悪役令嬢(笑)へ転生した俺!ぶっちゃけ商人上がりの偽貴族でほぼ詰み何ですけど!?   作:N2

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第9話 身の安全を保障されちゃいました。

 三人で打ち合わせをして一週間、連日の夜にエーリッヒさんは調査にあたりリオン君はルクシオンを使ってアンジェリカと主にマリエを調査していた。

 本日は学園でまた三人でこの一週間の報告をする予定だが、俺は早朝にエーリッヒさんにアトリー邸に大臣への紹介も含めて呼び出されていた。

 

 「5時とはまた早いですね。しかも急でしたのでビックリですよ」

 

 文句というわけではないけど、俺はあくびを堪えながらエーリッヒさんに何故こんなに早いのか聞いてしまう。

 昨日の夕方に女子寮に手紙が届けられ、5時にアトリー邸で大臣と話し合うので紹介含めて同席して欲しいという内容だった。

 

 「二つ難航していてね、場の特定が昨日の夕方前だったんだ。それでついさっきまでその二つを潰して()()()()、主要な人物はさらにアトリー家の人員に引き渡したからバーナード大臣も起きているんだよ。僕からの報告含めて待機している状態って事だね」

 

 「え! じゃぁ徹夜ですか!? あ、あの、荒事をしていた割には何というか身綺麗ですね」

 

 エーリッヒさんの格好は黒を基調とした薄手の軍服のような格好に帯剣している。上着というかジャケット? が無いので身軽さも伺える。

 

 「ん? あぁ、相手を刺した時、半身になって刺した相手の衣服で刺し口を隠しながら引き抜けば、返り血を浴びなくて済むんだよ。手には多少かかる場合があるけど、そこは後で水魔法でサッと流せばね。知らなかったかい? 一応は魔法で建物外に音が漏れないようにしているけど、内部は別だから派手に魔法は使えないしね。証拠を破壊しちゃ駄目だし」

 

 アホかぁぁああ! そんな人斬り情報知らねぇよ!

 「敵艦内部制圧白兵戦の経験が活きたよ」とか、そんな鬼のような内容をめっちゃキラキラした笑顔で言うこの人は頭おかしい。

 

 「い、いや、あはははは…… 凄いっスねぇ。お、同じ前世持ちとは思えないっス」

 

 怖すぎて体育会系言葉になってしまった。

 

 「マフィアは犯罪のプロだけど、貴族は領によっては軍隊まで持っている暴力のプロだからね。人間慣れるもんだよね! あはははは」

 

 ヤバい、軍隊持ったヤクザで、しかも人斬りが隣で笑っている恐怖は前世でも経験したことが無い。

 この人の前を歩いても後ろを歩いても怖い。前を歩けば後ろから斬られ、後ろを歩けば俺の背に立つなと言われて斬られるような気がする。

 

 「そういえばちょっといいかな?」

 

 ビクッ!

 

 「な、何でしょう?」

 

 「アトリー邸までの道すがらで構わないんだけど、僕のヒロイン候補ってぶっちゃけ爵位的に無理じゃない? ちなみにティナは、王国本土のお金持ちに嫁がせて贅沢させたいから」

 

 あぁ、この前のお茶会で聞いてきた内容か。

 お茶会用の部屋の使用時間の関係で、さっと名前を出してお開きになったから、エーリッヒさんは気になっていたというわけか。

 リオン君は半眼で、「マルティーナさんでいいじゃねぇか」って呪い殺しそうな表情をしてた件だ。

 エーリッヒさんはさっきのようなこと言ってるけど、あのマルティーナさんが大人しく他に嫁ぐことは無いだろうけど。

 

 「えっと、公爵令嬢のアンジェリカさんは?」

 

 「圧倒的な爵位の差で無理だよ。しかも、あぁ…… まぁ色々あって更に無理かな」

 

 ん? 何だ今の微妙な濁し方は?

 

 「じゃぁ、アトリー伯爵家のご息女のクラリス先輩は?」

 

 「爵位の差。それに大恩あるバーナード大臣の娘さんに手を出せるわけ無いだろ。ヘルツォークと王国本土間の輸出入取引許可を取り消されたら堪らないよ」

 

 何でそんな大きな仕事を当時13歳で、しかも閣僚と纏められたのかが意味不明です。しかもその間は他領の商会支部を使った三角貿易のようなことをやってたという話だ。

 あのゲームは鬼かと思ったけど、それよりも修羅がここにいるし。

 

 「ちなみに私もヒロイン候補ですが……」

 

 「……中身が男だしねぇ。オフリーさんはそれでいいの?」

 

 「いや、ぶっちゃけ女の子が好きです。例の専属使用人との記憶で、男の時以上に男が苦手ですね。それにこの件で私は貴族じゃなくなりそうですし」

 

 自分でトラウマを抉ってしまった。

 鳥肌が!?

 

 「じゃぁ、やっぱりナルニアさんと結婚してオフリーさんの面倒も見ようか?」

 

 お! 実はめちゃくちゃいい案なのではないだろうか。

 ていうかエーリッヒさんって専属使用人関係なく、結構ナルニアの事気に入ってそうだな。

 

 「それ、凄く助かります。一案として取っておいて頂いて、他の候補はどうですか?」

 

 「剣豪のクリスの婚約者で、僕達の四歳年上のお姉さんキャラだっけ? 軍務大臣の娘で仕官して軍役に付いているという、クエス・フィア・アデナウアーか……」

 

 エーリッヒさんが渋い顔をになった。何でだ?

 王国軍は普通クラスや上級クラスの三男以下が仕官して出世していく中、唯一王宮の閣僚の家柄で軍人を排出し続けている名門伯爵家だ。

 宮廷貴族の名門軍閥、アデナウアー伯爵家のご令嬢に何かあるのだろうか?

 

 「その人、子供は図々しいから嫌いっぽくない? てことで年下は無しでしょ。やっぱり爵位も高いし」

 

 いや、こっちのクエス嬢は今年20歳だし、例の子もその年齢だったら多少余裕があったんじゃないかな?

 

 「アデナウアー伯爵家は女性の嫁ぎ先はそこまで問わないそうですよ。大事なのは跡取りと庶子の軍への仕官だそうですから」

 

 それに赤い人っぽく振舞えばいけんじゃね。そこまで外伝をプレイできてないから知らんけど。

 

 「僕は卒業後に男爵だからね。仮に知り合いになるのは僕が仕官後だ。それに僕は仕官する場合、武官ではなく文官を希望だよ。そっちのほうがヘルツォークを手助けしやすいから」

 

 (軍なんかローテーションで各地で年単位で拘束される。例え参謀本部の門を叩くことが出来ても何年かかるやら。それなら行政で書類を回しながら、政治部分でコネを作る方が余程良い。余り王国本土から離れるのも都合が悪い)

 

 確かにエーリッヒさんは卒業後に男爵で今は仮の状態。たぶんオフリー家との戦争で爵位が上がるのだろうけど、早く動いたせいで昇進のフラグを折ってしまうことになるのだろうか?

 

 「では最後にグレッグの婚約者のモットレイ伯爵家のご令嬢――」

 

 「モットレイは無いよ。名門だし何よりね…… あそこはフレーザー侯爵家寄り、レッドグレイブ公爵家とも仲が良いそうだ」

 

 「え…… と、それの何が問題なんですか?」

 

 俺の言葉に被せて否定するというのは余程の事があるのだろうか?

 

 「ヘルツォークは元々本島だけでぎりぎりだが伯爵領規模の大きさがある。そして今では小さいとはいえ手に入れた工業用や農業用の各浮島に寄子もいる。モットレイが名門とはいえ、何故ヘルツォークが伯爵ではないのか? ヘルツォークは一番国境近辺に配置され、フレーザーとモットレイは連携が密であるから狙われるのは手薄なヘルツォーク、そしてナーダ男爵領にバロン男爵領。モットレイとはフレーザー侯爵領を挟んでいるせいもあって共闘も支援も勿論お互いにない。まぁ、心情的にヘルツォークが好きではない領の一つだよ」

 

 そう言われても設定だし、ヘルツォークの詳しい内情や実情まではわからない。

 それに確か本伝では、フレーザー侯爵家の嫡子と第一王女が婚約、モットレイ伯爵家とセバーグ伯爵家を婚姻で繋げてラーシェル神聖王国側国境の梃入れという政策だった筈。

 

 「でも良い子だそうですよ。純真無垢で献身的、今年で13歳のエレーナ・フォウ・モットレイ。貴重なロリ枠です!」

 

 おっとヤバい、鼻息が荒くなってしまった。

 

 「まだ、子供じゃないか…… いや、僕達が学園を卒業する頃なら貴族社会的にはまったく問題無いか。まぁ、モットレイやフレーザー辺りはどちらにしろ無しだよ。僕の心情的にも爵位的にもね」

 

 「……爵位って、現実的に凄い縛りがありますよね。ゲーム的にはその辺適当だったのかな?」

 

 まだオフリー嬢に転生というか憑依して九ヶ月だけど、学園に通うと嫌でも爵位の壁というものを感じる。特に普通クラスの準貴族と上級クラスの貴族、そして貴族内でも男爵と子爵の下級貴族に伯爵家以上の上級貴族。その壁は余りにも大きいと思う。

 実際、男爵家と子爵家だって領の総合的な規模は10倍ぐらいの差がある。

 エーリッヒさんの言うようにゲーム内の婚約者は無理だと感じてしまう。

 

 「ゲームはエンターテインメントの要素で成り立つから、ちょっとした夢物語のような出世も容易に組み込んだり、爵位を無視したラブロマンスでも取り入れたんじゃない? 現実では不可能だよね。あ、アトリー邸が見えてきたし、もうこの話はここまでにしようか」

 

 「そうですね。何としてもバーナード大臣に良く思われないと」

 

 俺も意識を切り替えて可哀想な子アピールを必死にせねば。

 

 「その辺は僕も口添えするし大丈夫だよ。一応僕と大臣の筋書きとしては、勇気を以って家の悪事を王国のために王宮へ具申した、忠義ある女性という方向で話を纏める算段は付いているから」

 

 ふぁ! 仕事が早いって素敵!

 ヤッター! もはやこれで俺の未来はとりま安泰確定!

 やっぱりナルニアはエーリッヒさんに嫁いでもらおう…… 一応マルティーナさんに配慮して側室で。

 

 

 

 

 何て悠長に考えていた時もありました。

 

 「マリエって奴は転生者だな。オリヴィアさんが五人に選択する行動を全部ゲーム通りにやっていたよ」

 

 はい、イレギュラー発生しました。

 まぁ、そのマリエが五人を篭絡していたのはナルニアから聞いて知っているけど、転生者って事はこの先のゲームの進行も知っているんだよな。聖女の件、主人公ちゃんの力の件を後々どうするんだろ?

 

 「ただの偶然では無くですか?」

 

 「姉貴からも忠告があったから、姉貴に金渡して五人との過去のやり取りを一年女子から聞き出して貰った内容が一緒だった。ルクシオンにはマリエと五人の動向を監視させたら、ゲーム通りにユリウス殿下とジルクに専属使用人を買って貰っていたよ。ほら、あのショタエルフの」

 

 「あぁ、確かカイルでしたっけ。じゃぁ、やっぱりそのマリエって3年かかるハーレムルートを三か月で攻略したって事かぁ。噂は本当、しかも転生者とか噓でしょ」

 

 一体何をどうすっ飛ばせば三ヶ月で五人を攻略できるのだろうか? それこそゲームではないのに。

 

 「現実のほうが接する時間は長いし、色恋だって要所で使えるからね。僕からしたら三年かけるよりもまだ現実的かな」

 

 エーリッヒさんの前世はチャラ男だったのだろうか?

 

 「でも私は取り敢えず家との件、大丈夫そうなので安心ですけど」

 

 「そっちはもう上手くいきそうなの?」

 

 リオン君が余りの速さに吃驚している。

 

 「今朝バーナード大臣とオフリーさんも顔合わせしたよ。この一週間で証言も証拠も十分。マフィアから棚ぼたで押収した金品もバーナード大臣に半分、残り半分を僕とオフリーさんで折半したよ」

 

 「私の情報も微妙だったんで四分の一も貰うのは心苦しいんですけどね……」

 

 現場で戦ったのはエーリッヒさんで、今後王宮で戦うのはバーナード大臣だし。

 

 「そういえば、偶々アトリー邸に居合わせたクラリス先輩に挨拶もしたよ。かなり元気が無さそうだったね。ジルクと全然会えていないそうだ。バーナード大臣には学園、あの五人の状況とマリエの件は伝えておいたよ。告げ口のようだけど僕にも立場があるから、娘さんの婚約者の件は話しておかないとね」

 

 クラリス先輩には「貴女も大変ね」などと言われたけど、家の件が圧倒的にヤバくブラッドの事はどうでもいいので、愛想笑いで誤魔化しておいた。

 

 「さすがにあの五人の婚約者達のケアまでは出来ないだろ。それより公国をどうにかしないとオフリーさんもそうだけど結局王国は大変になる。マリエって奴もその辺は考えているだろうから聖女の地位はオリヴィアさんに譲るだろうし」

 

 リオン君の言う通り、公国の()()は反則級。

 俺もユリウス殿下ルートは知ってるから…… あっ!?

 

 「リオン君、あの五人の状況で王家の船って動くのかな?」

 

 俺の疑問にリオン君は渋面が更に厳しくなる。わからないってことだ。

 

 『王家の船とは?』

 

 ルクシオンが初めて聞いたとばかりに質問してきた。

 そういえば流れとかだけで王家の船は話をしていなかったか。

 

 「僕も聞きたいね」

 

 エーリッヒさんも興味を惹かれたみたいだ。

 

 「ホルファート王家が隠し持っているロストアイテムの飛行船だよ。オリヴィアさんと攻略対象者の愛で動くんだ。愛が足りないと動かずにゲームオーバー。そもそもオリヴィアさんって聖女の血を引いているし、血が関係しているのかは不明だけど、特殊な力があるからその船の力を使いこなせるっていう設定だったと思う」

 

 聖女に認められてユリウス殿下との婚姻も済し崩し的に上手くいくけど、最後は主人公ちゃん固有の力で公国の切り札を圧倒していた。

 

 「愛…… またよくわからない起動方法だね」

 

 エーリッヒさんは呆れている。

 

 『ならば一度調べてみましょうか? 幸い夏季休暇までは少し時間があります』

 

 一週間後には学年別学期末パーティーなので、ルクシオンなら調べられるのかもしれない。

 

 「王宮の地下だった筈だ。任せてもいいか?」

 

 『問題ありません』

 

 ルクシオンはスゥーっと透過して部屋を出ていった。

 いいなぁ、何でも出来るな。俺も課金アイテムを思い出して夏季休暇にでも探そうかな?

 武力が無い!? エーリッヒさんを誘ってみようか?

 

 そうしてエーリッヒさんは仕事で忙しくしながらもリオン君や私は平和な一週間を過ごしていた。

 そして迎えた学年別学期末パーティー会場では――

 

 「拾え、売婦。殿下たちを誑かした魔女め」

 

 アンジェリカさんがマリエに白い手袋を投げつけていた。

 

 もうさ、本伝か外伝かどっちかにしてくんないかな……

 俺、ステファニー・フォウ・オフリーは意識が遠くなりそうになるのを必死に堪えるのだった。




ステファニー、しかし誰もオフリー嬢の名前を呼ばない(; ・`д・´)キリッ

オフリー嬢の内心ではエーリッヒは散々に言われているな。
カワイソス(笑)
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