黒と銀の巡る道   作:茉莉亜

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18.完美無欠

 

 

 

 

 

 

 

「──―よし、後半からは緑間も出ろ。時田と交代だ。

 黄瀬のマークには雪野、お前がつけ」

 

 ん? んん? 

 

「監督」

「何だ」

「意味が分からないです。黄瀬君の相手なら緑間君が適任ですよ」

 

 思わず真顔で聞いてしまった。

 いや、でも、これは意味分かんねーよ!? 

 海常リードで前半終了。そしてたった今、黄瀬が遅れた登場をしてきて、じゃあ後半からはキセキ同士の激突か、なんて空気になってるのに。

 

「……監督、雪野を見くびる訳ではないですが、確かに黄瀬には緑間をあてた方がいいのでは?」

 

 大坪主将も加勢する。うん、そのまま押し切ってくれ。

 

「だからこそだよ。あちらさんも確実に、うちが黄瀬に緑間をつけてくると予想する筈。ならそれを逆手に取って雪野で黄瀬を抑え、緑間をフリーにする」

「……いや、それでも俺一人じゃ荷が重いですよ。キセキ相手なら宮地さんとダブルチームとかした方が」

「おい雪野、いつまでもグズグズ言ってんじゃねえ。リードされてんだから死ぬ気で止めろよ。縫うぞ、大坪の編み棒で」

「宮地さん……」

 

 宮地(兄)が全く目が笑ってない笑顔で急かしてくる。

 ていうか編み棒って何だよ、編み棒って。

 

 緑間が出てくれるなら、点取りを任せて俺は脇に徹していたい。

「キセキの世代」の相手なんて面倒になる事は目に見えてるし、わざわざ疲れる役目をやりたくない。

 

「……緑間君。緑間君だって折角なんだし、黄瀬君と直接やりたいよね?」

「いえ、お任せします」

「緑間君!?」

 

 いつものワガママはどうしたんだよ。まだ確か二回は余ってるぞ? 

 まさかこの後輩が遂に人に遠慮する事を覚えたのか。進化の瞬間を垣間見たような気分でいると、緑間は眼鏡のブリッジを上げた。

 

「今日のかに座は、双子座とは相性最悪なのだよ。ですから、俺はなるべく黄瀬から離れてアウトサイドの得点に集中したいです」

「あ、そういう理由……」

 

 高尾が爆笑しながら緑間の背中を叩いているのが見える。

 今日のラッキーアイテムだとか言ってた金魚鉢の中で、金魚だけが優雅に泳いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後半開始。

 結局上手く逃げられず、俺が黄瀬のマークにつく事になった。あーもういい、こうなったからにはやってやるよ。

 

 センターサークル付近で突っ立っていた黄瀬の正面に立つ。

 変わらねーと思ってたけど、俺よりちょっと背は高かった。切れ長の目がこっちを見る。……睫毛長過ぎねえ? 

 何か直視出来なくて目を逸らす。間近で見るとイケメンっぷりが眩しい。キラキラとかシャララッとかいう効果音がつきそうだ。

 

「………………えーと、確か雪野サンっスよね? 予選リーグの後に会ったけど」

「え? あ、あー……覚えててくれたんだ。どーも」

 

 突然話しかけてきたから、まさか黄瀬が俺に言ってるって思わなかった。

 確かに予選リーグの後にお好み焼き屋で会ったけど、文字通り「会っただけ」で、こいつは緑間や火神と話し込んで俺とは一言も会話してない。俺の存在なんて認識されてねーと思ってた。

 

 意外な事に驚きつつも、試合は始まる。

 まずは海常の(センター)――確か小堀とか呼ばれてた――からスローイン。笠松にボールが周り、すぐさま黄瀬に回された。

 

 当然だろうな。後半は間違いなく黄瀬中心でくる。こっちが緑間を火力に使ってるのと同じで、海常の得点源(スコアラー)は黄瀬だ。

 

 ボールを手にした黄瀬と向かい合う。

 数秒の膠着。

 先に仕掛けたのは黄瀬だった。──―左への踏み込み。

 

「プッシング! 白7番!」

 

 中断させたのは審判の声だ。

 ぶつかった衝撃で少しよろけた黄瀬。強引に当たった俺にF(ファール)の判定が下る。

 

 でも今のは止めようとしたらファールもらうしかなかった。

 方向は読めても速さが追いつかなきゃ意味が無い。

 再開し、黄瀬がまたボールを持つと、俺やゴール下の大坪主将をあっさり躱してレイアップシュートを決めた。緑間の教科書フォームとは違うけど、これまた絵になるくらい綺麗なシュートだ。周りのギャラリーから歓声が上がる。主に女子の。

 

 そしてまたボールは黄瀬に回った。

 いくらエースったって、試合をここまで黄瀬中心にするのはすげーな。こっちだって緑間中心にはしてるけど、大坪主将や宮地さんだってそこそこ決めるのに。

 前半であれだけ自分から攻めてた笠松が、黄瀬が来た途端に何の迷いもなくボールを回してる事は素直に驚いた。

 

 で、黄瀬にボールが回るって事は俺が防がなきゃならねー訳で。

 

 誠凛戦で黒子を相手にした時とは違って、こいつはうるさいくらい存在感があるからむしろマークはしやすい。

 黄瀬も単調に攻める気はないのか、考えるように体が止まった。

 

 ──その時出来た一瞬の隙を見つけて、後方から高尾がボールを突いてカットする。

 前半で笠松に集中攻撃されてた反動なのか、高尾のフォローが手早い。

 

 こぼれたボールを拾い、緑間につなげる。

 

 そして秀徳側にも三点が確約された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後半始まって三回目の緑間の3Pが決まる。

 あっちが黄瀬でガンガン来る気なら、こっちは緑間だ。黄瀬を抑えつつ、ボールが手に入ったらとにかく緑間に渡す事に専念した。

 

 緑間のシュート精度をしみじみとありがたく思う。ボールを渡すイコールで3点獲得なのはアドバンテージなんてもんじゃねえ。

 DF(ディフェンス)で黄瀬を抑えていると、OF(オフェンス)まで手が回らない。今は緑間頼りだ。

 

 けど黄瀬と何度も追いつ追われつを繰り返している内に、あいつのスピードと反射の加減は分かってきた。

 ある意味、前に桐皇で青峰とちょっとだけ1対1(ワンオンワン)したおかげかもしれない。あの野生の猛獣みたいな反応速度に比べたら優しく思える。

 こうなると気になってくるのは、緑間が言ってた黄瀬の能力だ。

 このままこっちが逆転する流れになればいいけど、やっぱりそう都合良くはいかなかった。

 

 再びボールを持った黄瀬が、数秒ためらった後、ドライブで突っ込んできた。

 

 さっきより数段速い。

 ────それにこの動き方は見覚えがあった。

 

「なっ!? あれは……」

 

 宮地の声が遠くに聞こえる。

 

 隙の出来た左サイドからボールをカットして、止める事は出来た。

 こぼれたボールを拾い、緑間にパスする。ボールは全くぶれない軌道を描いてゴールに入った。

 

 これで点差は(秀徳)47対50(海常)。

 緑間のシュート一本で追いつける差が、縮まりそうで縮まらない。

 

 

 横目で後方をチラッと伺うと、呼吸を整えている様子の黄瀬が見えた。

 こいつの力っていうのは、こういう事か。

 今のドライブの動きは、宮地のそれとまるっきり同じだった。いや正確には、動きは全く同じだったのにずっとキレがある。……前半では確かに宮地がOFをやってたけど、インターバル前にでも見てたのか? 

 

「雪野さん、ナイスパスッ! ……って、何か顔暗いっスよ?」

「……ああ、いや、何でもないよ」

 

 暗いのは元々だ、おい。

 高尾の茶々は聞き流して、黄瀬の方に集中する。

 

 ゴール下の小堀から、森山とかいったSG(シューティングガード)へパスが渡った。森山は一瞬3Pをするような素振りを見せたけど、いきなり切り替えてパスを出した。

 ──―3P決められる状況だったのにここでも黄瀬? 強気を通り越してめちゃくちゃだろ。

 

 黄瀬はパスを予想していたのか、ボールを取るなり宮地をドライブで抜いて、一気にゴール下まで詰めてきた。ここで止めねーと点を取られる。

 

 だが黄瀬は真正面にまで来たかと思うと、右足を軸にターンして俺をかわした。

 あの加速状態から体勢を変えられるのかよ。

 

 黄瀬がジャンプした瞬間、反射的に俺もコートを蹴り上げて跳んでいた。

 ──―けど、ダメだ。

 反応がワンテンポ遅い。指先がボールを掠めたが、軌道の勢いは殺せていない。

 黄瀬が放り投げたボールはリングに当たったが、バウンドして空中に跳ね、リング周りをぐるぐると回った後に点を入れた。

 

 どこか既視感のある動き。俺や秀徳のスタメンのものじゃない。

 記憶を探ろうとした時、閃きのように思い当たった。あのワンハンドダンクのやり方は火神のそれだ。

 

 後半開始前、緑間が言っていた事が頭に浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ、緑間君って黄瀬君と中学同じだったんだよね?」

「そうですが」

「何か弱点とか知らないの?」

 

 軽く聞いただけなのに、緑間は意外にも思い出すような素振りをしてくれた。

 

「あいつは頭が悪いです」

「緑間君、黄瀬君の事嫌いなの?」

 

 隣の高尾が爆笑を堪えているが、背中が震えているのが隠せてない。

 そして何を曇りない眼で言ってるんだよお前は。俺も黄瀬の事なんてモデル兼キセキの世代くらいしか知らないけど、可哀そうだろ……。

 

 海常側のベンチにいる黄瀬に少し視線を向けたように見えたが、緑間は静かに続けた。

 

「奴はどんなプレイでも一度見たら自分のものにして、完璧に再現出来る力を持っています。オールラウンダーとしては間違いなく右に出る者はいませんが、何でも出来る性質である故に、何も出来ない」

「はあ? 何だそりゃ」

 

 宮地が眉間に皺を作る。

 緑間は構わず、淡々と説明した。

 

「奴だけの武器が無いという事です。黄瀬が使う技の多くは過去の対戦相手との経験から見取ったもの。けれど無数の技術を使いこなす事は出来ても、黄瀬はそれで満足してしまっている節がある。自分独自のオリジナルを極めようとはしていない」

 

 3P(ポイント)に特化した緑間とは真逆のタイプの選手って事か。色んな意味で。

 それにしてもキセキの事になると普段の倍くらい喋るな、こいつ。

 

「けどさ、どんな技でも使えるってやばくね? 真ちゃんの3P真似されたら止めらんねーよ?」

「それはあり得ん。奴は出来る技しか出来ないからな」

「お前もうちょっと分かりやすく話せよ、禅問答じゃねーんだぞ。スイカぶつけんぞ」

「宮地、うちのスイカの入荷はまだ先だ」

 

 宮地(兄)と木村の漫才じみたやり取りはこの際流して、俺から訊ねた。

 

「……自分の限界を超える技は出来ないって事?」

「その通りです」

 

 サラッと自分は限界超えてますみたいに言うな。……まあ、こいつの3Pは真似しろって言われても無理か。

 

 

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

 

 

 第3Qの終了時、点差は(秀徳)62対60(海常)。

 最終に入る手前で何とかギリギリ逆転出来た。

 全く、緑間が口癖みてーに言ってる「2点より3点の方が大きい」理論を実感する。あいつみたいに3P一筋になろうとは思わないけど。普段はそれ言う度に宮地(兄)に怒鳴られてるし。

 

 黄瀬の模倣技はすごい。

 他人の技をあそこまで正確に、しかも今日初めて見たはずの宮地のドライブさえ、完成度を上げて再現してる。

 しみじみと「キセキの世代」の才能っぷりを見せつけられてる気分だ。

 

 でも言っちゃわるいけど、所詮は他人の技だ。

 宮地のドライブも火神のシュートも、最初は驚いたけど慣れてしまえばどうって事はない。

 後半始まってから笠松の動きも何度か再現していたが、海常のスタメンの動き方なら前半で俺も見ている。

 もしかして技のストックそのものは黄瀬の中にたくさんあるのかもしれねーけど、見る限り、あいつは新しく覚えた技から使っている。だったら俺も知っている技は多い筈。先は読みやすい。

 

 最終Qは海常ボールで始まった。

 小堀から、やはりというか黄瀬にパスされる。

 

 黄瀬と再び向き合う形になったが、今度はどういうつもりか、隙だらけだった。

 ……こっちの攻撃を誘ってんのか? 

 

 黄瀬のボールをカットして俺が直進する。

 よし、さっさと緑間にパス出して──―とはならなかった。

 緑間には小堀と森山のダブルチーム、宮地には黄瀬、高尾には笠松、大坪主将には早川とかいったPF(パワーフォワード)がついている。パスコースを封じられた。

 

 思わず黄瀬を見ると、視線が合った。

 整った顔に不敵な笑みが乗っている。

 もしかして、俺が自分からは仕掛けてこない事を見越したのか。 

 そう推測したなら間違ってはいない。あんまり自分から攻撃したくないのは本当だし、出来るなら緑間や宮地に任せてDFに徹していたい。

 

 ……けど、まあ、こっちの技を真似されたままなのも癪だな。

 ちょっと黄瀬に一泡吹かせてやりたい気持ちが芽生えてきた。

 

 全員にマンツーマンでDFがついているけど俺はフリー。位置はフリースローラインより少し手前、ここからならゴール下まで一跳びでいける。

 確信した直後、すぐに体が動いた。軽く助走をつけてコートから踏み切る。

 察知した黄瀬も同じようにジャンプしたが、このタイミングは間に合わない。数秒の浮遊感を感じた後、黄瀬から先に落下していくのがスローモーションのように見える。邪魔者がいないゴールにボールを思い切り叩き込んだ。

 

 久しぶりのレーンアップで、着地後、少し衝撃でよろける。

 周りのギャラリーからの声が、何故か固まったように止んでいた。―――が、その直後、時が動き出したようにして歓声が沸いた。

 うわ……やっぱりこんな派手な事するもんじゃなかったかもしれない。ちょっと後悔気味でいると、黄瀬が苦々しく呟く声が聞こえた。

 

 

「──―びっくりっスよ。まさか火神っち以外に、そんなジャンプが出来る人がいるなんて」

 

 

 そういえば火神もよく跳んでたな。やたら超跳躍(スーパージャンプ)する癖に、足の負担を全く考えずに連発してるから敵ながら見ててハラハラした。

 

「別に大した事じゃないよ。ただのダンクだし。──―それに黄瀬君は一度見たら同じ事が出来るんでしょ? いいよ、真似しても」

「………………」

 

 少し挑発じみた言い方になったけど、本心だ。

 中学の時だって、レーンアップが出来た選手は俺以外に会った事が無かった。この跳び方が滅多に出来るもんじゃないって事くらい自覚はある。

 やれるもんならやってみろってんだ。

 

「痛っ!」

 

 なんて思っていたら、いきなり後ろから頭をはたかれた。

 

「………え、宮地さん?」

 

 振り返ると、そこに居たのは宮地だ。けど殴られる理由が分からない。後輩の癖に目立ったから怒ってるのか。

 

「……俺なんか悪い事しました?」

「雪野、お前……あんな事出来るんならさっさとやっとけよなー! ったく、勿体ぶりやがって。いきなりレーンアップとかビビったぞコラ」

「え?」

 

 ……怒っている、訳ではなさそうだった。

 言い方は荒っぽいけど、いつもみたいに怒りを抑えたような感じはない。あの、頭をグリグリしないでください。普通に痛い。

 

 戸惑う俺に構わず、宮地はシバいてんのか誉めてんのか分かんない調子でポジションに戻っていった。呆然とした俺の隣に、大坪主将が近づいて小声で言う。

 

「あいつなりに褒めてるんだ、もっと喜んでいいんだぞ」

「褒めてる……? え、何でですか?」

「何だ、気付かなかったのか? お前が自分から攻めて得点するなんて滅多に無かっただろう、だからだよ。―――それに、自分のドライブがあっさり模倣されたから、やり返せて嬉しいんだろ」

 

 大坪は裏表無しに言ってるんだろうが、その言葉にはギクリとするものがあった。

 秀徳のチームは層も厚いし、何より緑間が加入したから俺がわざわざ頑張らなくてもいいだろうって思ってはいたけど。

 

 大坪は続いて、俺達全員に聞かせるように声を張り上げた。

 

「よし! このまま一気に決めてくぞ!」

 

 試合の空気とか熱気とかが、秀徳側に傾いているのが分かる。

 前半ではほとんど海常贔屓だったギャラリーの声に、だんだんとこっちを応援する声も混ざるのが聞こえる。

 良い流れって言うのか?こういうのは。

 

 黄瀬の様子を伺うと、笠松が近づいて何事かを耳打ちしていた。緑間の人間離れした3Pを何本も決められて逆転された状況なのに、全然怯んだように見えない。……やっぱりあと一波乱くらいはありそうだな。

 

 残り時間は8分を切った。

 大坪主将の掛け声を合図に、俺達は一気に攻める姿勢に出た。ここで守りに入る意味はない。

 高尾のパスから緑間が受け取り、3点を加算する。

 

 と、その時緑間についていたダブルチームから一人外れた。

 海常のSG、森山だ。

 すると今度は小堀がパスを投げ、海常側の速攻がかかる。

 

 ボールを受け取ったのは森山。あの変てこなフォームでまた投げる。それなのに不思議とゴールに入った。海常にも3点追加。

 黄瀬一人で攻める事を止めたのか? 確かに残り時間を考えたら黄瀬に回すより、3Pを狙った方が勝率は上がる。

 

 けど緑間のダブルチームを止めたのはミスにも感じる。

 これであいつも3P打ち放題だ。

 

 海常が3点取ればこっちも緑間で3点取り返す。

 同じ点数なら勝負が決まるのはシューターの精度だ。着実に差が広がりつつある所に、俺は黄瀬のマークを続けていた。

 黄瀬に攻撃の様子は無い。……まさか諦めた? って事はないと思うけど、第3Qでの勢いが無くなっている。

 

 何か違和感がある。

 あのレーンアップがそんなに衝撃だったのか。それにしては目に力が入ったままだ。

 予選リーグの時の火神の事を何故か思い出す。どんな状況でもチャンスを探して逆転を狙っている目だ。

 

 その時、森山から笠松にパスが回り、笠松から黄瀬にボールが流れた。

 ボールを持ったまま動きを止めた黄瀬と、また向かい合う。

 さあ、次はどんな手でくる。

 宮地のドライブか、海常のスタメンの動きか、それとも本当に俺のジャンプを真似してみせるのか。

 どちらにしろ、切るカードが限られているなら予測は出来る。

 

 黄瀬の挙動に集中する。

 ──―と、そのままの体勢で、黄瀬は流れるように3歩後ろに下がった。

 

 コートのラインが示すその位置。そして黄瀬の視線の先。

 まさか、と思い至った瞬間、黄瀬はボールを放った。

 

 

 

 

 センターラインからの3Pシュート。

 

 緑間と、同じシュートを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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