魔神の子のダンジョンライフ 〜最強を目指して〜 作:やってられないんだぜい
今回タイトルで分かる通り、あの子が登場します。まぁぶっちゃけ少女視点が今回の話の主ですね。
後エルの武器ですが剣で統一しました。刀って剣の方が感覚的にいいかなって思えたので。そこのところ、よろしくお願いします!
では本編どうぞ!
ドサッ
「ブモオオオオオオオオ!!!」
壁にめり込んでいたエルの体が地面に落ちる。それを見たミノタウロスは勝利を確信し、雄叫びを上げた。圧倒的体格差、そして筋力不足。自分に挑むにしては明らかに未熟な存在。それでもエルは足を生かし、機転を効かせ、自分に消えない傷を残したのだ。対戦者であるエルは雄叫びを上げるに相応しい人物だと判断したのだ。ミノタウロスはその場を立ち去ろうとした時だった。
………ザッ
「⁈」
物音が鳴った。地面を擦る音だ。その発生源はエルが落ちた場所である。あの攻撃で生きているとは到底思えない一撃を食らった筈だ。生きているなんてあり得ない。だがエルの指がピクリと動いた。エルは生きていたのだ。
あの時、ミノタウロスはエルの獄炎を見事に撃ち破った。この時点で魔力も尽き、獲物を持たないエルに反撃の手は無く、死が決定したと言っても過言では無かった。しかし、戦いに身を置く者としての本能か、諦めの悪さか咄嗟に腕でガードしたのだ。当然、それでも気休め程度にしかならない。それでも直撃を避けた事で即死には至らなかったのだ。
ミノタウロスは確実に止めを刺そうとゆっくりと近付く。相手は既に死にかけだ。焦る事は無い。しかし、予想も出来ない事態が発生する。何とエルが立ち上がったのだ。これには驚きを隠せない。フラついているが、それでも立ち上がる。ミノタウロスは警戒した。これも罠かも知れないと。例え死にかけだろうと利用出来るなら自分の傷さえ利用する。目の前の人物はそういう男だ。ミノタウロスはもう一度突進の準備をする。小細工は不要。今度こそガードしても耐えきれない一撃をお見舞いする為に。そして溜めた力を一気に放出した。先程よりも鋭い一撃がエルを襲う。しかしエルは反応が鈍いどころか全く無い。ままだと避けられず本当に死ぬと思われたその時。ミノタウロスの身体に光が走った。ミノタウロスは『ブモォ?』と理解出来ていない様子だった。数秒のタイムラグを経てミノタウロスの身体が一瞬でバラバラになる。エルの先には金髪の少女が剣を片手に佇んでいた。助けた彼女が助けたのだろう。しかし、それでも何の反応も起こさない。その少女は振り向いてエルを見ると一言、
「……ごめんね」
と、申し訳なさそうに謝った。
〜時は少し遡る〜
オラリオ最大派閥の1つ、【ロキ・ファミリア】は現在、遠征から帰る途中だった。今回の遠征の目的はクエストである『カドモスの泉』の要求量の泉水の採取。そして未到達である59階層の開拓である。結果から言えば、クエストは成功。しかし未到達階層の開拓には失敗した。だが収穫もあった。それは新種の発見である。未知の場所であるダンジョンで情報を得る事はとても大事である。情報を制する者は戦いを制すということわざがある様にだ。例え今回は未到達階層の開拓は達成出来なくとも、この情報は次回の遠征で必ず役に立つ。だから今回は誰一人として死者を出さずに遠征を終えられる事を喜んだ。
そして17階層まで来た頃、【ロキ・ファミリア】の一員である金髪の少女、『アイズ・ヴァレンシュタイン』は悩みを抱えていた。それは自分がメンバーから怖がられているかも知れない事だ。怖がらせる事をした覚えは無い。ただ強くなることに一生懸命なだけだ。そんな時、ミノタウロスの群れと遭遇した。当然ミノタウロス如きに遅れをとるファミリアでは無いので迎え撃つ気だった。しかし、イレギュラーが生じる。ミノタウロス達が逃げ出したのだ。しかも逃げた先は上層へと続く階段。上層にはミノタウロスを対処出来ない多くの低レベルの冒険者が生業としている。その中にミノタウロスが現れたら被害は計り知れない。1匹たりとも逃す事は許されなかった。各階層に何人かを残し殺し尽くす。
アイズは8階層に残った。そこでミノタウロスと戦っている冒険者を見つける。当然直ぐに助けに入ろうとした。しかしその足は直ぐに止まった。それは、ミノタウロスと対峙している冒険者が
だが、アイズは助けに入らなかった。何故なら、その様な絶望的状況でも少年の目は諦めていなかった。ミノタウロスの攻撃に恐怖せず、常に見続けた。隙を探しているのだろう。それは冒険者にとってとても重要である。そしてミノタウロスのダブルスレッジハンマーが繰り出される瞬間、なんと少年は引くのでは無く、ミノタウロスの懐に飛び込んだのだ。攻撃を見事に避け、そのまま股下を通り過ぎる。その去り際に膝裏へ一撃をお見舞いした。しかも火傷というおまけ付きで。アイズは少年が剣に纏っている黒炎の観察をしていた。
(あの黒い炎中々消せてない……あ、肉を抉った。でも何でだろう?)
アイズは黒炎が気になっていた。今の攻撃では燃えてる部分を抉る事でしか対処出来ない炎が、何故最初の数撃では燃え移らなかったのか。答えは少年にしか分からないだろう。そのままアイズは少年に興味を持ち始めた。
(食らったら一撃でダウンするかも知れない攻撃なのに、飛び込むなんて凄い。しかも柔らかい皮膚を見極めて回避と攻撃を同時に行った。ミノタウロスの皮膚を突き破れない筋力を見る限りレベル2にはなってない筈なのに)
彼のセンスには素直に驚かされる。しかし感心したのも束の間、ミノタウロスの突進に近い攻撃にやって脇腹を抉られてしまった。今までミノタウロスの攻撃を避けた反射神経からして油断してしまったのだろう。大量出血。このまま出血が続くと血が足らず気絶してそのまま死に至る。
(まずい⁈)
流石にこれ以上は、そう思った。しかしその直後に少年が魔法を放った。剣に纏っていたのと同じ黒炎。しかし黒炎はミノタウロスに向けてでは無く、自分に向けてだった。アイズは少年の躊躇の無さに驚愕した。
(確かに傷口を焼く事で出血を止める事は出来る。でもあの歳でそれを知っていて、しかも瞬時に臆する事無く出来るなんて、なんて覚悟なの……。しかも無詠唱魔法)
彼にはセンスだけで無く度胸にオリジナリティ差まで備わっていた。しかも生半可なものでは無い。
その真価が問われる時は直ぐに来た。ミノタウロスがまた少年に向かっていく。先程自分の身体を抉った相手に対してどう出るか。普通なら一旦引いて距離を取る。その間に呼吸やメンタルを整えるのだ。
(でも君は……)
アイズは期待していた。彼はまた自分を驚かせる事をしてくれるのではないかと。この時既に助ける事よりも、もっと彼の戦いを見ていたいという気持ちが勝っていた。そして、その期待通りに少年は突っ込んでくるミノタウロスに対して自らも走り出した。まだ傷が痛む筈なのに。しかし、彼は愚行を冒そうとしていた。股抜けを行おうとしたのだ。
(ダメェッ!同じ手が何度も通じる相手じゃない!)
ダメージを与えられるのがこの手しか無かったのだろう。しかし、相手がいくらモンスターだろうと舐めすぎだ。モンスターだって学習する。予想通りミノタウロスはアッパーを仕掛けた。危ないと叫ぼうとした時、少年はジャンプしてミノタウロスの腕を足場にして顔面へと飛んだ。光を奪うつもりか目を横一閃で斬り抜こうとする。アイズはこれを見て『まずい』と思った。何故なら、ミノタウロスは片腕が自由だから。止められる、そう思った。だが現実は止められるだけでは済まず、武器さえ破壊された。どうしようもないと思ったアイズ。
(片目は奪えたけど、流石にもう助けた方がいいかな?)
流石に素手で挑むのはただの自殺行為。勇気とは言えない。だがアイズ程の人物が見落としてしまった。背中にまだ剣を隠し持っていた事に。しかもその剣は折れた剣と比べ物にならない業物。それなのに抜くどころか気にする素振りすら見せない。疑問が募る。それでも少年は一切諦めていなかった。
そして戦いはクライマックスを迎えようとしていた。ミノタウロスは種族としての技『突進』の準備。少年は折れた剣を投げ捨て、右手を前に突き出して集中する。恐らく傷口を焼いた魔法の全力だろう。ミノタウロスが先に動き、少年が魔法で迎え撃つ。2つがぶつかり合う時、周りに衝撃波が走る。アイズは反射的に目を瞑る。目を開けた次の瞬間、瞳に映ったのはミノタウロスに負けた少年の姿だった。
アイズは酷い後悔と罪悪感に包まれた。自分の少年の戦いを見ていたいという自分勝手な思いで、助けられる才能ある若者の命を紡いでしまった。フィンにもなんて説明すればいいのか。戦いに見惚れて1人の冒険者を殺した。恐らく、いや確実に失望されるだろう。その冒険者を殺したのはお前だと罵られるかも知れない。二度と遠征には連れて行かせてもらえないかも知れない。少年のファミリアの主神にはなんて説明しよう。殺人犯と罵倒されるだろう。根が優しい少女なだけに見なかった事にするなんて考えは思い浮かばなかった。アイズの心は絶望に染まった。
(死んだ………私の所為であの子が死んじゃった。強い子だったのに。私の所為で死んだ。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)
ザッ
壊れかかったアイズの心に音が聞こえた。ミノタウロスかと思った。しかし振り返ってみると少年が立ち始めたのだ。だがふらついている。もう限界だ。ミノタウロスと戦う力は残ってない。だがミノタウロスは違う。少年はまだ生きていると分かって止めを刺そうと突進する。その瞬間、アイズは限界を超えた速度でミノタウロスに近付き、木っ端微塵にした。生きていてくれた。その感謝の気持ちがアイズの漆黒の精神に光を与えた。
アイズは振り返って少年を見る。そこで初めて気付いた。
(この子、意識が無い。気絶してる。なのに……)
そんな状態でも立ち上がる少年に自分以上の執念を感じた。これ程の子を助けられた事に安堵してそれでも言わなければならない事がある。
「ごめんね」
自分達の所為でこんな目に遭わせてしまった事に誠心誠意込めて謝罪した。
ご愛読ありがとうございました。
やばい、アイズが精神崩壊しかけた。このアイズいつかヤンデレとかなりそうで怖くなりましたね。気になった方も多かったと思いますが、獄炎の性能ですが少しオリジナルを入れています。まだ詳細は明かしませんがご了承下さい。
では次回もお楽しみに、またね!
魔神王の魔力『支配者」についてですが、今作ではあらゆる物理魔力に対して反応しますが、原作では魔力だけどの事でした。『支配者』の魔力をそのままにするか、原作同様、物理は関係無しにするかアンケートを取ります。変更してもあの時のセリフが一部改変するだけで、それ以外は矛盾が生じませんので安心して下さい
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