トレーナー式雑ご飯とウマ娘   作:コジマ汚染患者

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卑しか女杯とかいうネーミング、いつ見ても考えた人天才だと思う。
さぁ、鋼の意志さんのご入場です。
後書きと今日のお品書きがなかったので追加します。
今日のお品書き:炊き込みおにぎり


桐生院と炊き込みおにぎり

トレセン学園において、トレーナーと言う存在は必要不可欠なものである。ウマ娘のトレーニングに学園での教師。トレーナーによってはチームを担当するために自身だけでなくサブトレーナーが存在するところもありトレセン学園の厳しい試験や面接を経て優秀と言われる職員が集められている。しかし、レベルが高いがゆえにその重圧に耐えきれなかった者も少なからずいる。

 

「あれ、○○君は?」

 

「ああ、彼なら昨日から地方に行ったよ」

 

朝の職員室で、トレーナーがふと目の前のデスクを見ると、きれいに整頓されており置いてあったはずの同僚の所持品がなくなっていた。隣に座る別の同僚の話によると、そこに座っていた後輩のトレーナーは先日地方のトレセン学園へと異動したとのことであった。

 

「・・・いいやつだったんだがなぁ」

 

「別に死んではないでしょうが。いい奴ってだけでやっていけるほど中央は甘くない、ってことだろうさ。俺もお前も他人事じゃないだろう?」

 

そう言って複雑な表情でこざっぱりしたデスクをみつめる二人。結果こそがすべてと言っても過言ではないこの中央という場所において、消えゆく同僚、地方へと流れる者というのは決して有り得ないことではない。

トレーナーにとってはシンボリルドルフ(皇帝)という目に見える功績を打ち立てた担当の存在があるため、異動するような可能性も自分から辞めることもないだけだ。ルドルフが担当から外れたり、その後も結果が振るわなければ目の前の景色は自分にも訪れる。同僚もまた同じ。功績を、結果の出せなかった者は去る、勝負の世界だ。

朝からしんみりとした空気が流れる中、雰囲気を変えようとトレーナーは自身の頬を両手ではたき、紅葉の形に真っ赤な痕をつけながら頭を振る。

 

「・・・うし、切り替える!んで、次のここの主はいつ来るんだ?」

 

「ああ、それなら・・・」

 

「し、失礼します!今日からここに配属となりました、桐生院葵です!」

 

「・・・来たね」

 

「・・・おう」

 

突如二人の背後の職員室の扉を開き、全力のお辞儀をする女性が現れる。その緊張感に包まれた後頭部を見つつ、二人はその元気と言えば聞こえの良い絶叫レベルの挨拶により耳の鼓膜が破れていない事を祈りつつ耳を抑えながら机に倒れ伏すのだった。

 

 

 

 

 

「・・・さて、そんなわけで君の研修期間の間、教育係をおしつkゲフンゲフン任された者だ。まぁ適当にトレーナーとでも、ぶっちゃけ呼び方は特に何かあるわけでもないから好きに呼んでくれ」

 

「は、はい!よろしくお願いします!・・・それとさっきはうるさくしてしまって申し訳ございません・・・」

 

「いいっていいって、元気なのはいいことだ」

 

あの後、職員の朝礼にてベテランたちから教育係としての仕事を押し付けられたトレーナー(じゃんけんの敗北者)。目の前で今なお申し訳なさげにソワソワしている女性、桐生院葵とともに学園内の廊下を歩く彼はそんな桐生院トレーナーの様子をまじまじと見つめ何やら考えるようなそぶりを見せる。

 

「・・・」

 

「あの、なにか?」

 

「ああいや、あの名門と言われる桐生院家の人だっていうから、どんな人なのかと思ってたもんで。流石にジロジロ見るのは失礼だった、すまない」

 

「いえ、少し気になっただけですので・・・」

 

そう言って気まずそうに目を逸らす二人。トレーナーは流石にジッと見続けるのは女性に対して失礼だったな、と反省し前を向き少し歩みを早める。

一方の桐生院トレーナーも、見た目では挙動不審気味にトレーナーの背後についていき新しい職場に慣れていないです、と言う雰囲気を醸し出していたがその内心ではもう完全にフィーバー状態だった。トレーナーを見る目も、心なしかキラキラしている。

 

ああああああ、あの皇帝を見出した有名なトレーナーにご指導していただけるなんて!トレーナーとしての最初の担当であり驚異の成功を収めた最強の皇帝シンボリルドルフと、オグリキャップ・アグネスタキオンという皇帝に比肩するレベルの優秀なウマ娘を輩出し今なおその躍進を支えている凄腕のトレーナー!しかも!本来適正距離ではないレースへ出場するミホノブルボンの引き継ぎとその後の成功、どのトレーナーも不可能と断言してきたハルウララのG1出場!極めつけはあの傍若無人で有名なゴールドシップを制御するという偉業すら達成した若手の中で一番のトレーナーと言っても過言ではない方・・・!それだけじゃないです、自身の担当するチームだけでなく他チームのウマ娘の状況すらも把握し、時には重大な故障を見抜いて他チームを救ったともいわれる慧眼も持ち合わせている!それにこれは噂しか聞いたことはないけど自身の担当のライブを盛り上げるために急遽バックダンサーを請け負い大成功を収める程のダンス技術すら持っていらっしゃると言われてる!中央のレベルは高いということは知っていたけど、この人は別格・・・とても同じにんげnじゃなかったトレーナーだとは思えない!

 

(腹減った・・・今日は何作ろうかな・・・あ、あそこで走ってるのはスピカのトレーナーのとこの・・・サイレントヒル?サイエンススタディだっけ?いや違った、サイエンカタパだ・・・これもなんか違う気もするけどいいか。足悪そうに走るなぁ、後で〇〇トレーナーに教えとこ)

 

両者それぞれになんとも締まらない思考を抱えつつ、部室棟へと向かって歩いていくのだった。

 

 

 

 

 

「よっと、んじゃ少し座っててくれ。安物だが茶でも入れて話そう」

 

「ありがとうございます!し、失礼します」

 

部室へと到着したところで、椅子へと座ることを促しつつトレーナーは電気ケトルのスイッチを入れる。桐生院トレーナーはと言うと、まだ少し緊張しているのかパイプ椅子に姿勢を正して座り、物珍しそうに部室内をキョロキョロ見渡している。

 

「ほい、どうぞ」

 

「ありがとうございます・・・あ、美味しい」

 

「そいつは良かった。少しは緊張もほぐれたか?」

 

「・・・はい」

 

渡されたカップに入った緑茶を一口飲み、ほう、と息をつく桐生院トレーナー。トレーナーに緊張していた自身の内面を見透かされていたことに気づき少し顔を赤らめるものの、先ほどよりは安定した面持ちで頷く。

それを見て、もう大丈夫そうだ、と一つ頷いたトレーナーは机の上に資料を置き、ホワイトボードをガラガラと部室の隅から動かしてくる。

 

「んじゃ、始めようか。っつっても、基礎の基礎とかは家でも習ってきてるだろうし、俺も面倒は嫌いだ。桐生院トレーナーの質問に対し俺が答える方式で行こうと思う」

 

「はい、それではまず・・・」

 

切り替えが済めば互いに根が真面目なところは変わらないためか、桐生院トレーナーが質問しトレーナーが答えるという形で研修一日目は終了していくのであった。

 

 

 

 

「?あの、トレーナー。あそこに置いてあるのは・・・」

 

「ん?・・・!?あ、ああ、あれは鉄板だよ。うちのチームの練習に必要なものでね。は、hahahahaha」

 

「は、はぁ・・・」

 

(トレーナーとして優秀になるためにはあのような鉄板も必要なのですね・・・お好み焼きでも焼けそうなサイズですが、あれを使ったトレーニングとは一体・・・!?)

 

(やっべ、この人の教育担当するとは思ってなかったから片付けてねーや)

 

 

 

 

 

 

 

「あん?おいトレーナー、それ誰だ?」

 

翌日の放課後、珍しくもトレーニングの時間に遅刻していなかったゴールドシップがトレーナーの背後をついてくる桐生院トレーナーに気づき首を傾げた。

 

「ああ、昨日から俺の方で少しの間教育係をする事になった桐生院トレーナーだ。今日はトレーニングの様子を見てもらう事になってる」

 

「へぇー!トレーナーがそんな真面目なことできるようになってたなんてなぁ。あ、ども~、アタシはゴールドシップ。よろしくぅ!」

 

「は、はい。桐生院葵と言います」

 

気さくに肩を叩きながら挨拶してくるゴールドシップに少し戸惑いつつ挨拶する桐生院トレーナー。どんな状況でもグイグイくるゴールドシップの性格上こうなることは分かっていたためトレーナーは特に気にすることはなく、軽く手を叩き注目を集める。

 

「はいはい、顔合わせが済んだならさっさとトレーニングに移る!ゴルシ、いつものやつからな」

 

「おう!んじゃ、少しは真面目にやるとしますか!」

 

トレーナーの言葉に意気揚々と頷き、ゴールドシップが軽く屈伸を始める。とうとうトレーニングが始まるということで、桐生院トレーナーは慌ててメモ帳とペンを取り出し、目を輝かせる。

 

(つ、ついにトレーナーさんのチームの力を、そのトレーニングを見せていただける・・・!が、頑張って観察して参考にしないと!)

 

気合を入れてメモの用意をし、ぞいの構えで食い入るようにゴールドシップとトレーナーを見つめる桐生院トレーナー。すると、ゴールドシップがどこからかスッとタスキを取り出す。タスキには『今日の主役』と書かれていた。ゴールドシップはそんなタスキをトレーナーへと渡すと、駆け足のようにその場で足を上下に動かしながらニヒ、と笑う。

 

「うっし、んじゃアタシは先行くからなー」

 

「おーう」

 

「あの・・・そのタスキは一体何でしょうか?」

 

「ん?」

 

桐生院トレーナーが恐る恐るトレーナーへと尋ねる。その間にもゴールドシップは綺麗なフォームで走り去っていき、あっという間に見えなくなる。

桐生院トレーナーの言葉に首を傾げていたトレーナーは、ああと何か納得した様子で手をつき、手に持ったバインダーを桐生院トレーナーへ渡す。

 

「これはウチ独自のトレーニングっていうか、遊びっていうか。とりあえず、それにこれまでのトレーニングのデータとか書いてあるからそれ見てて」

 

「えっ、えぇ!?あ、あの、何してるんですか!?」

 

桐生院トレーナーがバインダーを受け取ったのを確認すると、不意に着ていたジャージの上を脱ぎ始めるトレーナー。予想外の脱衣に思わず顔を真っ赤にして目を逸らしつつも桐生院トレーナーは質問を重ねる。ジャージを脱ぎ、半袖のシャツ一枚になったトレーナーは足を伸ばしたり、伸びをしてみたりと体をほぐしながら苦笑する。

 

「ああいや、俺もあいつらと一緒に走るだけだよ。というか、これトレーニングという名の鬼ごっこだし」

 

「は、走る・・・ですか?それに鬼ごっこって」

 

ようやく落ち着いたようで目を見て話せるようになった桐生院トレーナーは、トレーナーと遠くへ行ってしまったゴールドシップへと視線を交互に向ける。

 

「まぁ言わずもがなとは思うけど、ウマ娘に人間が追いつける道理は無いわな。でも、あいつらと同じトレーニングを続けることは、実際にやる側に立って物事が見れるし何より怪我とかにすぐ気づける。隠しててもすぐにな」

 

「そ、そんなものですか・・・?」

 

「そんなもんさ。体の動き見てりゃだいたいわかる。一番近くで見れるわけだしな」

 

なんてことはないと言わんばかりにそう言うと、トレーナーはタスキを肩にかけ、靴紐を結び直す。未だ納得も理解も追いついていない桐生院トレーナーは、でもヒトがウマ娘を捕まえるのは無理があるんじゃ、と考えつつ首をひねる。

 

「・・・というのが対外的な理由だな」

 

「?では本当の理由は・・・」

 

「んなもん決まってる。楽しいトレーニングにしたほうが絶対やる気出るし」

 

そう言って、トレーナーはまだウマ娘達よりかは現実味のある速度で走っていくのだった。

それを呆気に取られながら見送る桐生院トレーナーは、トレーナーの言葉を反芻する。

 

「『楽しんでトレーニングする』・・・」

 

(それが、あの超強力チームを作った根幹、ということでしょうか・・・)

 

そうして彼女は、トレーナーの手渡したバインダーに収められている資料をめくり始めた。少しでも、トレーナーの領域へ近づくために。

ある程度離れた場所でそんな彼女を一度だけ振り返って見るトレーナーは、真剣そうな彼女の姿を眺めフッと自嘲気味に笑う。

 

(まぁ実態はゴルシにトレーニングを真面目にやらせても飽きるから苦肉の策ってだけなんだが)

 

 

 

 

 

 

 

「よっし、捕まえた!今日は新記録いったろ、流石に!あ~疲れた。もうしばらくはお前と追いかけっこはしたくねぇ・・・桐生院トレーナー、そっちは読み終わってます?」

 

「は、はい!渡していただいた資料はすべて読み終わりました!」

 

「んっだよー少しは加減しろっての!」

 

「ウマ娘相手に加減とか出来るかよアホか。草生えるわ」

 

「おーおー、んじゃあそのまま身体中芝だらけにしてやんよ」

 

トレーナーが走り去ってからおよそ10分後、二人が連れ立って桐生院トレーナーの元へと戻ってくる。二人とも服の所々をほつれさせ、髪の毛には木の葉や小枝が巻き込まれた悲惨な姿をしている。ゴールドシップは何故か背中に新鮮な鰤を背負っており、ビチビチと元気に、しかしその瞳だけは死んだような濁った色をしており、虚しくも必死に暴れる姿が背中越しに見える。対して、トレーナーはこれまた意味不明だが見事な大きさの大根を両手に一本ずつつかんでいる。どこから持ってきた。

そんな不思議な状態でも互いにメンチを切りあっている二人に若干戸惑いつつ、桐生院トレーナーは読み終えた資料をトレーナーに返す。

 

「ど、どこまで行ったんですか・・・」

 

「いや、こいつがトレーナー寮に逃げ込みやがったもんで少し手間取りまして」

 

「くっそ、今度からは理事長室に隠れるか・・・」

 

「それは俺が怒られるからやめろ。この間の食堂での一件、まだたづなさんに怒られてるんだから」

 

「あ~?このゴルシちゃんの進む道はだれにも止められないぜぃ!」

 

「だとしても女子トイレに隠れるのは卑怯すぎだからやめろし」

 

何とも言えないセリフを吐きつつ悔しがるゴールドシップや、ツッコミが「違う、そうじゃない」感にあふれているトレーナー。二人の問答に苦笑いしつつも、桐生院トレーナーは資料で得たデータをもとに目の前の黄金の不沈艦の現在の力量を探る。

 

(距離適性的には中・長距離。作戦は追込が得意とのことでしたが、さっきの全力の逃走。先行も行けるのでしょうか・・・)

 

「さてと、ゴルシは捕まえたし、腹も減った」

 

「おっ、てことはー?」

 

「?」

 

桐生院トレーナーが首をかしげる中、トレーナーとゴールドシップは顔を見合わせニヤリと笑い、そのまま説明を求める桐生院トレーナーの背を押しながら部室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・あれ、あの人って会長のトレーナーさんじゃん」

 

「あ、ほんとだ。ゴールドシップ先輩もいる。・・・あの女の人は誰だろう?」

 

「ウマ娘・・・じゃ、なさそうだけど。まぁいいや、次のトレーニングいこ!」

 

「そだね~」

 

「・・・ん、お疲れ様。皆頑張っているようだな」

 

「あ、会長、こんにちは~」

 

「そうだ、会長のトレーナーさんさっき見ましたけど、女の人と一緒にいたんですがあれって誰です?」

 

「・・・ほぅ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの・・・!本当にどうしたんですか!?」

 

部室へと戻ってきた三人。トレーニングは終了し、部室に戻ることは特に気にしてはいなかった桐生院トレーナー。しかしなぜかニヤニヤと笑みを浮かべるトレーナーとゴールドシップに言いようのない不安が感じられる。

そんな桐生院トレーナーは完全に無視してトレーナーが部室に置いていた荷物の中をガサゴソと漁り、4つほどアルミホイルにくるまれた物体を取り出す。

 

「おお、それか!トレーナーの作る飯はうめーからなぁ~!」

 

「正直オグリ以外にわざわざ作る必要はねぇと思うんだがなぁ」

 

「ト、トレーナーさん。それは一体・・・?」

 

小躍りしながらアルミホイルを受け取るゴールドシップを横目に、そっとトレーナーへと近づき質問する桐生院トレーナー。知らない人から見れば当然のその疑問に、「あ~、そっかそうだよなぁ」と呟きトレーナーが苦笑する。

 

「実は、ウチのチームにとびきりの大食娘がいましてね。そいつが寮の晩飯までの間が持たないレベルだったので俺の方で個人的に軽食を作ってたら、いつの間にかこいつらに食わせるっていうのがこのチームでの日課になっちゃいまして」

 

「そ、そうなんですか・・・なるほど、一流のトレーナーは栄養面でも担当の管理を怠らないということですね・・・さすがです!」

 

「いや別にそういうわけじゃないんだけど・・・まぁいいか」

 

そう言ってトレーナーはアルミホイルの包みを桐生院トレーナーにも渡す。突然のことに慌てつつもうまく受け取りマジマジと見つめる。

ほんのりと温かいそれは三角形をしており、触ってみれば何かの粒が集まってできたものであると分かる。

 

「おにぎり・・・ですか?」

 

「そ。まぁ、今回の奴は少しだけ工夫してるがな」

 

「?」

 

「おほ~!うまそーじゃねぇか!いっただっきまーす!」

 

トレーナーのいたずらっ子のような笑みに首をかしげている間に、ゴールドシップは包みを開けてトレーナーお手製のおにぎりを頬張っていた。

残った包みから一つを取り、自身も食べだすトレーナー。この場にいる自分以外が遠慮なく食べ始めたため覚悟を決めた桐生院トレーナーも、それに続くように包みをはがす。

 

(!この匂い、醤油・・・でしょうか)

 

包みのアルミホイルを取ると、ほんのりと香ってくる醤油の匂いとホワッとした湯気。出てきたのは、スタンダードな三角おにぎりでありながらも、その姿はただのおにぎりにあらず。

薄く茶色がかった色をした米粒と、そこに巻き込まれるようにして埋め込まれた具材。見える範囲では、細かく刻まれたにんじんとささがきされたごぼう。おにぎりの頂点に位置する場所には自らがこのおにぎりのメインであると主張するかのように鶏肉が鎮座している。

 

「お~、炊き込みご飯で作ったおにぎりかこれ!」

 

「ああ、この間うちのじいさんが良いにんじんを送ってくれたんだが、量も多かったし一人じゃ食いきれないから消費しやすいよう米に炊き込んだ」

 

「お、これ鶏肉もあると思ったけど中にツナもはいってんじゃーん!」

 

ゴールドシップが嬉しそうに言いつつおにぎりをパクつく。その横ではトレーナーが自分も食べながら解説をしているが、一心不乱におにぎりを食らっているゴールドシップにその解説が届いているかは怪しい。一方の桐生院トレーナーもおにぎりを口に含む。

はも、と口に入れると米がはらりとほどけ、醤油と出汁がしみ込んだそれは口の中をやさしい旨味で包んでいく。時折現れるにんじんは米と共に炊かれたためか米以上に柔らかく、甘みに満ちている。ごぼうは米ともにんじんとも違う食感の変化をもたらし、一噛みごとにシャキリと景気の良い噛み心地を与えてくれる。

 

「美味しいです・・・!こんなに美味しいなんて、すごいですね!」

 

「褒められるってのはうれしいが、別に特別なことをしてるわけじゃないんだよなぁ。まぁいいか」

 

そう言って自分の分を口に含むトレーナーだが、普段あまり手放しで褒められることが無いからだろうか。心なしか耳が赤くなっており、それに気づいているゴールドシップはニヤニヤと笑っている。

桐生院トレーナーは気づいた様子はなく、そのままおにぎりへと再び目を向ける。次にロックオンしたのはおにぎりの頂上へとのっかった鶏肉。薄い灰色に、出汁と醤油の色が感染ったことで薄茶色を纏っているそれは、他の具材とは違いゴロリと一口大、圧倒的な存在感を放っている。

 

それを見て思わず口の中へ広がった唾をのんで、パクッと頬張る。米が踊り、噛み切った肉と共に口内を駆け巡る。肉特有の油の甘さはあまりせず、代わりにこれでもかと主張するのはやはり他と同じく醤油と出汁。だがしつこいと感じるほどではなく、むしろその優しい旨味が鶏肉と合わさって疲れた体に染み入るであろう優しさを感じる。

 

食べ進めていくと、当然のことながら鶏肉は姿を消しほんの少しだけ気分が沈む。しかし、鶏肉があった場所を食べ進めると今度は埋もれるように隠されていたツナが顔を出す。再びパクリと口に入れると、鶏肉とは違うホロホロと崩れるツナは、あえて濃いめの牡蠣醤油で味付けされており先ほどの鶏肉を食べて少しだけ満腹中枢へと偏っていた気持ちを一気に空腹中枢へとシフトさせる。優しい味付けの米に、それ以上の濃い味付けのツナたちが合わさることで一気に食欲をそそるおかずを得て口内を蹂躙する。

 

「~~~!っはぁ・・・」

 

思わず手を頬にあてて唸る。一口、また一口と頬張ることをやめられない。ウマ娘ほどの運動をしたわけではなくとも、部室棟やトレーニング場を歩き回り、多少なりとも疲労した体はここに来ての望外の食事に歓喜しているようだった。

 

「・・・」

 

そんな桐生院トレーナーの様子を横目で眺めていたトレーナーは、ようやく緊張感の解れてきた彼女を見て仄かに笑うのだった。そしてそれを二つ目のおにぎりを頬張りつつ見ていたゴールドシップはトレーナーと桐生院トレーナーを見比べて、ふーん、なるほどねぇと少しだけ眉を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

「さて、今日は終了ってことで、また明日」

 

おにぎりを食べ終え、トレーニング自体も終わっていたためその場で解散となった。既にゴールドシップは自分の分だけを食べ切ると「また明日も頼むぜアタシのトレーナー!」と言って窓から飛び降りていった。桐生院トレーナーはおにぎりを食べることに夢中で気づかなかったが。

 

「あ、ありがとうございました!今日は、大変勉強になりました!」

 

「・・・ほんとかぁ?」

 

深くお辞儀をする桐生院トレーナーに苦笑しつつも、参考になれば、と自分なりにまとめたトレーニングの資料を渡す。またしても頭を下げようとする桐生院トレーナーを制し、そのまままた明日、と別れるのだった。

 

「・・・さて、明日もあるし帰るとするかねぇ」

 

そう言うと、トレーナーは伸びを一つして帰るのだった。




トレーナー:流石にそろそろゴルシの逃げパターンは分かるようになってきた。ゴルシの領域に到達してしまったということに気づき、喜ぶべきか悩んでいる。最近のマイブームで変T(変なTシャツ)を愛用している。桐生院純粋過ぎない?褒められすぎて居心地悪くなるわ。

ゴールドシップ:最近のマイブームはトレーナーとの鬼ごっこ(30戦25勝5敗)実は追いかけられるより追う方が性に合ってる。あ、おふくろ?桐生院って知ってる?そうそう、そこについて調べといてー

ルナちゃん:トレーナーさんちょっとお話しようよ

桐生院トレーナー:心の中がうるさい系桐生院。トレーナーについての情報をいい方向に偏って認知してるのでトレーナーに対して憧れている。理事長には何故か「あの人のようにはならないでくれよ」と釘を刺された。なぜに?

前回のホットケーキDEケーキ
材料
ホットケーキ:作れ!長くなるから割愛!
ホイップクリーム・生クリーム:塗ったくれ!
フルーツ:缶詰でも可!糖分追加ヨシ!
はちみつ:はちみつで作られる偽りのケーキ!
ホットケーキを重ねて間にフルーツを挟む!隙間はクリームで埋めて、表面を薄くはちみつでコーティングしてから生クリームで塗装!以上!子どもの誕生日とかに一緒に作ると盛り上がるかも!

そろそろ自己最雑なメニューを出すのもいいかもしれない。あまりに雑すぎてこれ料理じゃない!ってなるけど

次回 タマ死す デュエルスタンバイ!
続け!(希望)
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