ACE WITCHES -Count of the Cranes-   作:Theine137

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プロローグ 『Unknown』

09:36 11.Jul.2020

New Arrows Air Base

 あの戦争が終わって半年ほどがたつ。エルジアの王女さまが終戦に向け動き出したことで、急進派は大義名分を失い、表向きはオーシアとの停戦協定が結ばれた。だが、エルジアでは独立を夢見る奴らがテロを起こし、急進派の中でも過激な奴らやマーチ好きの愛国主義者どもが「フリーエルジア」とかいうヤツに合流して徹底抗戦を叫んでいるらしい。一旦区切りはついたものの、まだまだあいつらとストライダー隊の二番機として飛ぶことになっている。

 通信衛星の破壊からくる通信障害はまだ解決の目処が立っておらず、どっかの飛行機が防空圏をかすめるたびにすっ飛んでいちいち赤外線カメラで確認するっていう神経をすり減らすめんどくせぇ事を毎回毎回することになっているし、情勢は悪化の一途をたどっていくもんだから、ほぼ毎日ブリーフィングとスクランブルする羽目になる。

 今日もまた、聞きなれてしまったブザー音が鳴り響きブリーフィングに行く羽目になっちまった。

 

09:36 11.Jul.2020

Runway at New Arrows Air Base

 

《今日もスクランブルかストライダー隊! 皆勤賞だな》

「おかげさまでな。勲章でもくれんのか?」

《考えておくさ、ストライダー2。よし、ランウェイ03に上がれ。風向255度、風速7ktだ》

 

 俺たちは、管制官の指示のもと滑走路へと誘導される。その間、今週何度目か分からないスクランブルという鬱屈した気分をどうにか上げるため俺たちは会話に勤しんだ。

 

「今日はちゃんと機体をあわせるんだな。なぁ、トリガー」

《最近はF-22だとかF-35だとかそんなんばっかだったな》

「戦争が終わっちまってから一番機の実感ってのがついたのか? 毎回、一機で突っ込んじまう癖も直してくれたらいいんだがな」

《それはお前が言えたことじゃないだろう》

「おいおい。そんなことはねぇだろう」

《夫婦漫才はここまでだ。ストライダー2、離陸を許可する。イチャイチャし過ぎて出発管制に切り替えんのを忘れんなよ》

「了解。さっさと上がってみせますよっと」

 管制官の小粋なジョークとやらも、裏でストライダー4「フーシェン」がごちゃごちゃいっているのも聞こえないふりをし、ただ軽口をたたいて計器をチェックする。ここで下手にくちをだすと、ストライダー3「イェーガー」が乗ってきて、さらに面倒なことになるってことはもう何度も味わっている。

 異常はないことを確認すると、いつものようにスラストレバーを押し込み、フラップを展開、ブレーキを解除してスロットルを上げる。エンジンは金切り声をあげて速度を上げてゆくのを見て、100ノットに達したのを確認すると、ゆっくりと操縦桿を半分まで引く。そうしたら、まず前輪が浮き上がり、その後ふわりと機体が浮かんだ。

《ストライダー2の高度制限を解除。ストライダー3、4が上がるまで高度15000ftで待機しといてくれ》

 指令への返事のかわりに、アフターバーバーを吹かす。天気は俺の気持ちを表したかのように曇天。アイシングしたら面倒だなと思いつつ、うっすらと映る太陽がだんだんと隠れていくのを見ていた。

 

10:15 11.Jul.2020

4°12’6“N 71°47‘2” In Spring Sea

 

《そろそろ、奴さんのあたりだ。未だに通信障害は続いているため、いつもの通りに赤外線カメラで識別を行う》

「まだ戻らないのか」

《仕方ない。本土すら回復していない場所もあるんだ》

 俺が愚痴をこぼすのを、イェーガーがたしなめる。

《ストライダー3の言う通りだ。ユリシーズのかけらが残る中、デブリをもぶちまけた結果、もう衛星は打ち上げられないからな》

「面倒なもんだ」

《こっちまで海底ケーブルを伸ばしてくれるまでの辛抱だな》

《だが、赤外線カメラは必要なさそうだ》

 フーシェンの言う通り、ソイツはどっからどう見ても民間機ではないし、味方のものでもない明らかに異様な形をしていた。こっちの5倍の大きさのブーメラン型の翼を2枚、交差させるように持できていて、真っ黒な塗装に薄い青の正六角形の文様、そして体中のところどころに赤い斑点と前方の翼の交差部にある赤い四角が見える。

 

「大陸戦争のときみたいに、フリーエルジアがなんか引っ張ってきたのか? 笑えねぇぜ」

《爆撃機なのか? 護衛機なしなのが気になるが》

《アンノウンから高熱源反応! 何か来るぞ!》

 

 ソイツの斑点が光り出したのを見たのととロングキャスターの報告から俺たちは回避行動を無意識にしていた。その直後、恐ろしいほど太い濁った赤色のレーザーが前いた位置を突き抜ける。

 

《みんな無事か?》

「なんとかな」

 大雑把な野郎のくせに、フーシェンが生きているかどうか確認をとってくる。それに返事をし、あの黒い機体をジッと睨む。どうやら、アイツは俺らを殺す気マンマンらしい。

「ロングキャスター、抵抗しても構わんな?」

《あぁ、これを正当防衛と判断。全機、ウェポンズフリー》

「了解。ロングキャスター、こいつのフルコースが来るまで待っててくれ」

《旨そうには見えねぇな》

「フーシェン。食わず嫌いはだめだぞ」

《なら、お前には人一倍食わせてやるよ》

「そりゃ、勘弁だぜ」

 

 軽口を叩き合い、互いの戦意を上げていく。まぁ、あの無口の隊長は乗ってはくれないが。フォーメーションを維持し、小刻みに動いてレーザーを避けつつヤツの顔に狙いをつける。

 各々がFOX2と唱え、操縦桿のグリップにある赤いウェポンリリーススイッチを押す。そうすると、ミサイルはレールから切り離され1秒も満たない自由落下の後、炎が吹き出し空に白い線を引く。そして、飛んでいったミサイルは、ヤツの緩やかなカーブを描く翼へ突っ込み、荒々しく削りとっていく。そこまで装甲は硬くないらしく、いくつかの大きなクレーターが出来たのが見えた。

 

 だが、ロングキャスターからは予想とは違う報告が入る。

《全弾命中。だがまだ敵はお元気一杯みたいだ。まだまだ来るぞ!》

《あんだけ顔が吹っ飛んだっていうのにまだ飛ぶのか!》

「どういう仕組みしてんだ!」

 

 やってられねぇと悪態をつき。次の攻撃のタイミングを狙おうとソイツに目を向けると、吹っ飛んだ場所が徐々に治っていく様子が見える。

「こいつ、自分で傷を直してやがる!」

《冗談だろ!?》

「ならよかったんだがな!」

 アーセナルバードだって急所や弱点と言える場所があった。だが、コイツは違う。数発のミサイルでその面がデコボコになっても、1ミリもきいている素振りを見せず、レーザーを出す赤い斑点を吹っ飛ばしても別のところに新しく出来るだけ。しかも、自分で傷を治すときた。

 

《すぐに空いている部隊を送る! それまで何とか耐えてくれ!》

「おいおい! 撤退できねぇのか?」

《こいつはまっすぐファーバンティーに向かっている。理由はわかるな》

「なるほどな、クソッタレ!」

《レーザーで焼かれちまったら、本当に何も残らないぞ!》

 どうしたって倒せない敵と倒さないとくる未来。こういうのを巨象とアリで喩えるらしいが、たった4機じゃアリにもならない。

 

「どうする? トリガー」

 俺がこう聞くと、トリガーは短く答える。

《下から翼を狙う》

 確かに下面はレーザーの出る赤い斑点が少ない、それにアイツは意外にも柔らかいため数発のミサイルで翼は吹っ飛ぶだろう。だが、ソイツはそこまで高い位置にはいない。上手くやらないと海面にキスをするかアイツに突っ込むことになる。だが、そいつを海に叩きつけねぇとファーバンティーはコイツのせいで火の海だろう。

《しょうがねぇ。やってやるか! トリガー! 俺は右のやつをいくぞ!》

 

《情報を追加した。HUBで確認してくれ。少しは役に立つだろう》

 ロングキャスターがそういうと、翼の付け根に照準が合うようにマーカーがつく。AWACSの素早い仕事に感謝しつつ、ヤツの下部に潜り込む。レーザーは5秒に1回。下手に避けて突っ込まないよう細心の注意を払い、上面部の射程外である海面スレスレまで降りた後、一気に急上昇してミサイルを叩き込む。

 

 ミサイルは迎撃をする暇を与えず、翼に突き刺さり爆発。翼にはいくつかの穴が開くが、奴はまだ何事もないように飛んでいる。さらに、恐ろしいことに修復されている場所の様子は前と違い“赤く”染まっている。

 

「下手にやるとレーザーの本数が増えちまうみたいだな」

《穴がでかい分、そっから出てくるレーザーも太いんだろうな》

《もしかしたら、こっちが料理する前にこっちがローストされちまうのか》

「そりゃ、勘弁だな」

《それなら、奴の傷が治るまでに解体を終わらさないとな》

 

 イェーガーの言葉を皮切りに、もう一度攻撃を仕掛ける。奴の攻撃もさらに激しくなり、間隔は段々と短くなっていく。おんなじ様な攻撃を2回3回と繰り返すが、なまじデカいのと修復が結構早いのでなかなか切り落とせない。

 7回目。根本の残った場所に慎重にミサイルを叩き込み、一つの翼がゆっくりと離れていく。クルクルと回りながら落ちていくのを見て歓声を上げる。

 

《一つ目!》

《結構面倒だったな。息子への土産話にはちょいと編集がいるな》

《速度が低下している。この調子で行けば落とせるかもな。ただ、無茶はするなよ》

 ロングキャスターの報告より、どうやら効いているらしい。どうにか光明が見えたようだ。そう思っていたんだが。

《速度が下がる割には、高度に変化がないな》

《そういえば、レーザーが飛んでこねぇ》

「こういう時は大抵何かあるもんだ」

 

 奴の減速は止まらない。それでも高度は下がらない。そして、空中で止まってしまった。

「おいおい! どうなってんだ! ありえねぇだろ!」

《的が止まったんだ! 当てやすくなっただけだろうが!》

「そりゃそうだが!」

 フーシェンはそういうが、本人も困惑している様子で誰も攻撃をしようとしない。そうしていると奴は背中から1本の柱を生やし、”自分“の翼を切り落とした。切り落とした翼は紫がかった黒いモヤへと変わり、その柱の先端へと集まっていく。あまりにも非現実的すぎて、気味の悪さが一転して妖艶な美しさを出している。誰も何も言えない。そのような雰囲気に横槍を入れるようなロングキャスターの報告が入る。

 

《対象が回転を開始。一体何が起こってるんだ!》

「わからねぇが、とんだクソッタレな状況ってやつだ!」

《断面が赤く変化!》

《そりゃ、やばくねぇか⁉︎》

《一気にケリをつけようってのか》

 

 翼の断面が赤くなりきると、光の翼が現れる。だんだんと早くなる回転に、振り回される光の翼。その翼も羽ばたくように変則的に動き出し、俺たちを跡形も残らずに消しとばそうとする。

 

 それを避けるため俺とトリガーは奴の上に、イェーガーとフーシェンは下に潜り込んだ。そして、翼の当たらない場所でクルクルと回っていると、光がおさまるのと同時に柱の周りに集まったモヤが集まりマーブル模様の濁った球ができたと思えば、それを貫くように一筋の光が柱から放たれる。その光の周りからは、紫がかった黒い雲が光を中心に同心円状に現れ出す。

 

《レーダーに大規模なノイズが発生している! 何が起こっているんだ!》

「何が何だかわからねぇ! 気持ち悪りぃ色の雲が迫ってきやがる!」

《ノイズの正体はそれなのか……。どうにか退避できないか?》

「下手こいたら、あの翼でネジ一つ残らねぇよ!」

《今は動いちゃいねぇが……誘い込む罠かもしれねぇしな》

 

 そう話しているうちに、雲は目の鼻の先まで迫り、時々翼がそれを切るように掠める。

 

《大丈夫か? ノイズが迫って……対象上昇開始!》

《一体何がしたいんだ?》

《元々、この煙は目眩しじゃないのか? おおよそ、見えないようにしてからレーザーをあてやすくしようって魂胆だろう》

 ロングキャスターの情報をもとにイェーガーが推理をする。確かに筋は通るが、何となく嫌な予感がする。

「とりあえず、突っ込んでも良さそうってんだな」

《あぁ、なんとも言えないがな》

 

 一抹の不安を覚えながら雲の中に入り込む。キャノピーは紫色に染められ、機体が大きく揺れる。上を向いているのか、下を向いているのかどうにもわからないので、計器とにらめっこをしながら飛ぶ。

《2人とも、奴はどんどん速さを増している。どうか当たらないでくれよ》

「あぁ、ケツに迫ってくるのが見えるぜ。飛び出しゃ丸焼き、追いつかれたらミートパテだ。どうもコイツは趣味が悪りぃようだな。下手な映画の悪役みてぇなやり口だ」

《それなら頑張ってくれよ、主人公ども》

 ジョークを返すフーシェンには、いつもの刺々しさはなく、俺たちを純粋に心配している様だ。

 

 雲の奥から黒い物体が迫るのが振り向くと見える。それから逃げるために、ほぼ垂直に加速し続けなければならない。下半身に大きくかかるGと戦うが、無常にも血液は下へ下へと下がり続け、脳へ血液は回らなくなる。このまま飛びつければ、いつか落ちることは明確だが、外に出ても逃げられるわけではない。俺の意識が落ちるか、コイツが止まるか。そんなチキンレースをこなすうち、紫がかったキャノピーは段々と色を失っていく。すでに脳は酸素を求めて悲鳴をあげているのだ。目の前を飛ぶトリガーを捉えていた視界も段々と黒く塗りつぶされいき、意識は真っ黒い闇へと落ちていった。




ここまでご精読ありがとうございます。自己満足の小説の上、処女作ということで見るに堪えないかもしれませんがどうか楽しんでいただけると幸いです。誤字などの指摘する点があれば指摘していただくと助かります。また、今後多くの原作改編が行われますのでご留意ください。
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