悪役令嬢(笑)へ転生した俺!ぶっちゃけ商人上がりの偽貴族でほぼ詰み何ですけど!? 作:N2
こっちの本編を個人的な事情で進められない時に、オフリー嬢を書いていたのを忘れてました。
王都の学生寮で目覚めた俺は、憂鬱な気分で項垂れていた。本日は入学式を控えているが、どうしても一人だと【アルトリーベ外伝~ヘルツォークの慟哭~】の事ばかり考えて身震いしてきてしまうので、カーラとイェニーに俺の学生寮の自室に頼み込んで泊まっていって貰い、夜遅くまで無理矢理気味にお喋りに付き合って貰った。
彼女達は各々の自室で荷解きぐらいしかしていないのに申し訳ないとは思う。
一応伯爵令嬢の俺の自室は滅茶苦茶広い3LDKで、男子の同じ爵位のクラスよりも女性は大きい部屋らしい。受付でそう説明された。
ナルニアにも少し聞けたが、ベッドはキングサイズだが、部屋のサイズは普通との事。2LDKで一部屋は専属使用人が大抵使うらしいとの噂、というか事実らしい。
王都の学園が専属使用人の事を考慮するとか意味不明過ぎて乾いた笑いしか出なかった。
でも、カーラとイェニーに挟まれて寝るのは物凄く気持ちよかったなぁ。
「はぁ…… アルトリーベならまだ1年以上余裕があるのに、外伝メインというか、そっちを考慮すると途端に1学期しか私の余裕期間がないんですけど……」
俺の溜息で横に寝ていたカーラとイェニーがもぞりと身を捩りだした。
「あ、お嬢様、おはようございまふ……」
「おふぁようですねぇ……」
カーラは寝起きでも丁寧だが、イェニーは意外と緩いフレンドリー気質を寝起きで発揮している。
「おはよう。昨日はお喋りに付き合ってくれてありがとう。学園に行く準備をしようか」
せっかくの乙女ゲーの世界の舞台である、王都の学園を楽しむ気になんてなれずに入学式へ臨むのだった。
☆
「ニア、マジヤバい! あの5人ヤバいわぁ!」
ゲームキャラを間近で見てしまった俺は、憂鬱が吹き飛んで興奮していた。単純すぎるだろう俺とか思ったが、やっぱり興奮するのだ。好きなゲームだったのだから仕方がないと必死に言い訳を始めている俺。
中身が男なのに、周囲の学園女子と同じ反応をしている俺は確かにヤバい。
「確かに別格ですねあれは…… でもお嬢様、ブラッド様はお嬢様の婚約者ですよ。こんな少し離れた所で見ていないで、御挨拶しなくていいんですか?」
ナルニアはゴージャス系が入った美人だから、ブラッド辺りと並ぶとちょっと映えそうなんだよなぁ。
「いやいや、ここで挨拶なんてしゃしゃり出たら、私は明日辺りには行方不明者になっちゃいそうだから止めておくよ」
ってか周囲の女子の目が全員トリップしていて怖すぎる。薬は止めた方がいいよ。旧オフリー嬢みたいに月まで意識がぶっ飛んじゃうからね。怖いね。
「お嬢様は、何か謙虚ですよね。化粧っ気の無い素顔のままに、やや長めのとはいえそれでもイェニーよりも短い男性同然の御髪のスタイル。ボーイッシュでちょっと可愛らしいですけど、本当にそのままで学園生活を送るんですか?」
姿は女ではあるので、中学1年生ぐらいのやんちゃなちょっと可愛らしい男の子スタイルの俺だ。
ズボン履いたら完璧にナルニアの弟みたいな感じだな。いや、イェニーの弟だな。
「別に私は女としての見た目は気にしないからね。過ごしやすいし朝が楽で助かる」
「何で学園入学したばかりの上級クラスの女性が、そんな適当何ですかもう……」
ナルニアを呆れかえらせてしまった。
例のキラキラ5人組が、周囲の女子を引き連れて行った後、視界に二人組の男女が映り込んできた。
「キタ――――――! 見て見てニア! あれだよヤバい! ヘルツォークの二人だ! オーラやっば!? あの5人レベルじゃね!?」
「もうさっきからお嬢様のセリフがヤバいしかほとんで言っていないのがヤバいですよ……」
ナルニアもそう言って俺の視線の先に向くが、瞳孔が少し開くところを俺は見逃さなかったぞニア!
しっかし、シャ、じゃないや、マク…… でもない! 落ち着け俺。
今朝まで憂鬱ではあった…… あったんだが、やはり実物として動いていてオーラを感じるのは、外伝ファンとしては冥利に尽きるなぁ。攻略本手に入れてもっと遊んでからあの二人を見たかったが、そこは仕方がないよね。
マルティーナ嬢、本当に15歳かよ。見た目に雰囲気に色気、もちろん見た記憶がないスタイル…… ヤバいな。もうさっきから俺の語彙力がヤバい。
いやヘルツォーク兄、確かこの世界ではエーリッヒだったかな。彼は来月で16歳の設定だったが、あの二人を見ていると年齢に対する疑問が沸々と湧き出てくるな。
「あれがヘルツォーク…… ふ、雰囲気があの5人の比じゃありませんよお嬢様。私はちょっと怖いです……」
ナルニア、この娘はオフリー嬢の取り巻きは勿体ない感性だとは思う。
「正しいよニア。私も思い出したけど、ヘルツォーク領や彼等は本当に恐ろしい。下手に関わったり、気分を損ねたら駄目だ。安易に触れてはいけないものがあるってことを私も思い出したよ」
オフリー嬢である俺としては、また少し憂鬱な気分にはなってしまった。
「お嬢様、昨日はヘルツォークの話題を出した瞬間真っ青になっていらしてましたしね」
しかし、針の穴を穿つレベルかもしれないが、上手く立ち回って実家の被害と犯罪から、無関係な可哀想な娘として見逃してもらえれば、大好きなキャラ達を間近で見れるというモチベーションには繋がる。
欲を言えば、一言二言ぐらいはお話できるかもしれない。
そうだ! 専属使用人がいない私達は、グループが違うとはいえ、マルティーナ嬢と仲良く出来るかもしれない!
それだ! それで行こう! そうすればあの魅力的なマルティーナ嬢とお話し出来る事に加えて、私やナルニア達はヘルツォークから温情を貰えるかもしれない。
「ニアニアニアッ!」
「な、何です? いきなりまた興奮して……」
「マルティーナ嬢と仲良くしよう! ほら、彼女も専属使用人いないみたいだし。やっぱりあの二人はキラキラ5人とは、またベクトルの違う凄さだし」
「うぅ、少し怖いんですが…… 確かに上級クラスで専属使用人がいない私達は浮いちゃいますしね。いいんですか? 触れてはいけないものでは?」
そう触れてはいけない、逆鱗にはだ。
ヘルツォーク子爵領は特殊で王国内では忌避感が蔓延しているとかいう設定だった筈。現にあそこは孤立している小国のような貴族領だ。
そうだよ、アルトリーベ外伝をクリアしていないし攻略本を見ていないとはいえ、ヘルツォーク子爵領とヘルツォーク兄や妹の内心を1学期終了時点まで知っている私は、彼等と上手く付き合える可能性が高い。
踏み込みの度合いに細心の注意を払えばいいだけだ。
オフリーも忌み嫌われている貴族家、もちろんヘルツォークにも良くは思われていないだろうとはいえ、あの二人であれば接しさえすれば、上辺の評価は気にしない性格だった筈だ。ゲーム通りならば…… うっ、少し怖いがやるしかないな。
「ニア、行ける。行った方がいい。オフリー伯爵家の危ない部分から上手く離れるためには、彼等は寧ろ僥倖かもしれない」
「お嬢様、黙ってブラッド様と婚約してそちら側に身を任せるほうが無難では?」
「ニア、あの5人絡みは大物過ぎるし下手したら簡単に首を斬られる。ホルファート始祖五家だぞ。本来なら、後ろめたいオフリー伯爵家が関わるのは危険なのに祖父や父は関わった。商人から伯爵にまで成り上がったのは見事だけど、実はフィールドと安易に私を婚約させたのは失策だと思うよ」
「はぁ……」
オフリー伯爵家の危ない部分をナルニアとは話し合って知っているだろうが、ナルニアにはピンと来ないのは当然だよな。
その時近くをヘルツォーク兄妹が通り過ぎた。
「エーリッヒ様、先程から興奮気味というかこちらを少し見ながらお話合いをされている女性がいますよ」
「ほら、新生活で興奮しているか、入学時に男女で腕を組んでいる僕らが珍しいんじゃない? だから離れようよティナ」
「うふふ、嫌です。しっかりエスコートしてください」
「我が家の御姫様は仕方ないね。でも珍しいね。あの二人、専属使用人がいないみたいだ。ティナとも仲良く出来そうだね。同じ新入生みたいだし」
その時、俺のオフリーイヤーは物凄い情報をキャッチできた!
ありがとうオフリーイヤー! もうこのスペックだけでお前には満足だ! ナルニアは彼等の会話の最後の方は聞き取れなかったみたいだ。
「これから彼女等が王都で専属使用人を買わなければ、確かに仲良くしたいですね。でも私達はヘルツォークですからね……」
「そうだねぇ…… 僕もお茶会は憂鬱だよ。ティナはリオン、バルトファルトから誘われたらお茶会出るように。後は王国本土のお金持ち子爵や男爵だね」
「むぅぅ、わかってますよ。お兄様の言いつけは守ります。でもお兄様のお茶会は、毎回わたくしは出ますから!」
「呼び方が相変わらずブレブレだね…… でもそうすると僕は結婚相手を探せないんだけど……」
「ふんっ、知りませんから」
うん、安心しましたよマルティーナさんにエーリッヒさん。あなた達はゲーム通りですね。
マルティーナさんは超絶ブラコンのまま。エーリッヒさんもゲーム通りの感じでありがとうございます。
「ニア、私を信じて大丈夫だよ。先ずはマルティーナさんと友達になろう」
「え!? 彼女の名前を知っていたんですかお嬢様?」
「あぁ、会話で聞こえてきたんだよ」
おっと、そりゃいきなり名前を呼んだら吃驚するよな。
「何だかんだ専属使用人がいない同士ですしね。お嬢様にお任せしますよ」
この作戦で行こう! ドキドキ!マルティーナ嬢とお友達大作戦!
油断してエーリッヒさん関連でヘマすると、マッハで月まで吹っ飛びそうだけど。このドキドキは、あらゆるも物事を含んでいそうで、恐ろしい事この上ないけど。
王都の学園での第一方針を決めた瞬間であった。
ナルニアが個人的にお気に入りなんですよね。