魔神の子のダンジョンライフ 〜最強を目指して〜 作:やってられないんだぜい
ヘスティアはまずあの場に自分達もいた事を伝えた。
「昨日の夜ね、実は僕達も『豊饒の女主人』にいたんだ」
「え?!そうだったんですか?!」
ベルは全く気付いていなかった様だ。確かに【ロキ・ファミリア】が入店した時みたいな言葉は自分達の時には無かった。
「僕達は【ロキ・ファミリア】が来る前に店に入ったからね。だからそれ以降のあそこであった出来事なら知ってるよ。突然【ロキ・ファミリア】のベート・ローガ君が酒に溺れて君達を傷付けた事も。そして、それに対して君が怒鳴って店を飛び出した事も。見事だったよ。『お兄ちゃんは雑魚じゃない!』ってね。格上相手に立ち向かうなんて中々出来る事じゃ無いよ。立派立派」
「えへへ、ありがとうございます//」改めて振り返ってみると結構恥ずかしいですね」
ベルはオラリオに来たから褒められる機会が殆ど無かった。半月なのだから当然と言えば当然なのだが、今まで甘やかされて育って来た為長く感じるのだ。だがその分余計に小っ恥ずかしくもなり、頰を掻く。
「あの時のお兄ちゃん言葉。もしかしてと思ったけど見てたんだ。なら少しは僕だってやるって姿を見せられたかな」
数日前に情けない姿を見せていたので、別れる前に良い格好を見せられて少し安心する。しかし、そんな独り言をいうベルに対してヘスティアは申し訳無さそうに話した。
「嬉しそうにしてるとこ悪いんだけど……エル君は恐らくあの時君の勇姿を見れていない。でも勘違いしないでほしい。エル君がそれを知っていたのは、決して誰かに教えてもらったからとかでは無いから」
「え?それは一体……」
「……あの時のエル君は暴走間近な状態だったんだ。本人曰く、闇に覆われて何も見えない聞こえないなんていう状態だったらしい。…っていうか話ついてけてる?暴走とか闇って言われて分かる?そこまでは詳しく無かったりする?」
「いえ、それは大丈夫です。なんとなくですけど理解出来ます。でもなんでそんな状態に?」
「ミノタウロスの一件に君との喧嘩。少しは和らいでいたとはいえ精神が不安定な時に彼が1番気にしている事を貶されたのが原因だと思う」
「そんな……でもそんな状態でどうして僕の言葉が?」
「届いたんだよ。君の強い想いが彼の心にね。僕が横でどれだけ言っても無反応だった彼が、君の叫びを聞いて君の名前を呟いたんだ。少し妬いちゃうよ」
「お兄ちゃん……ありがとう」
ベルは、自分は兄に嫌われているかもと思っていた。強くて勇敢で何事にも1人でこなしてしまう孤高という言葉が似合っていた兄。それに比べて泣き虫で弱虫で浮ついた話が大好きで。それでいて可愛げがあって兄より人に好かれていた自分。兄と正反対な性格で嫌われる要素満載だ。実際に祖父を交えない一対一での会話は少ない。あの一件で不確かな絆は壊れたと思った。そもそも絆など元から存在せず、自分の事は興味すら無いのかと思った。でも違ったのだ。兄は少なからず自分の事を想っていたくれたのだ。それがとても嬉しかった。
ヘスティアは嬉しさで涙目になるベルを見て兄弟って良いなと思い、行方不明になっている自分の兄弟の無事を祈った。
「でも暴走は止められなかった」
「……」
「意識が戻ると思ったのも虚しく、君の言葉を聞いても も止まらないベート君の一言で完全に暴走。その時の衝撃波で僕は一時気絶してしまったんだ。聞いた話によると魔神族特有の能力である闇の暴走によって現れたエル君の別人格である通称『ヤミ』。彼がエル君が暴走する原因を作ったベート君へ怒り、彼の命を狙い始めた。当然はそうはさせまいと抵抗するロキ達とで戦争が勃発。場所を闘技場に移しての戦闘でヤミ君が君辛うじて勝利したと思われた矢先、先に戦線離脱していたティオナ君とガレスランド・ロック君が戦線復帰。更に助太刀に入った【フレイヤ・ファミリア】団長の【
でもまだ終わらない。ヤミ君はスキル【寝言】で無意識ながらも立ち上がり抵抗しようとした。そこで気絶から復帰した僕が身を挺した必死の説得によって彼の戦意は消え終戦。それで今日…じゃなくて昨日、闘技場からギルド最深部の普段は使われていない裁判所へ直行。オラリオで唯一存在する裁判所。その者の存在次第でオラリオ、ひいては世界の行く末が決まると思われる時のみに使用される裁判所。通称【
「……………」
ベルはあまりの話のぶっ飛び具合に空いた口が塞がらなかった。
「待って下さい神様。話がぶっ飛び過ぎてて何が何やら」
「うん、1発で理解出来ないと思っていたから気にしないでいいよ」
「一つ良いですか?いや、聞きたい事が山ほどあるんですけどまず一つ。お兄ちゃんが【ロキ・ファミリア】と戦争ってマジですか?」
「うん、本当」
「いや!おかしいでしょ!いくらお兄ちゃんが強いって言ったってそれはレベル1の冒険者になって半月でって言う話でしょ!それがどうしたら都市最大派閥の一角って言われる【ロキ・ファミリア】と戦争にまで発展するですか!そしてなんでちゃっかり勝ってるんですか!!!はぁ、はぁ」
「ベル君……ナイスツッコミ!」
「ナイスじゃないでしょうが!こんな場面で!」
ベルは息を切らす勢いでヘスティアの言葉にツッコミを入れる。ヘスティアはベルの見事なツッコミにサムズアップをかます。
「まぁなんで戦争出来るまで力が跳ね上がったかと言うとカクカクしかじかなんだ」
「まさか、元々お兄ちゃんの力は封印されていて、それが暴走によって一時的に封印が解けたから【ロキ・ファミリア】と渡り合う事が出来たなんて。そして暴走には必ず目的が存在して、それを達成するか戦闘不能にされるまで、別人格のお兄ちゃんの意思も関係なしに暴れるなんて………」
「ご説明ありがとう」
ベルに【
(詳しく知りたければ『第6話 ステイタス』と『豊饒の女主人』編を読み返してね!)
それを理解した上でヘスティアに質問する。
「でも、それならどうしてお兄ちゃんは解放されたんですか?その、別人格のヤミって人の言う通りならお兄ちゃんは魔神族って言う聞いた事もない種族なんですね?それも暴走する可能性を秘めている。確かにお兄ちゃんが今まで通り冒険者でいられるのは嬉しいんですけど、どうしても気になって。それに暴走状態とはいえお兄ちゃんのした行為は簡単に許される事じゃない。それの処罰がファミリアのコンバート。罰じゃないですよね」
ベルの疑問は最もだった。理由はどうであれ、ベルの行為は他ファミリアの眷属への殺人未遂及び、暴行。止めに入った店員への暴行及び、店の器物破損及び、営業妨害。そして暴走という爆弾を抱えた未知の種族。その処罰がファミリアの【
「それは僕も同意見だよ。いくら自分の眷属だからってこの決定には驚きだったよ。【
「神様……」
「でもとりあえずはエル君は無事なんだ。まぁ【
「レベルアップ!」
「そう。レベルアップすれば情報は出回る。エル君の耳にも届くと思うよ」
「そうですね!僕……いや、俺頑張ります!」
「その意気だ!頑張るぞ!えいえいおー!」
「おー!」
2人になったのは寂しくなるが決まってしまったのはしょうがない。気になる事はあるがとりあえず兄は無事だったのだ。それに兄が自分から悪い事をするとは思えない。コツコツと善行を積んで行けばいつかは解放されて戻って来れるかもしれない。それまで自分は兄に負けないように頑張るだけだ。
「そう一眠りする前にエル君の事で一言いい?」
「はい、なんでしょうか?」
「エル君もね、ベート君に言い返してたよ。『俺の弟をお前が語るな!』ってね。エル君さっき僕に『血は繋がってなくても兄弟だ』って言った時、不安だったでしょ。エル君もそう思っているのか、思ってるのは自分だけなんじゃ無いかって。安心して良いよベル君。君達は血が繋がって無くてもちゃんと兄弟だから。エル君も思ってるから」
「っ!はい!ではお休みなさい!」
ベルは今日のダンジョン攻略の為に布団に入り、体を休める。
ヘスティアはそんなベルに行ってない事があった。
(ごめんねベル君。実は【
『もしこの賠償金をベルが知ったら一緒になって背負ってしまう。あいつはそういう優しい奴なんです。別にもう赤の他人だからなんて寂しい事を言うつもりはありません。ヘスティア様の気持ちもとても。嬉しいです。でもこれは俺の罰なんです。自分で犯した罪は自分で償いたいんです。安心して下さい。俺は最強になる男ですよ。そんな額パパッて稼ぎますよ!』
(エル君。困ったら相談に乗ってよ。こんな僕でも君の家族なんだからさ)
……………それにしてもやっぱりあの裁判は何処か可笑しかった。特にウラノス。まるでエル君を……いや、もしかして。でも、もしそうだとしたら一体どうして……」
魔神王の魔力『支配者」についてですが、今作ではあらゆる物理魔力に対して反応しますが、原作では魔力だけどの事でした。『支配者』の魔力をそのままにするか、原作同様、物理は関係無しにするかアンケートを取ります。変更してもあの時のセリフが一部改変するだけで、それ以外は矛盾が生じませんので安心して下さい
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