魔神の子のダンジョンライフ 〜最強を目指して〜 作:やってられないんだぜい
沢山評価してくれて本当にありがとうございます!本当に嬉しいです!これからも頑張っていくのでよろしくお願いします!
では本編どうぞ!
「エル君。……ここが君の言っていた店かい?」
「………多分」
2人はシルの働いている酒場『豊饒の女主人』に来ていた。朝とは随分雰囲気が変わっていたが、直ぐに分かった。朝には下げられていた大きな看板に、シルと同じエプロンを着た店員。確かに彼女の言った通り賑やかで、わざわざ店に入らずとも側を歩くだけで分かる。2人は入り口から店内をそっと窺って、そのまま入店せずに1度路上に戻る。何故なら店員は全員女性でウエイトレスだったのだ。つまり全員女性。賑やかとは言っていたがそう言う店とは思わなかった。
(まぁ、今思えばシルさんがウエイトレス姿である時点で予想出来る事だったのかな。ぱっと見は確かに繁盛してるけど、これ本当に美味いのか?ウエイトレス姿の店員に惹かれてるだけじゃなくて?)
この店の料理の腕を疑っているとヘスティアがエルの袖を引っ張った。何かと思って振り返ると、とても悪い表情をしている彼女がいた。
「エル君。君にこんな趣味があったとはね」
「違う!俺は美味しい店と聞いたから来ただけであの服に惹かれた訳じゃ無い!」
「本当かなぁ〜?」
「〜〜〜‼︎煩い!」
「ふふっ」
照れ隠しに声を荒げて店に入るエル。普段からダンジョンに行き、強さだけを考えている姿しか見てなかったヘスティアは、エルの思春期の男の子らしい姿が見えて微笑む。
店内は明るいを通り越して騒がしい領域までいく程賑やかだった。何処もかしこも笑顔で溢れている。店員も自然な笑顔で雰囲気に合わせているのではなく、楽しんでるのが分かった。だがやはり客の9割は男性だ。ウエイトレス全員が全員美少女な為、男性に人気なのは分かる。しかし、味は確かなのか余計に不安が募る。
「これ本当に美味いのか?」
「美味しいですよ」
「⁈」
いつの間にか背後を取っているシルに軽い恐怖を覚える。
「……本当に何者ですか?今朝と言い、今と言い、人の背後を取るのがお得意ですね。俺ダンジョンでモンスターに背後取られた事無いんですけど。実はシルさん暗殺者ですって言われても信じるレベルですよ」
「失礼ですね。どっからどう見てもただのウエイトレスですよ」
スカートの裾を持ち上げてターンするシル。その姿はとても様になっている。その姿が余計に怪しく思えてしまう。暗殺者が一般市民に紛れているなんて良くある話だ。
「カウンター席にしますか?それともテーブル席ですか?」
「じゃあテーブル席で」
「畏まりました」
エルはテーブル席を要求した。理由はヘスティアを危険から遠ざける為。こう言う酒場でのカウンター席だと隣の酔っ払いに絡まれる可能性がある。自分1人だと対して気にしないが今はヘスティアがいる。ただの酔っ払いなら対処は簡単だが、このオラリオはダンジョンがある街だ。酔っ払いでも高レベルの冒険者の可能性がある。ヘスティアは幼い見た目をしているが、紛れもなく美少女。そう言う趣味を持った奴からしたら彼女はどストライク。もしそんな趣味を持った高レベルの冒険者と対峙した場合、ミノタウロスに負けてるレベルの自分は悔しいが勝てない。
「それにしても今朝と違って敬語ですね」
「今は仕事中ですからね。いくら子供でも客ですから。それとも今朝の方が良かったかしら?」
ウインクして鼻を触ってきたシル。可愛い仕草なのは確かだが、子供と言われた事に腹が立つ(その程度で腹が立ってる時点で子供とか言う奴は月牙天衝で消しました)。
エルは、彼女の間違いを正すと同時に、少し恥ずかしい思いをしてもらう事に決めた。
「俺子供じゃないんですけど」
「ふふっ、そうでしたね」
「俺、エルアコスって言うんですよ。皆からはエルって言われてます。15歳です」
「へぇ、エル君って言うんだ。歳は15歳ね………ん?聞き間違いかな?15歳って聞こえたんだけど」
「合ってますよ。因みにパルゥムじゃないです」
「????嘘、ですよね。だって、どう見たって……ええ⁈」
「ウエイトレス君。君の言いたい事は分かる。僕も最初そう思ったさ。でも彼は正真正銘の15歳だよ」
「え、えええ⁈」
「煩いよ!!!」
「す、すいません!」
シルはエルの本当の歳を聞いて、驚きのあまりに店内で叫んでしまう。その事をカウンターの向こうで料理をしていた女将らしき人に怒られた。
「シルさん、勘違いだって分かって貰えましたか?貴方は15の男性相手にお子様扱いしてたんですよ。失礼極まりないんじゃないですかねぇ?」
「申し訳ありません。自分の憶測だけで判断してしまって」
(15歳はまだまだ子供でしょ)
少し間、シルが謝り続ける光景が続いた。因みにこの事態が収束したのは女将によってだ。女将はエルをつまみ出そうとしたのだ。客が店員にいちゃもんを付けて、店員が平謝り。それを見た客が悦に浸っていると見えたのだろう……実際にそうなのだが。そしたら今度はエルが女将に対して平謝りする。『調子に乗ってすみませんでした!』と。シルの弁明もあって追い出される事は無かったが、その代わりこの店でお金を使う、つまり料理をいっぱい頼む事を約束させられた。
2人は料理を楽しみながら雑談に花を咲かせる。シルは持ち場に戻った様でここにはいない。
「あー、酷い目に遭った」
「それは君が調子乗ってウエイトレス君を困らせたからでしょ」
「だってさっきまで子供扱いしてたのに勘違いだって気付いてひたすら謝ってる姿が面白くて」
「……君って結構Sなんだね」
「?Sってなんですか?」
「ううん、なんでもない。それにしても凄く美味しいね。ここの料理」
「確かにそうですね。今度はベルを連れてきて3人で食べましょうよ」
「うん」
ヘスティアはエルの口から自然とベルの名前が出た事にホッとする。このまま2人が仲違いしたままなのは見るに忍びないから。
「ご予約のお客様、ご来店にゃ!」
たわい無い話をしていると突如、店の空気が変わった。十数人の団体客が入店してきたのだ。しかもあれだけの人数で全員が並々ならぬ実力の持ち主という事は直ぐに分かる。それだけのオーラを感じる。周りの客も酒や食を止め、その団体に注目している。
『おい』
『おお、えれぇ上玉ッ』
『馬鹿ちげえよ。エンブレムを見ろ』
『……げっ。あのエンブレムは【ロキ・ファミリア】』
「⁈」
エルはその言葉により一層反応する。あれが【ロキ・ファミリア】。オラリオ2大派閥の一角で自分を門前払いしたファミリア。更に言えば、あの中に『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインがいる。
「ヘスティア様。誰がアイズ・ヴァレンシュタインか分かりますか?」
「確かあの金髪の子じゃ無いかな?」
「……あれが『剣姫』」
ヘスティアが密かに指差す方を見ると彼女はいた。エルは納得する。直ぐに見つけられる筈だと。1人だけ放っているオーラが違う。そして見た目も今まで見た事が無い程に綺麗だった。
「よっしゃ!ダンジョン遠征ごくろうさん!今日は宴や!みんなじゃんじゃん飲めぇ‼︎」
その言葉を皮切りに彼等は騒ぎ出した。周りの客も思い出したかの様に自分達の酒を煽り始める。ここは酒場なのでこの雰囲気は間違ってはないのだが静かに食を楽しむ場には向いていなさそうだ。彼等が来る前は複数人でも1テーブルで済む人数だった事で騒ぐと言ってもそのテーブル内。しかし彼等は何卓ものテーブルを使用している。その為、騒ぐ範囲が広くなって自然と声が大きくなる。そして、その声量にかき消されない様に他の客も声が大きくなる。
(料理は美味いけどこんなに煩いんじゃ落ち着いて食えやしねぇな。てか公共の場所だろうが。もう少し弁える事は出来ねえのかよ)
「強くなると何しても許されると思っちまうのかね。俺は強くなっても王様にはならないでいよ…………って、ヘスティア様何やってんですか?」
彼等を横目にジュースを飲んでいると対面のヘスティアがコップを握りしめて唸っているのに気付く。
「ううぅ、何故ロキがここに……」
「神ロキと知り合いだったんですか?」
「知り合いなんてもんじゃ無いよ。腐れ縁さ」
「へぇ。はい、水ですヘスティア様」
「ありがとう」
ヘスティアは酒が回り始めており、なんとなく面倒な話が続きそうだったので、早めに水を与えてアルコール成分を薄める。
「おい馬鹿女!お前のあの話を聞かせてやれよ!」
「馬鹿女言うな!……あの話?」
【ロキ・ファミリア】の獣人の青年が店内に響き渡る声で言った。反応したのはアマゾネス少女だった。これまた美少女。オラリオには美女美少女以外立ち入り禁止などという決まりでもあるのだろうかと思ってしまう。
(いや、それはねぇな。だって女将は…⁈…………うん。やっぱり美人だな。決まりあるかもな)
女将からの物凄い殺気を感じたエルはそこから先の言葉を考えるのを止め、女将を褒める。
「あの話って言われて出てこないなんて本当に馬鹿だな!」
「人を貶さないとまともに話も出来ないのかバカ狼!」
「あの話っていったらミノタウロスの件だよ」
「「⁈」」
この瞬間エル以外にも人一倍反応した者がいた。そう、エルと同じく当事者であるベルである。何を隠そうベルもシルに誘われてこの酒場に来ていたのだ。彼等の中にティオナを発見してとても浮かれ気分だった彼は、まるで心を掻き回される感覚に陥った。
「帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!その中のお前が5階層で始末した時にいたトマト野郎だよ!」
「ああ、あれ?」
「ん?何の話や、ベート」
エルは直ぐに気付いた、トマト野郎とはベルの事だと。ここに当事者の家族がいるとも知らずかれはベラベラと話す。
「17階層でミノタウロスと出会したんだけどよ。そいつら途中で逃やがんの。そんでどんどん上層に上がって行きやがってよぉ〜。こっちは疲れてんのに」
(疲れてんならさっさと家帰れ寝てろ駄犬が)
「エル君、これって」
「間違いなくベルの話ですね」
ヘスティアは水を飲んだことで少し酔いが覚めたのかベートの話を聞いて直ぐにベルの事だと気付く。
「そしたら居たんだよ!いかにも駆け出しのひょろくせぇガキが!兎みたいに壁際まで追い詰められて顔引き攣らせてやがんの!」
「それで?その子どうしたん?助かったん?」
「馬鹿女が間一髪のとこで真っ二つにしてやったんだよ、なっ?」
「確かにそうだけど」
楽しそうに話すベートと違い、ベルを助けたティオナの方はつまらなそうにしていた。
「お前、あれ狙ったんだよな?そうだよな?そうだと言ってくれよ!」
「そんな訳無いじゃん。てか私この話あんまりしたくないんだけど。あの子に悪いし」
「馬鹿女が一丁前に気ぃ使ってやがるww。それにお前、助けた相手に逃げられて怒ってたじゃねぇか!野郎の癖に泣くわで胸糞悪かったな」
「あの時はあの時!今は今!もういい!帰る!」
「ティオナ、そんなに怒らなやって」
そう言ってティオナは店を出て行ってしまった。それをロキが宥める様に追いかける。ここまでしても彼の勢いはまだ収まらない。次の標的はエルだった。
「うちのお姫様も駆け出しのガキ助けたんだってな!」
「おいベート。いい加減口を慎め」
リヴェリアが注意しても彼の口は止まらない。
「良いだろ、酒の肴さ!致命傷を負ったガキを地上に運ぶ為に別行動したんだってな!雑魚のお守りご苦労なこって!」
「ベート!」
「どうせそいつも無様に逃げ回ってたんだろ!泣き喚いてよぉ!あ、でも5階層のガキより酷えか。なんせ逃げる事すら出来なかったんだからよぉ!」
「いい加減にしろベート。ミノタウロスの件は我々の不手際だ。それを酒の肴にするなんて、恥を知れ!」
「うるせぇな。ゴミをゴミと言って何が悪い」
「まったく、ロキは自分の眷属の躾もできないのか!いくら温厚な僕でももうキレるぞ!いいね!エル君……エル君?」
彼等の品の欠片も無い会話、更に自分の眷属が公共の場で馬鹿にされてるのだ。自分の事には寛容の彼女も流石に堪忍袋の緒が限界を迎えていた。対面にいるエルに声を掛けるのだが、反応が無い。彼等から視線を外し、エルの方へ戻すと、ベルに対してキレていた彼がいた。額に黒い渦巻きの紋章、瞳は黒く染まり、オーラを発していた。比喩では無い。実際にオーラが出ていたのだ。
ガチャン
ご愛読ありがとうございました!
原作と違いベルを助けたのはティオナで、ベートはそっち側にいたのでこういう展開になりました。アイズと違いハッキリと言いたい事を言えるので途中退場してしまいました。
そして最後のガチャン。一体何の音でしょう?予想してみて下さい。
次回はベートとアイズのくだりから始まるので楽しみにしていて下さい。
魔神王の魔力『支配者」についてですが、今作ではあらゆる物理魔力に対して反応しますが、原作では魔力だけどの事でした。『支配者』の魔力をそのままにするか、原作同様、物理は関係無しにするかアンケートを取ります。変更してもあの時のセリフが一部改変するだけで、それ以外は矛盾が生じませんので安心して下さい
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