悪役令嬢(笑)へ転生した俺!ぶっちゃけ商人上がりの偽貴族でほぼ詰み何ですけど!?   作:N2

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乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です。の悪役令嬢(笑)転生版です。
原作様のキャラは改変されています。

ちなみにどこまで続くかわかりません。
それでも宜しければ、読んで下さる皆様のお時間を頂戴させて頂きます。
真面目ドタバタオフリー嬢って、あまり需要なさそう(笑)


第1話 オフリー嬢になりました。

 オフリー伯爵領、ここは先代が疲弊した男爵家を乗っ取った後に、陞爵して伯爵家となった所謂成り上がりの家である。

 ここホルファート王国は、広大な大陸を浮島として持ち、領土及び領空でもある周囲に大小様々な浮島がある。

 古の冒険者達がこの地を発見し、ダンジョン攻略に精を出し、時には開拓をしたりと知恵と勇気と根性で、広大な地を治める国を建国した。

 このホルファート王国で貴族というのは、その家の開祖は冒険者か戦功労者であり、商人上がりというのは唾棄すべき存在と言える。

 

 そして、俺、というか()は、目覚めたら何故かそのオフリー伯爵家の娘になっていた!?

 

 

 

 

 ホルファート王国王都にあるオフリー伯爵家の屋敷。

 

 「あ~、まだ調子が悪い……」

 

 頭がガンガンするのがしんどい。

 

 「お嬢様はアルコール中毒で死にかけたんですよ! 暫くは水を飲んでゆっくり休んだほうがいいです」

 

 屋敷の使用人から苦言を呈される。

 おそらく、急性アルコール中毒か薬物中毒の昏睡からオフリー嬢が復活して、そこで意識が何故か俺になっていた。

 多分この娘その時に死んだんじゃないかな? だって中身オッサンだぜ!?

 しかし、水を飲んで横になり、段々頭がクリアになっていくとこの環境に思い当たる節が出てくる。

 そこにこの館の主とも言える母親が入室してくる。

 あぁ、後ろに控えているあいつらは――

 

 「まったく、専属使用人3人と酒をかっくらいながら薬使って乱交などをしているから、そんな無様な姿を晒すんザマス。いいこと、学園入学まではこれに懲りて少しは大人しくするんザマスよ」

 

 「……はぃ」

 

 俺は布団を顔まで被り必死に耐えている。

 

 「あら? 殊勝ザマスね」

 

 そして母親の退室後、たっぷり一分程経ってから盛大に噴き出した!

 

 「ぶっ! ぐ…… ブハハハハハ! ザマスとかってホントに言ってるよ! え、マジで! 頭痛と腹痛で俺を殺しに来たんじゃないだろうな! アハハハハハハ」

 

 一頻り笑った後、ぐったりとしながら水差しから水を直接飲んで喉を潤した。

 

 「ち、あのザマス婆の後ろにいた彼奴ら、エルフに犬と猫の亜人、しかも専属使用人ときてオフリーか…… しかもホルファート王国、くそっ! ここはあの“アルトリーベ”乙女ゲーの世界じゃねぇか……」

 

 俺の記憶にある、あの日本でプレイした乙女ゲーの知識にそっくりな世界のキャラに憑依? 転生? してしまっている。

 男爵家から一部伯爵家までが、どうしようもないほどの女尊男卑の意味不明な世界だ。女は公然と亜人の奴隷達を専属使用人として、酒池肉林のブッ飛んだ生活を送っている。

 どうも平民は普通の価値観らしいが、細かいゲーム描写は覚えていない。

 しかも女! それも悪役令嬢(偽)とか(笑)が付くようなキャラかよ。

 終わってんなぁ……

 

 

 

 

 元々俺は、アルトリーベを出したメーカーの【第六天魔王の野望】や【中原の覇者は眠らない】なんかの戦略SLGが好きだったから、このメーカーの一風変わった乙女ゲーに手を出したのだ。

 戦略パートは本当に面白くて、課金でクリアした後は無課金で挑むなど、それなりに楽しませてもらった。

 あれ? しかも外伝があったな。あっちのほうが戦略SLG好きには人気だった。しかもギャルゲー! あのメーカーは迷走してたのだろうか? でも売れていたから問題無いという事か。

 まぁ、ぶっちゃけ男の攻略なんかは、何の面白味もなかったが。

 

 「だからこそ、このゲームはけっこう覚えている。オフリー伯爵令嬢は、というかオフリー伯爵家は基本屑、ていうか相当ヤバい立ち位置だ」

 

 中身というか心が男であの結末は嫌だな。死んだほうがマシだ。

 あまり明記されなかったが、家はもちろん取り潰されて、オフリー嬢は死んだとは出てなかった…… 大方女郎屋にでも売られたんだろう。

 

 王宮の派閥への多額の献金のため、違法商売に空賊やマフィアとの付き合いだっけか。ゲーム内では明記されておらず、ぼんやりと空賊を手引きして主人公を貶めようとしたぐらいだったから、オフリー伯爵家が何処まで手を染めてるかわからない。

 違う! 確かファンオース公国とも繋がって戦争の引き金を引く事案に発展したんだった!

 半年後には学園だ! 既に詰んだか?

 いや、主人公、確かオリヴィアか。そいつに関わらなければいいだけだな。オフリー嬢の婚約者は攻略キャラだ。ブラッド・フォウ・フィールド、辺境伯領の嫡男だった筈。

 まぁ、中身俺だし結婚はどうでもいいが、最終的には潰されるのがオフリーだが、主人公に関わらなければまだ時間に余裕はある。

 女の身で商売云々に口を出せるかわからんが、学園に入学すれば仕送りが貰える。専属使用人もいらないからその分も金が入るとして、何かオフリー家から離れるための行動に使うとしよう。

 

 

 

 

 鏡を見ても正直普通の女の子が映っている。

 髪型がゲームではあんまりよろしくなかった筈だと思い変えてみたが、不機嫌そうな細い目は化粧さえすればそれなりに映えるが、化粧した女子群の中では、下の上くらいかな。

 という事で、髪は短くボーイッシュにして化粧も止めた。肌ケアぐらいは最低限の身嗜みとして行っている。

 後は言葉使いは気を使うのは止めた。女言葉無理だったよ。

 

 「お嬢様は本当に専属使用人いらないんですか?」

 

 「あんなのもういらない。それに専属使用人いないほうが、学園じゃ男子が選り取りみどりで選び放題だ。ニアもそのほうがいいだろう」

 

 学園入学を明日に控えて、女子寮の俺の部屋で取り巻きの女子達とお喋りに興じていた。

 伯爵家の娘である俺の部屋のほうが広いので、今後とも学生寮で駄弁るのであればここがいいだろう。

 ベッドなんか、女子四人なら一緒に寝れるというアホみたいなサイズだ。

 話し掛けてきた女の子は、ナルニア・フォウ・ドレスデン。ドレスデン男爵領の正妻の娘で小さい頃から親しくしている。あのオフリー嬢が死にかけた乱交時にはいなかった。

 どうも記憶を辿るとオフリー嬢はあの時が初めてで、薬と酒で痛みと意識が月までブッ飛んでいたらしい。

 すげぇなオフリー嬢。

 ドレスデン男爵はオフリーの寄子ではないが、オフリーに昔から借金があったため、付き合いが親密というか半ば子分のようにオフリー伯爵は扱っている。

 その経緯もあり、ナルニアは男爵家の娘でもあるのでオフリー嬢の取り巻きを纏めて貰っている立場の女の子だ。

 

 「私は、お嬢様の婚約者繋がりを期待してたんですけど……」

 

 フィールド辺境伯の寄子か陪臣か。確かにそいつらはそれなりだろうけど、ニアは大人びた美人だからもっと上を狙えそうだ。

 

 「ニアは美人だから、オフリー伯爵家と繋がりが無い家のほうがいい。何かあった時に飛び火したら嫌だろう?」

 

 「うっ、確かに……」

 

 ナルニアとは割りと開けっ広げに話をこの半年間でしているため、オフリーの悪い部分も日常会話で話に出している。

 でも他の二人は恐れ多いのか口を噤んで視線を俺と合わさないようにしている。

 

 「別にカーラもイェニーも気にしないでいい。特にオフリーは成り上がりって馬鹿にされてるしね」

 

 「いえ、私達はそんな!」

 

 「そうですよ!」

 

 この半年でこの二人ともそれなりに関係は築いたので、上辺からはほんの少し踏み込んでくれているのだろう。それでも爵位や宮廷階位が物を言う世界、カーラとイェニーは普通クラスだから、こちらに気を使っているのがわかる。

 

 カーラ・フォウ・ウェイン、オフリー伯爵領の寄子であるウェイン準男爵の娘。

 基本的に浮島でカーラは生活していたため、仲良くなったのはここ最近である。それ以前は、小さい頃に何回か面識があったぐらいだな。

 イェニー・フォン・リューベック、オフリー伯爵領の寄子でリューベック騎士爵の娘だ。

 世襲ではない一代限りのフォンではあるが、小さい浮島を管理している。男手が王国に仕官をした後に、退官してから管理している浮島に移り住むらしい。そして退官後にフォンを継いでいる。イェニーは王都の官舎に住んでいたため、それなりに顔馴染みだから親しくしている。

 この二人が俺の正式な取り巻きのようなものだ。

 ナルニアは家の付き合いで済まないとは思うが、それなりに仲良く出来たのが幸いだ。

 

 「ねぇお嬢様、リオン・フォウ・バルトファルトって知ってます?」

 

 「あ、僕も知りたいです!」

 

 カーラが質問してきたと思ったら、僕っ子のイェニーも手をあげて聞いてきた。

 やっぱり皆気になるよなぁ。

 

 「バルトファルト家の三男ですよね! 辺境の。確か冒険でロストアイテムと浮島に財宝を見つけた奴でしたっけ?」

 

 「そうなんだよなぁ。私達と同じ年代…… しかもその功績で上級クラス。今年は平民も特待生として上級クラスに入るんだよ」

 

 ナルニアの説明に相槌を打つように答えるが、誰だよそいつ。そんな奴ゲームにいなかったんだけど。

 いたのかなぁ? 戦略パート重視であまり攻略キャラの事とか、選択肢の選び方とか覚えてないんだよなぁ。

 総合的能力が高い王太子殿下の攻略パターンだけ覚えて、課金したり無課金だったりで戦略パート重視で遊んでたから。

 

 「え、平民なのに学園に!? しかも上級クラスですか?」

 

 俺はカーラの問いに頷いて肯定を示した。

 

 「僕やカーラみたいな準貴族みたいな家の女の子からするとあんまり気分良くないかも」

 

 「上級クラスだと苛められるんじゃないその子。学園も何で平民なんかを……」

 

 イェニーの言う通りだし、ナルニアの言う通りに実際なるだろう。まぁ、乙女ゲーの攻略キャラ五人に助けて貰うんだろうがね。

 貴族だけの学園に平民を入学させるなんて、革新的かと思いきや、アルトリーベの主人公で物凄い出自というお墨付き。

 

 「正直その件について話たかった。私は、というか私達はあまり彼等に近付かずに生活しようと思う。王太子殿下達有力子息も入学するから、正直女子は騒ぐだろう。だからこそ様子見だ」

 

 「でもお嬢様、ブラッド様はお嬢様の……」

 

 「いいんだよ。大して面識もない相手だ。なるようになるさ」

 

 カーラも気にしてくれはするが、あのゲームだとオフリー嬢も結局、婚約者のブラッドとは接点があまり無かったと思うんだよね。

 

 「あ、そういえばお嬢様! 彼も入学しますよ。あの去年五月の戦争で有名になったヘルツォーク! ほら、今日ターミナルの浮島に軍艦で来てた!」

 

 ふぁっ!?

 

 「あ、あ~、様子見で! ホントに余り彼等に触れないように!」

 

 俺の剣幕に圧されたのかナルニアは黙り、カーラもイェニーも何事かと目を見張るが、最早俺は気にしていられなかった。

 意識が俺になったのが十月ぐらいだから知らなかったのか? いや、バルトファルトの三男に驚いて気づけなかったんだ! アホか俺は!

 

【アルトリーベ外伝~ヘルツォークの慟哭~】の主人公まで入学だとっ!

 馬鹿な! あれは確かここまで、本編とクロスしていただろうか? 

 待て、思い出せ! 寧ろ嬉々として発売された当初は買いに走った。しかも戦略SLG強化で男性がメインターゲットだからギャルゲー要素も組み込んでいた。

 ギャルゲー要素に興味は無かったけど、制作スタッフがあの伝説の同窓生と同窓生2の面子だったから予約までした。PC98版以来のギャルゲーに心が踊った! 

 じゃない! そんなのは今はどうでもいい。難易度が糞過ぎて、学園入学前の…… そうだ戦争だ。初陣と国境沿岸での戦争だ。何度ラーシェル神聖王国による義妹のくっ殺エンドを見たことか。ありがとうございます。

 じゃない! 俺もあそこはクリアして先に進めたが……

 

 「あっ!?」

 

 「だ、大丈夫ですか!? 顔が真っ青ですよ!」

 

 「てゆうか大分ヤバそう……」

 

 「お嬢様! 水持ってきます」

 

 ナルニアが顔を覗き込み、イェニーが引いている。カーラは水を取りに冷蔵庫に向かってくれた。

 

 「だ、だいじょうび。私はだいじょうび……」

 

 え、ヤバい!? 

 確かオフリーって外伝だと、ヘルツォークに一族郎党海底まで沈められたか、月まで吹っ飛ばされたんじゃなかったっけ?

 いつだ? ヘルツォーク領内の内政や開発パートが難しくてそこまで進めていない。俺はメーカー販売の完全攻略本を買おうとして…… 買った記憶が無い!?

 ネットの実況では確かにオフリー伯爵家は消し飛んでいた。

 

 「ニア! 実子証明は?」

 

 俺の迫力に気圧されるようになりながらも答えてくれた。

 

 「は、はい、確かヘルツォークを廃嫡になった筈です」

 

 おいおい、生身の人間があの糞みたいな戦争パートや内政、開発パート、実子証明クエストを乗り越えてきてるのか!?

 領内や王都で剣術や魔法、鎧の闘技場に足も運んでみたけど、俺は絶対に無理だ。

 あんなの学園入学前にこなす奴は化物だよ。

 

 「い、いいか皆、絶対にヘルツォークには関わるな。絶対だ」

 

 俺の剣幕に圧されて首をコクコクと縦に振る女性陣。

 俺のオフリーとの縁切りを早めなければ…… いっそバルトファルト卿やヘルツォーク卿と懇意になるか?

 もしくは有力者と知己を得て、オフリーの悪事の告げ口をするか。幾つかは俺でも証拠を抑えられるかもしれない。娘でもあるし、ゲームではきっちり空賊を手引きしたのだから。

 

 悲壮の覚悟を持って、学園入学をオフリー嬢は果たすのであった。




くっころ!

ちなみに拙作の乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界ですと多少クロスしております。

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