悪役令嬢(笑)へ転生した俺!ぶっちゃけ商人上がりの偽貴族でほぼ詰み何ですけど!?   作:N2

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違いは、【乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です】https://syosetu.org/novel/250891/
第17話 決闘 を参照してください。


第12話 ジルクが暴言吐いちゃいました。

 俺、ステファニー・フォウ・オフリーは、クラリス先輩を中央にマルティーナさんと挟んで観客席で観覧している。

 ジルクに向かって宣言したエーリッヒさんだが、そこにジルクが提案してきた。

 クラリス先輩は泣きながらジルクを一心不乱に見つめている。

 

 「つ、続けて連戦は君もきついでしょう? 一息いれたらどうです?」

 

 う〜ん、あんな短いブラッドとの決闘で疲れるのかな?

 あの人、徹夜の鉄火場の後とかでも大臣と打ち合わせとかしてたし。

 

 「あんな短かさで僕が疲労するとでも? 貴方達程度であれば24時間戦えますよ」

 

 エーリッヒさんは牛若丸三郎太で、24時間の神話なのだろうか?

 実は戦前とか幕末の人と言われても納得してしまうかも知れない。しかし、エーリッヒさんはガンダムを知ってる…… いや、大戦経験者でも長生きしてれば知ってるか?

 まぁ、死んだ歳と年代は聞いているけど……

 

 「どうしたんですオフリーさん? 面白い表情になってますよ」

 

 クラリス先輩を挟んだマルティーナさんから覗き込まれた。

 ごめんねオフリースペックの変な顔で! 

 真面目に考え事してたの!

 後、そろそろ名前で呼んで! 

 あ、もしかしたら俺って名前を皆に伝えてないかも。

 

 「い、いえいえ、ちょっと考え事を」

 

 ジルクが眉間に皺を寄せながらも笑顔でエーリッヒさんに応え出した。

 器用だな。

 

 「そ、それでは公平ではないでしょう? や、やはり決闘は公平でなければね」

 

 ジルクの言葉に会場が沸き出す。

 

 「きゃぁぁああ! 格好良いジルク様ぁぁああ!」

 

 「ヘルツォーク相手に何てお優しいの! ス・テ・キ」

 

 「高潔感あるよな」

 

 何それ? 

 ギンガマンっぽいけど……

 ジルクのしたこと考えると高欠陥の間違いじゃなくて? 

 

 「公平ねぇ――」

 

 (高威力ライフルに実戦用小型魔力弾頭ポッド、あれは20基用。ブレードにギミックまで着けておいてよく言う)

 

 「――僕はこのままで構いませんよ。何やら必死なのが笑えますので」

 

 確かにジルクは必死そうだ。休憩時に装備追加でもするのだろうか?

 でもそれだと更に公平から遠ざかりそうだけど。

 

 「ジルク様の好意を笑うとか信じらんない!」

 

 「あれだぜ、負けたときの言い訳にするんじゃないのか?」

 

 「うわぁ、ヘルツォークってやっぱ最低よねぇ」

 

 再度、エーリッヒさんへのブーイングが会場全体を包んでいった。

 

 

 

 

 リオンはその光景を見て、自身の肩周辺に浮いているルクシオンへボソリと呟く。

 

 「何であれでリックにブーイングが起こるんだ?」

 

 『場を使うのが上手いのでしょう。それに彼自身が生徒達への好感度が高いと認識してるからこそですね。頭はそれなりに回るという事です』

 

 「マジか? そもそもこの会場にいる生徒らは、ほとんどがバカだろう」

 

 いまいちルクシオンの言うことを納得しきれない。

 

 『それと、賭けに興じている影響もあります。借金までしている者たちが三分の二以上です。熱狂から集団ヒステリー気味になり、そこにジルクが同調圧力を加えましたね。場を読めているからこそですよ。マスターも見習っては?』

 

 「いや、ジルクを見習うとか人として終わりそうなんだけど。だってアイツ未だにクラリス先輩に何か言うどころか、見ようともしてないぞ」

 

 ジルクは闘技場に入場してからもクラリスのほうを見ようともせず、現在はエーリッヒとのやり取りに終始している。

 

 『新人類の恋愛なんかに興味ありませんね』

 

 「こ、こいつは」

 

 ルクシオンにデコピンをしたリオンだが、自分の指を痛めただけであった。

 

 

 

 

 「ヘルツォークってご存知のように公平にも公正にも、ましてや王国法を遵守している平等な子爵領としても扱って貰ってないんですよね。同じ子爵家のマーモリアとは大違いだ」

 

 エーリッヒさんの言葉に呼応して威圧感が増したマルティーナさんが怖い。クラリス先輩大丈夫かな? 

 隣にいる人怖くないの? 

 

 「……そもそも私と貴方では大いに違いますよ。我々五人とマリエさんとの間で育まれている愛の中を、無粋にも引き裂こうとしている貴方やバルトファルト君とはね」

 

 (少し誘導気味にしたが、ヘルツォーク領には言及せずに論点をずらしたか…… 冷静じゃないか。ならば)

 

 「閣僚の家の御息女との婚約を無粋にも紙切れ一枚で無かった事にしようとしている男が言うじゃないか? そんな男が語る愛は笑えるな」

 

 ダビデに乗るエーリッヒさんは、ジルクに向けて顎をクイッとしてから頭部をこちらに向けてきた。

 えぇっ! 

 それでもジルクは俯き加減でクラリス先輩を見ようともしてないし…… アイツ何なん?

 

 「所詮政略結婚、彼女も私も家の為の婚約です。そもそも政略結婚に愛があるほうがおかしな話ですよ」

 

 (こいつ、クラリス先輩…… いや、アトリーそのものを虚仮にするつもりなら、僕がマーモリアとの戦争も辞さないぞ)

 

 「違うわっ! 私はただ、本当にジルク、貴方を愛していたの! 私がどれだけ、どれだけ…… 貴方の為に…… レース場を手配してエアバイクも、指導者も…… 貴方に喜んで貰いたかったからっ!」

 

 マルティーナさんが気を利かせて拡声魔法でクラリス先輩の声を響かせてはいるが、言葉が切れた後の嗚咽まで拾ってしまっている。

 

 「……くっ、それが重いと言うのですっ! どれだけのプレッシャーを私に与えてくるかわからないのですかっ!! 心理的負荷を与える感情が、愛である筈がないっ!」

 

 うっわぁ、屑過ぎてドン引きだよ。

 クラリス先輩なんか放心しちゃってるし。

 マルティーナさんが――

 

 「全然重くないです。好きならその人が何処にいるかまで四六時中把握し、好みやその日の気分まで調査するのが普通です。トイレの回数すら数えたりしてもいいんです。ただの純愛ですよ」

 

 クラリス先輩の背を撫でながら必死に言い聞かせてるけど、俺はマルティーナさんにもドン引きです。

 クラリス先輩をもっと重い女にしないであげて!

 マルティーナさんの愛をいなしているエーリッヒさんはヤバいな。

 

 「あんな美人で性格も一途な女性を受け止められないとはね。お前の程度が知れるというものだ。そんな男の愛は、確かにそこのラーファンの発育不全児にはお似合いかもな」

 

 (な、ななななっ!? 何が発育不全よ! アタシはこれからバインバインになるんだからねっ! ……ふぅぇぇぁぁっ!? な、何、悪寒が)

 

 マリエがムキーッとしていたかと思えば背筋を震わせている。ウケる。

 俺が笑いを堪えながらマリエを見て、ふとマルティーナさんのほうを見たら、視線が俺とは別方向なのに俺も震えあがった。

 ん? ラーファン…… あぁ、エーリッヒさんの実母ってラーファンだって三人で話した時言ってたな。

 マリエとエーリッヒさんって従兄妹じゃん!

 

 「マリエさんを馬鹿にするのは許しませんよ――」

 

 (いや、お前をバカにしてるんだけど)

 

 「――それに、そもそも貴方も愛を知らないでしょう! 愛を語る資格はないのですよ。母親の不義の子である貴方にはっ!!」

 

 あ、ヤバい。戦争案件じゃね?

 マルティーナさんは目を見開いて固まってしまった。俺は恐る恐るエーリッヒさんを見るが――

 

 「そうか、それで?」

 

 ん、あれ?

 

 「っ!? あ、あぁ、そうですよね。貴方にまともな感情などあるわけありませんでした。貴方の行動で実の母親を死に追いやった貴方にはっ!!」

 

 ジルクが暴露? した内容で会場が三度目、今までで一番大きなエーリッヒさんへのブーイングが巻き起こった。

 

 「何よそれ最低っ!」

 

 「アイツそもそも正妻の子の癖に正妻裏切って死に追いやるとか最っ低!!」

 

 「あれって、廃嫡の件のやつか。あれのせいで、俺は親父に疑われたんだよな。死んでくれよマジで」

 

 あ、終わった…… マルティーナさんが立ち上がって魔法を放とうとし出してる。

 止めないのかって? いやいや、人生終わっちゃうでしょ。生き残るために色々とやってきたのに、止めようとして死んじゃダメでしょ。

 

 「み、緑虫が…… もう殺――」

 

 まだ鎧に搭乗してないジルクをオーバーキル全開の魔法でマルティーナさんが攻撃しようとしたその時――

 

 「だから、それで? そもそも僕は、王都を駆けずり回っていた学園入学前から散々言われてきたからね。今更感しか沸かないな」

 

 「――お、お兄様っ!?」

 

 薄ら笑いでも浮かべているような声色で、全く気にせずジルクの言葉を促している。

 じ、実はジルクの言ってる事って大正解なのだろうか?

 その辺りはエーリッヒさんに聞いてないし、喋ってもいなかったし。

 

 「……はぁ、愛無く産まれて親殺しですか。しかも罪悪感すらないとは…… そんな貴方は愛を受ける事も与える事も無いのでしょう。我々五人とマリエさんとの高尚な愛を邪魔しないで頂きたいですね」

 

 (そもそも僕の愛は基本的にヘルツォーク限定だ。こいつ、もう殺そうかな? 将来を担う若手筆頭、将来の王の腹心がこれだと王国の未来が無さそうだ。夏期休暇でリオンとファンオースの対処を行ってもこいつらがこれじゃあ…… 何か徒労に終わる気がするなぁ)

 

 「はなしなさいっ! ど、といてくださいっ! 何故お兄様が、ヘルツォークのために最前線で戦ってきたお兄様が、こうも悪し様にいわれなければならないのですかっ!」

 

 マルティーナさんは主人公ちゃんを跳ね除けたが、クラリス先輩がマルティーナさんの正面に泣きながら立ちはだかっていた。あんな事言われて、まだ緑屑に想いが残ってるのかな?

 取り敢えず、クラリス先輩頑張って!

 

 「ごめんなさい、ごめんなさい。貴女のお兄さんを巻き込んでごめんなさい…… 酷い男…… 結局あんな言葉を吐き捨てた時でさえ、私の方を見ようともしないのよ…… 何で、何であんな薄情な男を、あそこまで愛したのかしら……」

 

 マルティーナさんに向かって泣き崩れながら縋りついている。

 そんなクラリス先輩に冷静さを取り戻したのか、別の感情か…… マルティーナさんも涙を流してクラリス先輩を抱き止めていた。

 美人が抱き合っているのって何かいいよね!

 もっと百合百合しても宜しくってよ!

 

 「愚か者共には報いを受けて貰わないとね。しかし、今後マーモリアも伯爵に陞爵されるというのに…… 3代後か4代後に必ずポカをする。王宮内を紛糾させる原因を作っている事がわからないんですかね」

 

 ふおぁっ!? 

 そ、その愚か者の中に俺は入れないでください。宜しくお願いします。

 

 「我々が勝ち、王国内に真実の愛を知らしめさせれば、そのような些事どうとでもなる。私が、どうにかさせてみせる」

 

 緑屑の断固した決意に会場が沸いた。

 何だろうこれ、これがゲームの攻略者側が持つ世界からの愛されパワーなのだろうか?

 ステフは訝しんだ…… 外伝の主人公を虐め過ぎじゃない?

 

 「……そうですか。あぁ、しきりに休憩させたかったみたいですが、ジルク殿の懸念を取り払ってあげますよ」

 

 「な、何を言っているんです? 私は貴方の為を思って――」

 

 「僕は()()を使いません。ほら」

 

 エーリッヒさんは緑屑の言葉を遮りながら、おんぼろライフルと錆びついた先の欠けたブレードを闘技場端に置いた。

 うん、相変わらずクレイジーだけど、もう俺はあの人に関して驚かないわ。

 

 「バ、馬鹿にして…… あの世で後悔しても知りませんよ!」

 

 緑屑、何か言い難いな…… ジル屑君。決闘で堂々と殺す宣言は駄目でしょ。

 結果として死んじゃったね、残念だったねは通じるけど。

 

 (赤いのは昔からキックがお上手、という事をジルクは知らないらしいな。それにお披露目したい事もあるからね…… やっぱり殺さず、生き恥を晒して貰おうか)

 

 「さぁ、ジルク殿、全力で構わないよ。棄てられて忘れられたヘルツォークの力! ここに供覧しようではないか」

 

 そして、舌戦で会場の熱気がピークを迎えた今、エーリッヒさんとジルクの決闘が始まった。




オフリー嬢が一番リラックスして決闘を見てる気がする(笑)
ちょいちょいビビってるけど(マルティーナのせい)

しかしオフリー嬢、誰にも名前を呼んで貰えない(;´・ω・)ショボン
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