突然振り出した大雨のせいで、俺達はストバス会場から大慌てで雨宿り出来る場所まで避難する事になった。近場の駅に辿り着いて、やっと雨がしのげるようになると、頭から靴底まで全身ずぶ濡れになっているのを実感する。うわーどしゃ降り。
「雪野さん、ほら、タオル」
「あー、ありがとう」
後ろにいた火神が俺にタオルを投げ渡してきたので、ありがたく使わせてもらう。
成り行きとはいえ、誠凛の集団と一緒にここまで来てしまった。
黒子達が何やら話しているのが聞こえる中で、俺は一人居心地の悪さを感じる。早く電車来ねーかな。なかなか来ない電車に焦れていたら、隣から能天気な声がかけられた。
「ははっ、雪野。お互い災難だったなーいきなり降られて」
「……そうだね」
「けどびっくりしたぞ? 正邦だけじゃなくて雪野まで大会に出てたなんてな。偶然って怖いよなー」
「本当にね」
俺が素っ気無くしてても、木吉は怯む事なく次々に話しかけてくる。中学の事を抜きにしても、こいつのこういう所がやりにくい。
つーか、あんま火神や他の連中がいる前で話しかけんな。
「……そういえば雪野、紫原と何話してたんだ?」
「は? 別に何も。……向こうが勝手に突っかかってきただけだよ」
「そうか? ならいいんだが」
……何が言いたいんだよ、こいつも。
心配そうな雰囲気を出している辺り、昔の事を遠回しに嫌味で言ってる訳じゃないんだろうが。
それを言うなら、俺も少し気になる事はあった。
「木吉君だって、紫原君と親しげじゃなかったっけ? 知り合い?」
「ははっ、そう見えたか? ……知り合いっていうか、中学の時に一度だけ試合した事があってな。まあ、あいつには全然覚えられてなかったみたいだけど」
それに俺はどう反応したらいいんだよ……。一緒に笑ってやればいいの?
でも木吉の目には落ち込んだような色は無い。むしろ静かに燃えているような気迫さえ漂っていた。──そうだな、“鉄心”がそんな事で落ち込んでたりする訳無いか。叩いても壊しても絶対にこいつは折れない、昔から。
その時ようやく、ホームに待ち望んでいた電車が来た。
誠凛の奴等は何か連絡でも受けたのか、固まって話し込んでいて電車の到着に気付いていない。火神から借りていたタオルを木吉に預けて、俺は邪魔しないようにこっそり帰路についた。
去り際に木吉が笑顔で手を振ってきた。
────本当に、気楽な奴。そう思いながら、小さく手を振り返した。
****
電車から降りてやっと家の最寄りの駅に戻って来たけど、大雨はまだまだ降り続けていた。まあ、走って帰れなくはないけど……めんどくせーな。
何だかドッと疲れが出てきて、駅の改札前にぼんやり立ち止まって外を眺めた。
──それにしても、忙しい一日になった。
結局、全然オフの日になってねーし。
今日一日で起きた事が目まぐるしくて、頭の中で浮かんでは消えていく。
火神の兄貴には会うし、木吉には会うし、「キセキの世代」は出てくるし。本っ当、何だったんだ、あの紫原とかいう奴は。
……恨まれるような事があるとすれば、中学の時しか心当たりがないけど。全然記憶に浮かんでこねえ。昔の事なんてそもそも思い出したくないし。
いつの間にか陽が傾きかけて辺りが暗くなりつつある。
折角の休日なのに、腹の奥が重たいような嫌な気分が残っていた。20cm以上頭上から俺を見下ろしてきた、あの冷めた目が頭から消えない。
……色々考えだしたら頭痛くなってきた。
何であれ、俺がしでかした事が原因だったなら、はっきり受け入れようと思ってた。
思ってた──筈なのに。
あんな一年坊主に、ちょっと何か言われた程度で怯む自分も弱いもんだ。まあ、一年っていうには規格外過ぎる奴だったけど。
『────秀徳で同じ事が起きてみ? お前の先輩や、チームの皆は、その時全く変わらずにお前に接してくれると思うんか?』
かつての先輩の言葉がまた頭をよぎる。
言われなくたってそんな事分かっている。だからとっくに覚悟もしてた。
秋になれば
氷室の口振りだと陽泉も出場するみたいだから、そしたらまた紫原と顔を合わせる事になるかも……いや、なるだろうな。木吉も、今度の試合にはきっと復帰するんだろうし……考えれば考える程、嫌になる。
「……雪野さん?」
「え?」
人の気配。
振り返ったら、背後にいた奴にぎょっとした。
バスケ部の後輩、緑間真太郎が大量の笹の束を抱えて突っ立っていた。緑間の髪の毛が笹の葉の緑に同化している。七夕の時期に見かけたなあと思ったけど、今飾るには季節外れだ。……まさかそれで電車乗ってきたのか、お前。よく乗れたな……つーか、よく乗ったな!?
「緑間君。…………どうしたの、それ」
「今日のかに座のラッキーアイテムです」
「だよね……」
秀徳バスケ部の間では常識になりつつある事だった。
「……高尾君から聞いたけど、本当にそれ取りに行ってたんだ」
「当然です。今日のかに座は10位。運気の補正は欠かせませんから」
「……その割には雨降ってるけど」
「……やはり、この数では量が足りなかったかもしれません」
だからそれ関係あんの!?
前に
笹の束を持ったままで緑間は動かないけど、こいつも雨宿りする気なのか。他に誰もいない駅の改札で、雨の音だけが止まずに降り続いている。
………………会話が無ぇ。
横目で隣を伺ったけど、緑間は鉄仮面の表情のままで外のどしゃ降りを見つめている。普段はセットになってる高尾が勝手に喋ってくれたから気にしないけど、こいつって本当に自分から喋らねーよな。
俺も愛想が無いとかやる気が無いとか、よく言われたもんだったけど、緑間はそれ以前に感情や人間味を全部削ぎ落とした生き物なんじゃないかと思う時がある。
「……そう言えば、緑間君と同中? の子に会ったよ」
「帝光の? 誰ですか」
「すごい背の高い子だよ。紫原君って言ってたけど」
「紫原!? ……東京に来ていたんですか」
「あー何か、観光みたいだったけどね」
あ、今ちょっと驚いたな。
やっぱり「キセキの世代」なんて大層な名前で呼ばれてるだけあって、何だかんだ言っても仲は良いのか。バラバラの学校になっても、こいつらはいつでもお互いを意識してる。
すると緑間は眼鏡を少し上げて、何故か探るみたいな目つきを向けてきた。こんなオフの日でも、その左手は一分の隙もなくテーピングが巻かれている。
「…………。それで、紫原は何か言っていたんですか?」
「え? …………いや、別に何も」
「……そうですか」
何だよ、その間は。
妙に引っかかったけど、こいつのマイペースさはいつもの事か。
紫原の言っていた事について、緑間に聞いてみればはっきり分かるかもしれない。一瞬そう思ったけど、やっぱり止めた。下手に喋って、自分から墓穴掘りたくねーし。まあ、宮地(兄)とか高尾みたいに目敏くなさそーだし、大丈夫かもしれないけど。
「けど緑間君達の中学って本当すごいんだね。主将より背が高い子なんて初めて見たよ」
「紫原は中学の時もバスケ部では一番背が高かったです。あいつ自身、背が高くて向いてそうだからバスケを始めたんだと聞きました」
「へー……」
中学からデカかったのかよ!
確かにあれだけ大きければ周りはバスケを薦めるか……。今日のストバスの大会で、中止になったとはいえ、ゴール下で一歩も動かなかった癖に火神や木吉達を圧倒していたあの姿を思う。
「……緑間君は何でバスケやってるの?」
「は?」
「いや、ちょっと気になって。あーやっぱりあれだ、プロとか目指してるの?」
こいつの化物じみた実力なら、本気でNBAとか目指しててもおかしくない。いつもいつも遅くまで残って練習してて、先輩達に何言われても我を通してる所とか、それなら納得出来る。
しかし隣の後輩は、訝しそうな顔で答えた。
「プロになるかどうかなど、考えた事もありませんが」
「えっ!?」
「WCが控えていますし、目の前の大会に集中する事が優先だと思っています。確かに将来に向けてある程度の準備はしますが、今考えるべきは直前の大会ではないのですか?」
「えっ? ええっ──……いやまあ……そうだけどさ……」
まるで俺が非常識な事を言ってしまったみたいな物言いである。
いや、そりゃあこいつの言う事は正論なんだけど、でも、あの実力で「プロを考えた事もない」なんて予想外過ぎる。
「雪野さんはなるんですか?」
「はい?」
「ですから、プロになるつもりなんですか?」
「はあっ!?」
待て待て、前後の文脈が全く繋がってねーぞ。
「いやいや、無い無い!! 有り得ないから! 何でそうなるのさ緑間君!」
「……ですが、雪野さんのお爺様はNBAの候補になった程の方なんでしょう」
「え? あー爺ちゃん? うん、まあ……」
というか爺ちゃんにそんな経歴がある事自体、俺は合宿で初めて知ったんだが。何度言われても信じられない。それに、あの爺が何だろうと俺には関係無い話だ。
「爺さんがどうか知らないけど、僕の力でプロなんて通用しないよ。今みたいに、部活とかで皆と気楽にやってるのが性に合うって」
「…………」
珍しく突っかかってくるな、こいつ。
笹の葉よりも少し深い緑をした緑間の目が、何か言いたげに俺を見ていた。……何だよ。その目は。
「……え、どうしたの? 緑間君」
「いえ。ただ、自分の実力がどうであれ、試合に全力を尽くさないのはスタメンとしてどうかと思っただけです」
「は?」
天気が雨とはいえ夏なのに、この場の温度が少し下がったように感じた。
「…………いきなり何? 別に僕、試合で手抜きした覚えなんか無いけど」
「気楽にやる、という事は、そういう意味ではないのですか?」
「いや、それは言葉のあやで……。……緑間君には僕が手抜きしてるように見えるの?」
緑間の口調に棘を感じて、つい応酬するように言葉を返す。
「手抜きとは言っていません。全力を尽くしていない……人事を尽くしていないように見えた、と言っただけです」
「はあ!? これでも精一杯やったつもりだけど。……ああ、もしかして、IHの予選で誠凛に負けた事が僕のせいだっていいたいの?」
「違います。 俺はただ、雪野さんがどうしてそこまでバスケに真剣になろうとしないのかが分からないだけです。雪野さんは火神と対等にやり合う程の実力があるのに、一体何を恐れているんですか」
緑間の目が、今度こそ真っ直ぐ俺を見据えた。
俺よりも背がある位置から見下ろしてくる視線には、分かりやすく感情が顕れていた。レアだな、なんて他人事みたいに心のどっかで思ってしまう。
珍しく熱くなっている緑間とは逆に、俺の頭は白けたように冷えていた。
どうしてって、そんなのお前に分かる訳がねーよ。
「……そりゃあ、緑間君は怖い者無しでしょ。何しろ「キセキの世代」なんだからさ」
「…………」
「僕がやる気無さそうに見えたんならごめんね。まあ、確かに緑間君の基準で見れば練習も足りないかもね」
誰よりも自分の力を信じられて、真っ直ぐ歪みなく努力して進んでいく緑間からすれば、俺がイライラして見えんのかもしれない。――そりゃ、そうだろうな。このサイボーグじみた天才には、悩んだり恐れたりする事なんてある訳無い。
話題をさっさと終わらせたくて突き放すように言ったら、緑間も口を閉じた。
俺の答えに対して、「不満です」みたいなのが顔に描いてあるから納得はしてないんだろうが。
その時丁度雨が降り止んだのは幸運だった。
緑間は笹の束を抱えたまま、「失礼します」と一言だけ言って足早に去って行った。緑頭の長身が遠ざかっていく。その姿からは目を逸らして、俺も帰路についた。
****
翌日。
昨日の荒れ模様がまるで嘘みたいに空は晴れ渡っていた。それこそ、ストバスでもやるなら絶好の日和だ。
俺は俺で、今日は通常の練習日だから学校に行かなきゃならない。夏休みだっていうのに寝坊も出来ないのが辛い所だけど、今日はそれ以上に気が重くなっていた。
「は~……」
「……? 雪野さん、どうしたんスか。元気ないっスね」
「ちょっとね……」
朝飯を食いながら思わず出た溜息に、正面に座る火神から声がかかった。
火神は朝っぱらからベーコンエッグを山盛りにしてトーストに挟んで平らげていた。よくそんだけ起き抜けに食えるよな……。
何も考えずに朝食をモリモリ食っているこの家主を見ていると良くも悪くも気が抜ける。昨日「兄貴分」とのいざこざが遭った事なんて、すっかり忘れてるんじゃねーかって思えるくらいの能天気な顔だ。
「朝からよく食べれるよね、火神君は」
「……つーか、雪野さんそんだけしか食わないんスか?」
「いや、これが普通だから」
恐らく10枚近いトーストを完食した所で、火神は元気よく立ち上がった。
今日は誠凛も練習日らしく、俺が起きた時からこいつはやる気にメラメラ燃えていた。氷室との再会がこいつの闘争心に更に火を点けたんだろうか。
「じゃっ、俺もう行くっスよ!雪野さんも今日は練習なんスよね?」
「ああ、まあ……。……がんばってね」
「っス!!」
こいつの前向きさと単純さを羨ましく感じながら、俺も席を立った。
夏休み中の練習は、ある意味普段のそれより地獄を見る。
WC予選まで、あと3ヶ月足らず。
大坪主将や宮地(兄)の怒号なのか掛け声なのか分かんねー声が体育館中に飛んでいる。走り回っているとあっという間に汗だくになった。基礎練もこれ、絶対いつもの1.5倍くらいになってんだろ。呼吸を一息吐きたくなって、壁際にちょっと寄りかかった。
「おい雪野、大丈夫かよ」
「ああ、うん。ありがとう……」
金城が差し出してくれたドリンクを取って水分補給する。
俺がバスケ部に入部した時の、数少ない同期の一人だ。他の二年生で残っている奴といえば、宮地(弟)を始めとして数える程だ。室田を含む二軍の連中が多く去ってしまったから、もうほとんど残ってない。ふと、そんな事を思った。
「本当、今日は監督すげー気合入ってるよな。やっぱ、予選が近いからピリピリしてんのかな」
「だろうね。夏の結果がああだったし」
「でも次は何かいけそうな気がしないか? ほら、緑間だって段々俺達にも協力するようになってきたしさ」
「……そうだね」
ゴールの一つでシュート練習をしている緑頭を眺める。
去年も宮地(兄)に散々説明されたから、WCの予選の流れはいやってほど理解している。
冬の予選は夏の大会で好成績を残した学校しか出られない。つまり、WCの枠を勝ち取るにはIHの時より更に強豪が相手になってくる。
もし誠凛と対戦する事になれば……次は火神に加えて、木吉も居る。
あいつの実力はよく知っている。秀徳だって大坪主将も居るけど……緑間の力は絶対に必要だ。
……今朝、気が重かったのはそれだ。
昨日から、緑間とは妙に気まずいままだった。
いや、まあ、気まずくなるほど元々仲良しでもねーけど。
それでもIHの時辺りまでは、顔合わせたらちょっとは喋る程度には普通の距離感だったのに。朝に部室で鉢合わせした時なんか、明らかに空気がちょっと凍った。緑間と一緒に来ていた高尾も何かを察したのか、いつも以上にハイテンションで喋ってくれたし。
昨日のあれが、そんなに緑間を怒らせたんだろうか。
練習の様子を見ている限りでは普段通りの様子に思えた。でも、意識すると何かいつもより二割増しくらいで仏頂面な気もする……。だったら何でもいいから謝っておいた方がいいのか、流石にスタメン同士で雰囲気を悪くさせてたら先輩達に何言われるか分かんねーし……。でも何を謝れってんだか……。
俺が一人悶々と考え込んでいると、館内に大坪主将の号令が響いた。
突然の集合命令に部員が一斉に駆けつける。
すると集まった部員を見渡しながら、監督が次なる練習メニューを宣言した。
「──よし、じゃあ今から一年と二年でミニゲームを行う。三年は休憩。メンバーは一年が吉田・伊豆倉・緑間・高尾・遠藤。二年が雪野・宮地・金城・笹川・渡部だ。審判は宮本がやれ」
「えっ……」
幸いなのか、俺の呟きは周りのざわめきに掻き消されて聞こえなかった。
でも、マジかよ。
別にミニゲームする事自体は珍しくない。その面子が俺の中では受け入れ難かった。数ヶ月前、同期の室田が緑間に勝負を挑んで強引に取り付けた時と、ほとんど同じ面子だ。
あんまり良い思い出が無いし、それにこのタイミングで緑間と勝負したくない。
「おい、チンタラしてんじゃねーぞ。さっさと準備しろ」
すると宮地(兄)から頭をはたかれ、有無を言わさずコートに急かされる。
コートの中央には早くも一年チームと二年チームが集まっていて、俺もそこに慌てて並んだ。
隣にいた宮地(弟)が、小声で呟いた。
「丁度いいじゃねーか。前の勝負の借りを返してやろうぜ」
「あー……そうだね」
やっぱり宮地(弟)もこの面子での対戦には思う所があるのか。目つきが兄の方よりも好戦的に燃えていた。しかもこの前は一年チームに負けてたしな、俺達。室田の代わりに今回は渡部が入っているけど、一体どうなるのか。
真正面に佇む緑間をチラリと見る。ニコリともしない鉄仮面ぶりは変わらない。……それどころか、睨まれているようにすら思えた。
けど俺が何を思おうと、試合は始まっていく。
こっちからは宮地が、一年チームからは吉田がジャンプボールに出た。
ティップ・オフの合図と共に、ボールが投げられる。
空中を制したのはタッチの差で吉田だった。ボールは吉田から高尾に回る。このタイミングで高尾がパスする相手なら決まっている。────高尾のバックパスを受けた緑間。間髪入れずにシュートモーションに入った時、俺も跳んだ。
指先がボールに僅かに触った。でも、止めるには弱い。
教科書を写し取ったような綺麗な放物線を描いて、ボールはゴールに飛んでいった。
数秒が経過した後、ボールはゴールリングをくぐっていく。
(一年チーム)3対0(二年チーム)。
先制点を取られた。
……ただのミニゲームでも容赦ねーな。最近忘れがちだったけど、こいつを敵に回した時の恐ろしさをこういう時に実感する。と、隣で涼しい顔をして佇む緑間と目が合った。
「……何ですか?」
「いや、別に。……すごいシュートだと思っただけ」
「当然です。俺は人事を尽くしています。──やる気の無い方とは違いますから」
「…………」
言うだけ言って、さっさと行ってしまう緑間。
入れ替わりに、宮地から声がかかった。
「おい、雪野! 早く戻って…………雪野?」
「……ごめん、宮地君。ちょっと僕にもボール回してもらっていい?」
「えっ……うん?? そりゃいいけど……どうした?」
「うん、ちょっとねー」
……あーそうか、そうかよ。そっちがそういう態度で来るのかよ。
何にそんな怒らせたか知らねーけど、そこまで言ってくれるんならお望み通りやってやろうじゃねーか。
どうやって謝るべきか、あれこれ考えてた事が一気にバカバカしくなってきた。
何だ、あの見下したような目つき。
遠ざかる緑頭に対して、今更ムカムカした気持ちが芽生えてくる。流石にここまで後輩に言われて黙っているほど大人しい性格じゃない。
「雪野……? 何か笑顔がちょっと引きつってるけど本当に大丈夫か?」
「あはは、何言ってるのさ宮地君。ほら、行くよ」
味方からボールを受け取り、俺は駆けた。
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秀徳二年チーム
金城孝(二年) C 188㎝
宮地裕也 (二年) SF 192㎝
雪野瑛 (二年) PF 183㎝
渡部正平(二年) SG 182㎝
笹川佑人 (二年) PG 180㎝
秀徳一年チーム
吉田秀樹(一年) C 186㎝
伊豆倉遼(一年) SF 181㎝
遠藤光 (一年) PF 183㎝
緑間真太郎(一年)SG 195㎝
高尾和成 (一年)PG 176㎝