棒と一緒に喧嘩して、酒飲めればそれで満足だ」

 

 団長はアトナテスを、団員に加えたそうでしたが。これはたぶん断るパターンかなと、私は思いました。

 現状で満足している人は、それで完結して変えようとはしません。

 団長が誘っても、団員にならない人達は、常そんな人達でした。

 でも、アトナテスは違いました。満足なら、それ以上を求める人でした。

 

 「けど、城よりも国よりも、世界って言うお前についていくのは、面白そうなのは間違いないな」

 

 アトナテスはスッと、紫竜の下顎を撫でます。

 知性があるとは思っていましたが、アトナテスに返事をするように紫竜が鳴くと、アトナテスはニッと笑い。

 

 「俺達も入るぜ、お前の団に」

 

 握る拳を胸に当てて、直立してアトナテスはそう言い。

 団長はこくりと頷き、アトナテスは団員に。

 続いて、団長が差し出したグラスに、アトナテスが軽くぶつけて乾杯し。

 アトナテスは、団長の友になりました。

 

 アトナテスの加入は、赤の団にとって大きな意味を持ちました。

 

 「おらぁ!腰が引けてるぞ!目を逸らすな!ちゃんと相手を見て剣を振れ!」

 

 口調や態度は乱暴な印象を見受けられますが、理不尽に殴る等の卑なことを嫌い。

 団に入った次の日には、それが当然のことのように、団員達を稽古しているアトナテスに、団員達は気合を入れて訓練に励みます。

 アトナテスは、団長に負けはしましたが、団長と互角の腕前と言っても、過言ではない実力者ということもあって、指導するアトナテスに、特に反発無く歓迎されました。

 そして、理を捻じ曲げる攻撃をする団長の剣術とは違い。

 アトナテスは、極めて熟達された技であることを、誰もが理解できる斧槍術の使い手であり。数々の戦いの中で培われたのか、斧槍だけに限らない。まさに、武芸にも秀でたと表するべきアトナテスが、赤の団の教官を務めることで、赤の団全体の戦闘力向上に繋がりました。

 

 また、今までの兵の指揮は、団長頼り所か、指揮官は団長のみという状態でした。根本的な問題として、中堅指揮官がいなかったのです。私は、占星術師で専ら後方でアストロノヴァを、ドーンとする役目でしたので、指揮なんて出来ませんでしたが。アトナテスが、中間指揮官としての役割を補いました。それによって戦いながらあれこれ指揮を飛ばさないといけなかった団長の負担は、大きく減ることになり。訓練を経て強くなったこともあって、団員からの死傷者はグッと減りました。

 戦力を増強したいと言った団長の望みは叶いました。

 

 問題があるとしたら、アトナテスが問題児ということでした。

 そして悪い子に影響されてか、日々の執務と戦場だとちゃんとしている団長ですが、お茶目度が増しました。

 

 「団長!アトナテスゥ!何をしているんですか!」

 

 叫ぶ私の声に、団員達はまたか見たいな、微笑ましい顔をしていますが。

 誰かあの二人を止めてください。あの二人、止めないといつまでも遊びます。

 聞いた所によると、二人で訓練をしていると思ったら。何を思ったのか唐突に樽乗りを始めて、そのまま野営地を二人は、縦横無尽に走り始めたようです。

 訓練で使っていた、剣と斧槍を振り回しながら。凄く危ないはずなのに、団員達が焦っていないのは、万が一が起こらないと信じているからでしょうが。それこれとは話は別です。

 

 「やっべソラスに見つかった!」

 「逃げるぞアトナテス!」

 「おう!」

 

 そして、二人は私が追いかけ始めると、揃って逃げ出します。

 樽に、乗りながら。

 

 「あぁもう!」

 

 樽に乗ったままなのに、なんで私が全速力で走っても、追いつけないんでしょうか。

 そりゃ団長もアトナテスも、生粋の戦士で体力あるのは分りますが、不安定な樽に乗ってるんですよ。

 少し走り込みして、体力をつけた方がいいかもしれません。少なくとも、団長を捕まえられるくらいにはならないと。

 そして、私が走り疲れた頃に、団長は私に近づきます。樽に乗りながら……。

 

 「ソラス、一緒に飲まないか?」

 「……ごまかされませんよ」

 

 ムッとしながら言ってみると、団長は頬を掻きます。樽に乗りなが、いい加減降りてください。

 

 「よっと」

 

 視線に気が付いたのか団長は樽から降り、私の手を握ります。

 その手の暖かさは、二年前から変わらず。

 大きくなって、ゴツゴツとして、男らしさを感じてしまいます。

 あぁもうこんなのでドキドキしちゃいますし、先ほどのことも、許しちゃいそうになってしまいます。

 

 「行こう」

 

 そして、極めつけは端麗な顔に怜悧な笑みです。

 優しくてカッコよくて強いのに、子供みたいにはしゃぐ癖して、誰もが信頼させるような器を見せる人なんて卑怯ですよ。

 気になるに、決まってるじゃないですか。団長に好意を持ってる団員が、何人いると思っているんですか。

 彼女達から、どれだけ恋占いをしてくれと頼まれ。星からの導きの結果に、何度ほっとしたことやら。

 はぁ。

 

 「仕方ないですね……」

 

 まぁ、私と団長と二人きりで飲む。なんてことはなかったんですけどね。

 火を囲んで、グラスが回り。アトナテスが団長と肩を組ながら、グビグビと飲みますし。

 酒に強い二人の熱気に当てられたかのように、私もお酒を少しだけ飲みます。

 

 団員達もお酒を飲みます。飲み慣れていないお酒に、私の頭がふわふわして、でも陽気なこの感じは楽しいです。

 ドンドンと騒いで、ガヤガヤして。ちょっと団長に、寄りかかったりなんてして。

 とっても、とってもドキドキして、楽しいです。

 

 あれから、二年。

 喪失から始まった私の生活は、どこを切り取っても戦いに満ちているでしょう。

 ですが、赤の団の日々は。

 私に様々な成長と、確かな充実感を齎してくれました。

 

 こんな調子で、赤の団にアトナテスが加わり、魔物に勝利を重ね。

 団長とアトナテスがふざけて、私が叱り。酒宴を開いて皆で楽しみ。

 たくさんの剣士、中には見た目は人に近い。けれど力は魔神と名乗るに相応しい女性までもが、団長に挑戦したりなんかして、混乱を招いたりもしましたが。

 団長はそれらにも勝利し、順調に名声を重ねて、その名を物質界に轟かせました。

 

 そして、赤の団に居て、毎日が戦いだらけでも、楽しい。

 そんな思いだけで済んでいたのは、この頃まででした。

 アトナテスが団員となって、二年経とうとした辺りでした。

 

 

 国が、一つ滅びました。

 

 

 小国です、でも国です。

 何人もの避難民が、助けを求めて隣国に逃げ惑います。

 けど、魔物は彼らを逃がしません。草根の根を別けてでも、彼らを追います。

 報を聞いた団長は、一考するまでもなく動き出します。

 彼等を救いに。

 

 

 

 決して敗北する訳にはいかない。

 赤の団が敗北したその瞬間。

 私の過ごした故郷程度では、済まされない程の夥しい死者が出る。

 そんな戦いの始まりでした。

 本当の意味での、英雄王と英傑達の、私達の千年戦争の始まりでした。

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