飼殺の檻・九と一つの呪いの話   作:アークフィア

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re・2話

「ひどい目にあった」

「知らないわよアンタが悪いんでしょうが」

 

 

 結局気を取り直すまでに半日掛かってしまった。

 ……おかしいなー、当初はこんな予定じゃなかったんだけどなー。

 そんな事を思うも後の祭り、筆が遊べば言葉は滑るのである。

 

 

「……ねぇ、実はどこか別の場所と交信してるとか、そういうヤバいのじゃないわよねアンタ?」

「だいじょぶだいじょぶ、単に転生したてでチャンネルがおかしいだけなのです、そのうちちゃんとしたのに合うと思います、具体的には3ヶ月後くらい」

「お願いだから今すぐ合わせて!?」

 

 

 やっぱりこの子はからかうととても面白い。

 ……あ止めて脛は止めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

二話・説明しまshow!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いい?お願いだから、横道反れずに・ちゃんと・確り・話を・聞いて」

「うぃ」

 

 

 こちらに念を押してくる彼女に頷いて、心を無にする。

 相手に読まれているのでこれくらいしないと話が進まないだろう。

 なので今から俺は無。

 無。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……聞けぇ!!」

「あべし」

 

 

 無になり過ぎて全て抜け落ちていた。

 まさかここまで俺に無になる素質があるとは。つまり無とは、今とは、転生とは。

 

 

「お願いだから真面目にやって?!それ多分ここじゃないどこかに行く奴でしょ!?」

「おおっと」

 

 

 ネタの天丼は鮮度が落ちるので気を付けなければ。

 失敬失敬と謝って、今度こそちゃんと聞く体制になる。流石に二話も使って何も進まないのは面白い面白くない以前の問題だ。

 

 

「……なんでこんな奴を選んじゃったのかしら私……。いやでもだって選んだの多分あの人だし……」

 

 

 そうして真面目に聞く態度を取っていると、何故か彼女の方がぶつぶつと違う事を考えているようだった。

 ……はて、あの人とは?

 

 

「……アンタ、転生者でしょ?だったら多分、こっちに来るときにあの人に会ってるはずだけど」

「んんん?」

 

 

 その言い方からしてどうにも死んでから見た神様のことではないらしい。

 というかあの人……人?にはほぼほぼ一方的に謝罪とチートを押し付けられたような気しかしない。

 

 

「それはまた雑な神様を引いたのね……」

 

 

 そう告げるとニャルさん(仮称)は遠い目をしていた。その口振りからするに、わりと神様案件に詳しいようだ。

 

 

「ニャルさん言うなっ。……まぁ、この世界はわりとアレな方だから、こっちに転生先を振ってくる奴は基本クソよマジで」

「へぇ、じゃあこの世界はどんな感じの世界なんです?」

 

 

 そう聞けば、ようやっとまともな話ができると意気込んだ彼女が、指をパチンと鳴らした。

 その音に合わせて突然ホワイトボードがどこからともなく湧いて出てくる。

 ……無貌パワーの無駄遣いでは?

 

 

「使ってこそでしょこういうのは。ほら、ボードの前に座って座って」

 

 

 どこか楽しそうなのは彼女の素なのだろうか。

 だとすればやっぱり良い子なんだなぁと思いつつ、俺はホワイトボードの前に子供のように陣取るのだった。

 

 

 

†  †  †

 

 

 

「さて、この世界の子細を話すにあたって一番重要なのは、この世界がほぼ滅びかけ──いわゆるポストアポカリプスってやつだってことね」

「いきなり不穏な空気」

 

 

 ポストアポカリプスといえば、モヒカン達がヒャッハーしたり、モヒカン達がウボァーしたり、せめて安らかに死ぬがよいされる世界の事だ。

 とても怖い。

 

 

「……ねぇ、多分だけどアンタが今思い浮かべてる奴、ポストアポカリプスとしてはちょっと特殊な奴じゃない?」

「おお「言わせないわよ」……ろーん」

 

 

 思考が読まれているので発言を取り消されることもあるらしい。これはなんとも悲しい。

 まぁ、どうにかする方法なんて幾らでもあるのでへこたれる気は一切ないのだが。

 

 

「……ホントにどうにかしそうだから怖いのよアンタ……。んん、まぁ、それは置いといて。この世界が滅びかけたのには、100年前のある事件が関わっているの」

 

 

 彼女はそう言いながらホワイトボードを指差す。

 なんと、マジックが勝手に文を書き上げていくではないか!

 なるほどマジック(ペン)マジック(魔法)。これがニャルラトジョークというわけじゃな?

 

 

「んなわけあるかっ!!……んん。100年前に起きたその事件の名は、【大災厄】。……こっちから見始めた、みたいな奇特な人じゃなければ聞いたことはあるかしら?」

 

 

 そんな事を言いながら視線を中空に彷徨わせる彼女。

 何を言ってるのかはよくわからんが、こっちはよく知らんので解説をお願いしたいのだが?

 

 

「はいはい。──【大厄災】、それは地上に現れた一つの異端、それを滅ぼすためだけに他の異端が集い、戦いを挑んだ大戦争のこと。……結果としては大敗退で、ありとあらゆる異端が露と消えちゃったわけなんだけど」

「え、あらゆる異端が?」

「ん?ええ、そうだけど?」

 

 

 なんでそこに食い付いたの?みたいな顔をする彼女だったが、俺としては残念極まる話なのだ。

 

 

「そっか……、異世界なら居ると思ったのに。会いたかったな……ずんど◯べろ◯ちょ」

「言っとくけど古いわよそれ」

「古いならなおのこと神秘が高まってそうじゃないか」

「……知らないわよ……」

 

 

 なんでこの子は話すたびに頭を抱えるのだろう。

 やはり無貌の神様なので異世界からの交信を頻繁に受け取ったりしているのだろうか。

 

 

「……あーもうっ、いいから聞くっ!とにかく、異端は滅びたの!一個だけ、最悪のものを残して!」

「ほうほう、一つだけ。それが実はアレだったりは「ないです」うぬぅ……」

 

 

 こちらの希望が悉く折られていく。

 確かにこの世界はクソだな!

 

 

「絶対違うけどもうそれでいいわよ……」

 

 

 疲れたように肩を落とす少女。

 ……ちょっとからかい過ぎたかと反省。

 お詫びにポッケから個包装の飴を取り出して差し出したら、特に迷いもせずに受け取ったあと、何かに気付いたように手を止めた。

 

 

「いやちょっと待ってこれどこから出したの?」

「服のポッケから」

「いや待ちなさい、アンタ間違ってなければ転生者だけど着の身着のまま型でしょう、さっき見た時こんなの持ってなかったじゃない」

 

 

 なんと、流石の無貌の神ハイスペックアイ。

 あの時邪視った時に何気なくこっちのスキャニングを終わらせていたらしい。

 ということは俺の財布の中に千円札しか入ってないことも把握済なのか。

 

 

「いやまぁ、うん。それも把握済といえば把握済なんだけど。……そこ触りたくなかったのに自分から話題にするのはちょっと卑怯臭くない?」

「気分だけバブリーしたかったんだ。ところで今の子にバブリーって言葉が通じるのちょっと面白いよね、俺世代じゃないけど」

 

 

 流行り廃りそのものが流行り廃るのって珍しいんだろうか、なんて思いつつ財布の中にみっしりと入った千円札に思いを馳せる俺なのだった。

 

 

 

†  †  †

 

 

 

「……って、違うわよ!この飴の子細を!言え!」

「イエーイ」

「ふんっ!」

「オアーッ」

 

 

 ついに脛への蹴りにタメがなくなってしまった!

 コマンド省略とか流石無貌の神汚い。

 

 

「お望みなら過程を省略して無限回ぶちこんであげてもいいのよ?」

「丁重にお断りします」

 

 

 めっちゃ良い笑みで言われたので丁寧にお断りしておく。

 全く、この世界に転生して初めて出会うのがこんな暴力系ヒロインだとは思わなかったぜ。……ん?「貌」力系ヒロイン………?

 

 

「おいバカやめろ、私以外の貌にまで喧嘩売ろうとするな」

「ヒロインであることは認めるのか(困惑)」

「いいから質問に答えろってばぁ!!」

 

 

 大きな叫び声をあげる自称無貌の神。

 大丈夫ですか?正気が削れていませんか?

 貴方の正気を保証してくれるのは誰ですか?……ニャルニャルしてる側だし保証人も自分だよね分かります。

 

 

「誰のせいだと思ってんのよ誰のぉ!!いいからちゃんと答えなさいよぉっ!!」

「転生前に貰ったチートです」

「……はぁ?」

 

 

 ホントは平穏無事で居られるっていうのが欲しかったんだけど、転生先的に無理と言われてしまったので代わりに貰ったものがある。それが、

 

 

「『一生衣食住に困らない』?」

「うぃ。着るもの食べるもの寝るとこが大丈夫なら血霞吹きすさぶヤベー環境でも案外どうにかなるんじゃないかと思った次第」

「……ああ、うん。確かにそれはチートよね、紛れもなく」

 

 

 無論、他にバレると自分が血霞の中心になりかねないのであんまり言いたくなかったけど、そもそも心を読まれてるんだから話すも話さないもないよね!

 

 

(……全然読めなかったんだけど)

「全然読めなかったんだけどって顔」

「っ!?」

 

 

 顔に書いてあったので読んであげたらめっちゃ警戒された。

 仲良くなりかけていた子猫に思いっきり逃げられた時の気分である、とてもつらい。

 

 

「無貌の神を子猫扱いした不遜さは見逃してあげる。……で、なんでこっちの考えてること読めたわけ?」

「それも多分貰いもの」

「……ってことはこっちの話か。たく、お節介というかなんというか……」

 

 

 多分って言葉で全部把握したらしい彼女は、勝手に納得して勝手に満足したようだった。警戒して損した、とばかりに隣に戻ってくる。

 

 

「にしても……ふーん、なるほどねぇ」

 

 

 そして唐突にニヤニヤし始めるものだから思わず心配になって彼女のおでこに右手を当てる。

 ……知恵熱とかではないようだ。まぁ無貌(略)が知恵熱で倒れるとかあり得ないか。

 

 

「……ナチュラルに無礼なのはもうこの際気にしないけど。まぁ、私がなんでニヤニヤしてるのかなんてこの後の話を聞けばイヤでもわかるわよ」

「ニャルニャルしてる?」

「間違ってないけどやめて」

 

 

 仕方ないのでヤレヤレする俺なのだった。

 

 

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