ありふれていない『天の鎖』で世界最強   作:如月/Kisaragi

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お久しぶりです。長らくお待たせしてしまい誠に申し訳ございません。
リハビリなのであまり文量はありませんが、お楽しみいただけると幸いです。


Ep.25

――また、この迷宮に声が響いている。

 

苦しむかのような、苦痛に耐え続けているかのような、そんな声が。

 

暗闇の中で、わたしは藻掻く。

わたしはあがく。

 

そしてまた、声が響いた。

 

……ああ。

 

わたしは、そんな声が。

 

――どうしようもないくらいに、嫌いだ。

 

 

 


 

 

 

内側が灼けるように熱い。

それは果たして、失ったことでジュクジュクと黒いナニかが燻っている己の心なのだろうか。

 

それとも、単純に失った腕の痛みが発したものなのだろうか。

今のハジメには、それすらも考えることが出来なくなっていた。

 

身体が灼けるような感覚と相反して、頬には冷たい水が落ちてきていた。

 

ぴたん、ぴたん。反響して、木霊する。

ぴたん、ぴたん。燻る黒いモノを鎮めていく。

 

起きなければ、と思った。

何故かはわからない。このまま寝ていれば、きっと楽になれるはずなのに。心の奥が強く叫んでいたのだ。

 

──起きろ、と。

 

横殴りにされたかのような感覚を受けて、目を覚ます。

無機質な洞窟の中には、当然殴ってくるような敵なんてものは存在していない。

でも心の奥底で、声が鳴り響いていた。

 

助けて。たすけて。タスケテ。

 

その声はうわごとのようで。

でも、確固とした意思を秘めた、そんな声だった。

 

ねえ、あなたは誰?

届くはずのない声を心で紡ぐ。

 

ひんやりと冷えたこの洞窟は、まるで今の自分の状況のようで、少し涙が出そうになった。

 

 

 


 

 

 

縮こまるように身体を丸めて、寒さに耐える。その寒さとは、心だったか、それとも身体だったか。

それすらもわからないが、ただ一つ確信して言えることがあるとすれば、このままでは()()()()()()()()()ということだけだった。

幸いなことに、この洞窟の中には不思議な水が湧き出ている。飲むだけで疲れと傷を癒してくれる、そんな水が。

だから少なくとも1週間は耐えられる。でもその後は?このままでは自分は死んでしまうのか?

癒えていく身体とは反対に、精神は摩耗を繰り返している。ギチギチと、空耳が聞こえた。

 

再び身体を折り曲げると、さらにギチギチと声が聞こえた。

耳を塞いで、目を閉じると、もっと音が聞こえた。

 

「ぁぁ……」

 

発狂しそうになりながら、今度は自分がうわごとを放つ。

掠れた喉から飛び出た「タスケテ」に、答えてくれる人は────

 

いない、はずであった。

 

『……この迷宮に、誰かいるの?』

 

奇跡的にも、助けの手というものはあったようだ。

ハジメはそんな詩的な感想を抱いてから、ゆっくりと目を閉じてしまった。

心に満ちていく安堵。自分と、今はここにいない親友以外に、人がいる。その事実だけで、十分であった。

 

誰かもわからない、ひどく弱々しい、そんな誰かの声が再び聞こえた。

 

『……あなたなら、私を助けてくれる?』

 

もちろんだ、と言葉を放つ。

すると、顔も見えない誰かの雰囲気が、笑ったかのように感じた。

 

『……ずっと、待ってるから。私を、助けてくれること』

 

 

 


 

 

 

その日、洞窟の奥底にて。

 

少年と()()()は、互いの“運命“と出会った。

 

 

 


 

 

 

何かの使命感に、突き動かされるように、飛び跳ねて起きた。

あの声の主は一体誰なのだろう。会いたくて仕方がない。

一種の魅了のよう、だった。でも、魅了なんて、安っぽい言葉で片付けていいものなんかじゃなくて。

 

────絶対に、会いにいく。

 

それでも確かに、この心が、身体が、火を灯した。

静謐な声が身体に活力を与えた。

助けを求めるか細い声が心に呼びかけた。

 

────この迷宮の何処かにいる正体不明(Unknown)さんに。

 

だからこそ、ここで燻っているわけにはいかない。

目を瞑って、逃げている場合じゃない。

 

足掻け。足掻け。

 

生存本能に、紅蓮が灯る。

 

南雲ハジメは、この時、紛れもなく"1回目"の覚醒を迎えた。

 

────瞬間、鳴り響く腹の音。

 

なんだか恥ずかしくなって、また少し洞窟の床に突っ伏した。

 

 

 


 

 

 

しばらく羞恥に悶えていたハジメだったがすぐに復活し、確保するべきものが何かを考え始めた。

 

「……まあ、一つしかないんだけどさ」

 

ハジメがまず取り掛かろうとしたのは食糧の確保だった。

水分は神水で確保できている。今でもバスケットボール大のこの石は神水を生み出し続けている。

 

であれば自分の確保しなければならないものは、人体を構成する栄養素の確保のみである。

流石の神水でも、人体構成に必要な栄養素は確保できない。

 

この迷宮にある食糧と聞いて、パッと思い浮かぶのは魔物の肉。

それ以外の食糧はこの洞窟にはない。少なくとも、今は。

 

「……やるしか、ないのか」

 

生き残るためには、食事が必要だ。

しかしここにある食糧は魔物の肉のみ。

 

……あのウサギを狩るくらいはわけない。余裕ですらある。

しかしあの魔物を、喰らうとなれば、話は……違う。

魔物の肉は人間には有毒だ。いや、猛毒と言っても過言ではない。

仮にそれを喰らったとして、生きて帰れる保証はない。だが、残された時間で脱出するなどという無謀も、できない。

 

でも、とハジメは心で考えて、己に理解させるように、言い放つ。

 

「……とやかく言ってる場合じゃない」

 

生き残るために、手段を選ばないと決めた。であるならば、自分に出来ることは、一つのみ。

 

「──投影、開始」

 

イメージするのは一対の夫婦剣ではなく、無銘の剣。

細く、硬く、鋭く、そう鍛え上げられた業物。

 

その瞳には、昏くも、希望が灯っていた。

 

 

 


 

 

 

ここは、くらい。

ここは、つめたい。

ここは、かたい。

 

脳裏に過ぎる、たのしかった頃の、記憶。

天真爛漫で、いつも底なしに明るくて、そして強かった、わたしの■■■■■。

彼女も同じ吸血鬼なのに、不思議な性格で、不思議な力を持っていた、そんな素敵な■■■■。

 

頭がどうにかなりそうだった。

壊れかけの世界。────崩れそうで、眩暈。

空っぽな身体。────歪な視界。

 

マイナスをシャットアウトして、再び■■■■■のことを想う。

 

■■■■■は、不思議な眼を持っていた。なんでも、■■■■としての機能らしい。

それが何か、わからないけど。それでも■■■■■は自慢の肉親だった。

 

……月が見えなくなってから、随分と時間が経った。

ああ、と願う。

 

いつかまた、■■■■■と、一緒に……月を、見ていたい、と。

 

……そういえば、姉はよく言っていた。

 

──時には月を。月には愛を。

  愛には罪を。罪には罰を。

  罰には人を。人には夢を。

  夢には貴方を。貴方には誓いを。──

 

あれは一体、どんな気持ちを込めて言っていたのだろうか。

わからない。わからないからこそ、わたしは、あの日に別れた、■■■■■に会いたいのだ。

 

そんな■■のことを思いながら、歌う。

 

「ねえ誰か教えて 月が見えるなら。

 消さないで まだ、消さないで。

 消えないで まだ、消えないで」

 

この歌は、迷宮に落ちてきた"星"に届いただろうか。

 

それすらもまだ、わからない。




ということでEp.25でした。

まず初めに。投稿がここ最近全くなくて申し訳ございませんでした。
創作意欲が全く湧かず、いわゆるスランプ状態に陥ってしまい、創作から離れていました。
しばらく趣味に没頭する間にある程度状態を戻せるようになってきたので、今回あまりクオリティが高くないながらも投稿させていただきました。

そして、今自分は迷っています。
自分が風呂敷を広げて始めた物語を、果たしてここから完結させられるか、とても心配になっています。

ですので、オルクス大迷宮を終わらせて、それから先の物語を続けられる保証がないことをご了承いただけると幸いです。

もちろん、できるだけのことやっていきます。
書きたい物語を書いて、書いて、書き続けて、もっと皆さんを楽しませられる作者になれるように頑張っていきます。

あと蛇足なんですが、Pixivでも夏月で活動しています。そちらでも小説を読めるので、気になる方はそちらも読んでいただけると嬉しいです。
あとTwitterやってます。日常のことを気ままにツイートしたり趣味について触れていたり投稿報告もしたりなんやかんやしているのでフォローしてもいいよという方はしていただけると嬉しいです。
https://twitter.com/Natsuk1_o

ではまた、次の小説でお会いしましょう。ご読了ありがとうございました。

今後の小説展開。どうする?

  • 奈落行withオリ主&ハジメ
  • 奈落行withハジメ
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