そうして雇われ提督と秘書官初霜は逃亡しました。   作:ぽかぽか

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一ヶ月たってないよね?セーフだよね?今回は簡単な紹介入れておきました。


第8話

 失敗した。失敗した。失敗した。

 【南西鎮守府】の執務室のトイレの中。どこかのタイムトラベラーのような言葉を脳内で繰り返し唱えている肌の色が少しばかし黒い青年。そう鈴提督である。

 さて、鈴提督が何を失敗したのか紐解いていこう。

 

 あれは約三十分前の事。

 意気揚々と初霜と皐月を置いて部屋から出た鈴提督は取り合えず近くを歩いていた青髪のロングヘアーで独特なデザインのセーラー服?を着た駆逐艦娘、‘五月雨’に事情を話し、トイレの場所を案内してもらった。

 そして案内された場所が何故かここ。執務室であった。

 どうして執務室?という疑問を訊ねる暇も与えずに、後ろから五月雨に押されて中に入った鈴提督を待っていたのは――変態だった。

 【南西鎮守府】の提督とその秘書艦である二人の戦艦娘。その変態三人衆が目に狂喜を宿し、涎を垂らして待っていた。

 鈴提督はその三人を見た瞬間、トイレ借ります!と言って急いでトイレに籠った。

 そして今に至る。

 

「おーい、鈴ちゃーん?お腹大丈夫ー?入ってから結構な時間たってるけどー?」

 ドアの向こう側からまだ幼さが残る女性の不安そうな声が鈴提督の耳に入ってくる。この声の持ち主こそこの【南西鎮守府】のトップで提督の菫(すみれ)提督である。年齢は二十歳。

 だが変態三人衆である。

 黒い髪を後ろに一つに括った爽やかスポーツ少女というような容姿を持ち、老若男の提督達に人気の若き提督でもある。

 だが変態三人衆の筆頭である。

「初めて会った時はこんな子じゃないと思ってたのに……」

「んー?どうしたのー?やっぱり調子悪いのー?なら私お手製の浣腸を入れーー

「大丈夫!大丈夫だから!すぐに出るから!調子も良いから!快調だから!」

――そうなのー?ならもうすぐ出るよねー?待ってるからー♪」

 そう言い残してドアの前の菫提督の気配が徐々に遠ざかっていく。

 鈴提督はホッと一息をつき、そしてこの籠城戦の終わりがすぐそこまで迫っている事に気付く。

「どうしろと……」

 両手で顔を隠して絶望の声を絞り出す。

 変態三人衆はどれもが手練れぞろいである。

 筆頭の菫提督はあらゆる武術に精通し足も速い。

 秘書艦である二人の戦艦娘、‘伊勢’と‘日向’はまず人ではない。故に二人ともに身体能力は化け物である。

 最早、逃げは不可能に近い。

「……なら、諦めるか?」

 あり得ない、と鈴提督は自分自身に答える。

「だよな。なら、やることは一つだけだ」

 ニヤリと不適に笑い、鈴提督は足元から右の壁を二、三回強めに蹴る。すると壁の一部が壊れ掌より少し大きい茶色い袋が姿を見せた。

 それを手に取り中身を見た鈴提督の顔は笑顔ではあったがどこか狂気を孕んでいた。そう、例えるなら死地に向かう船に押し込まれ頭がおかしくなって笑う新参兵のように。

 

 

「逃げるのが無理なら……戦うしかないよなぁ!」

 強気には言うがその声は震えていた。そして“TT作戦改”が幕を上げようとしていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 一方その頃、初霜はとても困っていた。その原因は彼女が押し倒している皐月である。

「あ、あの……優しくしてください……」

 目を瞑り覚悟を決めたのか、スッと両手を広げる皐月。その姿はとても愛くるしい。同姓でそっちの趣味が無い初霜もドキドキしてしまう程だ。

 

 だが!だがしかし、それを初霜は望んでいなかった。

 

 初霜は鈴提督からここまで大胆にすれば、相手はきっと気絶すると言われたから羞恥の心を押し殺してここまでした。

 なのに、今の現状では……何か取り返しのつかない所まで来ているのでは無いのか?と疑問を抱くしかなかい。

(……あれ?ちょっと待って“KT作戦”のKって……)

 駆逐艦を意味する。

(皐月さんは駆逐艦娘……それと私も駆逐艦娘……はっ!?)

 初霜は気づいた。気づいてしまった。

 “KT作戦”とは自分を納得させて囮に使う偽の作戦だという事を。




簡単な紹介

◇皐月
 【南西鎮守府】所属の睦月型五番艦の駆逐艦娘。
 金髪ロリでボクッ娘という作者にとってはネタ満載な艦娘。故に今回は贄(にえ)になってもらいました。皐月と初霜の百合百合本誰かはよ。
「な、なんて酷い理由なんだ……」
「泣かないで皐月さん。はい、ハンカチ」
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