魔神の子のダンジョンライフ 〜最強を目指して〜   作:やってられないんだぜい

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 前回までのあらすじ

 オラリオを追放されて旅をしていたゼウスは捨て子を拾った。それも2人。

 以上!では本編どうぞ!

 

 評価してくださった忍びさん、遊戯君さん、カイン102222さん、本当にありがとうございます。これからも頑張るので応援よろしくお願いします。

 


 夢

 

 ベルを拾ってから5年の月日が経った。2人は大きな病気を患う事も無く、すくすくと成長した。ゼウスもこれまで世話になったババにお礼を言ってエルアコスとベルと共に家を出る。出るとは言っても新しい自分達の家が出来たからそこに移るだけだ。村を出た訳では無い。

 

今日はベルの大好きな英雄談を読み聞かせていた。

 

 「凄い!英雄って格好良いな!」

 「そうじゃ。更に英雄になるとハーレムも付いてくる!」

 「ハーレムって何?」

 「ハーレムと言うのはじゃな。可愛い女の子と仲良くなる事じゃ、それも沢山じゃぞ!右を見ても、左を見ても、後ろを見てもみーんな可愛い女の子じゃ。凄いじゃろ!」

 「うん!凄いよ!ね、お兄ちゃん!」

 「ああ、そうだな」

 

 ベルは英雄談が大好きだった。どんなに落ち込んでいてもこれを聞かせてやれば、たちまち元気になる。だがそんなベルとは対象的に、エルアコスはそこまで興味を示していなかった。ベルがいる時は空気を読んで返事はするが、自分から英雄談を聞きたいと言ったことは1度も無かった。このくらいの年齢の男の子なら英雄に興味を示すものなのだがエルアコスは違った。

 

 エルアコスが外で遊ばなくなったのもこの頃からだった。ベルは他の子達と遊びに出掛けるのに対し、エルアコスは畑仕事を手伝ってくれた。『一緒に遊んでこい』と言っても『つまんない』と言って遊ぼうとしない。馴染めていないのかと心配したがそうでも無かった。普通に同年代の子と喋るし、トランプ等の家の中で出来る遊びはよく参加している。

 

 エルアコスの身体能力は子供達の中でも群を抜いている、だから畑仕事を手伝ってくれると効率よくなるしとても助かる。だからこそ余計エルアコスの事が気掛かりになる。畑仕事を自ら進んで手伝ってくれるなら、身体を動かすのが嫌いな訳では無いだろう。ならどうして皆と遊ばないのか。ゼウスは心配だった。

 

 夜中、ゼウスが1人窓から星を眺めているとエルアコスが起きて来た。

 

 「おじいちゃん、トイレぇ」

 

 目を擦りながらゼウスの裾を掴むエルアコス。こういうところはまだまだ子供だなと思い顔が綻ぶ。エルアコスの手を繋いでトイレまで一緒に歩く。今のエルアコスなら本当の事を聞けるかも知れないと思い質問した。

 

 「なぁエルアコス、身体動かすのは好きか?」

 

 確認を込めて聞いた。もしかしたらそんなに身体を動かすのが好きでは無いかも知れない。畑仕事をしている自分を見て大変そうだなと子供ながらに気遣ってくれただけかも知れない。

 

 「うん、大好きだよ」

 

 違った様だ。とりあえずは安心した。エルアコスが無理して無い様で。子供を支えるはずの親が、逆に支えられていたなんて笑い事では無い。だがそれなら何故、みんなと一緒に遊ばないのか気になった。

 

 「なら何故ベル達と外で遊ばないのじゃ?確かにお前が仕事を手伝ってくれるのは助かる。でも遊ぶ方が楽しいじゃろう。親としても気になるのじゃ」

 「……つまんないよ。だって、本気出せないんだもん」

 

 エルアコスは寂しそうに言った。恵まれた者故の苦労がそこにはあった。

 

 「どんな遊びをしても簡単に勝てるんだもん。鬼ごっこも、ボール当ても。なにをやっても簡単に勝てるんだ。最初は楽しかったよ。やっぱり勝つと嬉しいから。……でも何度かやってるとつまんなくなっちゃった」

 

 ゼウスは今初めて気付いた。エルアコスが普通の子より身体能力が高い事を。確かにこの村の子供より身体能力が高い事は知っていた。それでも特別高いとは思わなかった。少ないとはいえ、何人か見た事あるからだ。しかし、ゼウスもうっかりしていた。その人は神の恩恵を貰った人だった事を。長年最強ファミリアの主神をしていたゼウスは冒険者を基準に考えてしまう癖がある。だからこそ、エルアコスの能力の高さに異常さに気付けなかったのだ。

 

 ゼウスは情けないと思った。この子の悩みに気付けなかった自分に。いつもこの子の何を見ていたのだろうと。よく考えれば分かる事なのに。5歳で重労働である畑仕事を手伝っている時点で普通では無い事を。

 

 それと同時に心が踊った、この子は将来大物になると。何かを成し遂げる者は小さい頃から周りとは違う。エルアコスの身体能力が良い例だ。しかも恩恵無しにこの身体能力はゼウスの知り合った同じ恩恵無しのヒューマンの中でも歴代トップレベルだろう。それを5歳児でだ。これ程の逸材を眠らせておくのは勿体ない。そう思ったゼウスはある提案をした。

 

 「エルアコス、お前は冒険者に、英雄にならないか?」

 

 エルアコスは目を丸くした。

 

 「お前ならきっと英雄になれる。ワシの直感がそう告げているのじゃ」

 「冒険者、英雄か…」

 「そうじゃ。どうじゃ?本気でなりたいならワシが鍛えてやる!」

 

 ゼウスは新たな英雄の登場に自身の血が騒いだ。これまで何人もの英雄を育てて来たゼウスだからこそ、この子を育てたいと。しかしこの時忘れていた。エルアコスが英雄に興味を示していなかったのを。

 

 「うん、いいや」

 「なん……じゃと?」

 「僕は英雄にならないよ」

 

 そう答えた後、エルアコスはトイレに行こうとしていたのを思い出し、急いで駆け込んだ。ゼウスは彼が出るまで一言も言葉を発さなかった。発せなかったのだ。ショックだったから。逸材で言えば文句無しのNo. 1。しかしこの世は才能だけでは勝てない。本人にやる気が無ければ実力が簡単に逆転してしまうのが人生だ。そもそも興味無く、冒険者にならなければスタートラインにすら立つ事は叶わない。2人だって好き嫌いがある。親として、自分の好きな様に生きて欲しい思いはある。それでも目の前に英雄になれる逸材をみすみす手放すのはあまりにもショックが大きかった。

 

 「ふぅ、危なかった」

 「なぁ、エルアコス。本当に英雄にならないんじゃな?」

 

 トイレを済ませたエルアコスに再度確認した。もしかしたら自分の聞き間違いではないかと淡い期待を込めて。しかしその思いは簡単に打ち破られた。

 

 「うん」

 「そ、そうか……なんでか、聞いてもよいか?」

 「だって、英雄ってつまらなそうじゃん」

 

 ゼウスの最終確認とも取れる質問にエルアコスはとんでもない事を言い出した。

 

 「つ、つまらない?」

 「うん。だっておじいちゃんの話聞いてると英雄ってなんかあると誰かの為に戦わなきゃいけないでしょ。僕そんなのやだもん。誰かに縛られる人生なんてやだよ。自由に生きたい。だから僕は英雄じゃなくて最強の冒険者になるよ」

 「最強の冒険者?それは英雄と何が違うのだ?」

 「全然違うよ!英雄はみんなのヒーローでしょ。僕は誰かのヒーローになるつもりはないもん。英雄みたいにみんなに褒められたり認められたりしなくても良い。そんなの興味無いもん。ただ、数人の友達に知って貰えればそれで充分。英雄はベルにでもなって貰えば良いよ」

 

 エルアコスに冒険者にならないと言う考えは無かった。それは魔物なら満足のいく戦いが出来ると思ったからだ。エルアコスは魔物にライバルを求めたのだ。聞く人によれば頭が可笑しいと馬鹿にされるかも知れない。それでもエルアコスは良かった。この歳で誰かに理解されようと思っていない。自分が満足すればそれでよかった。

 

 「だからおじいちゃん。仕事の合間の時間で良いから僕に戦いを教えてくれない?」

 「……大変じゃぞ」

 「うん、それで良い。楽より全然良いよ」

 

 こうしてゼウスとエルアコスの特訓は始まった。身体能力を鍛えるところから初めて、鍛えた筋肉を支える様にした。鍛えた筋肉も使いこなせなければ意味がない。森でのゼウス相手の鬼ごっこ。エルアコスの足を持ってしても全く捕まえられなかった。

 

 「ほらエルアコス!捕まえてみろ!相手はジジイじゃぞ!」

 「はぁ、はぁ、待てぇ!」

 

 身体能力ではエルアコスの方が上だった。それでも捕まえられないのはゼウスが上手いからだ。何も逃げる為に必要なのは足だけでは無い。ここは森、以下に自然を活用するかだ。それに相手の行動を予測する。それがエルアコスはまだまだだった。

 

 他にも剣術の特訓もした。何故剣なのかというと、エルアコスが捨てられていた場所に落ちていたのが剣だからだ。何かの縁だと思い剣を学ばせた。勿論他の武器も一通り学ばせたが剣が1番筋が良かった。歳が2桁を超える頃には模擬戦を中心に行ったがエルアコスは一向に勝てない。その度にこの男は本当に人間なのかと疑問する様になった。

 

 エルアコスがゼウスと修行をこなしていると、知らない間にベルはハーレムを作っていた。それを見たエルアコスとゼウスは、

 

 「ジジイ、あれが英雄になる器だよ」

 「ベルめ!羨まけしからん!そしてエルアコス、ワシの事をジジイと呼ぶな。おじいちゃん、又はお爺様と呼べ」

 「鬼ごっこ中に孫に向かってお尻ぺんぺんをして馬鹿にし続けた人はジジイで充分だ」

 「なんじゃと!いつまでもこの老いぼれに勝てない弱者が!お前が最強の冒険者になるなんて100年早いわい!」

 「100年経ったらもうジジイじゃねぇか!ジジイの強さが異常なんじゃボケェ!」

 

 いつの間にかエルアコスは口が悪くなっていった。理由は彼が言った通り、修行中のゼウスの行動がエルアコスの感に触る事ばかりだったからだ。そして反抗期に突入したのだ(当時11歳、現在13歳)。

 

 ゼウスの話が本当ならベルは確かに英雄の器だろう。誰にでも優しく、常に笑顔で周りを元気にする。そして異性にモテる。英雄になる要素盛り沢山だ。ただ一つ、強さを除いたら。エルアコスはゼウスに以前こう言った。

 

 「ベルは英雄に憧れているのは知ってるでしょ。だからもし英雄になる為に強くなりたいって言ったら俺みたいに修行をつけてよ。おじいちゃんがベルは冒険者に向いていないって思ってるのは知ってる。ベルの優しさは言い換えれば甘さ。悪い人に利用されるかも知れない。そう言う危うさを持ってる。でも、ベルがなりたいって言うなら俺は応援したいんだ!お願い!」

 

 エルアコスはゼウスに頭を深く下げてまで頼み込んだ。誰かにやれと言われたって強くならない。だからもし本人が言ったならサポートしてあげようと思った。その結果、ベルは一言もつよくなりたいとは、修行したいとは口にしなかった。勿論ベルはエルアコスが修行しているのを知っているだろう。毎日仕事とは思えない程汚れて帰ってくるし、修行を仄めかす事を何度も会話に組み込んだ。終いには修行用の模擬刀をわざと目につくところに置いた。ベルが試しに持ちたいと言ったから持たせる。模擬刀は素人の想像よりずっと重い。それを子供のベルが持ったら当然ふらつく。

 

 「お兄ちゃんは持てるの?」

 「あぁ、いっぱい修行したからな」

 

 そう言って片手でヒョイっと持ち上げる。ベルはそれを見て凄いと連呼した。ただそれだけだった。自分も修行するとは言わなかった。だから理解した。ベルは英雄になれる器は持ってる。しかし現時点では資格は皆無だった。努力をしない者に資格はない。この時点でのベルはただ英雄に憧れているだけの子供だった(12)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 2年後。ゼウスは忽然と姿を消した。一通の手紙を残して。

 

 「ベル、エルアコスよ。冒険者になりたければオラリオに行け。おじいちゃんより」

 

 その一言しか書いていなかった。エルアコスとベルはオラリオを目指す。祖父の言う冒険者になる為に。

 

 「楽しみだな〜可愛い子いないかなぁ〜」

 

 ベルは鼻歌を口ずさむ。能天気に。エルアコスはこの能天気さを弟ながら鬱陶しく思っていた。

 

 

 




 ご愛読ありがとうございました。
 
 ゼウス、死亡?てか原作でもゼウスってどこにいるんでしょうかね?天界?それとも地上?さっぱりです。

 そして次回からオラリオで冒険者生活がスタートします!因みに皆さんの禁句ってなんですか?エルアコスにも当然禁句は存在します。ヒントは見た目です。

 では次回をお楽しみに。またね

魔神王の魔力『支配者」についてですが、今作ではあらゆる物理魔力に対して反応しますが、原作では魔力だけどの事でした。『支配者』の魔力をそのままにするか、原作同様、物理は関係無しにするかアンケートを取ります。変更してもあの時のセリフが一部改変するだけで、それ以外は矛盾が生じませんので安心して下さい

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