そうして雇われ提督と秘書官初霜は逃亡しました。   作:ぽかぽか

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浦風?なにそれ?島風と天津風の亜種?いや希少種?


第4話

「ヒヤッハー、新鮮な深海悽艦だぁ!!初霜やっちまえー!!」

「全て……守ります!!」

 

 そう言って初霜が放った魚雷は深海悽艦、駆逐ロ級の横っ腹に見事に当たり、駆逐ロ級は大きな破裂音を鳴り響かせながら海へと沈んでいった。

 二人が民間鎮守府に帰り、そしてとある提督のとある穴が開発されてたから一週間。開発された提督が急遽、病院送りになってしまい二人は休む暇もなく仕事をこなした。

 そのおかげで、今やっている南西の海域に蔓延る深海悽艦の殲滅を最後に天高く聳(そび)え立っていた書類の塔を消すことに成功した。

 時雨?彼女は二人と死闘の末、椅子に縛り付けられ延々と書類に判を押す作業をしている。

 

「ふぅ、これで全部片付きましたね。さぁ帰りましょう!!今すぐに帰りましょう!!!ハリーハリー!!」

「OK初霜!ダッシュで帰ってやるから速く乗りな!!」

 

 改造魚雷挺を操縦している鈴提督は初霜に近づき、おかしなテンションでそう叫ぶ。そしてまた初霜もおかしなテンションで必死にその魚雷挺へと乗り込む。

 どうして二人がおかしくなっているのか?確かに仕事のせいでもあるが、一番の原因ではない。

 一番の原因はこの南西の海域の近くに存在する【南西鎮守府】のせいである。

 理由は昔、その鎮守府でも二人が男気を魅せてしまったために【南西鎮守府】の艦娘達は提督と初霜ダイスキー状態になっているのだ。故に捕まれば貞操の危機。もしかしたら監禁されるかもしれない。そんな恐怖のせいで二人はおかしくなっている。

 

 

 

 

 

 

「あら?そんなに慌ててどうしたんですの?」

 

 そんな時、突然に二人の後方から凛とした女性の声が海域に響く。その声に反応して二人は急いで振り向く。

 二人の視界に映ったのは海上に立つ一人の艦娘。

 栗色の髪、ポニーテール、そして特徴的な茶色のブレザーを着た通称、“神戸生まれのおしゃれな重巡”。纏う雰囲気はお嬢様学校の女学生のよう。

 

「うふふ、おひさしぶりですわ。初霜さん♪鈴提督♪」

 

 柔らかな笑みを浮かべて、南西鎮守府所属の最上型四番艦 重巡洋艦娘‘熊野’は二人に向かってそう言った。

 

「…………初霜ぉぉ!」

「はいぃぃ!」

 

 鈴提督が叫ぶ。初霜が応じて改造魚雷挺に乗せてあった特性の発煙筒を着火、すぐに熊野に向かって容赦なく投げつける。

 

「きゃあ!」

 

 思わぬ攻撃に怯む熊野。そして異常なまでの煙幕が発煙筒から吹き出し、熊野の視界を妨(さまた)げる。そのスキを逃す二人ではない。

 鈴提督が改造魚雷挺のリモコンレバーを操作し、エンジンの回転数を急速に上げる。すると、改造魚雷挺は海面をイルカのように飛び上がって発進した。

 普通はこんな事をしてはいけないというか壊れるのだが、流石改造しているだけあって異常もなくグングンとスピードを上げていく。

 

「俺のマリンスイーパー号を舐めるなぁ!!」

「名前のセンス無さすぎですよ提督!?でも、この速さならついてこれませんね!」

「ふふふ、この改造したマリンスイーパー号の最大速力は約48ノット。島風より速いこいつを捕まえれるものなら捕まえてみやがれ!」

 

 そう言いながら鼻を天狗のように伸ばして猛々しく笑う鈴提督。それにつられて笑顔を浮かべる初霜ーーと熊野。

 

 

 

 

「…………ん?」

 

 何か多くなかったか?

 取り敢えずエンジンを止めて、鈴提督は魚雷挺に乗っている人物を確認する。

 

「初霜、俺、熊野の三人だよな?どこもおかしく……くまのぉ!?!?」

「はい?私(わたくし)がどうかされたんですの?」

 

 最初に見せた柔らかな笑みを浮かべて返事をする熊野。

 口から魂が抜けている初霜。

 そんな初霜を抱き締めながら隅でガタガタ震える鈴提督。

 

「ふふ、そんなに怯えられたら私……なんか、もう……いっぱいですわ……」

 

 笑顔の隙間から覗き見える獣のような眼光に、唯一意識を保っていた鈴提督は女性のような悲鳴しかあげられないのであった。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

「――ん?」

「どうしたんだいゴーヤ?もしかして僕を助ける気になってくれたのかい?」

「誰が助けるでちか、この悪女。ほらさっさと次の書類に判子を押すでち」

「酷いな、そう言えば島提督が病院から消えたって聞いたけど?」

「……島提督なら私の部屋で休んでるんでち……あんな女の巣窟の中に置いておける筈がないでち。島提督はゴーヤだけをずっと見てたらいいんでち……ふふふふ……」

「……速く帰ってこないかな、二人とも」




簡単な紹介

◇時雨
 白露型二番艦の駆逐艦娘。
 サディストで悪女。
 島提督を弄るのを生き甲斐としている。
 初霜と鈴提督を手に入れたい(性的な意味で)と密かに思っている。ふふふ、怖い。
 そんな悪女な時雨さん、でも実は初体験はまだである。 
「僕としては軽薄な島提督よりかは鈴提督と最初にしたいんだけどね、ダメなら初霜がやっぱりいいかな。あっ、勿論その場合は僕が攻めるよ♪」
「「沈め!」」

◇伊58
 【民間鎮守府】唯一の潜水艦娘。正式名称は長いので省略。
 島提督の艦娘で、重度のヤンデレを拗らせてしまった可愛そうな艦娘。
 島提督と別の艦娘がイチャイチャしていたら取り敢えず穴に魚雷をねじ込みたくなる。
 そうして再起不能になった島提督を自分の部屋で監禁もとい看病するのが大好き(短くても一週間は外には出さない)。
 一度暴走すると力づくでは決して止まらない。諦めて島提督を贄(にえ)に捧げよう。

「うふふふふふ…………島提督はずっと、ずーーーとゴーヤと一緒なのでち……」
「ふぉぉぉぉ!!」
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