魔神の子のダンジョンライフ 〜最強を目指して〜 作:やってられないんだぜい
前回投稿した8月18日。今作は1日で過去最高の3372UAを叩き出しました。日間ランキングでも5位と過去最高の数値です。それもこれも皆さんが呼んでくださり、お気に入り登録してくれて、高評価してくれたおかげです。本当にありがとうございます。
何か気になる点や思った事があったらなんでも言って下さい。もらった感想は全て返信する様にしているので一方通行にはさせません。
これからも皆さんに面白いと思っていただけるような作品を作っていきたいと思うのでよろしくお願いします。
それでは、本編どうぞ!
【ロキ・ファミリア】の会話は更にヒートアップしていた。
「ベート、そもそもお前は奴の戦いを見ていないだろ。憶測や噂だけで物事を決めつけるのは二流のする事だぞ」
「ならあんたは見たのか?」
「それは……」
「見てねぇよな!なら口出しすんじゃねぇ!俺はアイズに聞いてんだよ!どうなんだ!アイズ!!」
「……」
ベートはテーブルに足を掛けてアイズに問いただす。酒が回った彼を、最早誰も止められない。いや、正確には本気で止める気が無いというのが正しいだろう。確かにベートはレベル5の冒険者でオラリオでもトップレベルである。【ロキ・ファミリア】でも当然、上位の実力者だ。並の冒険者が止めるのは至難の技だろう。しかし、彼は決してNo. 1という訳では無い。現にこの【ロキ・ファミリア】には彼より上位であるレベル6が3人いる。1人目は、【ロキ・ファミリア】の団長でもある『フィン・ディナム』。そして、先程からベートを止める
そして問題はアイズ。彼女はベートからの問いに一切答えず、俯いたままだ。だがテーブルの下では、ひたすらに拳を強く握りしめる。彼女は怒りに震えているのだ。
彼女がベートの問いに答えない理由は2つある。1つは彼女が口下手な事。もう1つは、この怒りを抑える為であった。彼女が見たエルは確かに実力が高いとは言えない。まだまだ粗く、甘く、隙を見せてしまう。まだ冒険者になって半月なのだ。当然である。しかし、雑魚なんかでは決してない。彼は間違いなく自分と一緒。強さをひたすら求める者だった。圧倒的力差を前にしても決して諦めない心。工夫して勝利への道を探す。自分がもし彼の立場であった場合、彼と同じ様に逃げずに戦う事が出来ただろうか?自分の剣がまともに皮膚を通らず、敵の攻撃は掠っただけでも大ダメージという無理ゲー。多くの人は、そんな奴に戦うだけ無駄だと。敵との戦力差も把握出来ない馬鹿だと罵るだろう。だが、常に動き続け、敵に狙いを定ませない様にしている彼が戦力差を理解していないとは思えない。つまり、戦力差を理解しても、逃げず、諦めないで戦ったのだ。9年冒険者をやっていても確信出来ない事を彼は成し遂げたのだ。彼は近い将来、必ず自分達に追いつく実力を身につけるだろう。そんな彼を馬鹿にしているのだ彼は。
頭の中で色んな思いが渦巻いているアイズの無言を、ベートは自分の問いに対して肯定したと受け取った。
「ま、聞かなくても分かってたか!ミノタウロスから逃げる事すら出来ない奴なんか雑魚中の雑魚だもんな!それとも雑魚すぎて記憶から消したか⁈正解だせ!正解!雑魚は強者に釣り合わねぇんだからよ!」
アイズはその言葉にとうとう堪忍袋の緒が切る。彼を記憶から消す?あり得ない。それは今の彼女にとって最大限の侮辱だった。普段なら彼女の片手剣『デスペレード』がある右腰に右手を持っていき、ベートに対して爆発している殺気をモロにぶつける。ベートも普段なら気付くだろうが、彼は現在酔っ払って、全く気付いていない。彼女の殺気に気付いたのはリヴェリアとガレスに、こちらも酔っているフィン。酔っていても気付くのは流石は団長と言った所だろう。そして最後に、店の外にいたティオナとロキであった。アイズがベートを懲らしめようと行動に移ろうとしたのよりほんの一瞬早く動いた人物がいた。
「お兄ちゃんは雑魚じゃない!」
何を隠そう、エルよりも早く罵倒されていたベルだった。
〜ベルside〜
シルに誘われて来たこの酒場は本当に良い店だ。店員は可愛いし、料理は美味い。そして何より憧れの人物であるティオナが所属している【ロキ・ファミリア】の行きつけの店である事が分かった。つまりこの店にくれば彼女の会える確率が高まる。確かにそれなりの値段はするが彼女に会えるなら安いものだ。それにそれがモチベーションとなり自分を強くしてくれるだろう。
だが、そう思うと兄の顔が目に浮かぶ。『そんな考えで強くなる?笑わせるな。お前が強くなるのは一生無理だ。精々頑張って届きもしねぇ女の尻追っかけてろ』そう言われた気がした。ベルは首を振って幻想のエルを吹き飛ばす。
「僕は僕なんだ。お兄ちゃんとは違うんだ」
「どうしましたか?ベルさん」
「い、いや。何でもないです」
隣にいるシルは心配そうに見つめる。ベルは彼女に心配掛けまいとする。この賑やかな酒場に辛気臭い話は似合わない。だから今はエルとの事は忘れ、この場の雰囲気を楽しむ事にした。
「おい馬鹿女!お前のあの話聞かせてやれよ!」
「馬鹿女言うな!」
獣人の人の言葉に彼女が反応する。ベルは直ぐに手をつけていた食事を止め、聞き耳を立てる。彼女が話が聞けるのだ。逃すなんて勿体ない事はしない。彼女が馬鹿女言われた事に少しイラッとしたが彼の話に集中する。
「あの話って言ったらミノタウロスの件に決まってんだろ!」
この瞬間、興奮して燃えていた心が一瞬にして凍ったのを感じた。
それから、彼等は僕の醜態を暴露し、暴言を吐き続ける。勿論悔しかった。だが自分にそれを止める術を持っていない。彼等はオラリオでもトップクラスの冒険者。それに引き換え、自分は駆け出しも駆け出し。言い返す事すら出来ない。自分に出来るのはひたすら耐えるのみ。そんな自分の姿を表現するのにぴったりの言葉が思い浮かぶ。"惨め"、この一言に尽きる。
(どいつもこいつも好き勝手言いやがって!しょうがないだろ!僕はまだ冒険者になったばかりなんだ!あんな化け物に勝てる訳ないじゃないか!)
心の中で言い訳をする。『自分は駆け出しなのだから』と、『レベル1なのだから当たり前だろ』と逃げ道を作る。だが、それが逃げ道にならない事は彼自身が1番良く知っている。1番身近に、同時に冒険者になったのに、あの化け物に立ち向かった人を知っているから。
「そういえばうちのお姫様もミノタウロスから駆け出しのガキを助けたんだってな」
そして、まるでベルの心と同調したかの様に話題が他の人物へ移る。彼はその人物が誰なのか直ぐに分かった。
「雑魚のお守りご苦労なこって。どうせそいつも無様に逃げ回ってたんだろ!泣き喚いてよ!あ、でもトマト野郎より酷いか。逃げる事も出来なかったんだから!」
ベルはこれを聞いた時、最低ながらもこう思ってしまった。『ざまあ見ろ』と。自分に説教していた彼だって、自分と同じ周りから見たら同じ。結局の所彼等の様な強者から見れば、有象無象の雑魚である事に変わりない。志が問題なのではない。力を持たない事が問題なんだと。
だが、それと同時に彼を雑魚と呼んだ獣人(以降ベート)に対して、心の底からムカついた。祖父が亡き今、彼を1番よく知っているのは弟である自分だ。小さい頃から彼の努力を見て生きてきた。祖父との修行。兄の頑張っている姿はとても輝いていた。彼こそ、自分にとって1番身近なヒーロー『英雄だったのだ』元々英雄譚が好きだった自分は、身近な英雄に憧れ、その修行に参加しようと思った事は何度もあった。しかし、その度に諦めた。周りから見ていた時は純粋に輝いていた光景が、いざ自分が実践しようと考えた時、とてもじゃないが自分には無理だとやる前から決めつけてしまった。だから努力という辛い道から逃げ、遊びという楽な道に走ったのだ。同じ修行でついていけない自分に失望したくなくて。
(は、ははは。確かにお兄ちゃんの言う通りだね。逃げた僕と、戦い続けたお兄ちゃんじゃ比べる事すら烏滸がましいや。ベートさんの言う通り、僕は正真正銘雑魚だよ。辛い事から逃げ出した。今の僕は力も心もてんで話にならない。だから強くなる。誰よりも、ティオナ・ヒリュテさんよりも、お兄ちゃんよりも!誰にも馬鹿にされない位強くなって、ティオナ・ヒリュテさんに相応しい冒険者になる。それが僕の目標だ。僕だって男だ。どうせなら彼女の隣に立つじゃなくて、守れる人になりたい。お兄ちゃんからしたら不純かも知れないけど、強くなりたいって思いは本物だから許してね)
ベルの目標が決まった瞬間であった。
「ま、聞かなくても分かってたか!」
ーそしてベートさんー
「ミノタウロスから逃げる事すら出来ない奴なんか雑魚中の雑魚だもんな!」
ー貴方は確かに強者です。それは間違いありませんー
「それとも雑魚すぎて記憶から消したか⁈」
ーでも、だからと言って何を言っても許される訳じゃないですよねー
「正解だせ!正解!」
ー情けない姿を見て知っている僕を馬鹿にするならいざ知らず、見た事もないお兄ちゃんを馬鹿にするなんて許さないー
「雑魚は強者に釣り合わねぇんだからよ」
「お兄ちゃんは雑魚じゃない!」
「ベル……さん?」
「?…………⁈」
シルさんの言葉で自分が立っている事に、そして叫んでしまった事に気付いた。心の中で言ったつもりが思わず声に出してしまった。当然視線は僕に注目する。【ロキ・ファミリア】の視線が痛い。僕を『何だあいつ?』と思っているのだろう。特にベートさん。彼の目に恐怖する。まるで『何チョーシこいてんだ?』と威圧されてる様だった。僕は注目される恥ずかしさと、第一級冒険者の怖さにその場から逃走する。だがそれでも良かった。1番言いたい事は言えた。今はこれで良い。いつか面と向かって刃向かえる様に力をつけてやる。僕は防具を取りに帰らず、直接ダンジョンへと向かった。その時すれ違ったティオナさんに気付きもせずに。
〜ティオナside〜
ベートの言葉にムカついて思わず店を飛び出してしまった。
「ああ、やっちゃったな。雰囲気壊しちゃったかな?でもベートが悪いんだから!あんな事言ったから!」
ベルがお礼も言わずに逃げ出した事にその場で怒ったのは本当だ。あの時は助けたのに自分の顔を見るなり悲鳴を上げて逃げてくなんて失礼だなと思った。それをベートに馬鹿にされたから余計に腹が立ってしまったのも真実だ。
しかし、館に帰ってから冷静に考えてみて、あれは仕方無かったと思った。5階層で戦っている様な冒険者にとってミノタウロスは恐怖以外何者でもない。そんなものに壁際まで追い込まれて自分が助けなければ死んでいたのだ。気が動転していても不思議では無い。だから決めていた。もし会ったら謝ろうと。自分達の所為でそんな怖い思いをさせてしまった事を謝罪しようと。
それなのに今日、ベートはあの子を馬鹿にした。悪いのは全部自分達なのに。
「ティーオナッ!そんな怒るなやって」
どうやらロキが追っかけてきた様だ。
「ロキ…」
「ベートも酔っ払って口が滑っただけやし許してやってな」
「ロキ…………いや、普段からあの馬鹿狼は似たようなもんだよ」
ロキに言われて納得しかけてしまったが、冷静に考えて普段と変わってない事に気付く。ロキも舌打ちして小さく『バレたかッ』と言っているがバレバレだ。
「ま、ベートも悪気がある訳じゃないからなぁ」
「いや、悪気しかないでしょ。どう考えても悪気100%にしか聞こえないよ?」
「あれはベートなりの励ましみたいなもんなんや。大目に見てぇな」
あれの何処が励ましなのだろうかと思うティオナ。夜風に当たって大分興奮していた気持ちが落ち着いたが、今更あの場に戻る気にはなれず星を見ていた。そんな時、店から1人の少年が飛び出すのが見えた。しかも、あの時の少年だった。つまり彼はベートの暴言を全て聞いていた事になる。
「あ、ちょ………」
彼に謝罪する為、呼び止めようとしたが、途中で止める。
「ん?どうしたんや?ティオナ」
「ううん、なんでもない」
何故なら、彼が上を向いていたから。まるで何かが吹っ切れたかのように走り出していたから。彼の歩みを止めるべきではないと判断したのだ。
(謝んのはまた今度でいいかな?)
星空を見てティオナはそう思った。
ガシャン!!
ご愛読ありがとうございます。
今回は主人公以外からの視点でお送りしました。少しビビったんですよね。今回の話でベル視点を書こうとしていたら、感想でベル描写無さすぎ!って言われてしまって。やろうとしたのに⁈ってね。
まぁベル強化させるつもりなので、その時は自然とベルに焦点当てるつもりなんでしたけどね。ただそれがまだ来てなかったって感じです。
前書きにも書きましたが、思った事があればじゃんじゃん感想に書いてもらって構いません。ネタバレなど以外はお答えするつもりなので安心して下さい。
次回はとうとうエルの怒りが爆発します。……多分。またね!
魔神王の魔力『支配者」についてですが、今作ではあらゆる物理魔力に対して反応しますが、原作では魔力だけどの事でした。『支配者』の魔力をそのままにするか、原作同様、物理は関係無しにするかアンケートを取ります。変更してもあの時のセリフが一部改変するだけで、それ以外は矛盾が生じませんので安心して下さい
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