悪役令嬢(笑)へ転生した俺!ぶっちゃけ商人上がりの偽貴族でほぼ詰み何ですけど!?   作:N2

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原作様WEB版では第一章 愛に相当する場面の途中までになります。
私の別作品ですと第19話 愛!? に相当する場面の途中までになります。ほとんど一緒です。一部省いてあります。
https://syosetu.org/novel/250891/


第14話 愛を下さいと叫んでみたくなりました。

 リオン君はグレッグとクリスを罵倒しながら気持ちよさそうに圧倒した。

 舞台袖で、グレッグはバラバラになった鎧の前で項垂れており、クリスは特注品の専用ブレードが折られ、心も一緒に折られたかのように茫然自失状態だ。一応俺の婚約者だったブラッドはまだ寝ている。

 ブラッドって呑気なキャラだったかな? アルトリーベ本伝ではユリウスルートしかプレイしていないからキャラ像がナルシストってだけで他はわかんないや。

 そんな中マリエは、必死に2人に声をかけつつもリオン君の鎧、アロガンツを睨み付けている。

 

 「もう殿下と戦っているのか」

 

 エーリッヒさん達が俺やアンジェリカさんとオリヴィアさんがいる観客席に、クラリス先輩とマルティーナさんを連れて駆けつけてきた。

 

 「そっちは済んだんですか?」

 

 「全身の骨折が酷くベッドに括り付けられているジルクへ、クラリス先輩とマルティーナのビンタが炸裂して意識不明だよ。まぁ、治療魔法師が慌てながら治療を開始したから、死ぬことは無いんじゃないかな」

 

 さすがのエーリッヒさんも苦笑いだ。

 

 「し、しかしあれはスコップですか!?」

 

 マルティーナさんは、アロガンツが装備しているスコップに驚きつつも懐疑的な目を向けている。この世界って塹壕戦が無いからスコップの万能性を知らないのだろう。

 

 「ティナ、スコップは全天候型万能近接武器だ。中々いいチョイスだと思うぞ」

 

 おぉ、流石にエーリッヒさんはスコップの有用性をわかっていらっしゃる。

 

 「そうなのですか? いやまさか……」

 

 「殴ってよし、水平に刃を立てるように振るったら脳漿を吹き飛ばし、倒れた相手の腹に突き刺したら必死、最後に埋める。戦いの最初から最後まで通ずる武器はスコップだな。白兵戦最強武器だ」

 

 「訓練もいらない持たせた瞬間に兵士の完成ですからね。ヘルツォーク子爵領でも採用してみたらどうです?」

 

 ついノリで提案してしまった。

 

 「ふふふ、まるで兵士が畑から取れるようじゃないか! めちゃくちゃ安いし。刃毀れなんか意にも介さない。オフリーさんもわかっているじゃないか。リオンも同じなんだろう。あの決闘前の自信にも頷けるものだ」

 

 エーリッヒさんに釣られて俺も悪い顔で笑みが零れてしまう。まぁでも俺の迫力は町のチンピラ以下だろうけど…… 

 泣ける。

 

 「ねぇ、本気で言っているのかしら……」

 

 「ああいう笑いを浮かべているときは、大抵アホになっているんです……」

 

 クラリス先輩は懐疑的な表情でマルティーナさんに耳打ちし、マルティーナさんは呆れた目をこちらに向けてクラリス先輩とひそひそ話をしている。

 俺とエーリッヒさんはいたたまれなくなったので、誤魔化すように闘技場に改めて集中する。

 オリヴィアさんとアンジェリカさんは、リオンと殿下の戦いに集中しており、アンジェリカさんは涙が溢れ落ちないように必死に耐えている姿が痛ましい。

 試合開始直後からリオン君の問いかけに対して、散々とアンジェリカさんの気持ちは愛じゃないだの、マリエだけがユリウス殿下の本当の気持ちに気づいていただのと言っていた。

 アンジェリカさんは、泣き喚いても仕方がない筈なのに必死に耐えている姿は見ているこちらが堪えるし、その気丈な態度は凄いとも思う。

 

 「あれこれと偉そうなことを言っているお前も同じだ! お前の言葉は薄っぺらいんだ! 今のお前は、大きな力を手に入れて傲慢になっただけの男だ! 俺達とマリエの仲を邪魔して楽しいか? それだけの力で他を圧倒し、上から目線で説教する気分はどんな気持ちだ!」 

 

 ユリウス殿下はグレッグとクリスを煽るだけ煽り、余裕で勝ったリオン君に対して我慢がならないといった様子で叫んだ。

 

 「いいね、いいねぇ、最っ高だねぇぇ! もう最高の気分だよ! あれだけ威張り散らしていた威勢の良いお前らを、圧倒的な力でねじ伏せて説教すると愉快に素敵に気分が晴れる! あははははは、言い返せないお前のお仲間もどうかと思うけどさ。まぁ、負けた癖に言い返すしか出来ない姿も惨めさを誘うだけだよな! そして教えてやるよ。俺は確かに傲慢かも知れないが、お前らはそんな俺にも勝てない訳だ。その辺の気持ちはどうだ? 格下に見ていた奴に負ける気分はどうですか、どうですかっ! 王子様よぉ!」

 

 うわぁ…… 

 リオン君も色々と溜まっていたんだな。まぁパーティー会場でのグレッグとか酷かったし。目障りだ雑魚が! みたいに言われていたし。

 よく見ると王太子殿下の機体は損傷が目立つが、リオン君のアロガンツは近接戦闘なのに無傷だ。

 あれだけ殿下に対してマリエの事をからかい、アンジェリカさんの愛は本物だと諭そうとしながら戦っていて無傷とか…… やっぱりリオン君も普通じゃないよなぁ。

 なんかエーリッヒさんとリオン君ってずるくない?

 俺なんか普通どころかヤバいキャラでしかも女なんですけど! 破滅する身の上なんですけど!

 

 「貴様ぁぁああ! 黙れぇぇええ!!」

 

 斬りかかってきた刃を受け止めて鍔迫り合いを行い、アロガンツが覆いかぶさるように頭部を突き合わせる。

 

 「何が王族に生まれたくなかっただ。お前、変態婆に売られそうになったことがあるのかよ? 女子にペコペコ頭を下げて、嫁に来てくださいって頼んだ経験は? 田舎は嫌だとか、愛人も支援しろと言われたことは? 惨めだぞ。結婚して生活の支援を全てするのに、愛は愛人と育むとか言われた気持ちが分かるかぁぁぁ!」

 

 エーリッヒさんがリオン君の発した内容を聞いてさめざめと泣きだしてしまった。

 思わずその姿に俺もマルティーナさんやクラリス先輩もギョッとしてしまった。

 見渡すと周囲の男子も嗚咽を漏らし始めている。

 

 「ちょっと男子(だんすぅぃぃい)、何泣いてんのよ」

 

 女子たちがそんな男子を顰め面で文句を言っている。

 俺はよく知らんけどお前らのせいだよ。

 

 「お、お兄様!?」

 

 「大丈夫、ちょっと心にきただけなんだ」

 

 「あ、あのこれを」

 

 あ、ニアがさっとハンカチを差し出した。

 マルティーナさんが物凄い形相をしている。

 ダメだ、攻め過ぎだニア! 最近ちょっと頑張りすぎているぞお前は!

 

 「カーラ、イェニー、一体どうしたんだニアは?」

 

 「パーティーでも思いましたけど、エーリッヒさんの事を狙っているんじゃないですか? リオンさんもナルニアお嬢様の事を気に入ってる感じでしたし。実家から離れたいお嬢様からしたら、どちらにしても良い兆候では?」

 

 カーラの言う通りだ…… その通りではあるんだけど!

 

 「ぶっちゃけ僕はあの二人ってまんざらでもないと思いますよ。いいなぁ、僕とカーラは普通クラスだからリオンさんもエーリッヒさんも身分違いですし」

 

 カーラと僕っ子のイェニーは楽観的だが、お前たちはあのお茶会でのマルティーナさんの怖さを忘れたのか!?

 今度は永遠にあのお茶会から抜け出せなくなるぞ!

 三人でひそひそ話をしているとユリウス殿下の言い返す声が聞こえてきた

 

 「そ、そんな事がどうしたというのだ! お前らは自由じゃないか! 良い相手を見つければ良いだけだ!」

 

 「自由!? 良い相手を見つけろ? 俺みたいに必死に生きてきた男が自由! 馬鹿にするなよ、このボンボンが! お前、純潔の危機を感じながら! 命がけで!  小さな船で! 空に船出が出来るのかよ! あんな美人な婚約者がいて、他の女と遊んでいるのも許されて…… 何が王族に生まれたくなかった、だ。エンジョイしまくりじゃないか! 出直してこい!」

 

 もうゲームシナリオをどうこう気にすることがなくなったリオン君は、ここぞとばかりに今までの鬱憤をぶつけ出している。

 

 「うぅ、もう前が見えない」

 

 エーリッヒさんの涙は既に決壊している。

 

 「ほら、これも使って涙を拭きなさいな」

 

 「あぁっ!?」

 

 ニアのハンカチで拭いきれない涙をクラリス先輩が手ずから拭いてあげている。

 何と素早い。出遅れたマルティーナさんが今度は泣きだしそうだ。

 この近辺だけ闘技場内で異質な雰囲気が漂っているんですけど……

 

 「遊びではない! 本気だ!」

 

 「なお悪いわ!」

 

 アロガンツはスコップのフルスイングで王太子殿下の剣を吹き飛ばした後、腕を掴んで握り潰している。

 王太子殿下は瞬時に距離を取り、鎧の肩に装備しているリボルバー型のキャノン砲を放つが、アロガンツは舞台上を素早く左右に動いて回避しきった。

 ……と、エーリッヒさんに言われて俺は何となく動きを把握した。

 俺が決闘なんか見てもよくわかんないんだよね。

 エーリッヒさんのジルク戦は分かりやすかったけど。手ぶらでジルクの攻撃を避けまくってジルクの武器をジャックしてドカンだ。

 ちなみにブラッド戦は気付いていたら終わってた。マジ意味不。

 

 「あの大きさで速いな、それにあのパワーは…… あんな鎧、背中のバックパックも大きい。どれだけの装備を積んでいる?」

 

 エーリッヒさんは二人の一瞬の攻防だけで、アロガンツの凄まじさを把握したみたいだ。

 カラカラと撃ち尽くした音が空しく鳴り響くなか、アロガンツは王太子殿下の鎧と対峙するように向かいあっている。

 

 「……もういいだろう? 遊びは終わり。お前の相手はあっち。分かった?」

 

 アンジェリカさんは辛いのだろう。もう目から涙を溢しながらも目を逸らさずに2人の戦いを見ている。

 アンジェリカさんといいクラリス先輩といい、政略結婚の相手、しかも結婚前にここまで想われるなんて、羨ましい話だと思うんだけど。

 ゲームという意識が薄れてくると、あの乙女ゲーの内容は無茶苦茶なのだと今ではわかる。あのキラキラ五人組は、大バカ者どころか下手したら悪役の所業だとすら思ってしまうよ。

 あ、俺はブラッドなんか愛してないけどね。憑依する前のオフリー嬢はブラッドに嫁ぐ事はまんざらでもなかったようだけど。

 オフリー嬢って面食いだったみたいだし、美形のブラッドとの婚約は嬉しかったんじゃないかな。 

 

 「まだ終わっていない。マリエを奪われるくらいなら死んだ方がマシだ! 俺は絶対に負けを認めない。殺すなら殺せ! これは決闘だ! 俺かお前が死ぬまでこの決闘を止めることを禁ずる!」

 

 リオン君の勝利後の願いは、マリエと殿下は別れるだったか…… あれ?

 

 「そういえばエーリッヒさんの願いは何だったんです?」

 

 「あ!? そういえば何も言ってないというか、要求してなかったよ…… 今からでもジルクはマリエと別れてクラリス先輩と寄りを戻せって言ってこようかな? オフリーさんはどうする?」

 

 エーリッヒさんも何だかんだ場の勢いとバーナード大臣の事しか考えていなかったという事か。

 

 「あ、私は全然気にしてないんで。寧ろ婚約破棄のほうが都合がいいですし…… ってエーリッヒさんもリオン君もその辺知ってるじゃないですか」

 

 「……私も、今更どうでもいいわよ」

 

 今まであれだけ泣いていたのにクラリス先輩は吹っ切れたように見える。

 多少は強がりもあるんだろうけど、女の人って怖いよね。

 

 ユリウス殿下は壊れた両腕を振り回して、リオン君のアロガンツに殴りかかる姿は滑稽だ。

 もう決着はついているというのに、王太子殿下の決闘中止を禁ずるという言葉によって、審判も止める事が出来ずに右往左往している。

 いや、止めようよ。決闘中に立場をかざして一方的な命令を突き付けるって禁止事項じゃなかったっけ?

 茶番劇になっちゃったし。

 

 「本気なのですね…… 殿下、本当にあの娘を愛しているのですね」

 

 アンジェリカさんの目が妖しい雰囲気を湛え出している。睨みつけているはマリエか。

 まぁ、でもリオン君の願いで、ユリウス殿下はマリエとこの後別れるんだからいいんでない?

 クラリス先輩はもういいって言っていることだし、ユリウス殿下とアンジェリカさんは元鞘に戻って、マリエとあの四人が付き合うと。

 アンジェリカさんはユリウス殿下との婚約が戻ってバンザイ。偉いさん達もバンザイ。マリエも一人減ったけどキラキラ四人共にバンザイ。

 んで、ファンオースを対処してくれたら俺もバンザイ。リオン君もゲームを気にしないでスローライフでバンザイ。

 ……さて、エーリッヒさんのバンザイとは何だろうか?

 それを考えると身震いしてくるのは何故だろう?

 

 もう決闘から目を背けがちだった所にオリヴィアさんの言葉が会場中に響き渡った。

 

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