トレーナー式雑ご飯とウマ娘   作:コジマ汚染患者

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オグリーン(気さくな挨拶)
結構久しぶりのオグリとタマちゃんメイン回。こんな夜中にこれをあげることを楽しみにお仕事してた(小並感)
そして今回は雑飯ではないと言うね。ただの夜食(´・ω・)
本日のお品書き:ラーメンライス&TKG


トレーナーとオグリキャップと真夜中の誘惑

「オグリー?どこやー?」

 

「あ、タマモクロス。おやすみー」

 

「おやすみやー。・・・ったく、あのアホはどこ行ったんや」

 

夜20時。夕食の時間も終わり、用事のないものは軒並み自室へと戻る頃、タマモクロスは部屋へと戻っていく知り合いへと挨拶をしつつ廊下を歩いていた。同室であり、友人でありそしてライバルでもあるウマ娘のオグリキャップを探してのことだった。いつもであれば夕食後すぐに部屋へと戻り、明日提出の課題をタマモクロスに急かされながら行うのだが。部屋にはオグリキャップの姿は見えず、珍しくキッチリと片づけられた課題が机の上に積んであったのだ。

 

「別に課題ちゃんとやるようになったんはええけど・・・アカン、ここもちゃうか。一体どこに消えたんやオグリ」

 

自動販売機の立ち並ぶ休憩場にも顔を出すが、そこにもオグリキャップの姿はなかった。探せる場所はあらかた探したタマモクロスは、打つ手なしと首を捻る。

 

「しゃーないか、眠たくなったら戻るやr・・・あれオグリか?」

 

部屋へと戻ろうとしたタマモクロスがふと窓から寮の出入り口を見ると、そこからコソコソと出てくる見慣れた芦毛の頭を発見する。

もしかして、とよく見てみればやはりそれはタマモクロスが探していた同室のオグリキャップ。普段からのんびりとした表情をしている彼女だが、窓から見えるその顔には焦りと若干の罪悪感が見て取れる。・・・ただ、耳は上機嫌なことを表すかの如くピコピコと高速で揺れていた。

 

「まーた、何をやっとるんやあのアホ・・・今から出とったら寮の門限に間に合わへんやろが」

 

流石に見かけてしまった以上、放置するのは無理。かと言って寮長に報告するかと問われれば、彼女が何をしているのか分からない以上下手に大事にするのも気がひける。

タッタタッタと何かを隠すように両手いっぱいに抱えて走り去るオグリを見て後でしこたま怒ってやろか、とブツブツと文句を言いながらタマモクロスは駆け出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ふぅ」

 

一方、無事寮を抜け出したオグリキャップは、両手に抱えた段ボール箱を一度地面に置き、グイと背伸びをする。寮からずっと箱を抱えた状態で走ったため少々肩こりを感じつつ箱をもう一度抱える。中に入っているもののことを考えると、くぅとお腹から音が鳴り、空腹感が襲いくる。

思わず溢れる唾を飲み込み、再び走り出した彼女の頭の中には、既にこの後のお楽しみのことしか無いのだった。

後ろをつけてくる小さな人影に気づくこともできないほどに。

 

 

 

 

 

「トレーナー。私だ、例のものを持ってきたぞ」

 

再び走り出したオグリキャップがたどり着いたのは、ウマ娘寮とトレセン学園の校舎の間にある遊歩道。朝にはウマ娘達の通学路、昼間や夕方にはトレーニングの一環でランニングをする者達のコースとなる道だが、現在は夜。誰も通らぬ静かなその道の途中には歩く者が休憩できるよう、自販機と屋根、あとは椅子だけの簡易な休憩場がある。

街灯の光だけが照らす筈のそこには別の灯りが灯っており、人影が一つ。

オグリキャップが溢れる嬉しさを抑えきれず弾んだ声をかけると、人影が振り向き気さくに手を挙げる。

 

「おう、来たな。お疲れさん、まぁ座れ」

 

そう言ってオグリキャップから箱を受け取ったのは、いつもとは違うラフな格好のトレーナーだった。休憩場の椅子に座ってスポーツドリンクの入ったペットボトルを傾けており、彼の目の前には小さなカセットコンロとやかんが置かれている。

 

「にしても、こんな時間帯でよかったのか?言ってくれれば夕方のトレーニングの時にやることもできたってのに・・・」

 

「それじゃダメなんだ、トレーナー」

 

オグリキャップが箱を置き、トレーナーと向かい合うように椅子に座る。ソワソワと落ち着かない様子で持ってきた箱とトレーナーの目の前にあるやかんへと視線が泳いでいる。

 

「私は、この時間に食べるのが好きなんだ」

 

「まぁ、そりゃ俺だってわからなくはねぇけどなぁ・・・太るぞ?」

 

「・・・減量、頑張るから」

 

呆れた様子でボソリと脅すようなことを言ったトレーナーに、冷や汗を流しつつ目を逸らすオグリ。トレーナーは苦笑しながらそれをジト目でにらみつけ、少し縮こまっているオグリをよそに箱の中身を漁る。

 

「まぁいい、今回はレースで一着獲れたし、減量も頑張ってた」

 

「!じゃあ!」

 

トレーナーの言葉に、オグリの調子が戻り耳がピンと立つ。喜色満面のその表情にトレーナーもニヤリと笑って返す。

 

「ああ、今だけは完全にお前の好きなように食え!しばらくは減量とはおさらばだ!」

 

「〜〜!ああ、ああ!」

 

感極まって「ああ」しか言えてないオグリキャップ。トレーナーが開けた箱の内に入っていたのは、かつてオグリが夜食として食べようとした大量のカップ麺達。没収されてしまっていた彼らは今日、ついに謹慎を明けてオグリキャップの手元へと戻ってきたのだった。

 

「どれから行く?しっかり水は用意してやったから、いくらでも食えるぞ」

 

「・・・これだ!まずはこれからいきたい!」

 

箱の中へと頭を突っ込まんばかりに身を乗り出して考えていたオグリだが、ようやく決心し最初に食べる標的を定めた。手に取ったのはカップ麺の王道、カップヌードル(チキンメガ盛)。

もどかしく思いつつ蓋を半分ほど開けてやかんを持ったトレーナーへと渡す。注がれるお湯すらひもじい思いで見つめるオグリを他所に、トレーナーは湯をキッチリ容器の中の線まで入れて蓋をし、割り箸を重石としてオグリに手渡す。

 

「・・・トレーナー、まだだろうか」

 

「早いって。まだ3分経ってねぇだろ。落ち着けって別にカップ麺は逃げたりはしねぇから」

 

「そ、そうだな・・・トレーナー、もういいだろうか」

 

「だから早いっつの!待て!3分くらい待て!」

 

腹部からミシミシメキゴリと普通なら聞こえない音を発しているオグリキャップに、少しは待てとツッコむトレーナー。そんな2人の様子を、物陰に隠れて見ている人影が一つ。

 

「・・・なるほどなぁ、そーいうことやったか。にしてもほんまトレーナーはんは諦めへんなぁ」

 

そう言って呆れた表情を見せるのは、オグリキャップを追ってきたタマモクロスだった。なんて事はない、いつもの餌付けと変わりない状況だった。オグリが近頃夜になるとソワソワしていた理由も分かりタマモクロスとしては「しょーもな!」と感じざるを得ない為、様子を見る目はジト目である。

 

「ま、別にウチにメーワクかけとるわけや無いし、ここは情けをかけて寮長には言わんといてやるか」

 

そう呟き、その場を去ろうとするタマモクロス。漂ってくるカップ麺の匂いに自身の食欲を刺激されてはたまらない。そうしてそっと足を踏み出した時、オグリが首を傾げトレーナーの方を見る。

 

「・・・トレーナー、それはなんだ?」

 

「ん?ああ、これ?俺の自前のカップ麺。こいつの豚骨スープ、スッゲーいい匂いするんだぜ。それこそ食べる気がないやつでも匂いで腹減るくらい」

 

そう言ってトレーナーはオグリキャップのヌードルより先に用意していたこともあり自身のカップ麺の蓋を開ける。

瞬間、辺りにはふわりと豚骨スープの強烈な香りが漂い始める。さらに運の悪いことに、その瞬間一瞬ではあるが風が吹き、タマモクロスの元へとその夜中に嗅ぐには暴力的すぎる香りを運ぶ。

 

「・・・!?はぅっ!?」

 

「?なんだ?」

 

「どうしたんだトレーナー?」

 

「いや、なんか声が・・・」

 

思わずお腹を押さえて蹲るタマモクロス。声をギリギリで押さえきれなかった為トレーナーに若干聞かれるが、慌てて隠れたため姿までは見つからなかった。

 

「気のせいじゃないのか?ここにわざわざ私たち以外が来るような事はないだろう」

 

「・・・だな。気のせいか、さっきの風で勘違いしただけか」

 

「そうだろうさ。・・・ところでトレーナー、それいい匂いだな」

 

「・・・やらんぞ」

 

「こっちも一口食べてくれていい。だから私にも一口くれ」

 

「お前の一口は信用ならねぇんだよ!?」

 

トレーナーとオグリキャップがやいのやいのと騒いでいる中、咄嗟に隠れたタマモクロスは急に空腹を主張し出した自身の腹を押さえて冷や汗を流す。

 

(っぶなぁ!?アカン、なんちゅう匂いさすねん!こんな時間にメシ食うとったらウチ太ってまうって!)

 

こんなところにいられるか、さっさと部屋に戻ると決意し再び歩き出そうとしたタマモクロス。だが、無常にもトレーナー達は彼女がきていることを知らない。

 

「よっしゃ、麺全部食ったな?」

 

「ああ。・・・トレーナー!?それはまさか!?」

 

「おーぅ、当然!白米だ!」

 

トレーナーが取り出したのは、ラップに包まれた炊き立てのご飯だった。包んでいるラップを外せばホカホカと湯気を立ち上らせる白い主食に、オグリのテンションが上がっていく。

 

「この状況・・・トレーナー!やるんだな!?今!ここで!」

 

「ああ!勝負は今、ここでキメる!」

 

高まるテンションのままに意味不明なことを言いながら2人は麺のみを食べ切ったカップ麺の容器へとご飯を投下する。ポチャン、と残り汁の中へと沈んでいったご飯を見届け、箸でグルグルとかき混ぜる。

その動作によって再び豚骨とヌードルのスープから漂う食欲中枢を刺激する香りがタマモクロスの元に殺到する。

 

「〜〜!?」

 

(や、やめろおおおお!?アカン!アカンて!こんな時間にラーメンライスは犯罪やろ!?)

 

ウマ娘としては少食気味のタマモクロスだが、カップ麺の香りと聴こえてくるトレーナー達の言葉から連想するホカホカご飯とスープの味。さらに夜中という時間の魔力によって最大限に食欲を苛め抜かれたタマモクロスには、もう正常な思考能力は残されていなかった。

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・もうすぐ一杯目完食だな」

 

「こっちはもう食べ終わったぞトレーナー。おかわり」

 

「まぁ落ち着けって。せっかくだし、門限ギリギリまでゆっくり食おうぜ」

 

カップラーメンを啜り、麺を食べ終えた後に残ったスープに米を投入して食べるラーメンライス。あまり品の良い食べ方とは言えないそれは、あくまで人前で食べるとした場合にのみ問題なのだ。1人、あるいはこうして気心知れた相手と一緒にズルズルと食べるそれは今この瞬間だけ、あらゆる料理を超えた幸福感をもたらす。

 

箸ではスープでバラけた米は食べづらい為プラスチックスプーンに取り替えたトレーナーは、豚骨の濃厚なスープと一緒に炊き立てで持ってきた米をかきこんでいく。米そのものと、スープの熱が合わさり熱々となったそれを必死に口を開け閉めすることで冷まし、ゆっくりと咀嚼していく。しっとりとスープでお粥のようにとろけた米へと、お粥ではあり得ない、否普段であれば決して作らないであろう化学調味料によって引き出される強烈な「うまい」という刺激が合わさり最強となる。

朝食でも、昼食でもなく。ましてや夕食でもない、禁断の時間帯真夜中。健康面で言えば、この時間に食べるという行為には決してメリットは無いのだろう。

 

しかし今の2人にはそんな事は関係なかった。食べてはいけない時間に食べる。この背徳感とインスタント特有の濃い味付けのラーメンが生み出す相乗効果は容易に2人のブレーキをぶっ壊した。

化学調味料バンザイである。

 

「・・・!?タ、タタタ!?

 

「?どうしたんだトレーナー?」

 

そんな背徳の晩餐を楽しんでいたトレーナーだったが、ふとオグリキャップの背後を見て壊れたラジオのような声を上げつつピシリと固まる。

その様子に首を傾げつつ、オグリキャップも振り向いた。

 

「・・・タ、タマ・・・!?」

 

「・・・」

 

そこには、いつのまに立っていたのかタマモクロスが音もなく佇んでいた。顔を俯かせている為表情は見えないが、何にせよオグリキャップの脳裏には「マズイ」の一言が駆けめぐる。

何を隠そうオグリキャップ、寮を抜け出すことを寮長にもこの同室の友人にも言っていなかったのである。トレーナーは「ちゃんと事情話して他の奴にはバレないようにしろよ?」とオグリに伝えていたのだが、彼女はそれをすっかり忘れ、カップ麺を食べることが楽しみすぎて伝えることなくやってきたのだった。

 

「あ、あのなタマ・・・!これは、その、実はたまたまトレーナーと散歩してたらカップ麺が落ちてて・・・!」

 

「いやそれ苦しすぎるだろ言い訳ェ!?」

 

テンパって妙なことを口走るオグリキャップ。トレーナーが流石にそれは無理だろと戦慄し、自身もフォローすべきかと口を開いた瞬間。

 

「・・・れ」

 

「え?な、なに?」

 

「・・・れや」

 

「・・・き、聞こえなかった。も、もう一度言ってくださいませんk」

 

「うちにもそれよこせいうとんじゃゴラァ!!」

 

「「うおぉぉ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うまい・・・うまいんやぁ・・・」

 

「な、泣きながら食ってる・・・」

 

「タマも食べたかったんだな。言ってくれれば寮でも私のカップ麺を一緒に食べれたのに」

 

「うるさいわドアホ!こんな夜中に毎回食っとったらほんまにデブなるわ!」

 

結局ラーメンの誘惑には逆らえず、我慢ができなかったタマモクロス。二人へとものすごい剣幕でどなった後、トレーナーの持ってきていた予備のカップ麺を奪いズルズルと食べまくっていた。それを見ているトレーナーは何とも言えない表情で、オグリはうんうんと何故か頷いている。

 

「じゃあ食わなきゃいいのに・・・」

 

「ダメなんや・・・手が、箸が止まらへんのや・・・アカン、美味い」

 

「トレーナー、米が欲しい。これに今入れれば最高の出来になると思うんだ」

 

「そのタッパーの中だから好きに食え」

 

情緒がおかしくなっているタマモクロスを相手するトレーナーを他所に、既にオグリキャップはカレー味のカップ麺を完食し、ラーメンライス(カレー風)を作り貪るように食していた。豚骨スープを超えるとろみがホカホカご飯と合わさり完全にカレーと化している。

スプーンで掬えば、カレースープと絡み合った米と少しだけ残った小さなにんじんなどのくずが合わさりよりカレーらしさを見せる。

 

「トレーナー!ウチにもあれくれんか!?」

 

「お前ほんとに大丈夫なのか!?言っとくが俺減量の責任持てないからな?」

 

「今は、今だけはウチが正義や!」

 

「いやそれ聞いて安心できねぇ!?」

 

「む、タマもこれが欲しいのか。よし、まだ予備が10個程あるし、一緒に食べよう」

 

「オグリ、アンタが他人に飯寄越すなんて・・・!成長したんやなぁ!」

 

「・・・あーもう俺しーらない」

 

なぜ褒められたのか理解できてないオグリキャップと、感動の涙を流しながらオグリキャップの肩を叩くタマモクロス。

プチカオスな光景を、トレーナーは虚無った目で見つつおかわりの麺を啜るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、そろそろカップ麺も十分食っただろ・・・」

 

「私はまだ食べれるが・・・」

 

「く、くるしい・・・お腹はち切れそうや・・・」

 

夜も遅くなり、いい加減寮へと戻らねば出入り口を閉められてしまう時間となった。そろそろ帰るかぁ、と呟きながら片付けを始めるトレーナー。タマモクロスは膨れた腹を抑え苦しそうにうめき、オグリキャップは物足りない様子で20杯目のカップ麺を開けている。

 

「いや、もう帰れって。門限どころか寮に帰れなくなるだろうが・・・」

 

「?トレーナーの所なら寝れるだろう?」

 

「貴様鬼か!?」

 

「うぅ〜、ちょっと静かにしといてや〜、ウチまだ動けへん・・・」

 

ナチュラルにトレーナー寮へと行くつもりのオグリにトレーナーがツッコむ中、ふと視線をオグリキャップへと向けたタマモクロスは、彼女の手に持っているものを見てギョッとする。

 

「お、おいオグリ・・・?その手に持ってるのはなんや・・・?」

 

「ん?・・・しまった!?いつのまに!?」

 

タマモクロスの問いにトレーナーも片付けをする手を止めオグリキャップの方を向き、その姿に驚愕するとともに「あちゃー」と頭を抱える。

 

「これか?フフフ、トレーナーの事だから必ず卵を持ってきてると思ったんだ。米もあったから卵かけご飯にしたんだ」

 

そう言って嬉しそうに耳をユラユラさせるオグリキャップ。その手にあったのは自前の巨大丼。かつてテレビ番組で大食いタレントと勝負した際に店から頂いたそれは、もはや丼というよりはすり鉢、いやバケツと言っても過言では無い威容である。

そこへ嬉々としてトレーナーの用意してきたラップに包まれた米を投下していくオグリキャップ。丼からホカホカと立ち上る米の香りと湯気にヨシと頷くと、オグリキャップは勝手知ったると言わんばかりにトレーナーの持ち歩いている調味料ボックスやカバンの中から醤油とうま味調味料を取り出す。そして、パックに入れたままだった新鮮な卵を全て取り出し、丼のフチで卵を割っていく。

 

コンコン、カシャリ。

 

小気味良く割っては丼へと落とし、丼へと落としを繰り返す。そうして米の上を黄色い楕円と透明な膜のような白身が覆い尽くす様子を見て、満足げにフンスフンスと鼻を鳴らす。

 

「あーあ。もうしょうがねぇ、それ食ったらさっさと帰れよ?」

 

「ああ、今日はありがとうトレーナー。これでグッスリ眠れそうだ」

 

「ウチはもう胃もたれで寝れそうに無いけどな」

 

呆れら表情を浮かべながらも、もういいかと諦めたトレーナーは嬉しそうに醤油をかけ始めるオグリキャップを眺めているのだった。タマモクロスはといえば、もう既に大量の白飯をみて目が死んでいる。

 

そんな傍観者2人をよそに、着々と卵かけご飯を用意していくオグリキャップ。卵を投入し終え、次は味付けへと取り掛かる。醤油さしを慎重に手に持つと、ツツーと黒い円を描くように丼の中へと垂らしていく。黄色と透明な膜の上を黒い線が進む様に心躍らせながらも、かけすぎず、それでいて大胆にグルグルと何度も回しかけしていく。

 

満足するまで醤油をかけると、今度はうま味調味料の出番である。塩や砂糖にも似た白い粒状の調味料が瓶の中でサラサラと音を立てる。素早く上下に、胡椒を振りかけるように何度も動かす事で白い雪のような調味料が降り注ぐ。

 

チャッ、チャッ、チャッ、チャッ。

 

「・・・よし」

 

真剣な表情で調味料をかけ終えたオグリキャップは、今度はトレーナーの鞄へと手を突っ込みそっと筒状の容器を取り出す。蓋をカポリと開け、手を突っ込んで黒っぽく薄い板状の物体を取り出す。

 

「・・・お前なんで俺の鞄の中身把握してんの?」

 

「?匂いで分かるじゃないか」

 

「おのれは犬か!?」

 

トレーナーのツッコミを右から左と受け流しつつ、取り出した物体ーーー味海苔をパキリパキリと折り畳んでは一口大にちぎり、ハラハラと卵かけご飯へと落としていく。ハラハラと落ち葉のように宙を舞う味海苔が、卵かけご飯の上を黒く彩る。

 

満を辞して全ての作業を終えたオグリキャップは、もう待ち切れないとばかりに箸を手に持つと、両手を合わせ瞑目する。

 

「・・・いただきます」

 

言うが早いか、箸を規格外の丼へとツッコむと豪快にワッシャワッシャと混ぜ込んでいく。白身はその姿を完全に黄身と同化させ、真っ白な米を黄色に染めていく。時折見えるのはちぎり、混ぜ込まれた事でシナシナになりその食感を変えた味海苔。そうして満足いくまで混ぜ終えると、とうとう実食である。

ラーメンライスの際に使ったスプーンを手に持ち、黄色一色となった卵かけご飯を一掬い、大きく口を開けて頬張る。

 

「〜〜!やはり、この時間の卵かけご飯も良い・・・!」

 

「・・・なんか俺も食いたくなってきたな」

 

「正気かいなトレーナーはん!?」

 

あまりに美味しそうに食する為、とんでもないことを口走ったトレーナーにタマモクロスが若干引く。そんなことは視野にも入れず、オグリキャップは一心不乱にスプーンを動かす。

卵によってとろみとまろやかさを得た米に、醤油の塩気がいいアクセントとなっている。時折現れる味海苔と共に口に入れると、海苔の持つ少し濃い味が合わさり変化と美味を届けてくれる。そして、それらの味を整え昇華するかの様に絶妙に「うまい」と思わせてくれるうま味調味料。全てが合わさった卵かけご飯に、オグリキャップは今回の夜食の中で1、2を争う満足感を感じる。

 

「・・・!これを忘れていた・・・!」

 

「嫌だからなんで分かる・・・匂いかぁ」

 

「安心しぃ、トレーナーはん。ウチもウマ娘やからヒトよりは鼻利く自信あるけど、オグリは特別性や」

 

ふと重大なことを思い出し、再び鞄を漁り出すオグリキャップ。取り出したのは、ご飯のお供として人気な一品、明太子。もうツッコむ気にもなれずぼーっと眺めている2人をよそに、まだ新品のそれをもどかしく思いつつ開封する。

一瞬戸惑ったオグリだったが、結局はヨシ!()と何がヨシなのかは分からないがまるまる一つの明太子を丼にペイッと放り込む。

 

そのままスプーンに持ち帰ると、明太子を切るようにスプーンをつき立てる。ツップと切れ目が入り、そのまま一口分へと切り分け押し進めながら一気に卵かけご飯と共に口へと運ぶ。

先程までの味の中へ、明太子のプチプチとした食感と少しの辛味が加わり、一気に食欲のギアがベタ踏みされる。

 

「はふ、ほふ、ふむ、もぐ、ナポ、メリ、モニュ、ガモ」

 

「めっちゃスピードが上がるやん・・・明太子一つでエンジンに火がつきよった」

 

「この時間にこれか・・・昼間とかもっとやべーんだろうなぁ・・・」

 

集中しすぎて無言になるオグリキャップ。そのスピードにドン引きするタマモクロスと、いつもの食欲を思い出し遠くを見て現実逃避をするトレーナー。その後も、寮へと戻る時間ギリギリまでとなる5分ほどをかけて、本人曰くゆっくりと食べ進めるオグリキャップの表情には、相変わらず幸せそうな笑顔が真夜中の月明かりに照らされているのだった。




トレーナー:真夜中の禁断の食べ合わせにオグリを誘った。ヒトと比べてわりかし食べる方(本人談)なので、本気出すと大体空腹時オグリの80%くらいは食べる。夜食はあまり食べないので今回のラーメンライスも6杯でやめた。オグリが出た大食い勝負の番組から何故か次回出演のオファーが来ている。えぇ・・・

オグリキャップ:この夜食タイムを楽しみに昼間を過ごしていた為、勉強の方は散々だった。なお課題の方もちゃんとやったように見せかけて後半の回答全部食べ物の名前の列挙となっている。番組でもらった丼がお気に入り。

タマモクロス:翌日『体重計に乗ったら発狂する病』に罹患し無事保健室送りとなった。タマの担当は後日トレーナーにきっちり抗議(物理)しに行った。

前回の炊き込みおにぎり
材料
米:たくさん!
出汁醤油:出汁と醤油、別々で用意しても可!
ごぼう:ひたすらささがけ!
にんじん:一口大!
ツナ缶:お好みで!
鶏肉:作者は胸肉おすすめ!ササミも吉!
炊く前の米に材料をぶっ込んで、調味料ぶち込んで、炊飯器で炊く!以上!作者はツナ+鶏肉が好み!

タマちゃんは誰かの世話してるかツッコミしてるか本人が不憫な時がすごく輝いて見える。なおシンデレラグレイ()

美味しそうなレシピは見つけても、作って試食する時間がないもどかしさ。皆さんは卵かけご飯の味付けはなんですかねぇ?(素朴な疑問)作者は断然出し醤油と○の素のうま味調味料派です。

次回 トレーナーご乱心(いつもか)
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