そうして雇われ提督と秘書官初霜は逃亡しました。   作:ぽかぽか

7 / 8
拝啓、読者様へ

 皆様、この夏イベントをどうお過ごしでしょうか?
 私は夏イベントが開催され舞い上がってしまい、何も考えずに主力艦隊をAL作戦に向かわせてしまいました。
 残ったのは未だレベルが六十未満の航空戦艦、航空巡洋艦のみ。
 つまり、何が言いたいのかと言うと、
 私の旅(夏イベント)は終わりを向かえたという事です。
 まだ、夏イベントに向かっていない方々は十分に注意してください。

ダメ提督より


第7話

 マルヒトマルマル。つまりは午前一時。

 只今絶賛軟禁中の二人、初霜と鈴提督は息を押し殺して仲良くベットの中に潜り込んでいた。勿論、変な事をしているわけではない。ただじーっと機会を待っていただけだ。

「……初霜、お前は動くなよ」

「了解です……」

 ぼそぼそと小声で鈴提督は命令する。

 そしてゆっくりとベッドから下り、慎重に扉に近づき耳を当てる。

 無音。それについさっきまで会った複数の人らしき気配もない。

 これはもしかしたら?と思い鈴提督はドアノブを音がならないようにこれまた慎重に回す。だが扉は開かない。押しても引いても開かない。

「……まぁ、そうだろうな……」

 きっと外から南京錠のようなもので、開けなくしているのだろうと理解し人知れずに落ち込む。

「ていとくー……どうですかー?……」

 ベットの上にいる初霜は消え入りそな声で鈴提督に訊ねる。鈴提督は軍で身につけた匍匐(ほふく)前進を用いてベッドに戻ると、初霜に扉が開かない事と扉の前には誰もいない事を説明する。

「……そうですか……意外と徹底していますね、ここ……」

「……きっと一度逃がしたから、マニュアルでも作ってシミュレーションしてたんじゃないか?……」

「……ここなら有り得ますね。それで、どうやってここから逃げるんですか?……」

「……俺は“TT作戦”を実行する……」

 鈴提督の“TT作戦”という言葉に反応して目に涙を潤ませる初霜。

 この反応は“TT作戦"が実は大変危険な作戦で、もしかしたら鈴提督が死んでしまうかもしれないからという不安と悲哀から起きたものではない。

 ただ単にこの“TT作戦”、正式名称“ちょっとトイレ作戦”では鈴提督一人しか逃げれる保障がないのだ。

 つまり何時ものように自分が囮なのですね、分かりたくないけど分かりますという絶望と悲哀から起きたものである。

「……まぁまぁ、そんなに泣くな初霜。お前にもちゃんと作戦は考えてある……」

「本当むがっ!」

「……声が大きい……」

 とっさに初霜の口を塞いだ鈴提督はすぐに辺りの様子を伺う。

 扉、問題なし。窓、問題なし。壁、問題なし。天井、ネズミが動く音のみ問題なし。家具一式、問題なし。ベットの下、いつのまにか置いてあった十八禁健全本(相手は艦娘、それも航空戦艦と航空巡洋艦のオンパレード。中々にレア)が複数あるが問題なし。

「……ふぅ、大丈夫そうだな。それじゃ説明するぞ。その名も“KT作戦”だ……」

「……け、“KT作戦”ですか……」

 鈴提督は一度、うむと頷いて作戦の概要を事細かく初霜に説明していくのであったーー

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 ーー次の日の朝、マルハチヒトマル。つまりは午前八時十分。

 二人がいる部屋にノックの音が響き一人の小さな艦娘が朝食の乗ったカートを押して入って来た。

 その艦娘の名前は‘皐月’。

 膝まである長い癖っ毛のような金髪を後ろで二つに纏めた睦月型五番艦の駆逐艦娘である。そして貴重なボクっ娘でもある。

 いつもは黒いセーラー服を着ているのだが、今日は非番なのだろうか無地の白Tシャツと青いショートパンツを着ていた。

「おはよう二人とも。今日はボクお手製のサンドイッチと、飲み物は日向さんおすすめのお茶を持ってきたよ♪」

 ソファーに座って読書をしていた二人にニコニコ笑顔でそう言うと、カートに乗せていた朝食を机の上に置いていく。

「おっ、上手そうだな。ありがとうな、皐月」

「えへへ、今日は特に上手く出来たんだ♪」

「そりゃあ楽しみだ。でもその前に、ちょっとトイレ行ってきていいか?」

「トイレ?部屋に備えつけのがあるでしょ?」

「それがどうも水が流れなくてな。壊れちまったらしい」

「それは大変だね。分かった、後で提督に報告して業者を呼んでおくように頼んでみる」

「すまん。あっ、それと……ちょっと皐月に頼みたい事があるんだが……」

「ボクに?」

 頭に疑問符を浮かべる皐月に近づき鈴提督は初霜を指差す。

「……あれ見てどう思う?」

「どうって……」

 鈴提督にそう訊ねられた皐月は酷く困ってしまう。なぜなら初霜の元気が見るからにないからだ。

 持っている本は一ページも捲らずただ開いているだけ。髪も整えていない、服も寝るときに使った可愛らしい熊の絵が描かれたパジャマのまま。そんな彼女がどんな表情をしているかも俯いているのと、その長い髪が顔全体を隠していて分からない。

「……なんか幽霊みたい……」

「だろ?なんかさ、起きてからずっとあんな調子でな。どうしたんだ?と聞いても何も話さないからちょっと心配なんだわ。だから皐月。ちょっと相手してくんないか?」

「えっ!?ボクが!」

「もしかしたら俺には言えない事でああなってるかも知れんしな。それに同じ駆逐艦娘なら話しやすいだろ?」

「で、でも……ボク……初霜とはそんなに仲良い方じゃないし……」

「大丈夫だって、それに此を気に仲良くなれば良いんだよ。んじゃ、頼んだわ」

 ほとんど一方的にそう頼み込むと、鈴提督はそそくさと部屋から出ていった。

「ど、どうしょう……」

 皐月は困ってしまった。

 皐月は初霜スキーの軍団の一人であるが、初霜とはそんなに話した事がない。それは皐月だけではなく、この鎮守府の他の駆逐艦娘達にも言える事である。

 この【南西鎮守府】に存在する皐月を含む駆逐艦娘達には軽巡、重巡、戦艦、空母の艦娘達のような積極性が無い。

 相手が好きだからといって自分の気持ちを表に出せず、隠したままそっと影から見守り、相手が気づいてくれるまで待つ。それが【南西鎮守府】の駆逐艦娘達の恋愛観である。

 なので、初霜と同じ部屋にいる。それに邪魔をするような艦娘もいない。部屋は防音という明らかにチャンスな状態なのに、皐月は困ってしまう。

「皐月さん……」

 おろおろと困っている皐月に、初霜は精気の無い声で彼女の名前を呼ぶ。

 皐月は反応しておそるおそる初霜の側に近寄り腰を屈めて、どうしたの?と返答した。すると――

 

「ふえっ!?」

 

 ――皐月は床に押し倒された。

 理解が追い付かずにパニックになって固まっている皐月。そして、その上に馬乗りになっている初霜は固まっている彼女を見下ろし、パジャマを着崩しながらこう言った。

 

 

 ――――皐月さん、私を抱いてください、と。

 

 

 

 

 

 

 こうして“KT作戦”、正式名称“駆逐艦ちょろい作戦”が決行された。

 




取り合えず白梅梅のテーマ曲流しておきますね。
今回も説明は無しでおなしゃす。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。