東方鴉人録   作:yukke9265

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書いた


24. 天魔の娘の家を物色する鴉天狗

「ここが君に住んで欲しい家だよ」

 

数分の飛行の後案内されたのは、先程までの屋敷とはまた違う、こじんまりとした瓦屋根の日本家屋だった

 

「えっと……ほんとにいいんですか?娘さんもいるんですよね?」

 

「いいのいいの、はたてには他人との交流が必要なんだよ、だから仲良くしてあげて欲しいな」

 

「そうですか……はい、それならできる限り頑張りますね」

 

粗相がないようにしなければ

 

「うんうん、あ、そうだ」

 

突然天魔さんの目付きが鋭くなる

 

「もしはたてに危害を加えるようなら……容赦はしない」

 

空気がピリつくような気迫を感じる

 

「は、はい……」

 

「ま、私がここを勧めてる時点で、そんなことにはならないって言ってるようなものだけどね」

 

「そ、そうですか」

 

その割には今まで感じたこともないような凄まじい気迫だったのだが

 

「私、他人を見る目には自信があるんだよね、そして君は何か悪いことするようには見えないから問題なし」

 

「そ、そうなんですか」

 

随分私を信用してくれているようである

 

「天魔様、そろそろ会合の時間です」

 

「あれ、そうだっけ」

 

「そうです、三分後に始まります」

 

「えー、もっと早く言ってくれればいいのに」

 

「いつも間に合うからギリギリでいいと言っているのは天魔様ではないですか」

 

「あははー、そうだね」

 

天魔さんがこちらを向く

 

「それじゃ、必要なことははたてに聞けば分かると思うから、じゃあね〜」

 

「え、あっ……」

 

天魔さんと楓さんは返事する間もなく行ってしまった

 

「あやや、どうすればいいんでしょうかね」

 

建物の前に1人取り残される私

 

「とりあえず中に入ってみましょうか」

 

───

 

木製の扉をガラガラと開き、中の様子を伺う

 

「こんにちはー!」

 

返事は返ってこない

中を見ると広めの土間になっていて、どうやら台所も奥にあるようだ

 

「おじゃましまーす」

 

とりあえずお邪魔して中の様子を確認していくのだが、台所は使われている形跡がほとんどないようだ。試しに戸棚を開けてみても何も無い

 

「はたてさんいますかー?」

 

そんな声をかけながら下駄を脱いで台所から部屋にあがる

 

(誰もいませんね……)

 

そこは囲炉裏のある広めの部屋だった

 

「とりあえず家の間取りを確認しましょうか」

 

下駄を脱いで部屋へとあがり、向かいの障子を開けてみると縁側で庭があったが、管理はされていない様子であった

 

「はたてさんは生活環境には無頓着なタイプなんでしょうか……?」

 

障子を閉じて今度は右側の襖を開く

 

「おお、これはこれは」

 

まず感じたのはどこか懐かしく感じる畳の香りだった

 

「初めて見るんですけどね……」

 

八畳の畳が敷かれたその部屋には誰もおらず、置かれている机には少し埃が被っていた

 

「はたてさんはお出かけ中でしょうか……?ん?」

 

畳部屋の隅には梯子があるのを見つけた

 

「二階建てには見えませんでしたが……屋根裏部屋でもあるのでしょうか?」

 

さすがに気になったので、梯子に足をかけてその上の跳ね扉を空けてみる

 

「あややや……これはこれはなかなか」

 

そこは本、巻物、箱などの色々なものが乱雑に積まれており、足の踏み場も無い状態であった。しかしよく見ると、隅の方には誰かがそこで寝泊まりしているようなスペースがあった

 

「ここで寝泊まりしてるんでしょうね」

 

とは言えあまり寝泊まりしたい感じの空間ではない

例えるなら、烏が光り物を拾ってきて雑多に集めた空間、という感じだ

 

「っと、あまり人の部屋を観察するものではないですね」

 

跳ね扉をそっと閉めて畳の部屋へと戻る

 

「他の部屋も見てみますか……」

 

そうして縁側沿いに部屋を探していくと、今度は雑草が生えまくっている庭の端に扉を見つけた

 

「裏口でしょうか……?」

 

下駄を置いてきたので微妙に浮きながら、取っ手に手をかけてその先を確認する

 

「おおっ!これはこれは五右衛門風呂じゃありませんか」

 

高い竹製の壁に囲まれたそこには、大きな鉄の釜が鎮座しており、先程の部屋とは違い使われている痕跡があった

 

(風呂、めちゃくちゃ入りたいですね)

 

「あったかい風呂……へぇ……お風呂かぁ……えへへ……おっと」

 

一瞬風呂の用意をすることも考えたが、さすがに家主に挨拶もせず入るのはまずいので思いとどまった

 

───

 

「手持ち無沙汰になってしまいました……」

 

風呂を見つけたあと、この家の周りをぐるっと回ってみたが、見つかったのは倉と厠だけだった。

 

それで下駄を抜いだ土間に戻ってたはいいものの、やることがある訳でも無いのでなかなか暇である

 

「やっぱり風呂に入っても……」

 

そんなことを考えていたら、ガサガサと裏手の方から物音がする

 

(はたてさんかな……?挨拶しなければ)

 

立ち上がったところで更に物音がする

 

カッカッカッカッ……ガタン……カッカッカッガタッ……バタン

 

明らかにハシゴを登って跳ね扉を開閉する音

 

(もしかして帰宅して即屋根裏部屋ですか………??)

 

確かに屋根裏部屋と風呂と厠以外生活の痕跡がなかったけれども

 

ガタッ

 

再び跳ね扉の開く音

 

「ねぇちょっと……誰?」

 

こちらに気づいているかのように畳部屋の方から声が聞こえる

 

「すみません!お邪魔してます!」

 

声が聞こえた方へ返答する

 

「えぇ?ほんとに誰……うわあっ!?!」

 

重いものが畳とぶつかる音と揺れ

 

「えぇ?!ちょっと大丈夫ですか?!」

 

ただならない音がした畳部屋のほうへ向かった




今更タウン
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