跳べ、ウラヌス ~ウマ娘オリンピック物語~   作:空見ハル

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大賞典障害飛越競技(グランプリ・デ・ナシオン)を走り抜け、見事勝利を収めたトレーナー・西とウラヌス。二人は金メダルを胸に下げ、沢山の仲間たちに囲まれてオリンピックを終えて帰国するも、名残惜しさからか西はウラヌスを連れてロサンゼルスへと戻る。そこには、変わらない沢山の人々の笑顔があった。
西とウラヌスのロサンゼルスでの勝利を目指した旅はここでフィナーレを迎え、新たな歴史へと進んでいく……。
(今回は長めです。)

※これは史実を基にしたオリジナルウマ娘、トレーナーのお話です。
 当作品はフィクションであり、版権元や実在の人物とは一切関係はありません。


#9 Ob-La-Di, Ob-La-Da

「私たちの、勝ちだっ(We Won)!!!」

 

 

『……11番、ウラヌス、トレーナー・タケイチ・ニシ! 減点8!! 暫定一位!!』

 

 

 1932年8月14日の快晴の下、オリンピックが始まって以来一番の喝采がロサンゼルスの街を包み込んだ。

 

 私とトレーナーは元々バ術界隈では出てきたばかりの新人で若造。しかもバ術優勝経験がない日本のコンビ。誰も私たちがこの競技で最高点をたたき出すとは思っていなかっただろう。

 

 それからはあと一組、スウェーデンのコルネットとエルンスト・ハルベルグ大尉だったが、障害の落下や拒止、タイムオーバーなどが重なり50点を超える減点になりながらも完走。会場は温かな拍手に満たされた。

 

 そうして1932年ロサンゼルスオリンピック、大賞典障害飛越競技(グランプリ・デ・ナシオン)の全出場者の結果が出た。

 

 第三位、銅メダルはスウェーデンのローゼン・ジュニアとエンパイア。

 第二位、銀メダルはアメリカのチェンバリンとショーガール。

 そして第一位、金メダル。西竹一、そして私、ウラヌス。

 

 勝敗は決したのだ。

 

 

 私たちは、勝った(We Won)。

 

 

 私はトレーナーと一緒に、目標だったロサンゼルスの舞台を走り切ることができた。正直、もしかしたらあの瞬間は、それだけで満足だったかもしれない。

 トレーナーと走りで語り合い、一緒に障害を跳び越えた。もう誰も追いつけない。誰にも負けない。二人なら。暫定一位、金メダル……結果を聞くよりも前、最後の障害を跳び越えた時から、それは分かっていたんだ。

 

 それから会場10万人の万来の拍手の下で授賞式が催された。私とトレーナーには金色に輝くメダルが首にかけられた。トレーナーはその後すぐに審査台にいた恩師のユサ大佐に駆け寄って固い握手を交わしていた。日本軍人としてのプレッシャーもあっただろうけど、トレーナーは走り切ることができたおかげか清々とした顔をしていた。

 

 しばらくするとスタジアムの観衆と共に巨大なメインポールに大きな日の丸、日章旗が高々と掲げられた。それと同時に観衆全員が起立する中、500人以上の一流の奏者らによる君が代が演奏され、その音はロサンゼルスの街中に響き渡った。

 

 それは、世界で初めて日本の軍人とウマ娘がオリンピックの金メダルを獲得した瞬間。

 

 ——トレーナーと私が、世界で”最強のふたり”になれた瞬間だった。

 

 それからは競技の疲れもあってぼんやりとしか覚えていない。

 だけど……

 

「おめでとう、ウラヌス!」

「わ! あ、イノウエ……?」

「本当だな。本当に、本当に勝ったな! 日本のトレーナーと、ウマ娘でも。西と、ウラヌスでも!!」

「……うん、言ったじゃない。絶対に勝って」

 

 目に涙を浮かべて、大急ぎで駆け寄ってきたイノウエ。

 

「ウラヌス」

「ソンネボーイ……約束通り勝ったよ、あなたの分も最後まで走り切ることができた」

「……調子に乗らないでくださいね。お互いに、です。今回のロス大会ではドイツやフランスはもちろん、ボクらが苦戦してきたイタリアのチームも出ていなかったんですから」

「ええ、そうね」

「……でも……」

「?」

「……その、ありがと、ウラヌス」

「……! ……うん」

 

 少しツンツンとしつつも、眼に涙を浮かべてお礼を言う可愛いソンネボーイだったり。

 

「ウラヌス殿、おめでとうございます」

「凄い飛越だったわ! congratulation!!」

「わわわっ!! あ、ありがとう!」

 

 銅のメダルを下げたエンパイアと、銀のメダルを下げたショーガールが自分のことのように喜びながら抱きついてくれて、他のウマ娘も皆祝福してくれたり。

 

 そして何よりも……

 

「ありがとう、ウラヌス」

 

 無駄な言葉はいらないとばかりに優しい笑みを浮かべて、私の頭を撫でてくれたトレーナー。

 

 そんなかけがえのない光景は、もう二度と忘れることはできないと思う。

 

”皆が一緒になって手をつなぎ、お互いの功績を称え合う。そうして海を越えた世界中の選手たちが輪になって笑いあえば、こんな暗い世の中も、少しは明るくなる”

 

 いつだったか、もうこの世にいないイヌカイのお爺さんが言っていた言葉。

 そう、これがオリンピックだ。国も人種も、信条も宗教も、政治も過去でもない。お互いに力を出し合って真剣勝負をして、称え合い、輪になる。

 

『これにて、1932年オリンピックロサンゼルス大会の、全日程を終了いたします』

 

 歌う声が聞こえる。笑う声が聞こえる。称える声が聞こえる。

 私たちの”オリンピック”は、そんな最高の景色の中で幕を閉じた。

 

 

・・・・・・

 

 

 オリンピックが終わった後は、私たちはロサンゼルスから撤収して国に還らなければならない。もう数か月滞在したロサンゼルス。すっかり我が家の気分のホテルや練習場。

 勝利の後はまるで一瞬かのように去らなければいけないと思うと、寂しさが募る。

 

 最後に皆で汗を共にしたリビエラカントリークラブのポログラウンドに集まって写真を撮り、ソンネボーイと一緒に一人一人抱き合って再開を約束した。

 

「エンパイアは、これからどうするの?」

「わたくしはオリンピックではもう十分に走ったつもりです。これからはトレーナー殿と一緒に祖国でバ術振興に務めようと思っています。トレーナー殿は、一緒に空の旅をしようと」

「空の旅?」

「トレーナー殿はパイロットなんです。偶に危なっかしい飛行をするので、わたくしがしっかり見てやらないと」

 

 エンパイアのトレーナー……フォン・ローゼン・ジュニア伯爵は父親がIOCメンバーの高貴な家系。エンパイアもそれに見合ったお堅いウマ娘かと思っていたが、トレーナーのことを話している柔らかい笑顔は、他のウマ娘たちと変わらなかった。

 

「ショーガールは?」

「トレーナーも正直ベテランだし、私と一緒にオリンピックはもう引退ねー。前の前のアントワープから出続けたからもう良いみたい。私は初めてだったけど、このメダルを取れた今はもう悔いはないわ! トレーナーは陸軍に戻るし、私は地元でバ術を続けようかな」

 

 そう言って少しだけ寂しそうにメダルを撫でるショーガール。

 

「二人ともいなくなるんだ。もしまたオリンピックに出るのなら、会えるかもしれないと思ったのに」

「何を言ってるんですかウラヌス殿。オリンピックがなくとも、私たちは繋がっている。いつかスウェーデンに遊びに来てくれると言っていたでしょう?」

「そうよ! アメリカとニッポンはお隣のトモダチ! あなたのトレーナーも、きっとまたアメリカに来てくれるわよ!」

「そうそう、わたくしはもう出ませんが、わたくしの仲間たちはまだまだ現役ですよ」

 

 そのエンパイアの言葉で”次は負けないぞ”と意気込み握手を交わす、ウルファとコルネットのスウェーデン組。ウルファは第10障害の拒止で惜しくも失権になってしまったウマ娘。コルネットは、私の次の最後に跳び、タイムオーバーの50点減点ながら走り切った侮れない相手だ。もしかしたら4年後、彼女らと再び勝負をすることがあるかもしれない。

 

 オリンピックが終わり、地元に帰って活躍しようとする者、引退する者、次のオリンピックに進む者、様々だ。

 

「ウラヌス殿はどうするのですか?」

「私は……分からない。トレーナーとも話していないから。でも、私はこれからももっとトレーナーと一緒に走って跳びたい。これからも、先に進んでいきたい……と、思う」

「うむ、ウラヌス殿は”世界最強”のウマ娘ですからね」

「ええ、またウラヌスと会えるの、楽しみにしているわね!」

 

 私はどうしようか……まだ分からない。

 でも、それでもトレーナーとはずっと一緒にいたい。これからも走っていたい。その気持ちは、固く、変わらないと確信している。

 

「これからも走る……ですか」

 

 オリンピックのライバルたちと別れた後、私とソンネボーイは並んで歩いた。ソンネボーイとは同じ日本選手団のウマ娘なのに、別々でトレーニングしていてまともに話すことも多くなかったから、これから沢山話したいと思っていたから。

 

「うん。たしかに金メダルを獲ってロスでは勝ったけど、前にソンネボーイが言っていた通り、まだまだ本場のヨーロッパのウマ娘たちと戦っていないから。本当の”世界最強”になりたいと、思うようになってきたの」

「流石は、オリンピック優勝ウマ娘ですね」

「あら、あなたもヨランダ王女杯を勝った、欧州大会優勝ウマ娘じゃない」

 

 そう軽口を言い合い、笑いあう。随分とソンネボーイも力が抜けて、お互いによく話し合えるようになってきた。

 

「あなたはこれからどうするの?」

「ボクはオリンピックが終わった後にすぐトレーナーと決めました。”先”を目指します」

「先? 先ってことは……1936年ね」

「いいえ。そのもっと先ですよ。今回で自分の力不足も実感しましたから、しっかり準備して必ず勝ちたい。だから、次の、その次を目指します」

「ということは……1940年!? 8年後って……凄いわね」

「ボクらもまだまだ若手ですから、8年後なんてあっという間ですよ。その時まで力が衰える予感もありません」

 

 全力疾走で走るレースのウマ娘たちとは違い、バ術のウマ娘たちは

 

「それにそうだ。1940年って……」

「ええ。噂に聞いた話ですが、どうやら……」

 

 ウラヌスは、ポログラウンドのポールから日章旗が下ろされるのを眺めながら言った。

 

「日本。東京になるみたいですよ」

 

「……え? 日本!? 日本でオリンピック!?」

「ええ。一昨年あたりから議会の方で話が上がり、既に”東京オリンピック”、更に冬季には”札幌オリンピック”をIOCに提案することが決議されたみたいですよ」

「東京に、札幌。凄いわねえ。アジアで、日本でオリンピックかあ」

「はい。何でも今の東京市長と……そして最近亡くなられた犬養首相の悲願だったとか」

「イヌカイ……」

 

”海を越えた世界中の選手たちが輪になって笑いあえば、こんな暗い世の中も、少しは明るくなる。私はそれで良い”

 

 イヌカイのお爺さんが言っていた、オリンピック。

 今の日本は世界恐慌、財閥の台頭と格差の拡大、政府不安、満州事変や上海事変……アメリカの新聞をたまに読んでも、日本の良い話を聞くことはあまりなかった。

 けれども、私が選手村で交流した沢山の国の選手たち。競技場で沢山の声援を送ってくれた多くの人々。そこには争いも政治不安もない。理想の世界。自分の脚が頼りの、正々堂々とした、最後まで潔い真剣勝負。もしそれが日本でも実現したら、少しは日本も変わるかもしれない。

 

「分かった。それじゃあ、それまで私ももっと強くなるから。必ず、またあなたに勝つから」

「ええ、待っていてください。必ず、あなたに勝って、私が金メダルをもらいますから」

 

 私とソンネボーイは固い握手を交わし、その後ろで各国の国旗が下げられる。

 

 ロサンゼルスオリンピックは、こうして幕を閉じた。

 

 それからはあっという間。優勝から8日後には日本へ帰る船に乗らなければいけない。私とソンネボーイは選手村を後にして、ロサンゼルスから東京に戻るための準備をし始めた。

 

 その準備の間にも私とトレーナーは”オリンピックの華”の金メダリストとしてアメリカ中のパーティーや富豪からひっぱりだこで、ゆっくりする暇もなく嵐のような体験をいくつもした。

 帰るまでは毎晩毎晩お酒を浴びるようなパーティーの日々が続き、他にも……

 

「ね、ねえ、トレーナー……」

「うん?」

「ほ、ほん、もの……?」

「ああ、前に映画館で言っただろう。友人だって」

「初めましてウラヌス! 君とニシの走り、本当に感動したよ。紹介が遅れたね。私はダグラス・フェアバンクス。ニシの親友さ」

 

 ハリウッドの超超大スター、ダグラス・フェアバンクスとメアリー・ピックフォード夫妻、いわゆる”ピックフェア”とお茶をした。

 絶対トレーナーの冗談か何かと思ったけど、後から話を聞くとトレーナーが私に会うために乗った欧州行きの船上で出会ったらしく、トレーナーとは本当に親しい友人といった具合でずっと喋っていた。もちろん、私はがちがちに緊張していた。

 しかもその後あのチャールズ・チャップリンとも友達だといって会っていたから驚きだ。正直その間は緊張して”はい”とか”そうですね”くらいしか喋れなかった。

 

 あとは……

 

 ロサンゼルス東郊、アーケーディア。

 

「ここが、これから建設されるレース場ですか」

「ええ、金メダリストであるバロン・ニシとウラヌスさんに是非、起工式に立ち会ってもらいたいと思いまして」

 

 ロサンゼルス郊外に新たに建設されるウマ娘のレース場……”サンタアニアパークレース場”というらしいが、そこの起工式に呼ばれた。これから立派なものが建つであろうこのレース場のオーナーも、にこにことしながら私たちと話している。

 私もトレーナーもレースについてはあまり詳しくないけど、同じウマ娘が関わる競技ということで、レース界隈からもパーティーやら式やらで引っ張りだこになっていた。

 

「アメリカのレース場では、日本人のウマ娘が走ったりしているの?」

「まだ見かけませんね。しかし、いつかアメリカと日本が同じレース場で走れることを祈っていますよ。」

「うむ、その舞台がこのレース場になるのなら、私もウラヌスも嬉しいよ」

「ええ、そうね」

 

 イノウエが言っていたように、アジア人と白人が一緒にスポーツをする機会と言うのは、オリンピック以外ではほとんどないと聞く。その架け橋となるのなら、このレース場に来た甲斐もあっただろう。

 

「しかし、私たちにとっては羨ましいというか、あなた方には眩しいものがあるのですよ。特にバロン西、あなたには」

「私か?」

「ええ。私たちアメリカ人には爵位というものが元からありませんから。あなたのような美しい貴族には憧れるのですよ」

「はは、それなら私もそれに見合うような行いを心掛けるとしますかな。ノブレス・オブリージュです」

 

 いつも美女を探して酒を飲んで歩いているような男が何を……という言葉は飲み込む。

 

「しかし、我々ウマ娘のレースに関わる者もバ術に負けていられませんな。いつかここはあなたのようなバロン(男爵)を超える……そうですな。いつか、”皇帝”が走るようなレース場にしてみせましょう」

「”皇帝”ですか……そんなウマ娘がいたら、是非見てみたいですな」

 

 そんな話をしつつ、私たちは起工式に立ち会って写真を撮った。

 

 ……そうして、私とトレーナーはアメリカ中を駆け巡った。沢山の有名人にも会ったし、今まで体験したことのないような豪勢なパーティーにいくつも出て、サインや写真をこれでもかと求められた。アメリカ人でもないのに、まるで国の英雄。

 

 それからは慌ただしすぎて覚えていない。

 港から船が出る日になった時……

 

「なあ、絶対にあんたの……ウラヌスのこと、忘れないから」

 

 そう言って抱きしめてくれたイノウエの顔は覚えている。

 

 ああ、でも……

 

「西君、実はとても言いづらいことがあってね」

「どうしたんですか、今村さん」

「いや実はね。オリンピック後に皆で酒を買って盛大にパーティーしただろう? 実は有り金を全てそこにつぎ込んでしまってね。そのー……実は帰るカネがない」

「……は?」

 

 イマムラがオリンピック後の連日のパーティーで酒を買い込んで飲みすぎて、私たちの帰国費用がすっからかんになっていたっけ。

 とりあえず選手団代表の大島中将に泣きついて軽く叱られた後にお金をもらって何とか帰りの船を確保することができた。

 

 そんな珍事があったものの、私たちのオリンピック、ロサンゼルスの旅はひとまず終わりを迎える……はずだった。

 

 

・・・・・・

 

 

 一か月後。

 

「……で、なんであんたたちがまだここにいるんだよ」

 

 ロサンゼルス、リビエラカントリークラブのポログラウンド。

 イノウエとトレーナー、そして私が並んで話していた。

 

 少し前にに涙を流しながら感動の別れを演じてしまったせいか、イノウエはバツが悪そうな顔をしている。

 

 なぜ私たちが一ヶ月経ってもロサンゼルスにいるのかというと、あれはロサンゼルスから出て、9月8日に日本に到着してから間もない時の話だった。

 横浜港一面は日の丸の旗を持った人々で埋め尽くされていて、その波は東京駅までずっと続いていたという。とにかくも大歓声の波で私たちはロサンゼルスの民衆以上の大歓迎を受けた。大日章旗を持ったトレーナーと私を先頭にバ術の選手団は二重橋まで練り歩いた。

 それからは豪華な車に乗って明治神宮まで参拝しに行き、午後には文部大臣主催の大歓迎会があって、その後更には日比谷音楽堂で東京市主催の大歓迎会と続いた。

 そこに来て、ただ必死に走り跳んで勝利をつかみ取った私たちが日本に与えた影響を思い知った。これほどに沢山の人々が見ていて喜んでくれていたのだと、少し嬉しくなったものだった。

 私は一度陸軍寮に戻ったときも大騒ぎだったけど、トレーナーも家に帰るとそれはそれは大勢の人が行列を作って大騒ぎだったらしく、三日三晩パーティーだったらしい。

 これだけの大歓迎を受けて、私たちのオリンピックは歓声の内に終わる。次へ向かう準備をしなければ。……と思っていたのだけど、日本に帰って一ヶ月くらい経った時だった。

 

”よしウラヌス、ロスへ戻るぞ”

 

 そう言って私とトレーナーは二人だけでロサンゼルスにとんぼ返りして、再びロサンゼルス中を周って、またリビエラカントリークラブのポログラウンドを訪れた。そうしたらイノウエがいたわけだ。

 

「イノウエ君か。君とちゃんと話したことはあまりなかったかな」

「うん。同じ日本にゆかりがある者として、あんたの走りには本当に見惚れてしまった」

「はは、君の頑張りもウラヌスからよく聞いているよ。今まで、よく頑張ったね」

「う、うん。ありがと……」

 

 それにしても何よ、二人ともそんなに仲良くしちゃってさ。

 

「あれ、ウラヌスなんか怒っているか?」

「別に」

「ほら、バロン西、あんたの愛バが妬いてるぞ」

「そうなのかウラヌス。まあ日本に行ってから少し離れていたからな」

「なっ……! ったく、別に何も思っていないわよバカ!」

 

 確かに少し寂しいと思わなくも……

 ……じゃなくて。

 

「そういえばイノウエ、あなた、ここで練習できるようになったんだ」

「あー、うん。前までは追い払われていたけど、あんたたちのお陰だよ。ここは元々ゴルフ場だから戻るまでの間だけど、俺みたいな日系のウマ娘でも自由に走って良いって言われたんだ。ほら、あのスタジアムの門番、覚えているか?」

「ああ、私たちの競技の前にあなたたちが揉めていたという」

「そう。あの門番があんたたちの競技を見てえらく感動したらしくてね、あれから俺のことをよく応援してくれているんだ」

 

 そういえば前にロサンゼルスを離れた時、イノウエの他にも眼に涙を浮かべて熱く握手してくれたガタイの良い男がいた。

 ”俺が間違っていました! 間違っていたよ。だって、あんたたちの走り、最高でしたよ。本当に最高だった!”

 そう言って、泣きながら何度も何度も”ありがとう”と言ってくれた人。

 

「それでな、最近はここで練習をさせてくれているんだよ。聞いてくれよ、最近は140cmの障害を超えられるようになったぜ」

「おお、そうか。それなら私とウラヌスがあのスタジアムで跳んだような160cmの障害までもう少しじゃないか!」

「ああ! あんたらのこと、すぐに追い越してやるぜ」

 

 そうか。

 繋がっていく。

 私とトレーナーが跳んだあの夢の舞台は、多くの人たちにとっての障害を跳ぶための有機になっていたんだ。国や人種、差別といった障害。夢への勇気を出すための障害。

 私たちの飛越が、沢山の人々を結んでいく。

 

「だから、改めて、ありがとな。二人とも」

「私たちは何もしていない。ここまでの一歩を踏み出したのは、君の力だ」

「……ああ。しかし、また会えてよかったよ。さっきも聞いたが、何で戻ってきたんだ?」

「たしかに、私もついていって今更だけど本当になんでロスに戻ってきたの?」

「あぁ。そうだなぁ……まあ色々あるが、一つはイノウエ、君だよ」

「あ、え……俺?」

 

 イノウエの、ため?

 それは初耳だ。

 

「君は一人のウマ娘として、バ術の舞台に立ちたいのだろう? だから、私が君をスカウトしに来た」

「……え?」

「さっきの話を聞くに、君には才能があるみたいだし、バ術への情熱は本物だ。今回のオリンピックの成功で、日本陸軍も新たに優秀な飛越ウマ娘を求めるはずだ。だから、どうだ? 一緒に日本陸軍に来ないか?」

「ほ、本気か?」

「ああ、もちろん」

 

 そうか、トレーナーはまた新しいウマ娘をスカウトしに来たのか。

 たしかにイノウエは差別を受けてもなお負けないバ術への情熱がある。話を聞く限り成長のスピードも速く実力も確かなはずだ。

 でも、トレーナーの担当ウマ娘に? 私と一緒に、イノウエが?

 それって……

 

「……話は嬉しいけど、やめておくよ」

 

 ……え?

 

「そんな、すぐに断って、良いの? だって、私たちのところに来れば……」

「良いんだよ。だって、ウラヌスが少し寂しそうな顔してたしな。”私のトレーナーがイノウエに取られるー”って」

「……っな!! そんな顔なんて……っ」

「はは、ほんっとトレーナーのことになると弱いよなあ、あんた」

 

 別に寂しいなんか……ま、まあ、急な話だとは思ったけど……。

 

「それにな、俺は決めたんだよ。俺は日系だけどアメリカ人だ。こんな国だけど、アメリカに生まれた誇りがないわけではない。それに、俺はあんたらと一緒になりたくて今頑張っているんじゃない。あんたらのような”世界最強”のウマ娘とトレーナーを更に超えるような、そんなウマ娘になりたいから今頑張っているんだ」

「……そうか。決意は固いようだし、それなら、君のアメリカでの成長を楽しみにするとしよう」

「いいの、トレーナー」

「ああ。まあ、別に思い付きで言っただけで熱心に新しい担当ウマ娘を探しているわけではないしなあ。私にはウラヌスがもういるから」

「そうだぞ、バロン西。ウラヌスをあまり悲しませちゃダメだ」

「はあ、もうつっこむのも疲れたわ」

 

 トレーナーが私がいるからと言ってくれたのが少し嬉しかったのは、内緒だけど。

 

「俺さ、いつかアメリカ陸軍に入ろうと思うんだ。そしてオリンピックに出て、あんたらと競ってみたい。そして勝つ。すぐには無理かもしれないけど、それが今の、俺の目標だ」

「そう。それなら時期的に考えると……次に会えるのは東京かもしれないわね」

「東京!? 東京でオリンピックをやるのか!?」

「ええ。聞いた話だけど、1940年のオリンピックは東京でやるらしいわ」

「そうか……東京か……」

 

 イノウエはどこか夢を見るような表情で空を見上げる。きっと日本へ行ったこともないだろう。その輝く瞳は、イタリアでトレーナーと出会った頃の私を思い出させるものだった。

 

「でも1940年かー……その時には、日本に行けるようになっていれば良いな」

 

 アジア系アメリカ人の海外渡航は簡単なことではない。それに、それだけではない。

 私たちのオリンピックの活躍もあるとはいえ、最近は中国情勢もあってアメリカと日本は対立気味にある。これから戦争になるんじゃないかという声さえもあった。1940年といえば8年後。その頃に気軽にお互いの国を行き来できるのか、それをイノウエは心配に思っているんだろう。

 

「きっと大丈夫さ。私たちもその時を楽しみに待っているから」

「ああ、そうだな。今から考えても仕方がないもんな」

 

 そうしてにっと笑い、イノウエは”見ていてくれ”と言って、140cmの障害を軽々と跳び越えた。

 

「当たって砕けろ!(Go for broke !)ってやつだよなぁ!!」

 

 イノウエの飛越は、あのオリンピックスタジアムでの私たちの飛越に負けないほどに、力強く、美しいものだった。

 

 

・・・・・・

 

 

「当たり前だが、オリンピックの時と比べると随分静かになったなあ」

「そうねえ」

 

 イノウエが”あんたらが帰ってきたこと、折角だから皆に伝えてくる”と言っていったんポログラウンドを出ていったから、私とトレーナーは芝の上に座って休んでいた。

 ポログラウンドはオリンピックの練習場の役目を終えて、今はイノウエが持ち込んだ簡易的な障害だけが置かれている。

 アメリカ、メキシコ、スウェーデン。他にも沢山の国の選手が覗きに来たり、そんな華々しい舞台があったのが遥か昔化のように、静かな空間が広がっている。

 

「……ねえトレーナー、本当は、なんでロサンゼルスに戻ってきたの?」

「ん?」

「いや、だって、本当にイノウエのために戻ってきたわけではないでしょう? そんな熱心に勧誘していたわけではなかったし」

「私が、ウラヌスさえいてくれれば良いって言ったのは本当だぞ?」

「だから、心配していないったら」

 

 トレーナーとロサンゼルスに来てからは、招待されるがままに色んな所に行ったり、ロスで遊んだりするくらいだった。

 

「……隠し事はなしって約束したもんな。でも本当に、私自身も分からない。ロスは良いところだ。知り合った人も皆温かいし。でも、そうだな。ただ」

「ただ?」

「前に進むのが惜しくてなあ。だってこんなにも綺麗じゃないか。ロサンゼルスの、オリンピックの景色が」

「あら、オリンピック前にあんなに後ろ向きになっていた人がそんなことを言うなんて」

「……よせよ。でもまあ、満足だよ。ウラヌスと一緒にここまで来れて」

「……そうね。私も」

 

 ロサンゼルスのポログラウンド……私がイタリアを出た時に目指していた景色。実際にそこにて、しかもトレーナーの隣で。それが、どんなに幸せなことなんだろうと、ゆっくりと息を吐いてしまう。

 

 ……でもトレーナー、トレーナーか……。

 

「はあ、でもさ。私もね、さっきのイノウエに乗るわけじゃないけど、気になることがなかったわけではないなーって」

「なんだ、その曖昧な言葉は」

「いやね、大したことじゃないんだけどさあ……」

 

 今まで一緒にロサンゼルスを巡っていて……いやそれより前、一緒にヨーロッパ中を周っているときから思っていたことがある。

 

「トレーナーってさ、モテるよね、しかもかなり」

「……どうした、急に」

「いや、ただそうだなーって思ってさ」

 

 トレーナーと一緒に色んな国を巡っている間に気づいたことがある。

 例えば、トレーナーと一緒にイタリアの競技会に出た後の時。

 

”あのお方よ! 日本のバローネ(男爵)! 背が高くて素敵ねえ”

”それに見て。エルメスのブーツにぴしっとした軍服……あんなにも似合うのは、イタリアの貴族でもそうそういないわあ……”

 

 そんな黄色い声、ローマやミラノを歩いているだけでも100回は聞いた。

 

 ロスに来た時も……。

 

”あの人が噂のバロン西かしら?”

”ごきげんよう、あの、よろしければ、一緒に踊ってくれませんか?”

 

 そんな風に声をかけられては丁寧に対応するトレーナー。そして。

 

”あなた方のような美しい女性とのダンスは、最後までとっておきたいのです”

 

 とか言ってキャーキャー言われていた。確かにトレーナーは顔は良いし外から見たら魅力的に見えるのだろう。私からしてみればトレーナーは厳しくトレーニングに打ち込んでいるときの方がぽいし、普段のキザ男はなんとなく胡散臭いように思える。

 

 ただ、それは私だけみたいだけで、本当にまあモテるモテる。

 それはそうだ。異国から来た良い顔をした高身長の軍人。しかも貴族。華々しいバ術のトレーナーときた。

 

 だから、気になることがある。

 

”トレーナーとのこと、少しは頑張れよ、ウラヌス”

 

 さっきイノウエが皆を呼びに行く前に私にそう謎に囁いていったのもあって、その疑問は加速していった。

 

「トレーナーってさ」

「ああ」

「好きな人っているの?」

「……は?」

 

 ……別にトレーナーのことはそういう意味で今好きだとかそういう意味じゃない。

 ただ、あれだけモテるトレーナーが心に決めた人がいないのか、それが気になった。思えば今までトレーナーとオリンピックやバ術の話は沢山してきたけど、もっと内内の話をしたことってなかった気がする。オリンピックが終わって一緒に世界最強になった相棒。

 ……そんな相棒のことで知らないことがあるのは、何だか嫌だった。

 

「好きな、人か。そうだな……好ましいと思っている相手ならいるぞ」

「えっ!?」

「うん?」

「……い、いいえ」

 

 ……そう言われれば、気になってしまう。当然だ。

 もしかしてその人って……。

 

「ほら、この人だ」

 

 胸ポケットから一枚の写真を取り出す。その中身は……

 

「……え、誰?」

 

 列車で軍刀を持って席にもたれて格好をつけているトレーナー……は分かる。そしてその席に寄り添うように座っているのは、モデルさんと間違えるほどに美人で、微笑みを浮かべる女の人。そしてその両腕の中では、上等な服と帽子を着けた男の子と女の子が、ぎこちなさそうにしつつも笑っていた。

 

「あの……この人たちは?」

「妻と……娘と息子だ。可愛いだろう?」

「……は?」

 

 妻と……む、娘と息子? え、子供っていうこと?

 いや、まあ、たしかにトレーナーはう三十代後半だし結婚していてもおかしくない歳だけど、うー、え?

 うん、とりあえず……

 

「聞いてないわよ!!?? あんたが結婚して子供までいるなんて!!」

「ああ、言っていなかったか? おかしいな、前家に来たときは皆外に出ていた時だったか……?」

「け、結婚!? いつから?」

「結婚は15年前くらいだったかな。子供もその後間もなくだね。川村伯爵の家のご令嬢でね。彼女も私に負けないくらいのお転婆で……」

「いやいや、上手く頭に入ってこないわよ今言われても! 」

 

 ……私と会うよりも全然前じゃない!

 

 前にトレーナーの家に行ったときは家全体がパーティー会場で落ち着かなかったから分からなかったのかな。でもその後もトレーナーとはトレーニングが終わった後によく街に繰り出して飲み歩いたし、私と別れた後も他の軍人と一緒に三次会、四次会としこたま街で遊んだ後は家で朝までパーティーだったと聞く。とても一家の大黒柱とは思えない行動だったけど……。

 まあ、それが”西 竹一”……か。

 結婚する前からきっとこんなのだったのだろう。結婚しても奥さんとかくれんぼでもして遊んでいそうなくらいのやんちゃな男だ。……結婚のことも本当に私に隠していたわけではないのだろう。そんな素直な人だからきっと私も……

 

「そう、か……ふふ、結婚ね……」

 

そう考えていくと、何とは言わないけど、さっきまで変な想像をしていた自分が少しおバカに思えてきて、笑えて来る。

 

「……ふふ、はははははは!!」

「お、おい、どうした、ウラヌス、何で泣きながら笑っているんだ?」

「放っといてよ。ふふふ……もう、ほんっとうに、良い日ね、今日は!」

「ウ、ウラヌス……?」

 

 そう。でもきっとこれで良かったんだ。

 私とトレーナーは唯一無二の相棒。世界一のウマ娘とトレーナー。

 トレーナーのことをもっと知れて、絆がもっと深まった気がして……なんかちょっとだけムカつくけど、何となく嬉しい気がした。

 

 

・・・・・・

 

 

「……へぇ、あんたに奥さんと子供がね。」

「皆驚くが、そんなに意外なのか……?」

「意外というか……あんた正気かって感じだよ」

「正気かって。この品行方正な私が?」

 

 皆その品行を疑ってんのよ。

 毎日毎日ナンパしたりされたりして異常な金の使い方をして、酒を浴びるように飲んで過ごしている一家の大黒柱なんて聞いたこともない。

 

「全く、オリンピックを走り切った時の感動を返してほしいよー。なー、ウラヌス」

「でも大丈夫よ、ウラヌスちゃんにも良い子は見つかるわ」

「うむ、ウラヌス殿は高貴なウマ娘だ。心配いらないさ」

「ええ、ファイトファイト!」

 

 

 はあ、何度も言ったけど、トレーナーのことはそんな眼で見ていなかった……と思うし、別に気にしていない……

 

 ……って。

 

「何も言わなかったけど、いつの間にこんなに沢山呼んだの!?」

 

 さっきまで三人だけだったポログラウンドには、オリンピックで知り合った人たちがずらり。ロサンゼルスの先々でお世話になった人はもちろん、ロスのおばちゃん……というか何でエンパイアとショーガールまで!?

 

「あんたたち、故郷に帰ったんじゃなかったの!?」

「いやね、ウラヌス殿がまたロスに来たというから、トレーナーの飛行機に載ってとんぼ返りしてきたのさ。それに、前から聞いていたイノウエ殿のことも知りたかったからね」

「私はアメリカだからロスまですぐだからネー!」

「ほんと、やっぱりオリンピックに出るようなウマ娘はめちゃくちゃね」

 

 さっきまで何となく寂しさを感じていたのが嘘みたい。今やポログラウンドは人でいっぱい。トレーナーの家で毎晩やっているパーティーにも負けないくらい賑やかだ。

 

「しかし本当に、ウラヌスさんとまた会えて本当に嬉しいですっ!!」

 

 あのロサンゼルスのオリンピックスタジアムにいたガタイの良い門番まで。声がでかい。もはや最初に見た人と全然違う。でも、彼はもちろん、私も皆も、あのオリンピックで変わったということなんだろうか。

 

「なあウラヌス」

「うん」

「俺、もう一人じゃないよ」

 

 イノウエはポログラウンドを見わたして、大事なものを見る優しいまなざしで、微笑みながら私に言った。

 

「あんたに初めて会ったときに言ったよな、”日系人だとか白人だとか関係ない”って」

「ええ。それに今更だけどさ、約束通り勝ったけどどう?」

「ああ、それはな……」

 

 見渡す。

 このグラウンドは色んな人種・国の人々が入り混じり談笑している。オリンピックは終わったはずだけど、まだ続いているようにも思えるほどに。

 

「さいっこーーだよ!!」

「ふふ、さいっこーね」

「ああ、本当なんだな。オリンピックは人種も国もない。実力勝負。買ったら潔い。そんなところだったんだって。その証拠に、俺は今一人じゃない。あんたは、俺の人生をまるっと変えちまった」

「それは違う。一歩を踏み出したのはあなた。あなたが自分を変えたの。それにこれからよ、あなたはもっと素敵なウマ娘になるんだから」

「……っ、なんだよ、ったく。口が上手くなって、本当にトレーナーのニシに似てきたんじゃないか?」

「もう、勘弁して」

「俺もいつかウラヌスみたいな、強いウマ娘になって口説いてやるよ」

 

 そう言って笑いあう。

 

「しかしイノウエ、君はこれから具体的にどうするつもりだ? 一応一度スカウトした身、君の今後のことも聞いておきたい」

 

 トレーナーが入ってきて、聞く。

 でも確かにアメリカで頑張るとはいえ、現実は厳しいはずだ。それでもイノウエは自信満々にバ術で生きていくという。

 

「あー、それについては大丈夫だ。なっ!」

 

 そう言って視線を投げかけたのは、なぜかあのガタイの良い門番。眩しいくらいの笑顔でサムズアップしている。

 

「……え?」

「いやー、実はさっき色々話してみたら意外と気が合っちゃってさ。あいつもやけにバ術に感動したらしいから、俺の世話をしてくれるんだと。さっき決まった」

「はいっ! 感動しましたっ! イノウエさんは責任を持って私がオリンピックへ連れて行きますっ!!」

 

 いやもはや誰よあんた。キャラが違うよ。

 

「あいつ、昔陸軍にいた時期があるらしくてな。こいつも色々と手を回してくれるってさ。まだ俺たちみたいな日系人は入隊できないかもだけど、いつかチャンスができたら必ず陸軍に入って、オリンピックに出る。絶対だ」

 

 オリンピックのバ術競技は、軍に所属するウマ娘とそのトレーナーしか出ることができない決まりがある。陸軍に入ることは、オリンピックバ術の絶対条件だ。

 でも、あの大男がトレーナーなら、心配もいらなさそうだ。どっちも素人っぽいけど、きっと大丈夫だろう。

 

「あ、明日からトレーニング場所確保しておけよ。練習始めねえといけないからな!」

「はいっ! 死ぬ気で探しますっ!!」

 

 なんか、どっちがトレーナーなのかも分からないけど、ある意味イノウエらしいやり方なのかもしれない。

 

「そうか、それならイノウエと競うのが楽しみになってきたな、なあウラヌス」

「ええ、1940年……」

「東京オリンピックじゃんねえ!!!」

 

 うわっ。誰。

 ……と思ったら、眼鏡で低身長の男。ああ、オリンピックの。

 

「お、あんたも来てたのかオリンピック男」

「まあ、一応選手団代表だったから、オリンピック関係の会議も見ておきたかったのよ」

「なんか、いたから連れてきたぞ。誰だっけ」

 

 イノウエ、たしかあなたと一緒にスタジアムに入っていった人よ。

 

「そしたら、なんと、ドンッ! IOCの総会で、正式に東京がオリンピックの候補地に立候補されましたっ!!」

 

 皆がおおっと声を挙げる。もちろん私も。

 

 オリンピックは今までヨーロッパやアメリカでしか開催したことがない。だから日本のようなアジアの国がオリンピックに立候補もできるのかと半分疑っている人までいた。だからこれは大きな一歩だ。

 

「……ふふ、東京オリンピック。東京オリンピックかっ!」

「トレーナー、嬉しそうね」

「嬉しいというかな。さっきまで立ち止まっていたいと思っていたのが少しだけバカらしくなってきたのさ。……よーし!」

 

 トレーナーは笑って大きく手を広げ、私たちの前に立った。

 

「皆、聞いてほしい! 私とウラヌスは、このロサンゼルスオリンピックで金メダル、優勝することができた。でも、この勝利は私とウラヌスだけのものではない。日本の新聞では私の発言を”日本国の勝利”と書かれたこともあったがそうではない。応援してくれた君たち、そして私とウラヌスと、真剣に戦ってくれたアスリートたち……皆の勝利だ(We Won)! 本当に、心から感謝している。 だから、ここに約束しよう」

 

 今までにないくらいに嬉しそうな顔をして興奮するトレーナーを前に、皆が熱狂する。トレーナーは、これが締めだとばかりに思いっきり叫んだ。

 

「1940年に東京オリンピックが開催された暁には、ここにいる全員、日本へ招待する! そしてまた会おう、オリンピックで!!」

 

「おお! 本当か!? これは燃えてきたぜ!」

「自分、感無量ですっ!」

「ふふ、それならイノウエちゃんとウラヌスちゃんをちゃんと見に行かないとねえ」

「こりゃあ、オリンピックの企画頑張らないといけないじゃんねえ」

「ふむ、わたくしどもも引退するのが惜しくなってきたな。トレーナーに東京だけ出られるように言ってみようか」

「良いじゃない! ウラヌスたちにはまだ負けられないもんね。そう思ったら東京で走るのもEasyEasyよ!」

 

 ポログラウンドにいる全員が、眼を輝かせて、未来を見始めた。

 オリンピックで出会い、オリンピックで一つになれた私たち。皆で輪になった。でも、それはこのオリンピックが終わっても消えることはない。私たちの人生は続いていく。でもその中で、このオリンピックの日々は大切なモノとして、きっと残り続けるだろう。

 

 しかしほんと、トレーナーは無茶苦茶なことを言う。まあでも、トレーナーのことだから本気で言っているんだろうけど。

 

 皆が輪になって笑う。

 

 ああ、本当にここまで来て良かった。イタリアの陸軍でダメになりそうだった私。そこからトレーナーと出会ってイタリアで一緒に走って、ソンネボーイたちと競いながら日本に渡って……トレーナーと話し合って、イノウエたちと出会って……オリンピックで金メダルをもらって。

 繋がっている。人生は繋がっている。

 

「ねえ、トレーナー」

「うん?」

「これがさ、大団円って言うのかな」

「……ずっと言っているだろう。これからさ」

「……うん、そうだね」

 

 そして続いていく。これからも。時には辛いことがあっても、きっと最後は皆で歌えるような素敵な人生になるように、これからも走り続けていくつもりだ。

 

「あ! そうだそうだ、さっきウラヌスと話して思いったてな、家族に手紙を書いたんだ。ロサンゼルスでの日々の感想をね」

「本当に? 見せてよ。きっと私と金メダルをとったときの素敵な瞬間が書かれているのかしら」

「ああ、別に良いぞ。手紙はあまり書かないから、これで良いのかな」

「手紙なんて気持ちがこもっていれば何でも嬉しいのよ。どれどれ……」

 

 ”オレはこっちでもモテているよ”

 ……以上。

 

「……良いわけないだろっ!!」

「痛ぁっ!! け、蹴るな蹴るな」

 

 ……少しだけ不安になるときはあるけれど、私はこれからも、唯一無二の相棒、トレーナーと走り続ける。

 

 この先も、ずっと、一緒に。

 

 きっとね。

 

 

・・・・・・

 

 

 ロサンゼルスを再び訪れて、ポログラウンドで笑いあったその日の夜、西は夢を見たという。

 

 気づけば、西は、ウラヌスと共に走ったスタジアムにいた。スタジアムには既にないはずの競技用の障害コースがまだ残っていて、そのコースの真ん中には見覚えのあるウマ娘がこちらを見て立っていた。

 

「……君か。アイルランド……だったかな。ということは、これは夢か」

「お別れを言いに来たんです、トレーナー。またあなたに会えて良かった」

「お別れ?」

「ええ。”こっち”でもどうやら、あなたに会えるのは”ここまで”のようなので」

 

 アイルランドはスタジアムの観客席を、ぐるっと回って眺めていた。

 スタジアムには誰もいない。観客どころか、競技の審査員やオリンピック役員、掃除屋までも。アイルランドと自分しかこの世界に存在しないようだと、西は思った。

 

「それにしても、ほんとびっくり。オリンピックの舞台って、こんなに大きいんだ。ここで10万人の歓声を浴びたら、そう思うとわくわくしますね」

「君も、ここで走る予定だったんだよな」

「はい。あなたの隣で。でもそれは叶わなかった。あなたの隣には、ウラヌスがいたから」

「君の言う”そっち”の私は、ウラヌスに酷いことを言っていたよな。それに何よりも、君の脚……」

 

 アイルランドの脚を見ると、そこには包帯が巻かれていた。でもアイルランドはしっかりとその脚で地面を踏みしめて立っている。少し歩いているところを見ても、不自由さはない具合だった。

 

「これは夢ですから、自由に歩けるんです。それに、私の脚はトレーナーのせいじゃありません。私は競技に入れ込みすぎる性格でしたから、それで無理をしすぎたんです。あなたにも、よく叱られました」

「……そうだったかな。うん、そうだった気がするよ。」

 

西は繰り返し見ていた夢でしかアイルランドに会ったことはない。しかしアイルランドが言う”こっち”というやつの感覚なのだろうか、ウラヌスと同じくずっと一緒にいたたかのような、そんな不思議な感覚が頭の中に残っていた。

 

「ねえトレーナー、最後にお願いがあります」

「お願い? なんだ、最後なんだろう。遠慮なく言ってくれ」

「はい。私と、このコースを走ってくれませんか」

「コース? この、オリンピックのコースを?」

「そうです。ウラヌスと走ったときのように」

 

 西はスタジアムのウマ娘競技用の障害コースをぐるっと見渡した。西はつい一か月前にウラヌスと走ったロサンゼルスオリンピックの舞台を思い出していた。

 

「……分かった。でも本当に脚は大丈夫なのか」

「はい。これは夢ですから、ほら」

 

 そう言ってアイルランドは、巻かれていた包帯を取って軽くジャンプして見せた。

 

「それなら、よし。行こうか」

 

 西はアイルランドの最後の頼みを叶える義務があると思った。それは、彼女のトレーナーとして。彼女にとっての相棒であったのだろう、自分として。

 

 ウラヌスの時と同じく、西はアイルランドが飛越する隣で軽く走りながらも見守っていた。

 

 第1障害。

 

 不安だった飛越は問題ない。

 それだけではなく、西はその飛越に見惚れていた。

 しっかりと脚を曲げ、高すぎず、しかし確実に跳ぼうとするお手本のような飛越。ウラヌスの大胆な飛越とはまた違った良さを持つ、繊細な飛越だった。

 

「君の飛越は綺麗だな。まるでお手本のような飛越だよ」

「はい、トレーナーに鍛えられました。日本で」

「ウラヌスと一緒に?」

「ええ。あの子は意地っ張りだけど、確かな熱意と実力があった。よきライバルでした。……あーあ、だからかな、少し妬けちゃうな。オリンピックでトレーナーと走ったのがウラヌスというのが」

 

 アイルランドは前を向いて走りながらも、疲れる様子もなく微笑んでいた。西との会話を、ひとつひとつ噛みしめて、楽しむかのように。

 それでもアイルランドは、障害を一つ一つ、丁寧に跳んでいった。見事な飛越、姿勢は決して崩さない。これは夢だからなのか、それともアイルランドが持つ力なのか、西は驚きつつも隣をついていった。

 

「君も……ウラヌスと同じで、ヨーロッパで出会ったのかな」

「そうですね。私はオリンピックで共に戦うためのウマ娘として、私の名前と同じアイルランドであなたにスカウトされたんです。その時は、”アイリッシュボーイ”という名前を貰って」

「アイルランドの少年……か」

「ええ。ウマ”娘”なのに、と、イマムラと一緒にいたソンネボーイと一緒に笑っていました。でも、その名前は気に入っていました。……それからはウラヌスと一緒に東京に出てトレーニングをしました。車越えをしたり、2m10cmの障害を飛び越えたこともありましたね」

「2m10cmか! それは凄いな。そんな障害、跳び越えられるウマ娘はこの世に10人いるかどうかだ」

「ええ、思えば短かったけど、キラキラした日々だった。世界恐慌の影響もありアイルランドのバ術界で足踏みしていた私をアイルランドから引っ張り出してくれて、世界に飛び出すことができた。そしてオリンピックの目の前まで、あなたの隣にいることができたんです」

「……でも、君は怪我をした」

「さっきも言った通り、これは私の落ち度でした。トレーナーも見たと思います、ソンネボーイのあの狂気的とも言えるほどにレースに入れ込んだ走り。私もああでした。周りが見えなくなると、一歩間違えればウマ娘は”命”を落としかねない。そして事実、私はそうなった」

 

 彼女の言う”命”、それは脚のことだろう。でもそれはある意味、比喩と言えないほどだ。ウマ娘にとって、走ることは、生きること。

 あの時のソンネボーイも、もしあのまま走り続けていればただでは済まなかったかもしれない。コロシアムの端から見ていた西でもはらはらさせられた競技だった。

 

「自業自得とも言えます。でも、私はそれでも、こんなことを言うと怒られるかもしれないけど、少しだけ嬉しかった部分もあったんです。あなたが泣いて私のことを気遣ってくれて、治療中いつも隣にいてくれたこと。私とじゃなければオリンピックに出たくないとまで言ってくれたこと。ここまでして、オリンピックという大舞台まで連れて行きたかったんだと、分かったから。だから、私はもう満足なんです。走ることはウマ娘の生きがい。でも、それだけではないはずだから」

「それでも、私は……!」

「それに、あなたは、トレーナーはここで立ち止まって良い人間じゃない。私の分も……というのはおこがましいですが、これだけの人を笑顔にする。担当ウマ娘だけじゃない、見る人を笑顔に、元気にできる力があるのですから」

 

 ”見てください”と、アイルランドは第6障害を跳び越えたあたりから笑った。

 西は言われて、ふとスタジアムを見渡した。すると、今まで誰もいなかったはずの観客席には10万人を超える沢山の人が声援を送り、待機場所には今村やソンネボーイといった仲間たちが静かに見守っていた。

 正に、ロサンゼルスオリンピックの光景そのものだった。

 

「トレーナーは、私じゃない。ウラヌスと、この光景を、沢山の人が輪になって笑いあう、そんな競技を魅せることができたのでしょう? 私は、そうやって、あなたが、あなたらしく競技しているのが一番の幸せなんです。次はベルリン、その次は東京。あなたにはこれからも、あなたらしく走っていって欲しいんです」

「でも、”君のほう”の私は、そのウラヌスにも……」

「安心してください。”こっち”のトレーナーとウラヌスも、”そちら”とそうは変わりません。この景色と同じ。やっぱりあなたの相棒は、ウラヌスなんですよ。あなたの隣には、あの子が相応しい。例えどんな世界だったとしても、それは変わらないんですよ」

 

 そう言ってアイルランドは優しく、けれどもどこか少し寂しげに、観客席を眺めた。本来彼女が受けるはずだった、このロサンゼルスの歓声。彼女の眼には、一体どれほどの気持ちが渦巻いているのか、トレーナーであったはずの西にも、想像することは難しかった。

 

「だから、トレーナー!」

 

 アイルランドは、やや息を整えてから、一気に難関の第10障害を超える。幾人もの挑戦者が挫折した第10障害。それをまるで小さな小枝をまたぐかの如く軽々と跳ぶ。その飛越は、2m10cmの障害を跳び越えたというアイルランドの実力を体現していた。

 

「ここで私はお別れです。あなたの相棒と、ウラヌスと! ずっと走り続けてください。あなたがたには、これから尋常ではない大きな”障害”が立ち塞がることになるかもしれません」

「”これから”? アイルランド、君は一体……!」

「私から詳しく言う事はできません。でも、トレーナー。あなたはもうこの夢に、私に、縛られる必要はもうない。あなたとウラヌスにとっての”勝利”は、私にとっての、私たち(We)にとっての勝利でもある。そこに後ろめたさなんて、どこにもないんですから」

 

 気が付けば、あっという間にアイルランドはロサンゼルスオリンピックの難関コースをクリアしていた。

 ”11番、アイルランド、トレーナー・タケイチ・ニシ! 暫定一位!!”

 そんなアナウンスが会場に大きく響き渡る。響く拍手、溢れる歓声。

 

「ああ……満足です。これは”夢”。でも、それでも……あなたと最後に走ることができて、このロサンゼルスの舞台に立つことができて、本当に良かった」

 

 アイルランドは、小さく笑みを浮かべて上を見ながら、一筋の涙を流していた。

 そうだ、本当は彼女は悔しかったはずだ。世界の舞台を前にした故障。挫折と引退。それは誰にも想像しがたい、”命”を奪われるということ。彼女はそんな舞台を、例え夢の中でも叶えられたのだろうかと、彼女にとっての救いになったのだろうかと、そうだったら良いと、西は思った。

 

「さあ、次はあなたです、トレーナー。ここからはあなたたちの番。その時計が延々と時間を刻むかのように、あなたがたの長い長い旅が始まるんですよ!」

 

 アイルランドはロサンゼルス10万の歓声を、舞台の真ん中で手を挙げながら、トレーナーに向き直った。

 

「そうだ、この時計だ。この時計のことを知っているのか? 私がいつからだったか持っていた、この時計を」

 

 それは、いつからだったか持っていたアメリカ製の銀腕時計。ストップウォッチの機能もついた優れモノ。ウラヌスの記録を刻み続けた、西にとって大切な時計だ。

 

「その時計は、特別な物。私がトレーナーとロサンゼルスでの勝利を誓いあった時に贈ったものです。私と、そしてウラヌスの走りを測り、刻み続けたその時計。……知っていますか? ウマ娘レースの世界には伝説があって、ある”時計”には、過去と、そして未来を変える力があるそうですよ」

「過去と、未来を?」

「はい。過去と未来、選択の連続によって世界は変わっていきます。選択によって、いくつもの世界が”枝分かれ”していく。その中には後悔してもしきれないこと、取り返しのつかないことだってある。でも、枝分かれした一本を辿っていけば、もう元に戻ることはできない。それがルール。だけど、もし”別の一本”、より良い”一本”に跳び、移ることができたら、幸せだと思いませんか?」

 

 西は、突然の哲学的なアイルランドの話を理解することはできなかった。けれど、少しの涙を浮かべながらも、どこか励ますような、応援してくれているような表情のアイルランドの言葉は、どこか重みがあるように感じられた。

 

「……私は、定まった未来は変えられないと思っていた。もちろん今だってそうだ。私は軍人だし、決められたことに従う。ルールから逸れることはしない。そういうものだと思っている。私は不器用だから、そこまで大きな望みを、抱えきることはできない」

「真面目ですね。やっぱりそう。女の人と遊んでも、家族を放って毎晩飲み明かしても、あなたはやっぱり繊細な人です」

「でも、さ。確かにな。もし変えたい未来があるとして、そんな、取り返しのつかない、辛い未来があったとして……」

 

 西は少しだけ寂しそうな表情をしたアイルランドに向き直り、静かに笑って呟いた。

 

 

「もし変えられる未来があるとしたら……変えたいよな、そんな未来を」

 

 

 そう言って西は、競技用の、お揃いの軍帽を被ったアイルランドの頭を優しく撫でた。

 

「……それなら、やることは一つ。簡単なようで難しいですけれど、たった一つ」

「なんだ」

 

「何があっても……何があってもです。あなたの相棒……あの子の……ウラヌスの隣にいてあげてください」

 

 アイルランドは、真っすぐ西の眼を覗いて、はっきりと言った。

 

「……何があっても、か。それは確かに、難しいことだな」

 

 トレーナーというのは、バ術においては、あくまで軍隊におけるウマ娘のサポートに過ぎない。トレーナーが変わることも、途中でどちらかが除隊することも珍しくはない。そしてお互いに離れてしまえば、いつまでも隣にいるというのは難しいこと。簡単に約束できることではない。

 だから西はうんともムリとも言わず、笑いながらアイルランドの頭を優しくなでていた。

 アイルランドもまた、その反応を分かっていたかのように、”しょうがない”とでも言いたげにふと笑った。

 

「……ありがとうございました。トレーナー。私は、本当に満足。幸せでした」

「……ああ」

 

 ロサンゼルスの景色は、キラキラと、白い光に包まれていく。夢の終わりなのか、それはまるで日の出のように、世界を明るく彩っていた。

 

「あなたとウラヌスの……そして、”私たちの勝利”のゴールを、いつまでも祈っています」

 

 そう言ってアイルランドは、眼に涙を浮かべながら、一番の笑顔を浮かべる。

 

 

 ”これにて、1932年オリンピックロサンゼルス大会の、全日程を終了いたします”

 

 

 世界にアナウンスの音声が流れる。

 

 それを最後に、西のロサンゼルスオリンピックは終わりを告げる。

 

 そして、新たな旅路が始まるのだった。

 




前回から2か月も間が空いてしまいましたが、ここで西とウラヌスを描いた「跳べ、ウラヌス」は一度終わりとなります。ここまで読んでいただいた方々、本当にありがとうございました。
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