異世界から呼ばれて魔王に進化した勇者です   作:八葉と黒神の剣聖

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妖刀と竜王の力

 修行が始まって二日経った。

 初日の修業で私の実力がおおかた分かったらしく、パパはある一定以上の出力を出さないようにコントロールしながら相手をしつつ、時々、力の使い方を教えてくれた。

 だけど、どうしても初日のパンチだけは再現できない。

 パパに聞いても『慣れ』と、アドバイスとは程遠い言葉が帰ってくる。

 流石に『もう少し詳しく』と聞くと、パパは腕を組んで暫く考えた後、口を開く。

 

 

「そうだな…体に流れている魔力を感じ、右腕に集約して殴ると同時に解き放つ…感じか?あぁ、魔力ってのは魔素の事な」

「それは分かる。魔法や魔術を使う際に利用するのは魔力。スキルを用いて発生する焔とかは魔素。両方とも原理は同じだけど」

「一応仕分けな。めんどいなら一緒と捉えていいよ。その方がいいだろうし。で…大体分かったか?」

「うーん……」

 

 

 原理は分かる。

 けど、感覚が分からない。 

 そもそも体に流れている魔力を感じることが出来ないからだ。

 魔素を一か所に集めて強化は出来るけど、解放は出来ない。

 刀に魔素を込めて斬撃として放つのとは違うのかな?

 

 

「イメージ…流れ……うーん」

「難しいよな…俺も苦労した。結局体で覚えたし」

「でも、斬撃とどう違うのかな?」

「簡単にイメージ出来るから、加工して射出するだけ。だけど、あの打撃は加工は行わず、純粋に魔力を込めて殴るだから、過程が違う」

 

 

 成程と、言われてみてやっと気づく。

 過程が違うと結果は変わってくるわけだし。

 ということは、結果に繋がる過程に問題があるから出来ないのか。

 なら、理解出来ても再現できない訳だ。

 

 

「そこの感じ方は御師様に聞いた方が早い。アイカに合わせた教え方をしてくれる」

「そっか。ちなみにパパは?」

「………」

「何で黙るの……」

 

 

 この二日、御師様に教わった方法とか聞くと、黙るか、苦笑いを浮かべるか、露骨に話を逸らすか。

 他にも色々あるけど、何でか教えてくれない。

 そっとしておきたい思い出なのか、あるいは黒歴史なのか。

 私としては、参考にしたいから教えて欲しいけど。

 

 

「ささ。続き行くぞ。魔力制御の制度をもっと上げるぞ。次は応用だ」

 

 

 パパの両手袋の甲に見たことのない魔法陣が現れる。

 ママの魔法とも違い、ユニ姉の古代魔法でもなく、ソフィ姉の錬金術でもない。

 一体何の魔法陣だろうか?

 

 

 

「さて…見たことのない魔法陣だと思うが、どういう原理かは御師様が教えてくれる。アイカはこの魔法陣の効果を戦いながら解析すること」

「戦いながら解析?ユニ姉じゃあるまいし」

「大丈夫。見れば分かるようにしてるから」

(大丈夫かな……)

 

 

 心の底から不安を感じている反面、パパは魔法陣に魔力を流して戦闘態勢に。

 私も迎撃態勢に映ると、パパは右腰に差している妖刀を指さす。

 

 

「竜王の力を解放してみろ。妖刀ってのは主が振るうに値する力があれば答えてくれる。ルミナスだって出来たんだ。アイカも出来る。それに、この二日で魔力の使い方が少し分かってきたはずだ」

「けど、制御難しいし、暴走したら?」

「止めるから大丈夫だし、その髪飾りを外さない限りリミットが働く。だから心配するな」

「了解。んじゃ……」

 

 

 大きく深呼吸をしてから全身に力を入れ、竜の力を解き放つ。

 全身から黒い炎と黒い雷が纏わり、全ての能力が大幅に上昇する。

 その代わり、制御を失敗したら暴走するのだが、パパとママに貰った髪飾りのおかげで、一定以上の力が解放されないように制御され、暴走しないようになっている。

 それでもかなりきついから、油断しないようにしないと。

 

 

「うん。いい感じだな。きついか?」

「ちょっとだけ。本能を押さえるのがきつい」

「んー…精神的な方面か(となると、そこさえクリアしたらいつでも使えそうだな)」

「で、この状態だと抜けるの?」

「あぁ。抜いてみな」

 

 

 半信半疑だが、パパの言ったとおりに妖刀を握ると、ドクン!と心臓が一瞬高鳴り、妖刀から強い力を感じた。

 予備の刀とは比べ物にならない力。

 とても恐ろしくも頼りになるこの力は、握るだけで虜になりそうだ。

 

 

「……凄い。これだけの力があればどんな相手でも……」

「……(さて…どうなるか)」

 

 

 この妖刀があれば、どんな相手が来ても負けないと、心の底から感じた。

 サリオンで戦ったアイツや、星の姉たちにも。

 もしかしたらパパやママが相手でも難なく倒せるかもしれない。

 

 

「この刀なら―――はっ!何を考えて……」

 

 

 一瞬だけ"何か"に乗っ取られそうな感覚を感じた。

 だけど、すぐに我に返って切り換え、その"何か"の正体を考えていると、パパが満足そうに笑う。

 

 

「乗っ取られずに済んだな。良かったよ」

「油断してると虜になりそう。妖刀って凄いね」

「正宗はもっと凄いぞ。何せ、妖怪を斬りまくった影響で自我があるし顕現体もあるからな」

「ないそれ怖い…」

 

 

 それってパパの知らないところで勝手に色々やってる可能性があるよね。

 というか、刀に自我と体があるってどういう事だろうか?

 話からして陽炎にはなさそうだげど。

 

 

「っと…喋っている暇はない。その状態でかかってきな。分かっていると思うが、ちょっとでも妖刀に乗っ取られかけたら重いの行くぞ」

「ん。頑張る」

 

 

 妖刀を構えて、一呼吸置いてから再びパパに挑む。

 今までよりもある程度はパパについて行ける。

 これが妖刀のおかげなのか、竜王の力を解放しているからなのかは分からない。

 けど今になって分かったことが一つあった。

 

 

(私の本能が告げている。パパの元に居ればもっと強くなれる。剣をぶつける程、つながりがどんどん強くなって、力が溢れ出てくる。そうか…これが……)

 

 

 パパに流れている妖の血の力。

 確か、妖の王様だっけ、パパもおば様も深い部分までは知らないけど、自分たちが崇めていた何とかの神が、まさしくそれだったらしい、

 

 

「うん…大分いい感じだな。よし―――そのまま力を制御しつつ妖刀の力を解放。それと同時に自身を纏っている妖気を感じ、旨く使って見な。もちろんスキルもね」

「分かった。じゃあ本気出す」

 

 

 パパの刀を弾いて一旦距離を取り、腰にぶら下げているランタンを開けて、中で灯っている淡い光を4つ解放。

 この淡い光は、過去に倒した魔物の魂をスキルで捕らえてランタンに収納し、その魂を使い魔として使役したり、その魔物の能力を刀に付与して使うことが出来る。

 ただし、自分と同等の力を持つ魔物は使い魔として使役出来ない(魔物の能力は付与できる)。

 

 

「ユニークスキル『冥界者(トラエルモノ)』見ない間にストックが増えたな」

「ラン姉のお仕事手伝ったり、授業で魔物討伐があるから」

「成程…よーし、正宗!」

 

 

 村正を納刀し、正宗を顕現させるパパ。

 稽古では決して抜刀することのない妖刀を。

 実際に、私もあの刀を抜いている所を見たことは数える程度だ。

 

 

「じゃあ行くぞ。喰われなように気を付けな」

 

 

 正宗から凄まじい妖気が放たれこの場を埋め尽くしていく。

 並みの魔物だと、その妖気に喰われて刀の贄となって喰われてしまう。

 

 

「すぅ…よし!」

 

 

 深呼吸をして、淡い光の一つを妖刀に吸収させると、刀身に強烈な電撃が纏わる。

 この電撃は、ルベリオス近郊で暴れていた雷狼の魂。

 暴れに暴れて最終的にはラン姉の聖剣で一刀両断された。

 

 

「天雷」

 

 

 地面に妖刀を突き刺して雷を放出し、周囲の妖気を打ち払いつつパパに向かわせるが、パパはすでに私の目の前にはいなかった。

 それ所か気配すら存在にしていない、完全に消えていた。

 

 

(姿も気配もない。なら―――)

 

 

 別の魂と入れ替える、今度は気配感知型の魔物で、空気に触れるだけでどんな存在であろうが感知する能力。

 この魔物はシン兄の部下に手を出したとかで一緒に討伐したけど、これが物凄く面倒でかなり苦労した。

 

 

(刀を揺らしてその時の振動で居場所を探す。気配を消しても絶対に分かる)

 

 

 刀を揺らして気配探知を行うと、刀の先端が私の前方を向いた。

 けど…そこには誰もいない。

 姿形一つない。

 なのに反応しているということは、答えは一つ。

 パパは姿を隠しているということだ。

 

 

「なら今度はこの能力で」

 

 

 再び別の魂と入れ替えて前方に斬撃を放つと、黒い靄の様な物が現れ、中からパパの顔が半分見えた。

 そこを狙って一刀を振るうけど、妖刀はパパの体を通り抜けてしまう。

 

 

「なっ―――」

「狙いはいいがまだまだ。"本質"を見抜かないとな」

 

 

 そう言って再びパパの姿が消えてしまう。

 私ももう一度探知するが、今度は反応が全く無かった。

 それに驚いていると、右脇腹に強烈な一撃が入って吹っ飛ばされる。

 そのまま私は壁に全身強打して、竜王の力が解除されてしまった。

 

 

「う…がふっ(私の防御の隙間を的確に…ちょっと動けない)」

 

 

 あまりの痛みに悶絶していると、子供姿のパパが正宗を肩に置いて私の前に来る。

 

 

「うーむ。ちょっとでも途切れると力が解除されるか。この辺りはお師様に任せるか」

「あ…あのパパ。もの凄く痛いのと、なんで私の攻撃が当たらなかったの?」

「……秘密。アイカが俺の事を怖がってる間は一生当たらないな」

 

 

 ちょっと意味が分からない。

 確かに私はパパの事が怖いと思うときがある。

 特に国にちょっかい出してきたやつには本当に容赦ない。

 けど、怖いと思うのはそういう時だけで、今は全然怖くないのだけど。

 

 

「さ。今日はここまで。竜王の力はお師様のところで修行することにして後五日。明日からは応用、最後の二日は実戦形式。ちゃんと体を休めておくこと」

「うん。パパもあまり無茶しないでね。ちょっと皆ピリピリしてるから」

「……こっちの事はあまり気にするな。セーラにも伝えておいて」

「了解。じゃあまた明日(ママの方も何かあったみたいだし)」

「また明日。俺もママもいないけどエリンと仲良くな」

「仲いいよ私とお姉ちゃんは。じゃあね」

 

 

 パパを抱きしめてから私は屋敷に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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