そうして雇われ提督と秘書官初霜は逃亡しました。 作:ぽかぽか
結局、あの状態から逃げだせる事が出来なかった鈴提督と初霜は熊野の外装に乗せられ、改造魚雷挺は外装に牽引される形で二人と一隻は仲良く【南西鎮守府】へと連れて行かれるはめになった。
ちなみに外装と言うのは艤装の艦船形態の事を指す。深海淒艦相手には只のカカシ状態になるのだが、こういった輸送目的の為に備え付けられた機能である。第一話に、伊58と共に現れた潜水艦もこの外装である。
「あ~、しあわせですわ~♪♪」
「きゃー!!頬擦りしないでくださいー!!」
そして現在、大きな応接室のような場所に放り込まれた二人は熊野の魔の手に晒されていた。 まぁ、実質的な被害は全て初霜が受けているのだが。
「て、提督!鈴提督!た、助けてください!!」
「耐えろ!耐えるんだ初霜!あと少しでこの扉が開きそう……な気がする!」
「開くわけ無いじゃないですか!外装ですよ!熊野さんの許可が無い限り無理ですよ!!」
「あぁ、分かってる!分かってるけど、抗(あらが)いたいんだよ俺はぁぁ!!」
「ふふふふ、そんなに開けて欲しいのなら開けてあげましょうか?」
「マジで!」
「但し、初霜さんとニャンニャンさせてくださいまし」
「はぁ!熊野さん、頭大丈夫ひゃん!む、胸を揉まないで……!」
「……初霜、きっと迎えに行くから頑張れ!」
「ふぇっ!」
「その言葉を待っていましたわ!」
鈴提督の言葉を聞くや否や、熊野は初霜を担ぎ上げものっすごいスピードと滑らかな動きで応接室を出ていった。
その時、初霜がなにやら裏切者やら鬼提督やらとキャーキャー騒いでいたが、鈴提督は爽やかな笑顔で敬礼し見送った。
「さて……逃げるか」
残された鈴提督は開けっぱなしになった扉から悠々自適に出ていった。さらば初霜。彼女という尊き犠牲は鈴提督の心の中に永遠?に残るだろう。
◆◇◆◇◆◇
「だ、騙された……」
右往左往しながらなんとか上甲板へとたどり着いた鈴提督はその場に崩れ落ちた。
実は鈴提督も嫌な予感はしていたのだ。
いくら熊野が初霜にぞっこんだと言っても自分を逃がすような状況を作り出す筈がない。もし、そういう状況を作り出すとしたら、それは逃げられる心配が無いということ。
もっと言えば、船内の中なのにそこまで波に揺られる感覚が無かった。それに機関音も殆どしなかった。つまりは何処かに停泊している可能性が高いということ。
「な、なんとか外に出られた……」
崩れ落ちた鈴提督の後ろ、船内へと続く扉が重々しく開かれ、そこから先程妖怪熊野にお持ち帰りされた初霜が現れた。その姿はまるで激しい戦場を二、三度行き来して、なんとか帰ってきた兵士のようだったと後に鈴提督は語る。
「あっ、提督……さっきはよくも…………嘘……」
初霜はゾンビのような足取りで鈴提督に近づくも、周りの景色を見て同じように崩れ落ちた。
二人の視界に映るのは
大きなクレーンが設置された立派な工廠(こうしょう)。
湾岸に駐留している多くの補給船。
茶色のつなぎを着た工員と楽しそうに話す艦娘と思われる少女達。
止めに巨大な屋敷のような建物に打ち付けられた巨大な看板に書かれた【南西鎮守府】の文字。
「ようこそ、【南西鎮守府】へ♪」
二人の後ろからお洒落な重巡の声がしたが、二人の耳に入って来なかったのは言うまでもない。
簡単な紹介
◇熊野
南西鎮守府所属の最上型四番艦、重巡洋艦娘。
改にはなっていないのでまだ重巡。だが、一応の予定はあるらしい。
鈴提督より初霜スキーなレズレズ艦娘。
見た目はお洒落な女学生、だが中身は変態で天然。
あと少しで初霜とニャンニャン出来るところだったが不意打ちのスリーパーホールドを決められ意識を失い断念。再戦を望む。
重巡なだけあって【南西鎮守府】では主力の一人でもある。
「は、初霜さん、ハァハァハァ、だ、大丈夫。怖くありませんですわ!ぜっんぜん怖くありませんからー!!」