ありふれていない『天の鎖』で世界最強   作:如月/Kisaragi

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早めに投稿できてうれしく思います、(´・ω・`)です。

この話から二章です、よろしくお願いします。

最近の自分は英検を受験してきました。次の大きな試験は漢検です(受験級は二級)。
漢検も頑張りつつ執筆も頑張ります、よろしくです。

漢検やったら自分の文才向上したりしません?しない?……あっ、そっかぁ。

てことでほんへ、どうぞ。


第三章 奈落の月 ――Abyss princess and Red Moon――
Ep.23


――夢を、みた。

 

ありえざる、夢を。

 

 

 


 

 

 

洞窟の中は暗い。

 

一寸先は正しく闇。そんな状況下に、青年がただ一人存在していた。

 

ざあっ、と水の流れる音がする。

地下にある水だからだろうか。その水温はとても冷たく、本来は温かい人間の体温を凍えさせるには十分すぎる冷たさが内包されていて、ここに気を失って存在している青年の身体から体温を絶えず奪い続けていた。

 

そんな気味悪さに気付き、青年はついにその双眸を開く。

そして、真っ先に感じたのは。

 

「うわっ、寒い!」

 

寒い。正しくこの一言に尽きた。

それに脳も十全に働いていないな、とおぼろげながら思考する青年。身体中が悲鳴を上げており、その痛みはズキズキという言葉が似合うほどに辛いものだ。

 

「痛つつ……、ここは……」

 

ふらつく頭を抑えながら、青年――南雲ハジメは再び思考の沼に身を落とす。

記憶の中にあった最後の記憶を呼び起こし、そして思い出した。

 

ここにはおそらくであるものの、石橋のあった階層――65階層から落ちてやってきたのだろう。

そこから落ちる途中で幸運にも近くに流れていた鉄砲水に身体が浸かり、ここまで流されて遭えなく遭難、というのがここまでの流れ。

水没は生存フラグ、と事あるごとに言っていた親友の言うとおりになったな、と小さく笑いながらハジメはここまでを思い出すことに成功した。

 

「まさしく幸運……なんだろうけど、はっくしょん!」

 

水没して生きたとはいえ、身体はボロボロである。その証拠に未だに思考の一部は薄もやがかったようになっており、ピリピリと身体の節々から悲鳴のようなものを感じていた。

凍えるような寒さの中にいたことによって、ハジメの身体からは熱がほとんどない。

 

低体温症。

そんな恐ろしい状況になることを恐れたハジメはすぐに火をつける準備を始めた。

 

 

 


 

 

 

この世界には"魔法"という便利なものがある。

火を起こす魔法、水を起こす魔法、他多数。そんなファンタジーな力が、実際にこの世界には存在している。

 

……しかし、この()()()()()()()行為一般について、南雲ハジメは絶望的な力しか持ち得ていなかった。

 

まず、ハジメの魔法適正は"0"。これが、南雲ハジメという人間は魔法を発動するために一般人よりも大掛かりな準備が必要ということをありありと示している。

そして、魔法行使の効率を上げるための魔石もここにはない。よって、ハジメは火種一つ起こすのに一メートル近い魔法陣を描かなければならない。

 

五分ほどの時間をかけて"錬成"を行い術式を用意し、錬成によって作られた術式――地面を術式の形になるように削り出したイメージ――に魔力を流す。

 

「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、"火種"。……あれ、僕、こんなこととしててよかったんだっけ?」

 

生き残るために良かったことなんです、ハジメさん。

 

ともあれ、何とか火を起こしたハジメは暖を取り始める。この火は正しく文明の火。奈落に炎が灯った瞬間であった。

濡れていた衣服を脱ぎ捨て、下着姿になって暖を取っているハジメ。身体が温まることによって思考が正常化していき、現状の打開についてを考え始めようとする。

 

そしてそんな時に心――胸のあたりを抉る、不安と恐怖。

 

元々ハジメは、親友たちとは違ってただの人間である。

緑髪の麗人の如く心が図太いわけでもない。ましてや今のこの状況は、誰もが口をそろえて「遭難した」と言えるような状況だ。胸中を抉っていく、色彩豊かな感情の暴力は、癒されていっているはずのハジメの心を容赦なく傷つけていた。

 

目に雫がたまる。

滴り落ちそうになる。

 

胸中に襲来して、心を抉る「諦め」の感情。

 

「……でも、」

 

それらの感情の悉くを、ハジメは切り捨てた。

 

パシン、と頬を叩く音が響く。

やけに狭く感じる奈落の中に、その音はやけに明瞭に響き渡った。

 

「やるしかない。なんとか地上に戻ろう。大丈夫、きっと大丈夫だ」

 

目を強く拭う。

俯けていた顔を起こし、決意を固めてハジメは炎をジッと眺める。

 

――その炎が、頼りなく揺れていることに何となく気付きながら。

 

 

 


 

 

 

服が乾いたハジメは、さっそく周囲の探索を開始する。

ここは一体どこなのか。迷宮の中であることに違いはないはずなのだが。そう考えつつ、周囲への警戒を怠りもしていなかった。

迷宮の中である以上、確実に魔物は存在している。闇の中に潜んでいるかもしれない。堂々と、待ち構えているかもしれない。そんな恐れを抱きながら、ハジメは慎重に洞窟の中を進んでいた。

 

この進んでいる道は、正しく「洞窟」であった。

 

オルクス大迷宮低層の規律正しく整えられた感じの迷宮とは異なり、自然物の洞窟感の強いこの階層はハジメの脳に確かなる警戒心を植え付けていった。

また、この洞窟は二十層の洞窟とは全く違い、優に二十メートルを超しているであろう幅があった。どれだけ狭いところでも十メートル以上あるのだから、間違いなくここは広いのだろう。

 

そして、疲れを少し滲ませてきた頃。

遂にハジメは、運命の分岐になるかもしれない道にたどり着いた。

 

巨大な四辻。自分が進んできた一本の道を除けば、その道は立派な三叉路としてそこに鎮座している。

ハジメは悩んだ。その理由は、こういう道はだいたいの場合、進んだ方向によって難易度が変わるタイプのあれだろうと思ったから。簡単に言い表すならば、ここは正しく運命の道。ディスティニーロード。

そんな選択になるであろう道を、おいそれと気楽に決めるわけにはいかない。

ハジメは逡巡した。悩みに悩んで、そして。

 

――視界の端に、何かが動いているのを見つけた。

 

否。ハジメはそれを見つけたというよりも、それを見つけてしまったのだ。

 

すぐに近くの岩に身を隠す。

冷汗が流れる。

見つかってしまったのではないか、と恐怖を抱く。

 

視界の端に映り込んでいたのは、ぴょんぴょんとはねる白い毛玉。

すなわちウサギであった。

 

ただし、そのサイズはウサギと呼ぶにはあまりにもでかすぎたのだが。

 

何と言っても、そのウサギは、でかかった。

体格も、そして後ろ足も。

 

極めつけとして、そのウサギはとても不気味な見た目をしていた。

これまで普通の世界に住んでいた者たちがこれを見てしまえば、間違いなく正気度(SAN値)を削られてしまうというほどに。

赤黒い線が体中を駆け巡っており、その線は心臓の如くドクンドクンと脈打っている。

 

もう一度だけ、あえて言おう。不気味であると。

 

こいつはヤバい。改めて自分の身体に流れている冷汗の存在を感じ取ったハジメは、直進を避けて右か左の道に進もうと決意する。

 

そして、そんな決意を嘲笑うかのように、ウサギが動き出した。

 

(……!)

 

気取られない様に息をころす。

目に映っているウサギは、ぴくぴくと耳を動かしている。

 

まるで、獲物の心音を聞き逃さない様にするかのように。

 

恐怖で身体が竦む。

何よりも、奴の見た目が強そうなせいでハジメは自分のステータスが強いことを忘れて恐怖に震えている。

慣れない環境と、独りぼっちを強いられたことによる精神の苦痛によって、ハジメは精神的に過敏になっていた。

 

改めてウサギの方を見てみる。

 

「グルゥア!!」

 

最初にいたウサギは、何か別の獣と相対していた。

見た目はウサギと同じく禍々しい。赤黒い線が走っているのを見るに、ここの魔物はすべてが同じ見た目らしい。

 

やつはワン公……いや、狼だった。

モフモフのしっぽを二本持ち、それを振りながらウサギへと突進していく。

 

一体目に続くかのように、さらに別の岩陰から二匹のワン……狼が突撃していく。

 

「グルゥア!!(あのウサギめ、ただもんじゃないぞ。イヌテガ、ワンシュ!ジェットストリームアタックを掛けるぞ!思ったより素早いぞ、いいな?)」

「ワン!」

 

お前その鳴き声はただの犬だろと心で突っ込みながら、狼の突進を見つめる。

とはいっても奴らは肉食。対してウサギは草食。ハジメの目には、どこからどう見てもウサギが食われる側にしか見えていなかった。

 

よし、そうと決まればどさくさに紛れて移動しよう、そうしよう。

テンションがバグりながらも、ハジメは歩き出そうとして、

 

「キュウ!」

 

――ウサギの発したかわいらしい鳴き声の後に、

 

ドパン!

 

「グルゥア!?(ああっ、俺を踏み台にした!?)」

 

狼の悲鳴が聞こえて、

 

ドサッ、と落ちた狼の身体にくっついている首が、あらぬ方向に回っているのを見てしまった。

 

(……はあっ!?」

 

驚きのあまり心の声が少しだけ口から出てしまうハジメ。

そして一匹目の死を悼むかのように突撃していく二匹目。

そいつは空中にいるウサギめがけて、攻撃を仕掛けようとして。

 

――そのオオカミの身体も、また宙を舞った。

 

ゴギャッ、という音。

 

ウサギは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

踵落とし。人間が人間に繰り出せば、頭蓋事が陥没することもあるかもしれない一撃を狼に繰り出し、狼は末期の慟哭――断末魔を上げることを許されぬまま、その命を終えていた。

 

ウサギの眼は狼に食われるはずの草食獣の、怯えるような眼ではなく。

ウサギのその眼は、狙った相手を必ず屠る肉食獣の眼をしていた。

 

そしてその捕食者に向かって、無謀にも立ち向かっていく狼。

ウサギが着地した瞬間を見計らって、遺された三匹目が二人の仇を打たんと言わんばかりの勢いで突進していく。

最後に一匹残った狼からは、二人の仇を必ず取ると言わんばかりの執念深い意志が漂っている。

 

唸り声が上がる。

狼のしっぽから、紫電が放出されていた。

 

知識を蓄えてきていたハジメは、それが何なのかを正しく理解していた。

固有魔法。魔物がそれぞれで持つ、その魔物の能力である。

 

「グルゥア!」

 

咆哮と共に、紫電が駆け巡る。

とんでもない電力放出だ。ヒトの身である自分が少しでも喰らったら、真っ黒こげで済むかどうかというくらいの濃密な電気が場を支配していた。

相対するウサギは、華麗なステップで身体を横に揺らしながらものすごい勢いで狼に接近を果たしていた。苦し紛れに狼が放った紫電さえも避け、ウサギはその頭に向かってサマーソルトキックを叩き込んだ。

 

ゴギャッ。

戦いが終わったと知らせるその音は、あまりにも簡単にこの場に響き渡っていた。

 

軽々しく行われた三タテ。

狼三連星を容易く打ちのめしていった連邦の白い悪魔。

 

ハジメはこれでもかという勢いで冷汗をドバっと流していた。

間違いなくあいつは強い。上にいたトラウムソルジャーは当然として、あれはもしかしたらベヒモスよりも強いかもしれない。

 

身体が竦む。

恐怖で歯がカチカチと鳴っているのを感じ取る。

あれは強者だ。やつは間違いなく、喰らうものだ。

 

では自分はどうか。

自分は確かに強かったのかもしれない。

でも、ここにいる今の自分は紛れもなく、弱者だ。

 

逃げなければ。

逃げなければ、きっと■ぬ。

 

自分はまだ、■にたくない。

 

そうおもって、一歩を踏み出した。

 

 

――カラン。

 

 

響き渡った石の音は、水面に波紋が広がるかのように静寂に包まれた空間の中で響き渡っていた。




読了ありがとうございました。

最近の自分は、某一人称バトロワの大会を見ることにはまっております。
カスタムマッチと本番の戦いはどれもこれも白熱していてとても好きです。

あとVtuberにも今更ながらにハマりました。

感想と高評価、活動報告で投稿お知らせもしようかなと思っているのでもしよろしければお気に入り登録もお願いします。

あと、自作品の宣伝もさせてください(言うほど作品上げてないですけど)。

『魔王学院の剣聖にして不適合者』
息抜きで上げた短編小説です。あまり面白くありません(おい)。
次連載するんだったら魔王学院やります。アノス様かっこいいやったー!
https://syosetu.org/novel/261152/

『Dear ” A hollow world. ” ―― From a novelist』
型月大好きな主が初めて書いた、型月世界線メインの短編小説。
プロローグだけですけど。
https://syosetu.org/novel/267628/

こちらの小説たちも読んでいただけると、作者が喜んで連邦に反省を促すダンスを踊ります。

ってことで、ここらへんで宣伝終わります。
……これって規約違反じゃないよね?

今後の小説展開。どうする?

  • 奈落行withオリ主&ハジメ
  • 奈落行withハジメ
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