悪役令嬢(笑)へ転生した俺!ぶっちゃけ商人上がりの偽貴族でほぼ詰み何ですけど!?   作:N2

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日向@様、誤字報告ありがとうございました。


第16話 仕事に逃げる男性はズルいと思いました。

 決闘騒動が終わり、学園生達の阿鼻叫喚地獄の中を笑顔でエーリッヒさんが闊歩した後、じゃぁファンオースに行こうか! などと当初の予定通りに事を進められるわけもなかった。

 リオン君は、傷心のアンジェリカさんのケアをレッドグレイブ公爵に頼まれて、自身の実家と発見した浮島にオリヴィアさんと共に連れていくという、逆ドリカム状態というか初期ELT逆バージョンの爆発案件が生じたのがつい先日。

 そしてステファニーの俺は、実家からの呼び出しをヘルツォークが保護、その後ろ盾はアトリーという絶対の安心感でブッチしてマルティーナさんとクラリス先輩に引っ付いて行動していた。

 しかしそれは、後悔ではないが、実家に赴くよりも激しい恐怖を味わう事となった……

 

 「お兄様の凌遅刑は甘いです。もっと細かい間隔で削ぎ落とさないと」

 

 「あら、やっぱりリック君は優しいのよ。強さと優しさを併せ持つ。いい事だと思うわ。ティナさんたら、リック君の度量の深さを理解出来ないなんて…… 可哀想ね。所詮、妹といった所かしら。うふふふふ」

 

 「なぁっ!? お兄様の事はわたくしが一番存じてます! クラリス先輩こそ、ついこの前まで緑虫(ジルク)の件でメソメソしてたくせに、ちょっと尻軽なんじゃないですかね?」

 

 二人がバチバチと魔力派がぶつかり犇めき合う中、エーリッヒさんはゲンナリしながら、対象の身体を削ぎ落としていく。

 一応悲鳴が聞こえるんだけど、もはや只の環境音楽にしか認識出来ない俺の感覚は狂ってると思う。

 だって、生きたまま肉処理されているホラーな人物を目の当たりにしても、マルティーナさんとクラリス先輩のほうが遥かに怖いの。

 俺、付いてく人選見誤ったかな……

 

 「二人ともいい加減に。ティナ、クラリス先輩は感情にしっかりと折り合いを付ける事の出来た立派な女性だよ。それより、何で僕の裏仕事の場所に辿り着くんだい? オフリーさんもティナを止めて欲しかったね」

 

 ふぉぉぉおおおあああ!?

 優しい眼差しをクラリス先輩浴びせたかと思えば、すかさずエーリッヒさんの目が、金髪の野獣殿のように煌めいていらっしゃる!(ステフちゃんの被害妄想)

 

 「い、いやぁ、私の立場で――」

 

 弁解しようとしたら、愛すべきお兄様の修羅場に興奮して、淑女らしからぬ表情と香気を醸し出したマルティーナさんに遮られた。

 か、替えの下着いる?

 

 「()()、そう()()三人で散策していたら、お兄様の魔力跡があったのでお邪魔したら…… お兄様が簡単なお仕事で遊んでたんです」

 

 簡単じゃねぇよ! 歴史にばっちりくっきり残るレベルの拷問だよっ!

 貴女のブラコン魔力探知ストーカーに巻き込まないで頂きたいっ! しかもそこっ! クラリス先輩は羨ましがらないように!! 「くっ、人員配置無しで動向を追える…… 羨ましい」とか呟かないでっ!!

 何でナチュラルにクラリス先輩もストーキングが常態化してんの? 俺がおかしいの?

 しかもそんなマルティーナさんの言葉をやれやれ系で、エーリッヒさんは応対してるしっ!?

 

 「はぁ…… 一応、ヘルツォークとアトリーの為になる隠したい仕事だから隠蔽に障壁、物理遮断魔法を重ね掛けしてたのに。何でそれを破って入ってくるかな?」

 

 あの、ストーカー被害の方がそんな余裕かますとかわけわかんない…… 斬り刻まれている宮廷貴族? が修羅場の渦中なのに焦点当たんないとか意味不っす!

 

 「ふふ〜ん! 巧緻という意味では魔力の扱いで、お兄様に敵う者はヘルツォークにはいません。ですが、純粋な出力、パワーでわたくしとメグに破壊出来ない魔法はありません!」

 

 ふんす、とドヤ顔で宣うマルティーナさんを綺麗だと思った俺は末期だと思う。

 

 「ティナ、普通はそんな複雑な魔力痕跡を発見したら、破壊して押し入らないんだよ。君子危うきに近寄らずという真理を教えないといけないね」

 

 優しく教理を促すエーリッヒさんは、ギコギコと可哀想な方の脚を削ってる。俺のSAN値も削れていく。

 

 「愚問ですよお兄様。そこにお兄様が()()とわたくしには分かっているのです。そしてお兄様は、絶対にわたくしの事を守ってくださいますから。距離はおろか時間ですら克服なさるでしょう?」

 

 距離と時間を無視して俺のSAN値が削られそうです。

 

 「これは…… 一本取られたな。その通りだ。でも、アトリーのご令嬢を巻き込むのは関心しないな」

 

 俺も! 私も! 

 SAN値がマイナス突入しそうなステフを巻き込まないように言いつけて頂きたい!!

 

 「ん? どうしたのオフリーさん? あぁ、君は前にも見ているしね。退屈させて済まない」

 

 アホかァァァあああっ!?

 こんなん何回見ても慣れるかボケェ!!

 

 「え、いやいや、慣れませんよぉ。もう、それを言うならクラリ―― ふぁっ!?」

 

 オブラートにサイコパスは貴方と妹さんだけですよぉ、と言おうとクラリス先輩を見たら、あら不思議。

 この薄暗い室内やむせ返る血の匂い、その全てを吸収するであろう瞳で、エーリッヒさんを見据えていた。

 

 「ねぇ、リック君?」

 

 そのいきなりの問いかけに皆が首を傾げる。

 俺は魂が傾きそうになった。生か死か、どっち側かは追求したくない感じ。

 そしてクラリス先輩は、ビッグバン級の危うい瞳で言葉を続ける。

 俺の胃のライフはとっくにゼロですが何か?

 

 「私って、アトリーという家名にしか価値はないの?」

 

 ふぅ、核爆弾を落すのは、歴史の中だけで終わらせて欲しかったと思う俺、ステフの今日この頃でした。

 何で女の子って、言ってはいけない系の言葉を簡単に男に言うのだろう?

 おい、その先は地獄だぞ。

 

 ここは違う場面を挟んで息をつきたいステフです。

 普通だったらリオンさんの描写が入る筈ですが、どうせアンジェ✕リビアを堪能して、リオンさんがホッコリして終わる。

 結論見えてますからね。仕方ないね。

 でも第三者視点だと、女子二人だとアンジェリカさんが強いけど、リオン君が絡むと可愛くなるアンジェ、主導権を握るのはリオンさんじゃなくリビアちゃん。

 敢えて話さなかったけど、リオンさんって社会人なのに童貞だったのかな? ヤバい! 親近感湧いて好き!!

 エーリッヒさんみたいなタイプって、「経験人数のカウントダウンが一周するとゼロになるから!」みたいな昔の車の走行距離カウンターかよ! と突っ込み要素しかない事を平気でペラ回しちゃうチャラい系だろうから死ねばいいのに。

 しかもそのカウンター10人じゃなくて100人だからね! 電影少女からのしかもDNA2の転生ですか? と煽りたくなる。

 現実逃避した刹那の時間に事態は進展していった。

 素人童貞なのに処女じゃない俺はどうしようかな? 

 ノンケだから公園のベンチ…… ブルッと震えた。

 いやいや、寧ろノンケだから、カーラとか好みだから無理だから!!

 

 「……そうだね。僕はヘルツォークを第一に考える。そこから言うと君の価値は、アトリーという部分が大きい。嫌ならば、自分の()としての幸せを全うすればいい――」

 

 ん、あれ?

 まさかのエーリッヒさんは、クラリス先輩を無情にも突き放した。

 何か、適当に甘い言葉を吐いて、一途なメンヘラ一丁上がりだと思いました。エーリッヒさんマジ最悪、只のジゴロやんって思いました。御免なさい。

 おおぅ、マルティーナさんが満面の笑みで勝った! みたいな感じだし。

 マルティーナさんチョロっ!?

 クラリス先輩も急に暗黒面が解除されて…… 

 ヤバいその表情は!? 可哀想だし心にくる物がある! 

 ジルクに脳破壊されたのに、エーリッヒさんに今まさに心を破壊されたクラリス先輩って、大人っぽいとはいえ、思春期の女の子の内面がズタズタにされて、この後どうなっちゃうかわかんないっす……

 

 「――でも、僕という人間はヘルツォークから切り放せない。なのにクラリス、君と接していると夢想してしまう。僕、いや…… 俺が一個人ならクラリス、お前という一個人の女を欲して止まないと。ジルクだろうがアトリーだろうが関係ない。俺はお前を求めるよ。これは恥ずかしいけど、そう、俺…… そして僕の本心だ」

 

 儚げにきらりと微笑むエーリッヒさんだが……

 ん?

 え〜と、この世界だと家云々や関連は切り離せない。それはわかる。

 でも…… え!?

 この世界で一個人の女を求める!?

 い、いやいや、それって…… この世界で最上級の何某じゃねぇかっ!!

 一応、前世では男、今世では女だからこそ俺は気付いたけど、言い回しっ! 

 ヤバいから…… まぁ、この世界は貴族同士はその観念が頭にあるから大丈夫かな。

 

 「……っ!? リック君、それって♡」

 

 「ちょっ! お、お兄様!? ぐぬぬ」

 

 はいぃぃぃいいい!

 ここで無駄に発揮される高い教育と才気による正しい理解!

 転生って割とチートだと思うのに、只の知性と才能という能力で俺が足元にも及ばないとか、ズルいと思うのは気の所為?

 

 この後ろ暗いエーリッヒさんの暗闘によって、宮廷貴族からレッドグレイブ公爵派閥にフランプトン侯爵派閥、更にはアトリー伯爵派閥にすら、有効的に振る舞い情報を吸い上げ時勢で活用する、巨大なコウモリさんである準閣僚級の粛清が終了した。

 バーナード大臣は、この準閣僚級からの情報と決闘で得たおバカ学生達の債権で上機嫌だった。

 

 更にその数日後、落ち着いたアンジェリカさん達をそのままバルトファルト男爵領に滞在させる目処を付けたリオンさんから、ルクシオン経由でファンオースの工作に向かえるとエーリッヒさんに連絡が入った。

 

 エーリッヒさんとリオンさんがファンオースに赴いた後、俺、ステフにまたもや苦難が到来した。

 クラリス先輩を交えたマルティーナさんにマルガリータさんというヘルツォーク姉妹。対するは弱々な俺とカーラにイェニー、対エーリッヒさん的に言うと、ジョーカー的な立ち位置にいるナルニアという7人での女子会が開催されるのであった。

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