魔神の子のダンジョンライフ 〜最強を目指して〜   作:やってられないんだぜい

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 お久しぶりです。元気にしてますか?

 僕はビックリしました。低評価が沢山送られてました。前回そんなダメだったかな?

 まあ送られないよりはマシだ。そしてとうとうタイトルにもありますが長く続いた戦いが終わりを告げます。

 では本編どうぞ!


終戦

 過ぎてしまった事を考えても仕方無い。それより、今しなければいけないのは、氷から脱出する事だ。いつまでもこんな無様な姿を晒すのは己が許さない。それに凍傷による地味だが着実に溜まるダメージで体力を削られてしまう。

 

 全身に力をいれて氷を壊せないか試すが、氷によって固定されて手足に力の入らない今の状態ではビクともしない。流石はオラリオ最強の魔導士が放った魔法だ。そう簡単に破れる代物では無い。闇による攻撃も、単体では威力も空いだけだった。万事休す。この状況を打破する方法はないか?そんな時ヤミの頭に浮かんだのは魔神族の力を持つ者のみに許されたあの魔法だった。

 

 (もうあれしかねぇか)

 

 封印で能力が制限されている中、どの魔法が発動出来るか分からない。現状発動が確実なのは既に発現している魔法、つまり【獄炎(ヘルブレイズ)】だ。だが、正直に言えばこの魔法はどんな用途であれ対人戦で使う気は無かった。理由は【獄炎(ヘルブレイズ)】の圧倒的な殺傷性である。【獄炎(ヘルブレイズ)】はただの火属性魔法では無い。その名の通り地獄の炎。対象物が消し炭になるまで燃やし尽くす。通常では鎮火する事は魔神族以外不可能。魔法などの特殊な方法で消す以外はミノタウロスのようにその部分を削ぎ落とさなければいけない。

 

 もしこの魔法を対人戦で最大限使えばどうなるか?答えは地獄絵図の完成だ。この闘技場は火の海と化し、多くの人物は骨すら残さず焼き尽くされる。フィン達主戦力も攻撃を食らえば、例えなんらかの方法で鎮火し、生き残れたとしても一生消えない傷を残されるだろう。そうすればエルの人生は終わりだ。

 

 (………あれ?)

 

 ここで1つの矛盾に気付く。

 

 (俺ってなんで殺そうとしてるんだ?)

 

 氷で頭が冷やされたからか、又は戦い始めてから相当時間がたって冷静になり始めたからか、それとも戦い自体を楽しみだして目的そのものを忘れ始めたからか、はたまた全てなのか。兎に角その考えに行き着いたのだ。

 

 そもそも何故自分はベートをこの男を殺そうとしているか?大前提として、ヤミはエルの幸せを願っている。アイズと同様にエルの圧倒的な才能に魅せられ、エルの境遇についても思う所があったからだ。しかし、今の行動は真逆。エルの幸せを脅かす行為。殺人を犯せばタダでは済まない。しかも、オラリオでも屈指の人気を誇る飲食店『豊饒の女主人』で暴れ出し、オラリオトップクラスの【ロキ・ファミリア】のメンバーを殺害。満場一致で獄中生活だ。最強の冒険者を目指すエルの今後の人生に支障をきたすどころかゲームセットだ。幸せを願っていると口にしているが、彼はエルを不幸にする行動をとっていて矛盾が発生している。

 

 まず、暴走した原因はベートの所為で間違いない。エルもベートの発言に怒り心頭だったのは疑いようの無い事実だ。だとしても、エルはこの男に死んで欲しいと思うだろうか?自分にムカつく行動をした者を殺そうと思う人物だろうか?否だ。エルは確かに怒った。しかしエルの性格上、怒りの大半は悔しさからだろう。反抗心の塊みたいな奴だ。馬鹿にされて悔しい、こんな事を言われる自分に腹が立つ、必ず強くなって見返してやると言った感情渦巻いていた。それに自分でアイズに言ってたではないか。『エルだって本当はこんな事を望んでいない』と。どんなに嘘吐きでも自分の心だけは騙す事は出来ない。

 

 確かにエルを散々馬鹿にしたベートに対して、ヤミは彼を殺したい程憎いと思っていた。しかし闇に人格が切り替わった原因が暴走である以上、暴走の目的に反する行動は出来ない。エルの心を無視した行動を暴走状態では取れないのだ。そしてエルの心とベートの殺害は関係ない。つまり、この暴走はエルの意思とは関係ないと言う事だ。ヤミは『ベートを殺す』という何者かの意思で暴走したのだ。エルの負の感情を利用したヤミとエル以外の第三者の犯行であるという事だ。

 

 しかしヤミに心当たりが無い。

 

 (じゃあ誰なんだ?あの時聞こえた『殺せ』という声は?エルの心に混ざっていたあの声は?)

 

 もし誰かが外から精神魔法で侵入してきたらヤミは間違いなく気付く。だから断言出来る。精神系の魔法で侵入された形跡は無い。しかし、あの時エル以外の何者かの感情があったのは事実なのだ。

 

 思考を巡らせるが答えは出ない。それにいつまでもこの状況のままいても、寒さや凍傷によって体力が削られるだけだ。まずは脱出する事が先決である。

 

 【獄炎(ヘルブレイズ)

 

 ヤミは両手から【獄炎(ヘルブレイズ)】を発動する。これによって手を凍らせていた氷が解け、手首より先が自由になった。力が入れ易くなったヤミは拳を強く握り、力を外側に向ける。あれほどビクともしなかった氷に数秒でヒビが入る。そこからはドミノ倒しの様にヒビがみるみる広がり、やがてポップコーンの様に弾け飛んだ。

 

 バリンッ!!

 

 「?!きゃあ!!」

 「おっと、大丈夫っすか?」

 「ラウル、ありがとう」

 

 氷が破壊された衝撃で吹っ飛ぶアキナティをラウルがお姫様抱っこで受け止め、体勢を整えてから地面に降ろす。ヤミは変な格好で、凍らされて固まった肩をほぐす。そんななんとも無かったかの様な雰囲気を醸し出すヤミを見て1人が言葉を漏らす。

 

 「化け物め」

 

 【ロキ・ファミリア】のヤミへの評価が一変していた。戦いが始まった当初の頃は、『才能はピカイチだが攻撃が単調がなんなく隙を付ける。ファミリアとしては対処は簡単』だという評価だったのに対し、現在は『いくら攻撃しても倒れない化け物』へと変わっていたのだ。十数人のレベル4、5、6の近接部隊の攻撃を受け続け、何十本の矢で貫かれ、止めのリヴェリアの【ウィン・フィンブルヴェトル】を食らっても倒れない。それどころか、既に矢を抜き、闇で傷を回復させていた。

 

 【ロキ・ファミリア】は直ぐに戦闘態勢を取る。しかし彼等が予想だにしない言葉がヤミのくちから飛び出した。

 

 「突然で申し訳ないんだが、もう戦いを止めないか?」

 「はぁ?!」

 「何言ってやがんだ!!テメェが始めたんじゃねぇか!!」

 「勝てねぇと分かったからって都合が良いにも程があんだろ!!」

 「そんな甘い話があると思ってんのかぁ!!」

 「腰抜け!!」

 「黙れ。貴様らには聞いていない」ギラッ

 「「「「「「「うっ?!」」」」」」」

 

 ヤミの提案に納得していない者達が罵声を浴びせる。罵声を浴びせていた者達はフィン達一級冒険者を除く二級の冒険者の者達。この戦いでは数がの暴力でフィン達をサポートしただけに過ぎず、単体どころか、フィン達一級冒険者がいなければまともに戦えない連中だ。内面は戦いが終わってホッとしているが、【ロキ・ファミリア】というブランドを背負っているが故のプライドが罵声を浴びせたのだ。結果はヤミが凄むとビビってしまい、一瞬にして静かになったのだ。

 

 フィンは長年の経験からヤミが戦いを止めようとしているのは嘘では無いと思えた。しかしそれで直ぐ終わりにする訳にはいかない。部下への示しもつかないからだ。何より相手はベートを殺そうとした。そう簡単に終わる事では無い。

 

 「君が戦いを止めたいのは分かった。しかし理由を聞きたい。それといくつか質問もさせてくれ。それ次第では君の提案を受けよう」

 「団長?!」

 「これは団長命令だ」

 「ッ?!」

 

 部下が物言いを団長命令で黙らせる。

 

 「話が分かる奴で助かった」

 

 そこからヤミはアイズに話した事(暴走の事)と先程分かった事(エルの意思では無い事)を話す。当然信じ難い内容ではあったが、彼の生物としての特徴が、この世界で知られているどんな亜人とも違っていた事。そしてミノタウロスに負けた日の翌日に【ロキ・ファミリア】を苦しめる力を手に入れた事から、信じざるを得ない状況であった。

 

 ここからはフィンの尋問タイムである。

 

 「魔神族は不死身なのか?」

 「アイズから聞いていないのか?まあいい。答えは否だ。最強の魔神族といえど死は存在する。寿命以外での死もな」

 「ならばその方法は?」

 「そればっかしは言えない。教えてもし殺されでもしたら大変な事になる」

 「大変な事?何があるんだ?」

 「それも教えられない。言えるのは『死んでも死なない』。矛盾しているが事実だ」

 

 ヤミの『死んでも死なない』がどう言う意味なのか理解不能だった。それでも重要な事というのは分かった。尋問はまだ続いた。

 

 「ベートを殺さないと言うのは本当だろうね?」

 「そうだ。信じられないと言うなら今から神ロキの前で宣言してもいい。神は人が嘘をついたかどうか分かるのだろう」

 

 そしてとうとう最後の質問となった。

 

 「最後に聞かせてくれ。アイズとはどう言う関係だ?」

 「アイズがエルがミノタウロスと戦う姿を見て思う所があった様だ。俺自体はそんなに関係ない」

 

 アイズがレベル1の戦う姿如きに心を奪われるなんてなんとも信じられない彼等だが、ヤミにとってはそれが事実。

 

 「質問に答えてくれて感謝する」

 「こちらが吹っ掛けた戦いだ。処罰がこれくらいで済むなら安いものだ。怪我した者達のポーション代も渡そうかと思っていたがな」

 「別に大丈夫さ。君手加減してたろ?剣で斬られた者達の傷は全員等しく浅かった。本当にベート以外は殺す気が無かった様だね。お陰で大した出費じゃない」

 「さぁな。そいつらが避けるのが上手かったんだろ」

 「そう言う事にしておくよ。その代わりと言ってはなんだけどこんどの遠征で君の力を借りたいんだがどうかな?」

 

 フィンは次の遠征で最下層の到達を目指している。その為には少しでも戦力を補強したい。そこにヤミはうってつけだったのだ。しかし、ヤミは断る。

 

 「済まない。この体の主人格はエルだ。自由に切り替わる事は出来ない」

 「それは残念だね」

 

 この戦いは【ロキ・ファミリア】にとって悪い事だけでは無かった。団員に大怪我はいない。そして彼等にとって必要不可欠だったレフィーアの成長。プラスかマイナスかで言ったらプラスだろう。部下達の殆どはヤミを心底嫌っているが、フィンやリヴェリア等は成長する為の試練の1つとして受け入れていた。このまま何事も無かったかの様に終わるかと思いきや、まさかの事態が起こる。フィン達はそれを目にした瞬間、一気に警戒心を引き上げる。そんな彼等の行動に疑問を抱くヤミ。

 

 「どうしたんだ?」

 「それはこっちのセリフだよ。その闇の玉ほなんだい?」

 

 フィンに言われて初めて気付く。自身の周りにふわふわと浮かぶ凝縮された闇の玉を。

 

 「待ってくれ!俺は何もしていない!闇が勝手に!」

 「ならそれはどう説明するのかい?」

 

 自分がやった訳では無い。しかし、それは紛れもなく自分のヤミから作り出された物だった。これで理解した。いや、再認識した。確かにこの暴走はエルの意思では無い。それでも暴走である事に変わりないと。ヤミ意思とは無関係に右腕がゆっくり上がる。

 

 「止……め……ろ……!」

 

 ヤミが必死に対抗するが止まる気配はない。そしてテッペンまで上がりきった。嫌な予感がしたヤミは叫ぶ。

 

 「避けろぉ!!」

 

 ヤミが叫んだ瞬間に右腕はフィン達へ向けられた。それと同時に闇の玉は猛スピードで彼等を襲い始めた。ビー玉くらいの大きさの塊が変幻自在に襲いかかってくるのだ。全方向から。あまりの不意打ちに誰も対処出来なかった。ベートでさえも、フィンでさえも。リヴェリアでさえも。

 

 リヴェリアは最悪近くにいた者だけは守ろうと防護魔法を詠唱するが、完成させる暇も与えず、闇の玉は彼女の四肢の付け根を貫通した。他の者も同様に付け根を貫通されて立ち上がる事すら困難になる。

 

 そんな彼等を見下ろす様に、ヤミの足は勝手に地面に横たわるベートへと動いていた。闇の玉はヤミと戻り、再び剣を創り出した。このままでは殺してしまう。そうすれば全てが終わる。エルの幸せを願った筈が、自分という闇が存在する所為で彼の幸せを奪う事になる。だが、体が思う様に動かない。暴走に反した行動をしようとした自分はこの体を動かす権利を剥奪されたのだ。しかし、意識はある。だからこそ、その間に聞こえてくる様々な怨嗟の声が余計にヤミを苦しめていた。

 

 「貴様ぁ……」

 「騙しやがって…」

 「卑怯者がぁ…」

 「許さねぇ…」

 「化けてでも貴様を呪い殺してやる……」

 

 そして、とうとうベートの目の前まで来てしまった。剣は高々と掲げられる。

 

 「テメェ、満足かよ。満足だよなぁ!復讐が成功するんだからよ!」

 「……ベート」

 

 ベートは最後の最後までベートだった。これから殺される状況でも自分を見失わない。それは紛れもなく誇り高い戦士だった。

 

 「さっさと殺せ!テメェの言う事が真実なら俺を殺せば暴走は終わんだろ!なら殺せ!もともと俺とテメェの勝負だ!俺が負けたから殺される。それだけの事だ!自然界では当然のルールだ!だがそれ以外は別だ。俺以外の関係ねぇもんを殺してみろ!タダじゃおかねぇぞ!」

 「ベートさん……」

 

 普段のベートからは考えられない仲間思いの言葉に涙をこぼす。人は追い詰められたりした時に本性を垣間見る。

 

 「さぁ!殺れ!」

 「………済まない。お前は駄犬でも雑魚でも弱くも無かった。弱いのは……この俺だった」

 

 そう言ってヤミは剣を振り下ろす。ベートへ、【ロキ・ファミリア】へ、ヘスティアへ、ベルへ、そしてエル。自分に勝つ事が出来なかった弱い自分への申し訳ない気持ちを乗せた剣はベートの体を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    ……貫く事は無かった。

 

 ガシッ!!

 

 何者かがベートを貫こうとする剣を素手で掴んだのだ。しかも彼等にとっては最も信頼できるタンク役のドワーフ。

 

 「ふう、やれやれ。間に合ったわい」

 「?!…へ、随分遅かったじゃねぇか。てっきり爆睡してるかと思ったぜ」

 「ふんっ!少し見ぬ間に随分とカッコいいセリフを吐く様になったじゃねぇか。ツンデレとやらは治ったのか?」

 「「「「「「「「「「ガレス!!」」」」」」」」」」 

 

 ガレスが間一髪で助けに入ったのだ。しかもそれだけでは無い。ガレスがいると言う事は彼女もいるのだ。

 

 「私だっているよ!」

 

 ヤミの左脇腹を蹴る少女、ティオナの参戦だ。

 

 「ティオナさん!」

 「ごめんね。こんなに遅れちゃって。ガレスが全然起きないんだもん」

 

 2人の復活に彼等のテンションは最高潮に達していた。しかし、彼等を抜きにした【ロキ・ファミリア】でも倒せなかった化け物だ。その化け物相手に2人で挑むという絶望的状況である事には変わりない。彼等だってそこら中に倒れる仲間を見れば彼の強さは理解出来るだろう。しかし、彼等の表情は複雑そうにしていながら、絶望感漂う表情を欠片もしてない。何故なら、【ロキ・ファミリア】にとって犬猿の仲だが、力は何処よりも認めているあのファミリア参戦しているからだ。

 

 「オッタル、アレン、お願い」

 「「ハイ!」」

 

 透き通る女性の言葉に2人が動く。女性の名前はフレイヤ。【ロキ・ファミリア】とオラリオ双璧を成す【フレイヤ・ファミリア】の主神だ。美の神として知られている。オッタルとアレスはそんな【フレイヤ・ファミリア】の団長、副団長の関係だ。アレンがレベル6でオッタルはオラリオ最強のレベル7だ。そんな彼等は普段の仲は最悪だが、フレイヤの命令があって場合のみ協力する。しかも戦いに参加するのが彼等2人なだけで【フレイヤ・ファミリア】が幹部含めて勢揃いしていた。

 

 「しっかりついてこいよ鈍足」

 「安心しろ。お前に合わせるくらい大した苦労じゃない」

 「チッ、いちいち上から目線でムカつくんだよテメェ。出来るもんならしてみやがれ!」

 「無論そのつもりだ」

 

 そこからの戦闘は圧巻だった。傷を直したとはいえ体力は戻っておらず疲労したヤミを完膚なきまでに叩き潰す2人。お互いの行動を先読みし、ヤミが吹っ飛ぶ場所に先回りして繰り返される超速連打。目で追うのがやっとだった。彼等の戦闘を見てフィン達は思い知らされた。『自分達はオラリオ最強の一角だと言われて思い上がっていただけだ』と。彼等は迷宮攻略に力を注いだら自分達の記録を突破されてしまうと。

 

 そして、アレンがヤミをかち上げると既に上空で待っていたオッタルがダブルスレッジハンマーでヤミを闘技場に勢いよく叩きつけた。その衝撃で砂埃が舞う。砂埃が止むと、気絶したヤミを2人が見下ろす光景が目に飛び込んだ。自分達が倒せなかった相手をものの数秒で倒す2人が、それこそ化け物に見える程だ。

 

 「チッ、【ロキ・ファミリア】が随分と苦戦してるからどんな奴かと思えば大した事無かったな。こんな奴相手に苦戦するなんざ奴らも落ちたものだぜ」

 「フレイヤ様、こいつをどうしますか?」

 「うーん、とりあえず連れて帰るわ」

 「「分かりました」」

 「まっ、待ってくれ!」

 

 気絶したヤミを担いで連れて帰ろうとする【フレイヤ・ファミリア】を止めるフィン。

 

 「彼の処遇は僕達に任せてほしい」

 「でも倒したのはうちの子供達だけど?」

 

 自分達がヤミの処罰を決めると提案するが、フレイヤの言葉に何も言い返せない。結局彼を止めたのは自分達では無く彼等だからだ。この戦いに終止符を打ったのは彼等なのだ。しかし、まだ完全に終わった訳では無かった。ヤミの指先がピクッと動くと彼を背負っていたオッタルの肩から離脱する。

 

 「まだ気絶してなかったか…………いや、気絶してもなおと言った所か。その根性は賞賛に値する」

 

 ヤミは確実に気絶していた。それでも動いているのは彼のスキル【寝言】が発動しているからだ。意識が無くとも戦う事が出来る。

 

 「……うぅ……ガアッ!!」

 

 獣の様にオッタルに飛びかかるヤミ。そんな彼とオッタルの間に割り込んだ神物がいた。

 

 「エル君!もう止めて!!」

 

 ヘスティアだった。2人の間に割り込むと両手を広げたのだ。ヤミは彼女に激突する寸前で止まり、自分の邪魔をする彼女を威嚇する。しかし、そんな威嚇をされても彼女は全く引かなかった。

 

 「もう良いんだよ。君の思いは十分あの子達に伝わったよ。もう休んでも良いんだよ」

 

 威嚇するヤミにゆっくり近づくと彼を抱きしめた。周りから『危ない!』『離れて!』と聞こえても変わらず抱き続けた。彼を落ち着かせる為に背中を優しくさすって。

 

 「グルゥ…ガァッ!!」

 「イッ!!」

 

 ヤミは自分を抱きしめるヘスティアの肩に噛み付く。肉が見えそうになるまで強く噛み付く。それでも彼女は話そうとしなかった。

 

 「大丈夫だよ。私はエル君の味方だから」

 

 ヘスティアが優しい言葉を投げかけ続ける。すると段々ヤミの噛む力が弱くなり、とうとう離した。

 

 「私は大丈夫だよ。エル君だって辛いよね。本当はこんな事する子じゃないって僕は信じてるよ。今日もダンジョン攻略頑張ってたもんね。疲れたでしょ。もう休んでも良いんだよ。大丈夫。エル君は僕が守ってあげるから」

 

 母親の様な温もりに包まれたヤミはそのまま【寝言】の効果も切れて寝てしまったのだ。

 

 戦いが始まって既に3時間が経過していた。こうして長い戦いは終わりを告げたのだった。

 

 

 

 




 ご愛読ありがとうございます。

 皆さんお疲れ様です!vsロキファミリアもとうとう終わりました!長かったね。豊饒の女主人編は約2ヶ月。そしてヤミが登場してからは約1ヶ月。投稿ペースが落ちていたのもありますが大変でした。それでもついてきてくれた皆様には感謝の気持ちでいっぱいです!大変ありがとうございます。

 次回はその後のヤミの処遇などを1話、多くても2で終わらす気なのでそれが終わったらまた本編ストーリーに戻ります。怪物祭では彼女が活躍するので期待して下さい。

 では次回もお楽しみに!またね

魔神王の魔力『支配者」についてですが、今作ではあらゆる物理魔力に対して反応しますが、原作では魔力だけどの事でした。『支配者』の魔力をそのままにするか、原作同様、物理は関係無しにするかアンケートを取ります。変更してもあの時のセリフが一部改変するだけで、それ以外は矛盾が生じませんので安心して下さい

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