悪役令嬢(笑)へ転生した俺!ぶっちゃけ商人上がりの偽貴族でほぼ詰み何ですけど!? 作:N2
ミリーさんとジェシカさんにお呼ばれして女子会に参加する事になったが、そこでミラクルとまでは言わないが、ビッグチャンスが巡ってきた。
(キター! まさかのマルティーナさんまで!)
店名を聞いておりナルニアと共に扉を開いたら、店のボーイさんからお連れの方が3名来ているとのことで、3名? と不思議に思って個室に入ると、まさかのマルティーナさんが、楚々とした仕草と雰囲気で鎮座していた。
「いらっしゃい。オフリーさんにナルニアさんも!」
「ほら、知ってはいるでしょ。この子はティナ、マルティーナよ」
そら知っとるがな! 主人公とのにゃんにゃん画像はついぞ見られなかったけど、序盤のくっころ画像はちゃんと集めた!
「ヘルツォーク子爵家の長女マルティーナです。宜しくお願いします」
「ドレスデン男爵家のナルニアです。此方こそ宜しくお願いするわ」
ナルニアは蓮っ葉なその物言いだが、ヘルツォークの恐ろしさは言い聞かせてあるから大丈夫だろう。
マルティーナさんはお兄さんの言う事は素直に聞くが、そのお兄さんの事で簡単にプッツンするクレイジーだとも伝えてある。
「お嬢様、お嬢様!」
ついマルティーナさんに見惚れてしまっていた。俺が目を見開いて見つめていたせいか、小首を傾げてしまっているじゃないか。
めっちゃ美人。
「あ、あの! オフリーはぎゅっ!?」
噛んでしまった。
恥ずかしいが、笑いが取れたから良しとするしかない。
「オフリー伯爵家出身でしょう? ナルニアさんから聞いているわ」
ジェシカさんにフォローされてしまった。
「私はミリー、今のはジェシカ。ねぇ、ティナももうこの呼ばれ方でいいでしょ」
「えぇ、わたくしは構いません。ナルニアさんもオフリー? さんも好きに呼んでください」
まだマルティーナさんは固いかな。
確かヘルツォークは、不遇に冷遇と王家や王宮からの扱いが酷く、王国本土の貴族は勿論、浮島の貴族達からも評判は良くない。
まだ5月の連休だし、さらには初対面。警戒するのは当たり前か。
「じゃぁ、ティナさんね。私の事はニアでいいわ。でも、専属使用人がいないとこんなに肩身が狭いなんてね」
「だよねー、まぁお茶会の誘いは多いけど、それも女子から疎まれるし」
ミリーさんは明るい可愛い系だけど、女子会だとさすがに愚痴が飛び出していた。
「私はうちの評判が悪いから少なくて楽だしもういいや。男子の目付きも正直気持ち悪いし」
たぶん俺が言った、うちの評判が悪いという所にマルティーナさんは反応した。
「ヘルツォークも評判が悪いですが、お二人は気になさらないんですか?」
「辺境ではないけどドレスデンは貧乏だし、家の評判なんか気にしても仕方ないわ」
「オフリーも酷いからね。しかも私とニアは専属使用人買わないから尚更。まぁ、私は気持ち悪くて買うつもりないけど。実際の所ニアは?」
「お嬢様の話も聞いてますし、そもそも買えませんし怖いのでいいですよ」
ナルニアやカーラにイェニーには、俺になる前のオフリー嬢のドラッグカクテル乱交事件の詳細を、専属使用人の酷さと暴力をマシマシにでっち上げて、怖がらせておいてあるのだ。
「あら、珍しいですね。ヘルツォークはそもそも禁止ですし、わたくしも盛った獣が女性に馴れ馴れしく喋っているように見えるので気持ち悪いです。私達、仲良く出来そうね」
ははは、まぁ実際は上級クラスの女子達が盛っているんだけどね。
「私達はグループでも浮いちゃうから、専属使用人がいない者どうしでちょうどいいじゃない。それにこれからはお茶会多いしね。情報交換したいわ」
「前もジェシカは言ってたわね。でもお嬢様は当てにならないわよ。もうお茶会参加しない方向らしいわ。そもそも男の人苦手みたいだから」
そうなのだ。このオフリースペックだと学園に通う修羅のような貴族男子には絶対に勝てない。
女尊男卑の世界で皆女性に対して意味不明なほど優しいが、それはオフリー嬢には当てはまらないのだ。
謙虚堅実をモットーにいかないと、このマルティーナさんに月まで吹っ飛ばされてしまうのだ。
「そうなのオフリーさん? 専属使用人いないし、オフリーさん思ってたよりも大人しいから男子に人気出そうだよ」
ミリーさんが心配そうに覗き込んできた。
「いやぁ、実家が評判悪いし、しかも伯爵家だから相手も少ないしね。ニアが上手く良い結婚相手が見つかってくれればそれでいいかなって。そういえば、3人は誰か狙っている人はいるの?」
運ばれてきた軽食を啄みつつ、ワインで舌を湿らせる。思いの外美味しいので、俺も口が軽やかになってきていた。
「やっぱり王国本土の子爵家! と言いたいけど、バルトファルト君が気になるんだよねぇ」
鉄板の王国本土の金持ちと思いきや、例の謎に包まれた冒険野郎の名前が出てきた。
学年内のクラスも授業の教室も違うが、見かけたことは何度もある。
黒髪で170㎝チョイ越えの眠たそうな目をした男子。アルトリーベ1作目にも外伝にすら出ていないのに、功績だけはぶっ飛んでいる謎キャラだ。
「王国本土の財政が良い家は外せないけどね。私はティナのお兄さんかなぁ。ほら、殿下達に全くひけをとらないし」
ジェシカさんが爆弾を投げている!?
怖くなってマルティーナさんを覗くが、あれ? 少し嬉しそうな表情になってワインをコクコクと飲み出した。
何か設定であったような…… あぁ、大好きなお兄さんを褒められたりするのは好きだけど、必要以上に接触してくる女子には攻撃的になるんだっけか。
お兄さん側が女子に接触するのは、気に入らないけどひたすら耐えるとか何とかだった。でも好感度はMAXで下がらないという、都合の良いキープ系
何だろう、怖いのか可哀想なのかわからなくなってきた。
「ニアさんはどうなんです?」
「まだわからないわ。1年男子も、もう少し女子との接し方に慣れてくれないと」
おぉ、1年女子でも大人綺麗系、プラス色気有りの筆頭クラスの2人の会話だ。
ていうか俺は付いていけてない。
「しかしこのワイン、リーズナブルなのに旨いな」
旧オフリー嬢や今の俺とけっこう良い店で食事したり、嗜む程度に呑んで舌を肥えさせているニアもワインにはご満悦の様子で、マルティーナさんとの会話に花を咲かせている。
1本200ディア、貴族には相当安くこれなら平民でも手が届く。酒屋なら100ディア前後ぐらいか。
「飲みやすいのにコクとほんのり甘味があって美味しいよね」
「これ、ヘルツォークのワインらしいわ」
渋さも少なく辛口ではないお陰で、ミリーさんとジェシカさんにも評判は上々みたいだ。
あぁ、これがヘルツォークの財政パートか。確かに商用作物関連であったな。
でも俺はいまいち上手く行かなかったし、何より実子証明クエストもクリア出来てなかった。
結局、完全攻略本待ちの気付いたらこの世界、たぶん今この学園にいるエーリッヒさんとやらは、芝何とか電機の課長級の人だな。
「かなり昔は、ヘルツォーク産のワインって有名だったみたいだけど、また王国本土や王都に出回るようになったんだ。貴族は欲しがるだろうね」
俺は食用穀物と鉱山拡張に手を出したが、食用穀物は輸出品として確立出来るほどの質は良くなく、鉱山はそもそもダブつき気味。
王都での販路拡大が急務と気付いたのは、かなり後だった。おかげで実子証明クエストも失敗。
ローティーンでやりきったエーリッヒさんは頭おかしいな。
「全てお兄様の功績ですよ。でも本当にヘルツォークに対して、皆さんは嫌悪感を抱かないんですね。お兄様が王都で色々と事業を行う時は、大変だったと聞いていたのですが……」
「オフリーも酷いから、相手の事で何かを言える立場じゃないから――」
本当に不思議そうにマルティーナさんはしているが、学園内はある意味貴族社会の縮図のようなもの。
貧乏な辺境出身も気にしないらしいし。
「――でも、正直、ヘルツォークの武力は怖いかな。フライタール辺境伯越境戦、あの戦力差を覆したのには言葉も出ないよ」
学園入学後に実家の伝手で調べたけど、浮島破壊なんて作戦、そもそもゲーム内で立案に選択なんか出来たかどうか…… 実況動画にすらなかった作戦だ。
「それも全てお兄様の作戦立案に艦隊の総指揮、さらには鎧を駆って常に最前戦。なのにこの学園の女子共は、そんなお兄様をやれ愛人に良いとか、仕官して王都での愛人になれとか…… いっそもう爆散させて!」
「お、落ち着いてティナ!?」
「そ、そうそう、エーリッヒ君の凄さにまだ皆気付けていないだけよ」
ミリーさんとジェシカさんに嗜められながら、怒りを飲み込むようにゴクゴクとワインを喉に流し込むマルティーナさん。
怖っ!? の、喉ごしはビールでやったほうがいいよ。
そういえばこの娘もフライタール戦で、軍艦級飛行船に乗艦してるんだよなぁ。クレイジー過ぎるしゲームでもそんな事にはなってなかったんだけど。
実子証明クエストのクリアの有無で変わるのかな?
「ティナさんのお兄さん、事業に鎧に艦隊総指揮なんて、本当に私達と同い年なの? 凄いわね。しかも学園卒業後は男爵に陞爵も決定しているし、普通に考えて女子に人気出そうなものだけど」
「上級クラスの女子達は、相手の家の財力や権力しか見ていないからね。エーリッヒさん個人の凄さは彼女らには関係ないし、あの凄さはわからないんでしょ」
ニアの言う通りだと思うし、しかもイケメン。でも学園女子は実家が金持ちの男子捕まえて、イケメンや専属使用人を侍らせるのが常。
だからエーリッヒさんも愛人枠何だろう。普通クラスの男子ならそれでもいいけど、跡取りや独力で陞爵にまで至る貴族にそれは無理だ。
もういっそ呪いなのだろうかと疑ってしまうぐらい、結婚相手としての人気の無さ。
不憫過ぎて、イケメン死ね! とすら思わないな。
「ニアさんもオフリーさんもわかってくれますか! 何とお労しいのでしょう、お兄様は!」
「あ、あははは……」
マルティーナさんが明らかに酔って来ている。怖い。
「でもティナはエーリッヒ君のお茶会に参加しようとすると妨害するじゃない」
ミリーさんもそうだが、ジェシカさんも男子から大人気だから、マルティーナさんが壁になっているのか。ダメじゃん!
まぁ、そういう設定だったっけ。難儀な……
「ジェシカは王国本土狙いじゃないですか。あまり他の男子のお茶会に参加するよりも絞ったほうが良いですよ」
「確かにその通りではあるんだけどね」
その後もまだ1年は始まったばかりだが、お茶会や男子の話題となり、マルティーナさんがアルコールでふやけ出した頃、ついに、オフリー伯爵家を文字通りに滅ぼすであろう恐怖の人物と対面することが出来た。
「ティナは…… 酔ってるな。迎えに行くって言ったから仕方がないか」
「ふわぁ、お兄様がいっぱいですぅ」
おい、そんな鬼だか悪魔だかわからん人間を増やさないで頂きたい!
しかし、まぁこの人は今月のどこかで16歳だった筈だが…… いや、某機動戦士のパイロット達並みに年齢の設定を間違えてるな。
赤いマザロリシスコンや平和仮面、エレガント閣下に通ずる謎年齢だ。
「ティナを楽しませてくれたみたいでありがとう。僕はエーリッヒ・フォウ・ヘルツォーク。ティナから聞いているかな? 僕自身、ティナの兄と素直に言える事は難しいけど、ヘルツォークは忌避されているから、こうしてティナと仲良くしてくれるのは嬉しいよ」
ミディアムのサラリとした薄い色合いの金髪、スカイブルーの眼にキラッとした歯に笑顔。
この容姿と仕草や雰囲気なのにゲーム内のメインヒロイン達の好感度が、スタート時点は嫌悪されているレベルで低いのが酷い。
ヘルツォークヤバいな。
「いえ、此方こそ。楽しませて頂きました。私はナルニア・フォウ・ドレスデンです。こちらはオフリーお嬢様。昔からの付き合いです」
ナルニアが食い気味だ! 俺もペコリと会釈しておく。エーリッヒさんと喋るのは怖い。
「オフリーさんか。話に聞くよりイメージが良いから、男子達にも噂されてるよ。もちろんナルニアさんも。ナルニアさんは大人っぽくて美人だから、男子はまだ尻込みしているんじゃないかな…… って痛いよティナ」
マルティーナさんが
しかし、オフリー嬢、俺のイメージが良いか…… 専属使用人いないし、特に派手に遊んでもいないからだろう。ナルニアの人気はそれらに加えて、容姿が優れているからだと思う。
学園女子は入学してオリエンテーションも終わると、専属使用人も揃えつつ、夜遊びにも興じている。
遅くともこの連休が終わる頃には、
ミリーさんは普通に挨拶しているが、ジェシカさんも食い気味に挨拶して、それに対応したエーリッヒさんは、またマルティーナさんにツネられている。
兄妹のコントだろうか?
「あ!? あの、それは……」
「あぁ、ティナを楽しませてくれたお礼。また誘ってやって欲しいんだ。これからもティナを宜しくね」
ダッコちゃんばりにエーリッヒさんの腕に抱き着くマルティーナさんは、今日一番でご満悦の様子。
エーリッヒさんは、反対側の手で伝票を取るとサッと会計を済ませて帰っていった。
あの2人、これからご休憩かご宿泊する雰囲気にしか見えないんですけど。
ヘルツォークは色んな意味でヤバいな。
「ジェシカ、ティナちゃんの壁は高いよ。止めといたほうがいいんじゃない」
まだ出口を惚けたように見ているジェシカさんに、ミリーさんが呆れながら声を掛けている。
「ニアもか!」
ふとナルニアの方を見ると、ジェシカさんほど惚けてはいないが、出口から目を離していなかった。
「お嬢様、あれは目を奪われますって! 寧ろお嬢様の反応の薄さには疑問しか浮かびませんよ」
「えぇ、ミリーさんだって似たようなもんじゃない?」
ミリーさんは変わらないように見える。
「エーリッヒさんが近くに居た時はジェシカのような感じでしたよ」
「マジかぁ、ミリーさんは謎の冒険者バルトファルト卿が良いって言ってたのに、ヘルツォークはヤバいね」
「お嬢様の男子に対する無関心さがヤバいですよ」
またもやナルニアに呆れられてしまった。
あれ? ナルニアが交流深めてただけで、俺っていらない子じゃね!?
ナルニアが頑張ってるけど、オフ中の人はビビって震えていた(笑) そして名前はまだ無い(キリッ)
ヘルツォーク怖い。