魔神の子のダンジョンライフ 〜最強を目指して〜   作:やってられないんだぜい

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地獄の炎

 エルはあまりの急展開にその場で立ち尽くす。目を点にさせて。

 

 「え…………エッ?ベル?何してんだ?どうせ壁の後ろからひょっこり顔出すんだろ。ダンジョンは危険なんだからふざけるんじゃないぞ」

 

 エルは点になっている目をパチクリさせながらベルが曲がっていった壁に手を掛けて見る。こんな場所でかくれんぼなんて子供みたいな事をするな、そう言おうとして。しかし、そこにベルの姿は無かった。『いきなりベルはどうしたんだ』と、慌てて思考を巡らす。

 

 「待て!落ち着け、考えるんだ。ベルはあの時、何と言った。かった、そう叫んだ。つまり勝利の雄叫びだ。そしてその場から走り去った。…………うん……うん。嬉しかったんだろうな。その後はなんと言っていた?遠くから聞こえたベルの声」

 

 『かみさまああああああああ!僕出来ましたよおおおおおおお』

 

 たしかそう言っていた。そこである結論が出る。

 

 「あいつ、モンスター倒したのが嬉しくなってヘスティア様に報告しに行ったのか?」

 

 そう思うと心配してたのが馬鹿らしくなる。ベルの行動には呆れて溜め息が出た。我が弟ながら恥ずかしいと。

 

 「1体モンスターを倒したくらいで報告すんなよ。そんの事じゃいつまでも強くなれないぞ、ベル」

 

 ここから入り口までは一本道。少なくとも迷うことは無いだろう。入り口へ無事に帰れるだろう。エルは1人でダンジョン探索を続けた。。今日の飯はしっかり持って来た。朝と同じジャガ丸くんである。これが中々美味い。だがダンジョンで稼がなければ食えなくなる。あんな事してる様じゃベルには期待出来ないだろうから自分が稼ぐしか無い。エルに食費を稼ぐという新たな目的が出来た。

 

 数分歩くとモンスターと遭遇した。ゴブリンだ。敵は1体。エルは相手が気付く前に壁を走り背後に回り込み、壁を蹴ってその勢いのまま真っ二つに斬る。それからゴブリンとコボルトと遭遇して何度か戦闘を繰り返したが全て一撃で終わった。

 

 

 

 エルはある程度1階層のモンスターの強さが分かったところで、魔法の実験に移ろうとした。

 

 「ふぅ、ダンジョンって言っても1階層。ゴブリン、コボルト相手なら対処は簡単だな。なら、試して見るかな」

 

 エルは魔石を拾い終わると深呼吸する。どんな能力かも分からない魔法を戦闘でモンスターに向けて撃つわけにはいかない。もしそれが対象を強化する魔法だったら自分が危険になる。違う効果であっても戦闘はほんの一瞬の隙を見せた方の負けだ。効果も分からずに試す事は出来ない。だから今のうちに試しておくのだ。念の為、入り口方向を背にする。もし爆発系魔法でダンジョンの壁が破壊されて戻れなくなったら大変だ。ダンジョンの壁はそう簡単に壊れないとしても念の為だ。

 

 エルは肩幅に足を開き、右手を前に突き出す。そして左手で右肘を支える。何故手を前に突き出したかは、攻撃魔法と言ったら手から出るものだと思ったからだ。なかには魔物の様に口から出す魔法もあるが基本的には手からだ。

 

 目を力強く見開く。どんな魔法か見逃さない為に。そして大きな声で叫ぶ。

 

 「【獄炎(ヘルブレイズ)】‼︎」

 

 魔法を叫ぶと身体から何かが抜け落ちた感覚に陥る。感じた事の無い感覚に思わず倒れそうになるが両足で踏ん張る。

 

 ドガッ!!

 

 手から放たれた魔法、【獄炎(ヘルブレイズ)】とは手のひらサイズの黒い炎だった。【獄炎(ヘルブレイズ)】は壁に直撃すると壁を徐々に燃え広がる。自身の魔力が低い所為か、威力は大した事無いが流石地獄の炎と言ったところだろう。ダンジョンの壁が確実に焼かれていく。

 しかし可笑しい。【獄炎(ヘルブレイズ)】によって燃えた箇所が中々再生しない。手のひらサイズの被害なのにだ。しかも【獄炎(ヘルブレイズ)】鎮火に時間が掛かっている。これではミイシャから聞いていた情報と違う。

 

 『あ、そうそう。まだ無理だろうけどダンジョンで壁とかを破壊しても安心して。直ぐに直るから』

 『直る?壁が勝手にですか?』

 『そうなの。余程大きな破壊じゃなきゃね。壁を切っても直ぐに再生する。火属性魔法でも直ぐに火はダンジョンに掻き消されるから』

 『モンスターを産んだり自分の傷を癒したり、まるで生きてるみたいですね』

 『実際生きてるって言われてるよ。凄いよね』

 

 「別に大きな破壊でも無いのに………」

 

 しかし幾ら考えても答えは出ない。それよりもエルが問題視したのは【獄炎(ヘルブレイズ)】による精神の消耗だ。まだまだ魔力が未熟という事なのだろうがたった1発で既に軽い倦怠感が出ている。

 

 「これじゃ乱発はあまり期待出来ないな。使い過ぎて精神疲弊(マインド・ダウン)でも起こしたらそれこそ一大事だ」

 

 まだ魔法が撃てるうちにサッサと次を試さなければいけない。マインドも時間も有限なのだ。次に試すのは【付呪(エンチャント)】である。エルは魔法師では無く剣士だ。つまり戦闘中は結果を利き手(右手)に持ってるわけだ。手から放つ魔法より、こちらの方がよっぽど重要である。【付呪(エンチャント)】で【獄炎(ヘルブレイズ)】を剣で纏う。それを継続しながら戦う事が出来たならもっと強くなれる。

 

 エルは納めていた剣を抜き、意識を集中させる。先程の様に火の玉を放っては剣が壊れてしまう。イメージするのだ。右手を通じて剣に【獄炎(ヘルブレイズ)】を纏わせるイメージを。

 

 「【付呪(エンチャント)獄炎(ヘルブレイズ)】!!」

 

 名前はそのままだがそんなのどうでもいい。そんな事より魔法は成功した。【付呪(エンチャント)】と言うには見窄らしい程、薄い膜だがそれでも成功だ。エルは喜んだ。しかも精神消費も今回の方が抑えられている。これは思わぬ収穫だった。試しにエルは【付呪(エンチャント)】したその刀で壁を斬り裂くする。すると先程と同様に壁に【獄炎(ヘルブレイズ)】が燃え移った。しかし先程より【獄炎(ヘルブレイズ)】の質量が小さく、壁は簡単に再生した。

 

 「今のところは【付呪(エンチャント)】しない方が【獄炎(ヘルブレイズ)】の効果は大きいな。刀が通らない相手とかならは【獄炎(ヘルブレイズ)】の方が有効だな」

 

 魔法の効果も分かったところで実験を止め、またモンスターと戯れる事にした。【付呪(エンチャント)】を継続してだ。だが使い過ぎて倒れたら元も子もないのである程度したら魔法を解き、自然回復したらまた【付呪(エンチャント)】するを繰り返そうと決めた。

 

 

 

 

 「ん?」

 

 探索を続けていると階段があった。

 

 「聞いてはいたけど本当に階段があるんだ」

 

 エルは感心しながら迷わず階段を降った。ミイシャからは初日から階段を見つけても降りちゃ駄目だよと言われていたが無視する。1階層のモンスターを相手にしても一向に強くなれる気がしないからだ。それだけでは無い。正直なところ、つまらないのだ。今のところまともな戦闘が無い。全て一撃。反撃のはの字も無い。これではかかしを相手にしていると変わらない。確かに余裕のある戦闘でも神の恩恵(ファルナ)によってステイタスは上がるだろう。そしてレベルアップの時だけ仲間と協力して強いモンスターを倒す。そうすればある程度の強さを手に入れる事が出来るだろう。見せかけの強さを。ステイタスでの強さなど、仮初の強さでしか無い。本当の強さはギリギリの戦いを繰り返して生き延びてこそ手に入れる事が出来るのだ。エルはそう信じて階段を降る、降る、降る。そしていつの間にか6階層まで降りていた。たった初日でここまでのルートを進めたのは奇跡だろう。強さでは無い。ダンジョンの道は入り組んでいる。だから階段を見つけるのすら困難なのだ。そう言う意味での奇跡である。

 

 そして早速現れたモンスター『ウォーシャドウ』。ここからはモンスターの強さが一段とレベルが上がる。エルは剣を魔法を纏わせて走り出す。エルの戦いはまだまだ始まったばかりである。現在の時刻午後7時!

 

 

 

 その頃、【ヘスティア・ファミリア】

 

 「エル君が帰ってこないよおおおお!」

 「お兄ちゃん帰ってきてよおおおお!」

 

 

 

 

 

 




 ご愛読ありがとうございました。

 今日の一言

 fgoアナスタシア当ててまじ嬉しい。

 では次回もお楽しみに

魔神王の魔力『支配者」についてですが、今作ではあらゆる物理魔力に対して反応しますが、原作では魔力だけどの事でした。『支配者』の魔力をそのままにするか、原作同様、物理は関係無しにするかアンケートを取ります。変更してもあの時のセリフが一部改変するだけで、それ以外は矛盾が生じませんので安心して下さい

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